Kindle小説サンプル

S女小説 鬼姫劇場(上)「強く美しく残酷な女たち」

S女小説 鬼姫劇場(上)「強く美しく残酷な女たち」を電子書籍として出版しました。

内容紹介

女性マネージャーに虐待・陵辱を受ける幕間芸人たちの悲劇(上巻)

売れない漫談家である唐谷マキオ(30)は、再起を賭けるべく、とあるストリップ劇場の面接を受けることにした。合格すれば幕間芸人としての身分が保障され、定職にありつくことができる。面接を行ったのは、劇場支配人の娘でマネージャーである高杉千夜(28)という女性。もともと外資系商社のキャリアウーマンだった彼女は判断力や機知に優れ、そのぶん気が強く、たぶんに嗜虐性を備えていた。千夜は、いきなりマキオに芸を演じさせ、辛口の評価を与えるも、思わせぶりな態度を取ってみせる。ここが正念場だと悟ったマキオは、プライドをかなぐり捨て、床に跪いて懸命に採用を懇願したのであった。それが地獄の始まりであるとも気づかずに……。ただ、一目惚れして交際を申し込んだ受付嬢の吉川菜々子(23)だけが、彼の希望のヒロインだった。

第一幕 美人マネージャーの脚揉み当番

第二幕 モデルボクサーの強打に怯えて

第三幕 女性実業家のペニバン逆レイプ

第四幕 大切な恋人に鞭打たれ陵辱され

本文サンプル

第一幕 美人マネージャーの脚揉み当番

☆ 一

「そこをなんとか、お願いできませんでしょうか」
 唐谷マキオは、額が机に着くほどに頭を下げ、女性マネージャーの高杉千夜ちやに懇願した。もうあとがなかった。ここを断られたら、もはや芸人を辞めて堅気の仕事に就くしかない。それくらいの覚悟で赴いたのだった。
「何度も言ってるけど、幕間まくあいの芸人さんは今のところ間に合ってるし……もし、空きが出たら連絡しますから」
 まだ二十代かと思われる美貌のマネージャーはすげなくそう言った。唐谷マキオは、三十歳の漫談師である。かけだしの頃は、漫才師としてコンビを組んでいたこともあるが、喧嘩別れしてからはピン芸人となった。以来、鳴かず飛ばずのまま、今年で芸歴十二年を迎える。所属事務所との契約も切れ、フリーの立場であった。もはや堅気の仕事を探すしかないと観念していたところへ、知人からこのストリップ劇場を紹介され、面接に挑んだのであった。幕間芸人の立場を確保できれば、なんとか定職にできる。そう思った。
「最低の条件でかまいませんので……」
 マキオはもう一度深々と頭を下げる。早、薄くなりつつある後頭部を美女に見下ろされるのは恥ずかしいが、そんなことを気にしている場合ではない。
「そう言われてもねぇ」
 ため息をつく高杉千夜マネージャーにしても、実のところこの職についたのは一年前のことであった。元々外資系の商社に勤めていた才女であるが、今年の初めに支配人であった父親が他界したのを機に、母親に泣きつかれて、引き継いだ次第である。マネージャーだったその母がいまでは支配人の椅子に座っている。
 目の前のマキオのことは、とりあえず会うだけでも会ってみてくれと知人に頼まれたので、そうしているまでのことであった。
「どうかお願いします、私にチャンスをいただけませんでしょうか……実を言うと、も、もし、ここが駄目なら、もう芸人を辞めようかと思ってるんです」
 マキオにしてみれば、相手が年下の女性であろうが、もはや体裁を気にしている場合ではなかった。二人きりの面接であったのも幸いした。もし人目があったりしたら、こんななりふりかまわずの態度に出られたかどうかは分からない。
「そう、ですか……じゃあ、とりあえず、見せてもらえますか? 何も見ないでお断りするのもなんだし……」
「あ、ね、ネタをですか?」
「うん、今、ここで」
「わ、分かりました……」
 ネタ見せをするのなど久しぶりで、本番より緊張する思いがした。マキオは席を立ち、引きつっているかもしれない頬を両手で揉みほぐした。
「はいっ、では、ありがとうございます……」
 マキオは、機会を与えてくれたことに感謝しつつ、汗をかきかき、渾身の漫談を披露した。

「なるほど……なんか、ほのぼのした感じですね。悪くないけど、迫力に欠けるっていうか……声が小さいのかな」
「あ、ありがとうございます……こ、声は、舞台だともっと張れます、この部屋だと少し、遠慮ぎみになっちゃって……」
 マキオにしてみれば、相手はマネージャーといえど元キャリアウーマンで、就任してまだ一年ほどだと聞いている。芸のことはおそらく素人に近い彼女に意見されたことに憤りとまではいかないが複雑な思いを抱いた。それが少し表情に出たのかも知れなかった。
「舞台なら、もっと本気出せるんだ……」
 千夜は真顔でつぶやくように言った。
「あ、すみません……」マキオは慌てた。怒らせてしまったのではないだろうか。「そう言う意味ではなくて……本気では、やりましたけど……ここで大声を出すと耳障りかと思いまして……」
 女性はマキオが慌てる様子をやや面白げに見ている。少し間を開けて、「じゃあ、舞台でもう一度やって見せてもらいましょうか」

「は、はじめまして、唐谷マキオと言います……」
 客席には、踊り子たちや女性スタッフがまばらに座っている。このような劇場にしては珍しく、女性だけで運営されているらしい。
 ほぼ中央の前よりの席に高杉千夜マネージャーがいるのを見つけて、マキオは生唾を飲み込む。こんなに緊張する舞台は初めてだ。
「すみません、ほとんどの方がはじめましてだと思います。なんせ、テレビにはあまり出たことがありませんので……」
 少しの笑いを期待したのだが、誰もクスリとも笑わない。これでさらに緊張が高まってしまった。もともとはあがり症を克服するために、お笑いを始めたことを思い出す。

―――酷い出来だった……
 千夜と二人きりの事務所に戻ったマキオは、すでに諦めていた。少しは笑いが起こったが、あれは自分が笑わせたのではない。笑われたのだ。どもり、突っかかる漫才師を踊り子や女性スタッフたちにバカにされたのだと思った。十年以上もやっているはずなのにあるまじき醜態だ。結果は聞かずとも分かっている。マキオは、一刻も早く逃げ帰りたい気分だった。
「悪くはないかもね……」
 千夜はセミロングのストレートヘアを触りながら、確かにそう言った。
「え……ほ、ホントですか」
「こんなこといっちゃ、失礼かも分かんないけど、妙に素人っぽいところが新鮮ね。計算でやってるの?」
「え、いえ、あ、まあ、多少は……」
 一転して意外な展開になりつつあることに、急な期待感を覚える。素人などと言われるのは心外だが、このままお笑いを続ける道が開けるのなら、ここはひとまず従順な態度を見せておくべきではないだろうか。
「どうします? その気がないなら、それで別にかまわないけど」
 千夜は、一瞬戸惑いを見せたマキオに、やや憮然としている。
「え、い、いえ……使っていただけるのなら、ぜひ……お願いします……」
 マキオは再び机に額をつかんばかりにして、懇願する。頭を下げたまま、美女の承諾を待っているが、その声は聞こえてこない。マキオはたまりかねて、顔を上げる。女マネージャーは腕を組み、黙ってこちらを見つめている。見つめているというよりも、立場が上の人間が、自分の聞きたい言葉を待って上から見据えているという感じだ。
「す、すみません……」とりあえずそう言うしか、元の空気に戻す術はなさそうだった。「どうか、チャンスをお与えいただけませんでしょうか……」卑屈に過ぎる言葉かも知れなかったが、他の誰に聞かれているわけでもない。何が何でもここをくぐり抜けねば、目の前の女マネージャーに首を縦に振ってもらわねばならないと思った。これからまだまだ先の長いはずの人生がかかっているのだ。
「どの程度の覚悟なの?」
 千夜がポツリと言う。
「ほ、本気です……人生が掛かっています……」
 マキオの言葉に千夜はかすかに首をかしげる。言葉に真実味がないのだろうか。三十路に入ったばかりの男芸人は不安を募らせる。つかみかけたロープが手の届かない高さへと無情に引き上げられようとしている。
「お、お願いします……どうか……」
 マキオは席を立つとテーブル脇に移動して靴を脱ぎ、脇へ揃える。生まれて初めてする行いに体を震わせつつ、その場にしゃがみ込み、赤いタイトスカートを履いた彼女の足元に向けて正座を整えた。
「ど、どうか、お願いです、た、高杉、様……」
 マキオは女マネージャーを見上げる。黒っぽいインナーにデニムのジャケットを羽織った美女は、変わらぬ落ち着きでマキオを見下ろしている。唇とマニキュアの真紅が鮮烈である。しかし彼女は、依然として無言のままだ。
「一生懸命、頑張らせていただきますので、どうか、わたくしを使ってやってくださいませ……」
 必死の思いでそう言うと床に向かって深く頭を下げた。黒いパンプスのつま先が、照明を浴びて妖しい光沢を放っている。

☆ 二

「……では、このあと、また、踊り子さんが出てきますのでね。どうも、ありがとうございあしたぁ……」
 まばらな拍手の中、マキオは舞台を降りる。
「お疲れさま」
 舞台袖で見ていた受付嬢の吉川菜々子が、楽屋へ向かうマキオに声を掛ける。清廉という言葉が似合う二十三歳の美女は、一見このような職場にはそぐわない印象だが、昨今の女性客増加に応えるべく、ストリップ劇場の従来のイメージを刷新したいという高杉千夜マネージャーの意向で、先月からこの職場に就いている。元来お笑い好きのようで、休憩中など、菜々子は芸人たちの漫才や手品を舞台袖から見るのを好んでいた。
「あ、ああ、どうも……」
 そんな菜々子にマキオは一目惚れしていた。こんな魅力的な女性との出会いが待っているのならば、プライドをなげうって、年下の女性マネージャーに土下座までした甲斐があったというものだ。
「結構、ウケてましたね」
 菜々子は、頬にえくぼをつくって微笑んだ。拍手はまばらだったが、このような劇場では拍手があるだけでもありがたい。
「そ、そう?……そりゃどうも、ありがとう……そう言ってもらえると……嬉しいね……が、頑張ります……」
 菜々子を見ると年甲斐もなく、少年時代に戻ったような心持ちになる。マキオは照れて逃げるようにしてすぐ裏手の楽屋へ戻った。

「お疲れさん。ウケてたじゃねえの、なかなか」
 手品師の中島が茶を注いでくれる。口ひげを生やした五十代の小男だ。
「あ、すいません。ですかね……優しいお客さんが多かったのかな……」
「んなことねえよ、オイラんときゃ、結構野次られたぜ」
「そうですか?」
 マキオはズズッとお茶を啜ってまんざらでもなさげにする。
 中島は舞台の上では、タキシードを着て上品な語り口で優雅な手品芸を見せるのに、舞台を降りた途端に口が荒っぽくなる。そのギャップが面白くて、そのうちネタにして舞台で話してやろうかとマキオは思った。
 廊下から気の立った足音が聞こえてくる。
―――カッ、カッ、カッ、カッ……
 引き戸が開いて、劇場マネージャーの高杉千夜が入ってきた。
「ほら、何してるの、悠長にお茶飲んでる場合じゃないでしょ」
 千夜はだいぶ年上であるはずの中島を見下げた口調で注意する。
「あ、お嬢さん、すいやせん、すぐ行きますんで」
 中島は千夜にペコペコと頭を下げながら、部屋を出て行く。踊り子たちの楽屋へ行くのだ。幕間芸人は、彼女たちの雑用係でもあった。
「どう? 少しは慣れた?」
 千夜がテーブルを挟んでマキオの前に、さきほどまで中島がいた座布団の上に座る。
「あ、はい……多少は……」
 面接の日から一週間が経っていた。
 マキオはぎこちない手つきで、千夜にお茶を入れる。
「最初に言ったように、三ヶ月は様子見だから、気を抜かないようにね」
「はいっ……頑張らせていただきます……」
 マキオは座っていた座布団を外し、正座の姿勢を再度整えて、千夜の方へ頭を下げる。
「それと……あなたも、来週くらいから、踊り子たちの楽屋に行ってもらわないと」
「は、はあ……」
 気が進まないが、それがここのしきたりらしい。そのような説明や最低限の給金の話は、すべてマキオが土下座をした後に聞かされた話だった。外資系の商社で百戦錬磨の交渉術を身につけた千夜にとっては、一般常識に疎い下層芸人たちの処遇を優位に進めるなど、赤子の手をひねるより簡単なことのようだった。
「踊り子さんたちの稼ぎで、あなたたちの給金がまかなえるんだからね。くれぐれもそこんとこを忘れないように」
 千夜は積極的な態度を見せないマキオに釘を刺す。
「は、はい……でも、ち、千夜さん……」マキオはおもねる気持ちを込めて、思いきって下の名前で呼んでみる。「踊り子さんたちの雑用って例えば、どんなことを……」
「彼女たちが頼んできたことは、何でも」
「な、何でも……」

 千夜が出ていった後、マキオはしばらく、師匠から破門されて流れてきた落語家と一緒だったがその彼が舞台に上がったところで、手品師の中島が戻ってきた。
「中島さん、踊り子さんたちの雑用っていったいどんなことをするんですか?」
 なんとなく聞きづらいことだったが、思いきって尋ねてみる。
「彼女たちが望むことはなんでもだよ」
 中島は口髭を触りながら、千夜と同じ事を言った。
「例えば?」
「例えば……いや、それは自分で確かめな……」
「え……」
 マキオは、中島が口にできないほどのことをやらされるのかと不安になる。

 マキオは、マネージャー室をノックする。
「はい」
「あ、唐谷です。ま、マネージャー、ちょっとお話しが……」
「どうした?」
 千夜はパソコンのキーボードを叩きながら画面に目をやったまま聞く。
「お忙しいところ、すみません……やはり、ちょっと例の踊り子さんの雑用のことが気になって……中島さんに聞いても、教えてもらえなくて……自分で確かめろって……」
 マキオの話を遮るように、千夜は大きくため息をつくと席を立ち、壁際のソファへ腰掛けた。今日は外で打ち合わせでもしてきたのか、ベージュ色のいかにも上等そうなスーツを身につけている。
「煙草、取って」
 千夜は机の上を顎で指して言う。マキオは一瞬、驚いた表情をして、生唾を飲み込んだが、言われるまま、シガレットボックスとライターを手渡した。
「要はね。そういうことをさ、言われなくてもやるようにするの。アタシが煙草吸うって、もう分かってるでしょ?」
 千夜は煙草に火を着けると大きく煙を吐いた。
「……は、はい……」
 マキオは屈辱に身を震わせながらも、若い雇い主の言葉を懸命に受け入れようとする。
「ボーッと突っ立ってないでさ、そこ座んな」
「え……」
 マキオは椅子を探して、あたりを見回す。千夜が顎で指している場所が、冷たい床の上であることを悟ると、今一度確かめるように彼女の顔を見る。
「早くしなさいよ」
 低く厳しい声にマキオは背筋に寒気を走らせ、すぐに靴を脱ぎ、しゃがみ込んで膝を揃えた。
「あとはね……例えば、足を揉むとか」
「あ、足を……揉む? ……踊り子さんたちの……」
 マキオは愕然とした表情をする。それはあまりにも惨め過ぎはしないか。いくら幕間芸人とはいえ、それなりに志を持って芸を磨いているつもりだ。立場上ある程度の雑用は仕方ないとしても、そのような下人のようなことをさせられる筋合いはないのではないか。
「嫌? できない?」
「あ、いえ……でも、それでは、あまりにも……」
 マキオは長い脚を組んだ豪腕美女の顔色をうかがいながらも、なんとか異議を取り合ってもらえないか言葉尻を濁す。
 とたんに千夜の表情が険しくなった。
「ちょっと、あなた勘違いしてるみたいだから、もう一度、きちんと話しようか」
「あ、は、い……すみません……」
「うちに来るお客さんは、誰に対してお金を払ってるの?」
「それは……踊り子さんたちです……」
「だよね、それは説明したはずだよね。何度も」
 赤いルージュを引いた口がきっぱりと言う。
「は、はい……」
「彼女たちがいなけりゃ、あんたら、舞台に立つことできないんだよ。こんなこと本当はいいたくないけど、そのおこぼれにあずかってるだけの立場だってことを分かってもらわないと」
「あ、ああああ……」
「アタシが言ってること間違ってるかなぁ」
「…………」
「だとしたら、これ以上、話することないわ、あんたに。出てっていいよ、いますぐ」
「あ、いえ……すみませんっ……」マキオは焦って詫びた。「やります、踊り子さんたちの言う通りにします」
「どうだか……そんな中途半端な、甘ったるい考えで、この先、やってけるのかなぁ」
 千夜の厳しい言葉と態度に、マキオは不安と恐怖を募らせる。
「お、お嬢さん……」マキオは、他の芸人たちと同様に、最上位に敬う呼び方をした。「本当に、申し訳ありませんでした」床に額がつかんばかりに謝罪をする。
「いまのアンタのまま、踊り子さんたちのところにやるのは不安だなぁ、ちょっと教育が必要かもね」
「は、はいっ……よろしくお願いします」
 マキオは涙目で、二つ年下の美人マネージャーを見上げた。

☆ 三

「もうちょっと、力出ないの?」
 煙草をくゆらせながら、千夜が言う。彼女の足の裏、土踏まずを押し続けているマキオの親指はもはや吊りそうである。
「すみません……」
 教育をすると言われた日から、ほぼ毎晩、千夜はマキオを呼びつけて、足を揉ませている。
「アンタらを売り込むために営業してきてあげてるんだからね、少しは感謝してもらわないと……そうでしょ?」
「は、はい……ありがとうございます……お、お嬢さん……」
 暇な時間の多い幕間芸人たちをイベントやテレビ番組などに派遣する芸能事務所的な機能を思いついた千夜は、持ち前の行動力でさっそく実行に移すことにした。商社時代のコネを生かして営業に回っているところだ。テレビ出演はもう少し時間が掛かりそうだが、ショッピングモールのイベントや結婚式への芸人派遣は、近々にも動きが出そうな感触だった。
「感謝してるの? 本当に」
「はい、それは、もちろん……」
「じゃあ、証拠を見せてもらおうか……」
 そう言って、千夜は三本目の缶ビールを飲み干した。頬をほんのりと染めて、気分良く酔っているようだった。
「しょ、証拠……と、いいますと……」
 千夜は鋭い眼差しでじっとマキオを見つめる。マキオが耐えきれず、目をそらしかけたそのとき、「舐めて」といい、足の指先を彼の鼻先に差しだした。
「あ、ああああ……」
「何? 感謝してるんじゃなかったの?」
 千夜のこわばった表情にマキオは、一巻の終わりになってしまいそうな気配を感じる。
「お、お嬢さん、分かりました。や、やりますので……でも……」
 マキオはようやく、千夜が多分に嗜虐的な性向を持つ女性なのだと察した。でなければここまでの命令を出すはずがない。
「でも?」
「でも、どうか、他には内緒にしておいてやってください……」
 どうにも免れないと観念したマキオは、声を絞り出すようにしてそう言った。

 

S女小説 鬼姫劇場(上)「強く美しく残酷な女たち」

Kindle小説サンプル

S女小説 荒ぶる女神たち「不用僕の運命」

S女小説 荒ぶる女神たち「不用僕の運命」を電子書籍として出版しました。

内容紹介

超女尊男卑へと移ろう世における、男たちの悲哀と絶望

画期的な婦人薬の発明により、女性の知力、体力が大幅に向上し、さらには嗜虐性までが高まった結果、世は超女尊男卑社会へと移行していった。女性主導による専横的な政府は、男を女性に隷属させるための憲法および法律の改正を次々に行い、施行準備を整えていった。地理教員として若草女子高に勤務していた持田(旧姓細野)友弘も、そのような時代の犠牲となったひとりであった。

プロローグ

第一章 女性教師のバター犬

第二章 新任女性に犯されて

第三章 銃を撃つ女生徒たち

第四章 奴隷市場での男売買

第五章 タトゥー美女の浣腸

第六章 処刑に昂ぶる女たち

本文サンプル

プロローグ

「しょうがないよね、そうせざるを得ないことをやってしまったんだから、お前は」
 リビングのソファに腰掛けた妻は、足元に正座させた全裸の夫を見据えて言い放った。ゆるくウェーブが掛かったセミロングヘアに包まれた高貴な面持ちが窓から差し込む午後の日差しに白く輝いている。その眼差しは、下僕である夫への蔑みに満ちていた。
「洋子様……私には、まったく身に覚えのないことで……」
 ろくに食べ物を与えられておらず、栄養失調寸前の夫、友弘は声を震わせる。
「身に覚えのないものがどうしてあんなところにあるの?」
 持田家のパソコンの中から発見されたのは、男が女を陵辱するという、遙か旧い時代の動画ファイルだった。
「し、しかし……洋子様……」
 本当に身に覚えのない友弘は、目に涙を浮かべている。
「まだ言い訳する?」
 妻の洋子は、夫である友弘の額を制裁用ブーツの尖ったつま先で軽く小突く。今や家庭内の女性は多くが土足履きの習慣だ。
「あああ……洋子様……どうか、お許しを……」
 恐怖に夫の両膝はガクガクと震えている。
「読みなさい、声を出して」
 友弘はどうか夢であって欲しいと願いながら、さきほど渡された一枚の手紙を両手で持ち上げ、震える声で読み始める。

「世帯主 持田洋子様
 この度は、若草女子高等学校射撃部の処刑実習にご協力いただけるということで、誠にありがとうございます。
 先般の日程調整通り、二月三日早朝に不用僕を引き取りに伺います。
 処刑は五名の女子部員が機関銃にて執り行う予定です。
 万が一の事情により中止される場合は、二月二日十五時までに、所有女性ご本人が直接ご連絡ください。
*これ以降はいかなる事由がありましても、処刑は中止できませんので、あらかじめご了承ください。
 若草女子高等学校三年一組 射撃部キャプテン(処刑隊長)浅野聖美」
 読み終えた友弘の目に涙があふれ、震える手紙の上にポタポタとこぼれる。
「よ、洋子様……どうか……」
「今度、馬鹿やったら、《不用僕》にするっていったよね、アタシ。冗談だと思ってたの?」
 世の中は変わった。
 女性の知力、体力のめまぐるしい向上を経て、史上初の女性政権が誕生し、国会議員の三分の二以上を女性が占めるようになった。女性優位の風潮が芽生えたかと思うと、それはあっという間に女尊男卑の世の中へと加速されていき、憲法が大幅に改正され、女が男を支配するための新しい法律が次々と制定されていった。
 事の発端は、遠い昔に遡る。女子医大研究グループによる画期的な婦人薬の発明がきっかけであった。新しい薬には人間の基礎能力を大幅に高める作用があった。多くの女性がその薬を、初潮の始まる頃から服用するようになったのだった。男女間の力の差は縮まり、追い抜き、さらに、時を経るごとに広がるばかりであった。その妙薬に男性への嗜虐性を高める成分が含まれていると言う事実は、いまだに公表されていない。
 そして……夫の所有権は妻にあるという憲法改正に基づいて、ついに昨年頭に、妻は夫を不用僕としていつでも殺処分できるという法律が制定され、昨夏から施行されるに至ったのだった。
「うううう……」
 恐怖に震え、怯え、涙を流す友弘を、部屋の隅から、同じく全裸に剥かれた二人の若い男たちが、やはり怯えた表情で状況を見守っている。いつ自分たちも同じ目に遭わされるか分からないからだ。
 一妻多夫が憲法により認められている今、古い夫に飽きた妻が、彼を不用僕として処分することは、いともたやすかった。
 そのとき、持田家に一人の女子高生が訪ねてきた。
 紺のスクールブレザーに白いブラウス、チェック柄のスカートを身につけた女生徒が、若い夫の案内でリビングに通される。
「こんにちは。この度、処刑隊長を務めさせていただきます、浅野です」
 さきほどの手紙の差出人である女子高生、浅野聖美きよみだ。
 玄関口で土足でかまわないと説明を受けた聖美の足元は黒革のローファーに膝下丈の紺のハイソックスであった。
「ご挨拶はっ」
 洋子のブーツのつま先が、友弘の額を強く小突く。
「うがあっ、は、はいっ、すみませんっ……」
 不用僕となった夫の友弘は、そばに立つ女子高生を見上げる。二重まぶたと白い肌の持ち主は、ミスコンの上位入賞者として紹介されても何の違和も感じないほどに完成された美少女だった。
 しかし、礼儀正しさの中に収まりきれない若さの躍動がみなぎる、その佇まいは、女性上位の世の中にどこにでもいそうな、今風の女子高生の一人でもあった。
 友弘は、彼女に見覚えがあった。
―――この少女ひとたちに、自分は殺められるのか……
 友弘は恐怖の中にあってなぜか昂ぶるものを感じる。
「こ、こんにちは……も、持田、友弘です……」
 よろしくお願いします、と言いかけて、やはり口にはできなかった。死ぬのは恐ろしい。
 少女は少し微笑むだけで何も言わずじっと友弘を見下ろした。友弘は、その目力に耐えきれぬように頭を下げ、黒光りするローファーのつま先に視線を落とす。
「この度は、処刑実習へのご協力、ホントにありがとうございます」浅野聖美は、実習材料の提供者である持田洋子に頭を軽く下げる。「何かご質問などあれば、伺おうと思って参りました」
「どうぞ、お掛けになって」
 洋子は自分の隣に誘った。
「はい、失礼します」
「手紙!」
 洋子に言われて、友弘が手元の手紙を震えが止まらない手で渡した。その様子を見て女性たちはうっすらとした笑みを交わす。
「中止のリミットは……今日の十五時ね」
 洋子が壁の時計を見上げると、聖美も一瞥し、「ええ、あと一時間です。私にこの場で言っていただくか、そこに書いてある携帯番号にご連絡いただければ」と、いちおう説明するのが義務であるふうに言った。
「大丈夫。今のところ、そのつもりはないので」
 洋子はきっぱりと言い、もう一度手紙を確認する。
「よ、洋子様……」
 掠れる声ですがろうとする友弘を無視し、妻は元夫の手をはねのけるようにしてブーツの脚を組み直す。
「あ、あと、これはお願いなんですが……」聖美が一瞬、友弘を見下ろした。「処刑前にできれば不用僕をボクシング部のサンドバッグ実習にも使用させていただけないでしょうか」
「……ええ、かまいません……女の子に殺される前に、女の子に叩きのめしてもらうといいわ。それにふさわしいことをやったんですものね、あなたは」
 洋子は厳しい眼差しを友弘にやった。
「ありがとうございます……彼は一体何を? 差し支えなければ」
 そう尋ねる聖美に応えて、洋子は元夫に自らの口で説明するよう命じた。

「なるほど……分かりました。処刑隊のメンバーにも伝えておきます」聖美は友弘の説明を聞いて頷き、洋子の方を向く。「他に、ご質問などは?」
「特に」
 もう気持ちは固まったというように、洋子は頷いた。
「であれば、最後になりますが……処刑の直前に、不用僕には命乞いの機会が一度だけ与えられます」
「どういった?」
 洋子が、言葉を失った友弘の代わりに尋ねる。
「一年生から三年生の女子で構成される処刑隊は、私を含めて五人で、実習時に長靴ちょうかを履きますが、それを一人当たりだいたい五分間ずつ舌で舐めながら……」
「助命を乞うのね」
「ええ」
「その結果、隊長の判断、つまり私ですが、助命に値すると判断した場合は、助命確認の連絡を所有女性、持田様の携帯電話にお入れしますので、助命もしくは処刑の最終判断をお願いします」
「ずいぶん、回りくどいことをするのね」
「ええ、処罰の一環としてですが」
「電話に出なかったときは?」
「不通の場合は、無条件で処刑となります。電話連絡は一度だけです」
「なるほど……命乞いで助かる場合もあるの?」
「私たちでいうと、助命の判断が、半々くらいです。助命の場合は、それから電話連絡で、所有女性に最終判断を委ねますが、これも半々かそれ以下です」
「じゃあ、トータルで八割くらいが処刑?」
「そんなところだと思います」
「だってさ、どうする、お前」
 洋子が黒革ブーツの甲で、友弘の頬をピタピタと打った。
「はうううっ……ど、どうか……お許しくださいませ……」
 友弘の声は震えている。
 いきなり処刑されると言われ、手紙を見せられ、担当者として女子高生がやってきて、現実のようで現実でないのではという思いが、友弘の脳裏で渦巻いている。
「ちょっと、やってみな。命乞い。せっかくだから、見てもらいましょうか。若くてチャーミングな隊長さんに」
「あ、あああ……はい……」
 友弘は、女子高生が見ている前で、妻の土足を舐めることなど、もちろん抵抗があったが、命が助かる確率が少しでもあがるのであれば、そんなことにかまっている場合ではない。
 おずおずと舌を伸ばして、尖ったつま先の裏側をペロリと舐める。確認を取るように妻を見上げ、女子高生の方にも控えめに視線を送る。
「ふっ……」
 聖美は小首をかしげ、思わず鼻で嗤った。
「どう?」
 洋子が尋ねると、聖美は「いや……ちょっと……こんなの、命乞いでもなんでもないですよ」
 憮然として言い放った。
 友弘は、それで我に返ったようになり、焦ってペロペロと舌を使い始めた。妻のブーツの靴底を丹念に舐め上げていく。
「ふふっ、そうそう、その調子で必死にやんないと」
 新鮮な感覚の虐待を面白がる洋子……早くも汗を額から流して必死に命令に従う友弘……女子高生の聖美は、女性上位時代の典型的な夫婦を、冷静に観察している。
「どうかしら?」
 洋子があらためて尋ねた。
「実際、その場にならないと……」聖美は軽くため息をつき、感情のない眼差しを足元の男に与えながら言った。「実弾入りの機関銃を持った女の子たちの足元に跪いてみないと……こんな程度じゃすまないって、そのときにならないと、わかんないかもですね……やっぱり……」

第一章 女性教師のバター犬

☆ 一

―――五年前、二XX一年九月。
 若草女子高等学校に教諭として務めていた友弘は当時、未婚であり、旧姓の細野を名乗っていた。
 放課後、細野友弘は、担当教科である地理の実力テストの採点をしているところだった。
「細野さん、ちょっと」
 肩を叩かれ振り返ると、学年主任の江上則子が立っていた。
「あ、ああ……」
 コツコツと鳴らすパンプスのあとを、友弘は緊張気味に着いていく。
 階段を上がることが分かって、友弘は愕然とする。職員室の上階にあるのは、生徒指導室ならぬ、教員指導室であった。
 紺色のスーツにはち切れんばかりのグラマラスな身を包み、くびれの利いた蜂腰を左右に揺らしながら、階段を上る三十三歳の女性教諭。その後ろ姿は官能的であり、挑発的でもあった。
 教員指導室は上位の教諭が、部下や後輩の教諭を指導する部屋である。絶対女性上位の現世にあっては、女性教諭が男性教諭を叱咤する空間となっている。
 壁際のソファに腰掛けた江上則子が、「そこ、正座して」と自分の足元を指さす。「え……」と一瞬驚いた友弘だが、これまでにない則子の迫力に、大きく唾を飲み込んで、スリッパを脇に脱ぎ、命令通り跪いた。
「ねえ、あなたちょっと勘違いしてない?」
「あ、うん、え……といいますと……」
 もともと、江上則子は友弘の大学の後輩で二つ年下であったが、一浪で入学した友弘がさらに一年留年したため、卒業時には同学年となり、同期として揃って同じ女子高の教諭になったのである。ギリギリの単位で卒業した友弘とは対照的に、彼女は首席卒業のエリートだった。
 女性上位政策が打ち出されてからは、女性の出世がめざましく、則子も半年前に、ついに念願の学年主任に抜擢された。平教員の友弘に、はっきりと職位の差を付けた格好である。
「その、うん、てのだよ。やめな」
 則子は目つきをなおさら鋭くして言う。
「あ、は、はい……」
「いつまでも同期の気分でいられると、こっちも凄くやりにくいから」
「わ、分かった……いや、いえ、分かりました……」
 今日はこれを言うと決めてきたのだろう、江上則子の表情に強い覚悟が見て取れた。それにしてもさすがは元ミスキャンパスである。切れ長の双眸、高い鼻筋、ストレートの黒髪に包まれた美貌は、三十三歳のいま、衰えるどころか、さらに洗練を増している。運動神経も抜群で、大学ではボクシング部に所属しており、プロテストの誘いが頻繁にくるほどの実力の持ち主だった。この女子高でもボクシング部の顧問をしている。
 隣の部屋から、女性教師が男子教師を恫喝する声が聞こえる。続いて平手打ちの音……。友弘の脳裏にはその部屋の様子がありありと浮かぶ。もはや、この学校では日常的な光景になりつつある。女性から男性への暴力は、家庭内であろうが、企業、学校であろうが、敷地内であれば、主たる女性の裁量でいかようにもできる。そのように法律で定められている。女性校長が許可通達を出しているこの学校でももちろん、問題ない。
―――まったく、とんでもない世の中になったものだ……
「ねえ、アタシが大学の後輩だからって、ひょっとして、手を挙げないって思ってる?」
「あ、あああ……」
 隣部屋の剣幕を聞きながら、則子の気持ちが昂ぶっていく。
「けじめ付けようよ、そろそろ」
 そう言いながら、則子が紺色スーツのポケットから、革手袋を取り出した。
「ああああ……江上、さん……」
「江上さん? で、いいの?」
 則子は左手に装着した革手袋の裾を引っ張りながら、グーパーを繰り返し、指先をなじませている。
「え、江上、先生……」
「大学の先輩を殴っちゃいけないなんて、変な前例を作りたくないからさ、アタシも」
「せ、先生、僕に悪いところがあったのであれば、改めますので、ど、どうか暴力は……」
「暴力? 人聞きの悪いこと言わないでよ。女性から男性への鉄拳指導は、法の下に保障されてるんだから。うちの学校では特に推奨されてるし、新しい職員手帳にも書いてあるよね。知らないとは言わせないよ」
「は、はい……」
 則子の両手におどろおどろしい黒革が完全に装着されたのを見て、友弘はもはや覚悟せざるを得なかった。
「それじゃ、打てないでしょ。膝立ちしな」
 則子の革手が伸びてきて、友弘のネクタイをつかみ、さらに自分の方へ引き寄せる。
「くふううううっ……」
「なんて声出してんの、情けない……歯、くいしばんなよ」
「くうっ……」
 友弘は、殴るなら早く終わらせて欲しいと思いながら、奥歯を喰い締める。
「目は開けてな」
 女性にしてはドスの利きすぎた低い声を出す。目を開けると、黒髪の美貌が冷笑を浮かべている。友弘は美しく強い目力に耐えきれず、思わず首を少し右に向けてしまう。
「目ぇそらすんじゃないよっ」
 ネクタイがさらに引きつけられる。
「くううううっ……」
「アタシの目をみな」
 額から脂汗をタラタラと流しながら、視線を則子の双眸に戻す。則子の右腕がさっと上がったかと思うと、頬に強い衝撃を受ける。
「はぐうううっ……」
 想像していたより遙かに強烈な打撃で、脳震とうを起こしたようになる。
「おらああっ……」
 続いて手の甲で返すようにして、反対の頬にもう一撃が放たれる。
「ぐわううううっ……」
 さらにもう一発、かしぐ頬をカウンターぎみに打たれ、友弘は体ごと床になぎ倒された。
「ぎゃはうううっ……」
 口の中が血の味で満たされていく。殴られることは覚悟したが、このように手加減なしだとは想像していなかった。体がガタガタと震える。
「いつまでも寝てんじゃないわよっ」
 パンプスのヒールが友弘の腰を踏みつける。気づけば、則子は立ち上がり、革手袋の手を両腰に当て、鋭い視線で見下ろしている。
「す、すみませんっ……」
 友弘は頭をクラクラさせながら、正座の姿勢に戻り、広めに脚を広げて立つ女性上司の足元に視線を落とす。
「すみません? 何に対してすみませんなの、ねえ」
 パンプスのヒールが太股に刺さる。
「はがうううっ……」
 友弘は何を言えばいいのかとっさには思いつかなかった。
「聞かれてるでしょう、ねえ」
 則子はパンプスを左右にツイストさせ、ヒールをさらにねじ込んでいく。
「ぐわああああっ……」
 慈悲を乞い願おうと顔を上げるが、視線の先の美女は冷笑を浮かべるばかりで、容赦の気配などかけらも見当たらない。友弘は元後輩でいまでは恐ろしい上司になってしまった彼女に対して、何を言うべきか必死になって言葉を探す。
「私が、お、愚かでした……上司である江上先生に対して、うっかりタメ口を使うなどしてしまった自分を深く反省しています……こ、今後は、そのようなことが一切ないよう努めます……」
「アタシには、今後、最上級の敬語を使うこと。いい?」
 則子は興奮の吐息で肩を上下させている。
「……は、はい……」
「他の先生が見てる前でもだよ」
「……わ、分かりました……」
「生徒の前でもね」則子の顔に嗜虐的な笑みが浮かぶ。「女の子たちが見ている前でも、私に恭しく仕える態度でいなさい」
「あああ……」
「返事はあっ」
 革の手が拳になって、友弘の頭を殴りつける。
「うがあっ、はいいいっ……しょ、承知いたしましたあっ……」
「アタシが見逃してきたのをいいことに、さんざん調子に乗ってくれたよね」
 則子は女性特有の執拗さで、すでに完全に彼女の足元にひれ伏している男をさらに責め立てる。
「ほ、本当にすみませんでした……」
 友弘はどうにかして、解放してもらえないかと涙声を出す。
「ふん、それがあなたの謝罪?」
「あ、ああああ……も、申し訳ありません……」
 友弘はさらに頭を下げて、声を震わせる。
「床に頭をこすりつけてさ」腿を踏んでいた則子の脚がサッと上がり、今度は後頭部にのしかかる。「申し訳ございませんでしたって、言うのが本来の謝罪の仕方じゃないの? ねえ」
 アドレナリンが全開になった則子の勢いはもはや止まらない。
 友弘の額が冷たく硬い床に当たって、ゴンと音を立てる。
「うぎゃぐわあああっ……ひいいいっ……も、申し訳ございませんでした……江上先生……」
「それくらいさ、アタシに頭踏まれる前に自分からやってよ。馬鹿なのか? お前」
「い、いえ……は、はい……」
「馬鹿だよな、お前は。そうでしょ?」
「…………」
 頭を踏みつけられたまま、酷い言葉を浴びせられ、もはや男としてのプライドが崩壊寸前であった。
「ビンタから、もう一回やり直そうか?」
 天から注ぐような美しく冷たい声に我に返り、友弘は江上則子の恐ろしさを肝に刻み込む。
「お、仰るとおり、私が馬鹿でした……」
「でした? お前、やっぱり分かってないじゃない」
 則子は踏んだ頭を転がすようにして、そのまま友弘の頬を、横顔を床にさらに強く踏み込む。
「ゆがあああっ……ば、馬鹿です……いまも、そうです……」
「だから?」
「こ、この馬鹿を、どうか、心ゆくまで、ご指導くださいませ……え、江上則子様……」
 顔を踏まれた脚がようやく退かされ、友弘は生きた心地を取り戻す。

☆ 二

―――約一ヶ月後、十月某日。
 この日も、友弘は江上則子に指導室へ呼び出され、職務態度についてこっぴどく罵られ、平手打ちの体罰指導を受けていた。
「すっかりしょげかえっちゃって、可愛いわね」
 二つ年下の女性にそのように言われ、友弘は複雑な思いである。しかし、今や反抗的な態度はもちろん、彼女に対して、どのような意見も申し立ても許されないのだと理解し始めていた。
「せっかくだから、続きの指導をやろうか。それが希望なんでしょ?」
「え……あああ……」
 またもや暴力かと、友弘は気を滅入らせる。
「心配しないで。一日に何度も殴りはしないわよ。こっちだって痛いんだから」
 そう言いながら革手袋を外したので、友弘は少し安心する。さっきから続いていた隣の部屋のヒステリックな剣幕もいつの間にか収まったようだった。
 則子が立ち上がって、部屋のドアの内鍵を閉め、戻りしなスーツの上着を脱いで、テーブル椅子の背に掛けた。
「さあ、おいで」
 友弘の背中を叩いて、壁際のソファに腰掛ける。
 恐る恐る隣に座った友弘の体がグッと抱き寄せられる。
「あああ……え、江上先生……」
 友弘は、想像を遙かに超えた則子の力の強さに驚き、身をすくめる。則子の左腕に肩を抱かれ、淡い色のマニキュアが光る右手で、器用にネクタイが緩められ、シャツのボタンが上から外されていく。
「こ、困ります……本当に……」
 友弘は眉毛を八の字にして、まさしく困惑の表情を作り、則子に懇願の視線を送った。同じ大学とはいえ、学年学部が違うので学生時代はほぼ面識がなかったが、ミスキャンパスの優勝者として有名であった彼女のことはよく知っていた。しかし、その頃抱いていた清廉なイメージからは想像もできない暴力に続く、セクハラであった。
「ふっ」
 年下の美人上司は、友弘の困惑を鼻で嗤うようにして、かまわず彼のシャツの中に指を滑らせ、アンダーシャツの上から指の腹で乳首を弄り始める。
「はあぅ……」
 友弘は思わず、甲高い声を挙げてしまって恥ずかしく思う。
「ほら」則子が笑みを浮かべる。「体は正直じゃない。感じてるんでしょ。乳首、しこってきてるし」
 甘いコロンの香りを漂わせながら、友弘の左乳首をつまんで弄り回す。
「はぅあぁ……江上、先生……」
「そろそろ、下の名前で呼んでもらおうかなあ、アタシも」
 男性教師が女性教師を下の名前で呼んだのであれば、それは忠誠を誓っている証拠であった。
「あ、ああああ……先生……」
「ねえ、また殴られたいの……」
 則子は下着の中に手を滑らせ、友弘の乳首を直につまむ。
「はん、はぅあぁっ……の、則子、先生……」
「アタシのことはこれから、ずっとそう呼びなさい」
「……は、い……」
 女性上司の命令は絶対だ。他の女性教師や女生徒の前でも、則子先生と呼ばねばならなくなったことが確定し、友弘に諦めのような気持ちが訪れた。
「コチコチに勃ってきてるじゃない、乳首」
「はぅあああ……せ、先生、の、則子先生……もう……」
「敏感なんだね、ふふっ、その顔、クラスの子たちに見せてあげたいね」
「あぅはぁあ……の、則子先生、それは……そんなのだけは……」
 受け持ちの女生徒の前で弄ばれる自分を想像して、顔が熱くなる。
「こっちの方はどうなってるのかしら」
 則子の手がスルスルと下へ降り、ズボンのファスナーを開けて、ブリーフの上から、局部をまさぐり始める。
「うううっ……」
「ほら、大きくしちゃって。やっぱり触られて悦んでるんじゃない。正直だね、体は」
 則子の手が興奮で膨らんだ友弘の竿をグッと握り、上下にさするように刺激する。
「はううっ……ふあああっ……も、もう……やめて……ください……」
 付き合ってもいない女性にこのようなことをされるのは、たまらないと思った。
「やめないわよ。やめる理由もないしね」
 女性から男性へのパワハラ、セクハラは、指導の範囲であるならば法律的にも許容されている。
「やめてなんて言えるのは、アタシに忠誠が足りない証拠だよ。この可愛いお口で忠誠をしっかり誓ってもらおうかしら」
「はううっ」
 友弘の口を則子の唇が塞ぎ、唾液が送り込まれる。大きな肉厚の舌が、友弘の口腔の中で猛威を振るう。淫欲の衝動にだけ基づいた愛のないディープキスに蹂躙され、友弘の体から力が抜けていく。
「さあ、声を出して、アタシに忠誠を誓いなさい」
 則子の右手がブリーフの中に侵入し、友弘のペニスを直に握り直す。
「あはむぅっ……の、則子先生……ち、誓います……」
「何をっ」
 握った指にいっそうの力が込められ上下に強く擦られる。
「うくああわあっ……ちゅ、忠誠を誓います……の、則子先生に、ずっと従います、着いていきます……」
「今までみたいに、おざなりな態度は一切許さないからね、いいわね」
 則子の親指の腹が亀頭を押しつぶすように刺激する。
「は、はい……しょ、承知しました、くうううう……」
「何? これは?」
 ズボンから上げた右手の指に、先走りの液がヌラついている。
「あ、あああ……すみません……」
 友弘は、恥ずかしげに目を伏せる。
「生意気にガマン汁なんて出してんじゃないわよ」
 則子が先走り液の付いた指を友弘の口を無理矢理こじ開けるようにして突っ込む。
「はうぅ……」
「自分が出したものは、ちゃんと自分で処分してもらわないとねぇ。きれいに舐めな」
 友弘は、口の中に突っ込まれた則子の指を仕方なしに舌で触る。かすかに甘酸っぱい味がしたが、自身のものだと思うとさほど嫌な気持ちにはならなかった。
「ほら、フェラみたいに、やってみな」
 則子が自身の指を男根に見立てて、友弘の口に抜き差しする。
「はふううっ……はむぅ……」
 友弘は、責められる側の、受け身側の快感が少しだけなんとなく分かる気がした。そういう気分になると自分の方から、ちゅぱちゅぱと音を立てて、則子の指を舐めしゃぶり始めた。
「そうそう、もっとヤらしく、やってみせて」
 則子は手のひらを広げて、親指の先が、友弘の喉奥につかんばかりに押し込み、左右にグリグリと押し回した。
「はむうううっ、くむっ、くわはあっ……」
 友弘の吐きそうに苦しむ顔をしばし愉快そうに眺めたあと、則子はようやく指を出してやる。
「あーあ、私の指、ベトベトにしてくれちゃったね」
 則子は友弘のシャツの裾で、よだれだらけの指を拭く。
「す、すみません……」
「さてと……アタシに忠誠を誓うって言ったよね」
「……は、はい……」
 友弘は生唾を飲み込んで頷く。
 則子は年上の男部下を抱いていた左腕を抜くと、「じゃあ、さっそく態度で示してもらおうかしら」と強い口調で言い、友弘の前髪を鷲づかみにして、乱暴にソファから引きずり下ろした。
「あぐああああっ……の、則子先生……」
 もうそろそろ、解放してください……そんな目をして、友弘は則子を見上げる。
「何、その顔は。同情でも買いたい?」
 則子はそう言って、髪をつかんだ手を前後に揺さぶる。
「くわううっわっ……」
「だいぶ寂しくなってきたんじゃない? 貴重な髪の毛でしょ。いいの? ふふっ」
 則子は、薄くなってきた友弘の後頭部を覗き込むようにして言う。
「ぅううう……」
 友弘は密かなコンプレックスをあからさまに嘲笑われて、これまでのどの仕打ちよりも、辱めを受けた気持ちになった。
「の、則子先生の、仰るとおりに、し、従います……どうぞ、ご、ご命令くださいませ……」
「だよね……忠誠を誓うってそういうことでしょ」
 則子は立ち上がって、タイトスカートを下ろし脱ぐと、友弘に渡した。
「あ……」
「これから、度々、やってもらうことだからね、訓練だよ」
 友弘は、則子の命令に従い、スカートを軽く畳んで、ソファの空いたところに置いた。
「Sit !」
 則子が、英語教師らしい、ネイティブに近い発音で叫ぶ。
「……」
「何、ボーッとしてんのっ」則子のビンタが炸裂する。「そう言われたらさ、アタシの足元に正座だろっ」
 まるで犬みたいだ、と思いながらも友弘は渋々従う。
「もっと、すばやくっ……少し調教が必要だね……」
 そう言いながら、則子はにやりと笑った。
「Garter !」
 戸惑う友弘に、則子は、「一度だけしか、言わないよ」と鷹揚な態度で言い、ガーターベルトの外し方を教えた。
 ガーターベルトが外れると、則子は黒いショーツを脱いで、それを友弘の後方に放り投げた。
 唖然とする友弘に、「ほらあっ」と声を荒げ、平手打ちを食らわせる。
「くわううっ……」
「ご主人様のショーツを取ってこないかっ。忠実な犬だろ、お前はアタシの」

 

S女小説 荒ぶる女神たち「不用僕の運命」

Kindle小説サンプル

S女小説 逆DV相談室「鬼妻に怯える気弱夫」

S女小説 逆DV相談室「鬼妻に怯える気弱夫」を電子書籍として出版しました。

内容紹介

妻に暴力を振るわれた男がDV相談室へ赴くもさらなる不幸に見舞われる物語。

会社をリストラされて主夫となった小池朋也はキャリアウーマンの年下妻に頭が上がらず、日々彼女からの暴力に悩まされていた。ある日、些細なことがきっかけで、妻が逆上し朋也は前歯を折るほどの激しい暴力を受ける。治療を受けた女性歯科医にDV相談室の存在を聞かされ、さっそく連絡をし赴いてみると、男性専門の担当者として彼の相談を受けたのは、岩橋加世子というサディスティックな性向を持つ女性であった。

第一章 厳し過ぎる妻に虐げられて

第二章 女性担当者の屈辱的な指導

第三章 職場で美女の巨根に貫かれ

第四章 女性たちの肉便器に堕ちる

本文サンプル

第一章 厳し過ぎる妻に虐げられて

☆ 一

「どうしちゃったの、その歯」
 職業紹介所の女性担当者は、唇が腫れ上がり二本の前歯を失った私を見てかなり驚いた様子でした。
「ええ、お恥ずかしい話、妻に激怒されまして……」
「そっか……まあ、これだけ仕事が決まらないなら、さすがに奥様もストレスでしょうけど」
 スーツを着た三十代半ばの女性はいつもの淡々とした口調に戻ります。
「年も年ですし……」
 私は新しい仕事を見つけるには年を取り過ぎてしまった自分を嘆きため息をつきます。
「それは言い訳だよ、小池さん」
 年下女性は、平然と私をたしなめました。
「す、すみません……」
「とにかく、その歯をまず治さないと。面接にも行けないよ、それじゃ」
「は、はい……」
「今日はもう止めましょうか」
「あああ、はい、すみません……」
「あんまり無駄なことさせないでくれる? 他にも面倒見なきゃいけない人いっぱいいるんだから」
 女性は私の後ろの方へ視線をやって言いました。振り返ると、いかにも風体の上がらない男たちがうつむき、順番を待っています。彼らをタメ口で、ときに厳しい口調で次々とさばいていくのは、一回りも二回りも年下の女性たちでした。
「申し訳ありません、出直してきます……」

 翌日、私は自宅近くの歯科医院へ行きました。
「どうされました?」
 受付の歯科衛生士が尋ねます。まだ学校を出たばかりであろう、ショートヘアがよく似合う若くて美しい女性です。
「前歯が抜けちゃいまして」
 私は実際に歯がない口でそう言います。
「あ、はい……」女性は私の口元を確かめるように見て、「あらあ」と一瞬同情の顔を見せましたが、すぐに淡々とした態度に戻り、「保険証をお願いします」と事務的に言いました。「お呼びしますので、腰掛けてお待ちください」

 半時間ほど待って、診察室に呼ばれました。
「あらあら、どうしました?」
 女性の歯科医院長は、目を見開いて言います。目鼻立ちのくっきりした、いかにも知的な美女でした。歳は三十代半ばほどでしょうか。
「ええ、ちょっと……」
 女医の美しさに見とれると同時にあらためて歯のない恥ずかしさが湧き上がってきました。
「とりあえず、仮の歯を入れておきましょうね」
 女医は、若い歯科衛生士に指示を出して歯形を取り、他の患者も並行して診ながら、一時間ほどで処置をすませてくれました。他の人たちは簡単な治療だったようで、診察室には私だけとなりました。
「どうしました? ホントに。唇もめくれちゃってるし」
 あらためて尋ねる女性歯科医に、私は甘えたいような気持ちになり、妻から暴力を受けたことを正直に話してみることにしました。

「……そう……家庭にはそれぞれ事情があるのかもしれないけど……一度、相談に行ってみたら?」
「ど、どこに行ったらいいのでしょうか?」
「DV相談室ってのがあるから。女性から男性へってのも最近は多いって聞くわ……ねえ」
「ええ、らしいですね。テレビでもやってましたよ」
 さきほど受付をしていた女性歯科衛生士が応えるのを聞いて、私は初めて彼女もその場にいることを知り、羞恥で顔が熱くなるのを覚えました。

 私は自宅に戻るとさっそくパソコンでDV相談室について調べ、その部署を擁するNPO法人らしき女性センターへ電話を入れてみました。電話に出たのは若い女性の声でした。
「はい、相談室です。どうされました?」
「あの……」
「男性の方?」
「あ、はい……つ、妻に暴力を振るわれていまして……」
「少々お待ちくださいね、専用の担当に代わります」
 私はてっきり男性の悩みには男性の相談員が対応してくれるものと思いきや、代わって出てきたのは、やや落ち着いた声の女性でした。
「奥さんから暴力を?」
「はい……」
「それは大変ね。いつくらいから?」
 私はこれまでの経緯をざっと担当の女性に話しました。
「なるほど……よかったら、一度こちらへおいでませんか。詳しい話を伺いながらじっくり解決を探っていった方がよさそうなので」
 私は相談員とはいえ、見ず知らずの女性に直接会ってこのような相談をすることに一瞬抵抗を感じましたが、《解決》という言葉に引かれ、担当女性の提案に従うことにしました。

☆ 二

「小池と申しますが……」
 私は声を震わせながら受付の窓越しに若い女性に言いました。怪訝そうな顔をされたので、マスクを外します。彼女は腫れた唇を見て、同情の顔を見せます。
「えっと、小池さん、あ……ああ、はい、伺っています」彼女は手元のノートを見て言いました。「面談のお約束ですね」
 電話を取って内線を掛けている様子です。
「副所長、小池さんが見えてますけど……はい、ではいまからお通しします」
 受付嬢は、近くのドアから出てきて、「じゃあ、いきましょうか」と私を廊下を二度曲がった奥の個室へ案内しました。
「その部屋に担当者がいますので」
 そう言って、受付嬢は元の持ち場に戻ろうとしましたが、私に臆病を感じ取ったのか、ノックをして返事があってから少しドアを開けると、「山本です。小池さんがお見えです」
 少々苛ついた様子で足早に立ち去る受付嬢の背中に頭を下げ、もう逃げられないと、覚悟を決めて部屋へ入りました。

「し、失礼します……」
「いらっしゃい、小池さん。お待ちしてました」
 女性は奥の執務机を立ち上がると、中央の応接ソファに私を座らせ、自分も向かいに腰掛けました。
「はじめまして、岩橋です」
 もらった名刺には女性センターの副所長とDV男性相談部の部長を兼任する肩書きで、《岩橋加世子》と書かれていました。年齢は三十代後半くらいでしょうか。このような組織のナンバーツーにしてはかなり若いと思いました。きりりとした美人で、明るい色のスーツをきっちりと着こなしています。電話で話したイメージどおりの女性だと思いました。
「こ、小池と申します。どうぞよろしくお願いいたします」
「ここは、どなたかのご紹介?」
「あ、いえ、自分でパソコンで調べて……あ、でも、その前にかかりつけの歯科の先生にDV相談室のことを教えていただいて。それまでは、こんなところがあることも知りませんでした」
「だいたい男の人ってそんな感じですね。知ってても、相談することに抵抗があるようで、なかなかここまでたどり着けないみたい」
「はい、そう思います……私も、その……先生に電話でお誘いいただけたから参りましたが……」
 いくらアドバイスを受ける身だからといって、年下の女性に、先生は言い過ぎかとも思いましたが、目の前の女性副所長は、その呼ばれ方をすんなりと受け入れたふうに頷きました。
「そうなんですよ。お宅みたいなケース、いわゆる逆DVが増えていることは分かってるんだけど、被虐者が男性の場合、なかなか相談にこられないから……小池さんみたいな方は貴重な存在なの。事例としてストックしたいから、できるだけ具体的な話を聞いていきたいんだけどいいかしら?」
「あ、はい……もちろん。私などのでよろしければ……」
 私はあまり深く考えることなく答えました。
「録音とっていい?」
 すでにコンパクトなデジタル式のレコーダーがガラステーブルの上に置かれています。
「あ……」
「もちろん、秘密は厳守よ。私とあなただけの話だから安心して」
 美人担当者にそのように言われてじっと目を見つめられ、私には「はい」としか返答できませんでした。
「じゃあ、始めますね」
 レコーダーのスイッチが入れられました。
「電話で伺ったことと重複するかもしれないけれど、もう一度聞きます。奥さんからの暴力。歯が折れたのは顔を殴られたから?」
「あ、はい……」
「平手? それともグー?」
「……ひ、平手です」
「平手? で、歯が折れるの? ホントに?」
「……あ、いえ……」
「ちょっと」
 岩橋副所長は真顔になっていったんレコーダーを止めました。私は緊張で身を固くします。
「正直に話してくださいね。なに聞いても驚かないから。事実と違うこと話されるとこちらとしても協力できないし、なんにも解決しないよ」
 少々強い口調で言われます。
「す、すみません……」
「ちょっと待って」
 岩橋副所長は、話を続けようとする私を制してレコーダーを再スタートしました。
「最初からいこうか。玄関先で靴磨きさせられてたんでしょ。で?」
 私は突如厳しさを露わにした女性を前に、すべてを正直に話すことにしました。
「はい……彼女が働いてますので、朝、出かけるときに」
「うん、働いてもらってるんだよね」
「あ、はい、で、もちろん、昼間のうちに、靴磨きはやってるのですが、朝、実際に彼女が履いてみて、艶が悪かったり、仕上がりが気に入らないときは、その……玄関先に呼ばれて、磨き直すよう言われるんです」
 私は恥ずかしさに耐えながら、告白しました。
「ごめんなさい、もう少し大きな声で話してもらえるかな?」
 岩橋副所長は、レコーダーを私の方に押し出しました。
「あ、はい……すみません……」
「彼女が履いたままの靴を、磨いてるの? それは彼女の要望?」
 気のせいか、女性副所長は少し私を小馬鹿にしたような表情を見せました。
「は、はい……以前はいったん脱いでくれていたのですが、いつの間にか……そういうことに……」
「それは、不慣れな家事のミスが続いたり、あなたの仕事がなかなか決まらないことと関係してるのかしら」
「それは……まあ、あると思います……」
 私はなんだか責められているような気分になりました。
「それで? 歯を折られた日は?」
「はい、すみません……突然寒くなった日で、妻が膝丈の革ブーツを履いていくと言い出したんです」
 詳細を口にすることでその日の情景がありありと頭に再現されていきます。
「うん」
「まず、それをすぐ履ける状態にしておかなかったことを叱られまして……」
「殴られたの?」
「はい……平手打ちを……ここに……」
 私はそう言って頬に指を当てます。
「だけど、それくらいじゃ歯は折れないでしょう」
「……はい……」
「続けて。細かくね。状況を」
「……先生が仰られたとおり、それまでいろいろ失敗も続いていて、私の仕事も一向に決まる気配がなかったので、妻の苛立ちはかなりのようでした。私にブーツを履かせるよう言ったのです」
「うん、履かせたの?」
 少しは同情を買えるかと思った私は、女性のあっさりした物言いに戸惑いました。
「はい……情けなくてなりませんでした……」
「それはそうだろうけど。とりあえず事実をありのまま聞かせて」
 岩橋副所長が淡々とした口調で言ったので、私はつい心情を吐露してしまったことを恥ずかしく思い、顔を熱くしました。
「艶がまったく出ていないと、厳しく叱られまして……その場で磨くよう言われました」
「ブーツは磨いてなかったの?」
「私としてはシーズンオフに手入れしてしまったつもりだったんですが……」
「でも彼女から見て、仕事が甘い……できてないと判断されたわけね」
「は、い……」
「それで?」
 女性はうつむいた私の頭を起こすように強い声を出し、切れ長の美しい目から強い視線を送ってきます。私たちの夫婦関係に俄然興味が増した様子でした。
「ブーツは面積が広いので時間が掛かりまして……彼女から、煙草を持ってくるよう言われました……だけど、さすがに私としても夫としてのプライドがありますから、すぐには言うことを聞けませんでした」
「彼女が自分で取ってきたの?」
「いえ……じっと睨まれ、その前に平手打ちもされてましたので……」
「結局あなたが取ってきたわけね」
 女性副所長は鼻で笑うようにして言いました。
「はい……それが、すぐに言うことを聞かなかったことが、さらに彼女をイライラさせてしまったようで……」
「まあ、それはね……で?」
「私に靴磨きをさせながら煙草を吸い始めて……それで……わざとなのかわかりませんが、煙が私の方にふわーっと吐きかけられたようになって。私は実は煙草の煙が苦手でして……少しぜんそくの気があるものですから……咳き込んでしまったんです……」
「うん……」
「それが彼女の目にはどうも大げさでわざとらしく映ったらしく……」
「殴られたの?」
「はい……いえ……」
「正直に言って」
「…………け、蹴られました……」
「顔を蹴られたのね。ブーツを履いた脚で。前歯が折れるくらい強く」
「は、い……」
 私はそのときの状況をはっきりと思い起こすと、あまりの惨めさに感極まり、涙があふれ出てきて、女性担当者が見ている前で、嗚咽を漏らしました。

☆ 三

「いつまでも泣いてたって、解決しないよ。どうすればいいか考えましょう。まずあなたがどうしたいかだよ。一番簡単なのは、暴力を告発して、彼女とさよならする……」
 艶っぽいルージュの唇がきっぱりと言います。
「え!」
 予想外の言葉に私は顔を上げ涙にかすんだ目で、女性副所長を見つめました。
「それだけ酷い目にあってるんだから、しょうがないでしょう」
「そ、それは……」
「嫌? どうして?」
「彼女を愛していますし、彼女がいなければ生きていかれません」
 どちらも本心でした。
「別れたくはないのね。わかりました。彼女なしで生きていけないってのは、経済的な依存が高いということ?」
「は、はい……仰るとおりです」
「その辺、もう少し詳しく聞かせてもらえる?」
 女性副所長の目の前で思いっきり泣いてふっきれたのか、もはやなんでも話す気になっていました。
「家計はすべて妻が自分で管理しています。私の自由になるお金はほとんどありません」
「あなたの貯金は? 一年前までは働いてたんでしょ」
「そ、それが……ありません。お恥ずかしい話ですが、給料も低くて、私の分はすべて生活費の一部に充てられていましたので……」
「今は?」
「食費や生活費のためのクレジットカードを預かってますが、自分のためには一切使えません」
「お小遣いとかは?」
「毎日、千円札か五百円玉を一枚、彼女の気分でどちらかを……たいていは朝、出かけるときにもらっています……ただ、靴磨きの出来が悪かったり、彼女の機嫌の悪いときは、それも最近ではもらえないことがあります……」

「だいたい分かったわ」
 岩橋副所長は私の話をひととおり聞くとレコーダーを止めました。
「私はこれからどうすれば……」
 話すばかりで、一向に解決策をもらえない私は少し焦りました。
「まず、あなたの話を聞いて私が感じたことを言いますね」
 女性はすこぶる落ち着いた態度でじっと私を見つめます。まるで高いところから見下ろされているように錯覚しました。
「はい……」
「ひとことで言うと、あなたリスペクトが足りないわ。奥さんに対して」
「り、リスペクト……」
「尊敬しないと。もっと、女性を。食べさせてもらっているのなら、なおさら。それが足りないから、そういうことになるのよ」
「そ、そんな……」
 まさか自分に非があると思っていなかった私はうろたえました。
「もちろん、暴力はいいことじゃないよ。だけど、奥さんにしてみれば、そうでもしないと、あなたがきちんとできないから、家事も仕事も……じゃないの?」
「……は、はい……そ、それは確かに……」
 自信たっぷりの強い口調で言われると、岩橋副所長の言葉が正論のように聞こえてきました。
「それに、あなたは奥さんとの結婚生活をこれからも続けたいんでしょう?」
「それは、もちろん、そうです……」
「だったら、なおさらでしょ。靴磨きにしても、煙草取ってくるにしても、言われてやるんじゃなくて。むしろ、あなたの方から率先してやるようにすれば?」
「た、確かに、妻にもそのように言われます」
「そりゃそうでしょう!」岩橋副所長はことさら声を大にして言いました。「あなた養ってもらってるんだからさ。それなりのことやってあげないと」
「わ、分かりました。そのように気をつけてみます……」
 私はタジタジになり、半ば逃げるようにして、相談室を出ました。去り際に、自宅と携帯の電話番号を聞かれ、一瞬躊躇しましたが、今後助けてもらわねばならないこともあると思い、正直に伝えました。

☆ 四

―――二週間後。
「い、いってらっしゃいませ……」
 鼻の穴から滴る血を啜って私は、玄関から出て行く妻の後ろ姿に正座の姿勢で頭を下げます。
 家の電話が鳴りました。
「はい、小池でございます……」
 先週、電話を取る際に、うっかり、小池です、と言ってしまって、妻に思いっきり蹴られたすねがまだ痛みます。

S女小説 逆DV相談室「鬼妻に怯える気弱夫」

Kindle小説サンプル

小説 「男虐連鎖」Sに目覚める女たち

小説 「男虐連鎖」Sに目覚める女たちを電子書籍として出版しました。

内容紹介

バーガーショップでバイトする中年男が、女性店長や女性スタッフたちに虐待・陵辱され続ける物語

ハンバーガーショップでアルバイトをしている植草康夫(40)は、バイトの後輩、女子高生の七瀬彩香(17)にセクハラ・パワハラまがいの指導をつい行ってしまう。事実は店長の伊沢瑶子(32)に発覚し、クビを宣告されるも、どんな命令にも従うという条件でなんとか雇用をつないでもらう。しかし、それが地獄のはじまりだった。瑶子店長による虐待・陵辱は、康夫の直属の上司、桜田由美の前でも繰り広げられ、普段は清楚な印象の由美の奥底に眠っていた嗜虐性に火を着けた。そして、その火は次から次へと、康夫の周囲の若く美しい女性たちに伝播していくのであった。

第一章 瑶子店長の厳しい叱咤と殴打

第二章 由美マネージャーへの土下座

第三章 バイト女子高生・彩香の踏み

第四章 バイト女子高生・理恵の陵辱

本文サンプル

プロローグ

「ごめんなさい……」
 七瀬彩香が焦がしてしまったハンバーグを前に声を絞り出す。
「だから、いつも時間を気にしてっていってるでしょ」
 植草康夫は彩香の度重なる失敗にため息をついた。
「はい……すみません……」
「それ捨てて、もう一度、最初っから……あんまり材料無駄にしないでよ。店長に怒られるのは私なんだからね」
「はい、わかりました……」
 四十歳の植草康夫も、十七歳の七瀬彩香も、ともにハンバーガーショップのバイト店員である。印刷会社をリストラされた康夫がこの店に雇われたのが一年前。女子高生の彩香がバイトとして入ってきたのが、三ヶ月前である。
 今日は店長の指示で、康夫は朝早くから店に出てきて、彩香にハンバーガーの作り方を指導しているのであった。
 康夫は椅子に座って彩香の仕事ぶりを観察する。店長やマネージャーがいるときは、こんな横着はできないが、いま彩香と二人きりの店内で、まるで自分が店主であるかのように康夫は振る舞う。
 彩香はやや茶色がかったショートボブヘアで、紺色のバイザーを被っている。赤いシャツにチェック柄の短いタイを結び、黒のスカートを履いている。調理をするときは、その上からやはり黒のショートエプロンを巻いている。膝下は紺のハイソックス。靴は学校でも履いている黒のローファーだ。
 美形で長身、笑顔も愛らしい彼女はすでに店の看板娘になりつつあった。

「今度はどうでしょう、植草さん」
 待ちくたびれた康夫がホールの客席に腰掛け雑誌を読んでいるところへ、彩香がハンバーガーを載せたトレーを運んでくる。
「どれどれ」
 康夫はトップのバンズを外して中を確認する。上から香草、トマト、チーズ、ハンバーグ、タマネギ、レタスの順にきちんと整えられている。かなめのハンバーグを特に念入りに観察するともとの形に戻して一口ぱくついた。
 彩香は不安げに康夫の顔色をうかがう。
「どうでしょうか……」
「うーん、肉はまだ焼きすぎだけどなんとか許容範囲だ。具材のバランスもまあいいかな……ただし……」康夫はショートボブに包まれた小顔を見上げて言う。「仕上げるのに時間が掛かりすぎだな。こんな冷えたハンバーガー、お客さんに出せないよ」
 康夫はかつて、年下の女性店長に言われた屈辱の台詞をそのまま彩香に返す。
「あああ……」
「ザンネンっ」康夫は嗜虐的な笑みを浮かべる。「さあ、じゃあこれも罰だね。食べて」
「植草さん、私、もう、そんなに食べられません……」
 二回分の失敗作をすでに食べさせられている彩香は、困惑する。
「何言ってるんだよ、七瀬君。じゃあ、この冷え切ってちっとも美味しくないハンバーガーは、どうするんだい? 自分の失敗は自分で責任取らないと。さあ、そこに座って。食べるんだ……」
「は、い……」
 彩香は仕方なく、康夫の向かいに着席する。
「早く」
 康夫に急き立てられ、観念した表情をして両手でハンバーガーをつかむ彩香。
「ちょっと待った」
 康夫はすばやくキッチンに戻って、さきほどの焦げたハンバーグと余りの野菜を皿に取ってくる。
「こいつも挟まないとね」
「そんな……植草さん……」
「当然です。具材を余らして怒られるのは私なんだから、さっきも言ったでしょ」
 康夫は嫌らしい笑みを浮かべながらトップのバンズを外し、具材を追加する。
「特製のダブルバーガーだ。失敗作だけどね。さあ、大口を開けて一気にいって」
「…………」
 彩香は白く長い指でハンバーガーをつかむと大きな口を開け、整った歯列で、上下のバンズを一気に噛んだ。
「そう、一気に、そのままいっちゃえ。飲み込むんだよ」
 康夫は、彩香が口の端から肉汁を垂らしながら苦しそうにハンバーガーを頬張る姿に、官能の色を感じ、思わず立ち上がる。
「ほら、どんどん、噛んで。持っててあげるから」
 彩香の方へ移動し、左手で後頭部を支え、右手で具材がはみ出そうなハンバーガーを押してやる。
「あふ、はふう、はむううう……」
 彩香が目を白黒させたので、いったんハンバーガーを外してやる。
「なにか……飲み物を……ください……」
 潤んだ目でそう訴えかけられると、さらに意地悪をしたくなってくる。
「ふん、駄目だよ。そんな甘えた声を出したって。これは失敗をした罰なんだから。朝飯と勘違いしてるんじゃないだろうな。ちゃんと完食したら、飲ませてあげるよ」
「そんな……」
 しかし、康夫が頑として譲りそうにないことを悟ると諦めて大きな口を開けた。
「そう、素直にならなくっちゃ」
 康夫は彩香の唾液でぐっしょり濡れたハンバーガーを再び彼女の口に押し込む。
「うぐううむうう……」
「あはは、そう、そう、よく噛んで、食べて、食べて……」

「あらあら、ポロポロこぼしちゃって、ったく行儀のなってないお嬢さんだね。お里が知れちゃうよ」
 たっぷりの肉と野菜を挟んだハンバーガーをなんとか完食した彩香をさらに追い込むように言う。
「きれいに食べなきゃ。落ちた野菜、もったいないでしょ……拾って食べて」
 テーブルに直に落ちた具材を顎で指して言う。
「……はい……」
 素直に手でつまんで口へ持って行こうとする彩香を見てなぜか性的な高ぶりを覚える。
「手なんて、使うんじゃねえよ……」
「え?」
 驚いて見上げた彩香を脅すように、「口で直接食べろって!」店内に響き渡る大声を出す。
「あ……え……」
「言ってるだろ。罰だって。言われたとおりにやれ。じゃないと、もう教えないぞっ」
 康夫は気分が高ぶるままに、怒鳴り散らす。
 少しの沈黙のあと、彩香がテーブルに顔を着け、落ちた野菜を口で拾い食べ始めた。背中がかすかに震えている。
 彩香がテーブルに顔を伏せている間に、康夫はトレーに残った野菜をつかんで床にそっと落とす。
「おい、テーブルの上だけじゃないぞ」
 彩香の襟首をつかんで引き上げる。
「いやん……」
「見て見ろ、床をっ。ポロポロこぼして。出鱈目だな、キミはっ。それも拾って食べろ」
「あああ……そんな……」
 康夫は指導者の威厳を示すように腕を組み、再びホールに響き渡る大声で「やれっ、いますぐにっ」と言い放った。
「あんまり、聞き分けがないようだったら、それも口でやらすぞ」
 テーブルの下に潜って、野菜を拾い、躊躇しつつも口に入れる彩香を見ながら康夫はほくそ笑む。そして、先ほど彩香に入れさせた飲みかけのホットコーヒーを口いっぱいに含むと、再びカップに吐き戻した。
「ようし、ようやく完食したな」
 床掃除を終え、再び椅子に座った彩香の肩に手を掛ける。
「約束通り、飲ませてあげるよ、ドリンクを」
 自分の飲みかけのコーヒーカップをバイト女子高生の前に差し出す。
「でも、これは……」
「飲み物だったら何でもいいんだろ? そう言ったじゃないか」
「これは……いいです……あとでお水飲みますから……」
「駄目だ。ここまでがあなたの義務だよ。それともなにかい、僕の飲みかけは嫌だって言うの? 大丈夫だよ、そっち側は口着けてないからさ」
「でも……」
「早くしないと、時間なくなっちゃうよ」
 彩香は意を決したようにかすかに頷くと両手でカップを取り、冷めたコーヒーに口を付ける。
「全部飲み干せよ。飲みたいって言ったのは、彩香ちゃんなんだから」
 下の名前をなれなれしく呼ばれ、不快な視線を康夫に投げながらも、彩香は一気にコーヒーを飲み干した。
「ふふっ、飲んじゃった……」
 康夫は鼻で嗤って、従順な女子高生を見下ろす。
「な、なんですか……飲めっていうから……」
 含みのある康夫の笑みに、彩香は怪訝な表情を見せる。
「いや、いいよ。わかった。罰は終わりだ。じゃあ、もう一度キッチンに戻って、ハンバーガーを作ろう。今度はどこがよくないのかそばでじっくり見ててあげるから」

 一緒にキッチンに戻り、彩香がバンズと具材を準備している間に、オーブンの温度を元の設定に戻しておく。
―――こんなに高くしておいたら、そりゃよっぽど注意しないと焦げちゃうよ……ふふふ……

「はい、ハンバーグ焼けたよっ」
 康夫のかけ声を合図に、彩香がオーブンから取り出し、準備していたバンズと野菜の上にセットする。
「そうそう、良い感じだね」
 康夫は彩香の後ろにピタリと体を寄せる。小男の康夫は少し背伸びして、彩香のうなじに息を吹きかける。
「やっ、植草さん……」
「ほら、野菜はもっと均一に広げないと……」
 彩香の腕をつかみ、つま先立ちしながら股間を尻の間にこすりつける。
「ちょっと、もう止めてください……ホントに……」
 そのとき、表のドアが開く音が聞こえた。植草はさっと体を外して、ホールに飛び出し、気をつけの姿勢を取ると、入ってきた麗人に大きな声で挨拶する。
「店長、おはようございますっ」

第一章 瑶子店長の厳しい叱咤と殴打

☆ 一

数日後―――十月二十九日

「じゃあ、お先、失礼します」
 キッチンやホールの片付けと反省ミーティングを終えて、マネージャーの桜田由美とバイト女子高生の七瀬彩香が店を出て行く。壁の時計は二十二時に近づこうとしている。残ったのは、店長の伊沢瑶子とバイト中年、植草康夫の二人だけだ。客席ホールの一角、四人掛けのソファテーブルに向かい合って座っている。
 ナイトクラブのママでもある瑶子はゼブラ柄のぴったりとしたワンピースに黒いジャケットを羽織り、黒いピンヒールを履いている。彼女の出勤は夕方からで、店の切り盛りはほぼマネージャーの桜田由美に任せている。
「植草さん、あなた、明日から来なくていいよ」
 三十二歳の美人店長は康夫の目をしっかりと見据えて言った。
「えっ、ど、どういうことでしょうか……」
「彩香ちゃんにセクハラやってるよね。アタシらが見てないところで」
「あ、いえ……」
 幾ばくかのお金を貸していることや彩香の性格からいって、密告される確率は低いと思っていたのだが、甘かったようだ。
―――ちょっと、やり過ぎてしまったか……
 彩香が嫌がる顔をすればするほど、興奮してつい度を超してしまったことを後悔する。
「そういう人間はうちには要らないから」
「す、すみません……店長。もう二度としませんので……どうか、今回は、お見逃しいただけないでしょうか……」
 そう言いながらも康夫としては、店長を含めて四人―――店長はほぼ直接の業務にはかかわらないので実質は三人しかいないうちの一人が抜けて、果たして店が回っていくのだろうかとどこか余裕めいた気持ちもあった。それが顔に出ていたのだろう。瑶子がすかさず口を開いた。
「アンタがいなくなってもさ、妹がすぐに来てくれるからね。まったく問題ないよ。またいつでも復帰したいって言ってたし。専業主婦で暇なんだから」
 そうだった。康夫がくる前までは、瑶子の妹がキッチンの多くを切り盛りしていたのだ。彼女が復活するのであれば、戦力としては康夫以上だ。
「ほ、本当に、すみませんでした……どうか、店長様、ご容赦ください……」
 康夫はテーブルに頭を着けて、愚行を詫びた。
「いいじゃない。ここ辞めて、好きにセクハラさせてくれるようなお店に行けば」
 康夫の焦燥ぶりを見て瑶子の胸に悪戯心が湧いてくる。
「そんな……」
 肉体労働も頭脳労働もさして得意でない康夫にとって、このハンバーガーショップはようやく手に入れた職場だった。この店にたどり着くまで何度面接に足を運んだことだろう。送った履歴書は数え切れない。そもそも面接までたどり着けないのだ。なにをやっても長続きせず、大した職歴のない四十男に世間の風は冷たかった。
「っていうか、反省してる? ホントに。ぜんぜん、そんなふうに見えないんですけど」
「店長様……」
 康夫はソファタイプの椅子から立ち上がる。フロアに出て、瑶子の足元に向けて跪く。
「も、申し訳ありませんでした……本当に、反省しています……この通りです」
 人生で初めてする土下座が、年下の女性相手だとはよもや思いも寄らなかった。無言の反応に康夫は頭を上げる。
「具体的にどういうことやったわけ? 彩香ちゃんに」
「……あ、はあ……」
「じっくり聞こうか。灰皿持ってきて」

「なるほどね……」
 瑶子は煙を大きく吐きながら康夫を見下ろす。中年バイトは、固い床の上の正座で痺れきり、感覚がなくなってきている脚をこっそり動かしてさする。
「すみません……」
 早く解放して欲しい一心ですべてを正直に話した康夫は、縋るような視線を送る。
「やっぱり、クビでしょう。それは、普通……」
「そこをどうか……心を入れ替えて働きますので……皆さんにお仕えする気持ちで……」
「皆さんって?」
「店長様はもちろん、マネージャーや彩香さんにも……」
「当然だよね」
「あ、はいっ……」雇いなおしてもらえる希望が見えて、康夫は嬉々とした表情を見せる。「あ、ありがとうございます……」
「早いよ、それは。とりあえず試用期間からやり直しだね。無期限で」
「え……あ……はい……」
「嫌? なら、いますぐ出てっていいよ」
「い、いえ……すみません……ありがとうございます……」
「時給も最低賃金に戻すからね、さっそく明日から」
「あ、はい……」
 高校生の彩香よりも下の待遇になるのかと思うとやりきれなかったが、この職場でいままで通り働かせてもらえるならば、それでもありがたい。
「それと、アンタがさっき自分で言ったことだけど、アタシらに仕える気持ちで働くんだよね?」
「は、い……」
「覚悟してね。植草……アンタ」
「…………」
 名前を呼び捨てされたことにショックを隠せない。
「もう、さんちゃんも着ける気にならないよ。アンタには。悪いけど…………嫌?」
「い、いえ……別に嫌ではありません……」
 康夫は無理矢理笑顔をつくり、特に気にしないそぶりを見せる。
「そう言う立場でやり直したいって言ったのそっちでしょ。違ったの?」
「は、はいっ、そうです。すみません……ぜんぜん、呼び捨てていただいてかまいません……」
 再び、紅い唇から「クビ」という言葉が出ないよう必死に願う。
「いつまでも、勘違いしてんじゃないわよ、ねえ、植草……」
 しかし、呼び捨てられるたびに心に穿たれた穴が深さを増していくようだった。
「…………」
「返事はっ!」
 うなだれる康夫に瑶子は容赦のない叱咤を浴びせる。
「は、はいっ」
 康夫は驚き、声を裏返らせる。
「大体さあ、その歳で雇ってもらってるって自覚がないんじゃないの? 普通だったら使わないからアンタみたいなの」
「すみません……」
「謝るばっかじゃなくてさ、そっちからなんかしようって気にはならないの? アンタ、アタシに仕えるっていま言ったじゃない」
 形の良い耳を飾るスネークのピアスが照明の反射に躍る。
「は、はい……な、なんでもおっしゃってください……従いますから……」
 康夫はともかくも硬い床の正座から解放されたい一心でそう言った。
「なに、その投げやりな感じ……」瑶子は、軽く舌打ちして波打ったライトブラウンの髪に手をやり、さらに視線を鋭くする。「じゃあさ、靴磨いて」
 瑶子はくびれの利いた腰をソファ席の端まで移動させ、左脚のパンプスを康夫の膝につかんばかりに差し出した。
「あ、いえ、それは……」
 まさかの瑶子の命令に驚き、冗談であることを確かめるために顔を見上げる。彼女が少しでも笑みを見せればそれに乗じて、笑い声を上げようと思った康夫だったが、そんな素振りはかけらも見られず、「なんでもやるんでしょ。やってよ、磨いて」
「ほ、本当にですか……」
「真面目に言ってんのよ、これからクラブに出るんだから、身だしなみきちんとするの当然でしょ」
「あ、はい……」
 そう言われれば、従わざるをえない気分になってくる。
「で、でも道具が……」
「ハンカチくらい持ってるでしょ。クリームは塗ってあるから、から拭きするだけでも艶は出るわ」
「……は、い……」
 康夫はポケットを探り、ハンカチを取り出す。いったん広げて、裏返しにたたみ直し、まったく使用していない面を使うことを女性店長に示した。
「ようし、じゃあ、あっち行こ。じっくりやってもらうわ」
 瑶子は店の入り口近くにある横長ソファに移動した。主にテイクアウト客が使う、前にテーブルのないスペースだ。先に出た二人がシャッターを下ろしてくれているので外からの目は心配なかった。

「あ、あの……店長、様……よろしくお願いします……」
 康夫はやけにヒールが高くつま先が鋭利に尖った瑶子のパンプスを磨きながら言う。
「ふっ、なにが?」
 瑶子は鼻で嗤い、手にしたスマートフォン越しにこちらを見下ろす。
 康夫としては、ここまでのことをやらされたからには、店にずっとおいてもらえる保障がもらいたかった。それほどの酷い仕打ちだと思った。
「あの、これまで通り、ここで働かせてもらえれば……いただければと……」
「だから、それはアンタ次第だって、ウ・エ・ク・サ」

☆ 二

一週間後―――十一月五日

「じゃあ、お先、失礼しまーす」
 いつものように二十二時近くにミーティングが終わり、今日はバイト女子高生の七瀬彩香だけが店を出る。
「うん、お疲れ。明日もよろしくね」
「お疲れさまっ」
 伊沢瑶子店長が労いの声を掛け、マネージャーの桜田由美も手を振って見送る。由美は店長お気に入りの右腕で、年齢は二十八歳。清楚な印象の和風美人だ。
「お疲れでした……」
 バイト中年の植草康夫も合わせるように声を掛けるが、その声は細く、なにかに怯えているように聞こえた。
「さてと……もう少し話そうか」
 瑶子店長が康夫の向かいのソファに戻り、由美も隣に座る。
「何度も言うけどさ、穴が空いたレタスをお客に出すなんて致命的だからね」
 瑶子が繰り返す。今日もクラブへの出勤前でワインレッドのワンピースに身を包んでいる。

 

小説 「男虐連鎖」Sに目覚める女たち

Kindle小説サンプル

S女小説 アマゾネスウェーブ3「女軍支配の奴隷艦」

S女小説 アマゾネスウェーブ3「女軍支配の奴隷艦」を電子書籍として出版しました。

内容紹介

海自練習艦《ひめぎく》内外で、女性自衛官による指導という名の暴力に怯え震え続ける男子隊員たち

アマゾネスウェーブ2「矯正指導を厳となせ」続編(最終編)

女性海上自衛官=ウェーブが支配する練習艦《ひめぎく》。日が経つほどに、彼女たちの男曹士に対する指導は厳しくなっていくばかりだった。特に自分たちよりも明らかに能力の低い中年曹に対する扱いは酷く、糟屋肇やその仲間は、肉体的にも精神的にも壊れる寸前まで追い込まれていく。男たちは部下というよりももはや女性隊員たちの奴隷としてひたすら奉仕、忍従する日々を強いられた。そんな地獄のような《ひめぎく》の中にあって、肇らにとって、唯一の頼れる女性上司、癒やし的存在が二十四歳の美人分隊士、二階堂留美三尉だったのであるが……。

第九章 便器を舐めろと命じられ

第十章 格闘訓練という名の虐待

第十一章 血に飢えた女上官たち

第十二章 極東の港に口開く地獄

本文サンプル

第九章 便器を舐めろと命じられ

☆ 四十一

「死にたくなったら……」先任伍長の杉浦香織が、足元で彼女のブーツのつま先を舐めている本木に言う。「いつでもアタシのところに来なよ。ひと思いにやったげるから」
 本木は返事をする代わりに、ペチャペチャと舌音をいっそう強く立てる。
「そう、死に物狂いでやんな」ハスキーな香織の声が艦のエンジン音に交じって船艙の狭い機械室倉庫に響く。「死ぬ気でやればなんだってできるでしょ」
「は、はいっ、伍長殿……」
 肇も本木に負けじと、香織の左足ブーツのつま先から側面に唾液をまぶしていく。

 香織からの無線電話で、分隊長の井村文乃一尉とその補佐役である二階堂留美分隊士が上甲板から船艙に降りてきた。直前に、靴舐めを解放された肇と本木が固い倉庫の床に正座したまま首をうなだれている。
「あれで……」香織が天井の管から垂れ下がっているロープを指して言う。「首を括ろうとしたようです」
 二人がどのような反応を示すのか知りたくて肇は少し顔を上げ、上目遣いに伺う。二階堂留美は驚きの表情を見せたが、井村文乃分隊長は、一瞬目を見開いただけで、続きの説明を待つように長い睫の瞳を香織に向けた。二人とも言葉がない。
「指導がよほど堪えたのかもしれませんが……ただ……」
「ただ?」
 文乃一尉がそこでようやく声を発する。
「本当に死ぬ気はなかったようです……」香織が苦々しそうに本木を見下ろす。「どうも、はったりのようで……こういうのが一番たちが悪い」
「そうなのね……」
 井村文乃一尉はつぶやくように言うと、反論は許さぬと言った視線を本木に送る。
「念のために医官に相談しては……」
 二階堂留美がたまりかねたように口を開く。
「私としては……」香織は文乃と留美を交互に見る。「むしろ、今回の彼の行為は、艦の《特別指導体制》への妨害、もっといえば侮辱として受け止めているのですが」
「そ、そんなことは……」
 本木が焦って、女性たちを見上げ首を振る。助けを求めるように肇にも視線を寄こす。
「は、い……そ、そういうことは、ないと……思いますが……」
 肇は恐る恐る本木を擁護する。一歩間違えると自分に火の粉がかかる状況に声が震える。
「確かに……」井村文乃が言う。「杉浦伍長のおっしゃることはよく分かります」
「分隊長……」
 留美が、男たちのうろたえる様を見て、文乃に声を掛ける。
「二階堂さん」文乃が留美をたしなめる。「ここは大切なところだよ。ここで甘い顔見せると、艦長たちが今まで苦労してやられてきたことが台無しになるかもしれないわ」
「ええ」香織がすかさず同調する。「甘やかせば、いくらでもつけあがりますから、彼らは」
 上司や先輩格の二人にそこまで言い込められると、留美としてももはや言葉がなかった。
「それで……」香織が言う。「本木はしばらくまた私のところで、預からせてもらえませんか」
「分かりました。お願いします」二十九歳の分隊長が、三十八歳の先任伍長を頼もしそうな目で見る。「上には私の方からいいように説明しておきます」
「助かります」
 香織は文乃一尉に礼を述べると、肇にロープや一斗缶を片付けるよう命じ、本木を連れて倉庫を出て行った。

「糟屋」
「は、はい……」
 井村文乃一尉に呼ばれ、肇はすぐに気をつけの姿勢を取る。もはやこの艦の女性に糟屋三曹などと職位込みで呼ばれることはなくなった。
「今回の本木のことは他言しないように」
「は、い……承知いたしました……」
「真似する馬鹿が出てこないとも限らないからね」
「はいっ……」
 肇は紺色の制服に身を包んだ麗人に忠誠を誓うように敬礼する。

 艦内放送により、本木を捜索していた二十三班の男子隊員は全員、午前中の持ち場に向かうよう指示を受ける。今日も厳しい課業がさっそく開始されるのだ。
 船艙よりひとつ上の甲板にあるトレーニングルームに向かう途中で、肇は寺井とすれ違う。
「よう、結局、どこにいたんだよ、本木は」と寺井が声を掛けてくる。
「あ、ああ……それが、どうも、杉浦伍長に直接指導受けて、船艙の談話室を掃除していたみたいで……」
 肇は女性上官たちに指示を受けた通りの説明をする。
「なんだよ……じゃあ、お嬢さんの勘違いじゃねえかまた……」
 寺井は二階堂留美三尉のことを懲りずにそのように言った。
「やめといた方がいいって、寺井さん、本当にそういう言い方は……」
 いつになく真剣な肇の口ぶりに一段と頭が薄くなった中年曹の笑みが陰る。
「どうした……しっかしよ、本木を探し回ったおかげで朝飯抜きだよ……」
「しょうがないですね……急がなくちゃ、もう……」
「ああ、だな」
 それぞれ陰鬱な気分で持ち場に向かう。

☆ 四十二

 正式には保養室と呼ばれるトレーニングルームは、十畳ほどの広さがあり、ベンチプレスやトレッドミル、懸垂棒、サンドバッグなど、筋肉を増強する設備が所狭しと並べられ、奥の方には、柔軟体操のできるマットレスも二枚敷かれていた。ここの掃除が肇の担当である。
 奥で女性がベンチプレスを挙げている。それが天海渚艦長であることに気づき、肇は焦る。
「あ、し、失礼いたしましたっ……」
 毎日、筋トレを欠かさないというのは本当のようだった。
「これから清掃を命じられているのですが、いかがいたしましょうか……」
 肇は長袖Tシャツと短パン姿で汗を流す渚艦長に恐る恐る伺いを立てる。ラフな装いの中にあっても格調や威厳という彼女の魅力が損なわれることは一切なかった。
「もうすぐ終わるから、始めてていいわよ」
 肇には到底挙げられそうにないような重さのバーベルを上げながら渚が言う。額からは玉の汗がこぼれている。
「は、はい……すみません、じゃあ、向こうの方からやらせていただきますので……」
 用具ロッカーからモップを出し、床を磨き始める。
 ほどなくして扉が開き、数人の女性たちが入室してくる。
「あ、お疲れさまですっ」
 モップを片手に敬礼をする肇の視線の先には、岩村亜美二曹がいる。班員の女性海士三名も一緒だ。
 四人の曹士は肇を無視して、奥でベンチプレスに励む艦長へ挨拶に行く。
「天海艦長、相変わらず凄いですね」亜美が感心して言う。「何キロを挙げているのですか」
「七十よ」
 渚艦長は挙げたバーベルをホルダーに戻すと上半身を抜いて、ベンチに腰掛けた。
「わたくしは六十までですね」
 亜美がそう言うと、伊丹冴子士長も「私もです」、川村仁美二士も「私も六十ですね」
「毎日続ければもっといけるわよ、あなたたち若いんだから……竹内一士だったっけ? あなたは相当いくでしょう」
「そ、そうですね……八十くらいまでなら」
 艦長に直接話しかけられ、やや緊張気味に応える。日本人男性の平均値が、四十五から五十キロだから、彼女たちの筋力レベルがいかに凄まじいかがわかる。
「凄いね、やって見せて」
 渚艦長がベンチを立ち上がり、竹内玲奈に譲る。
「糟屋っ」と岩村亜美二曹が肇を呼びつける。
「ウェイト、十キロ足して。できるよね?」
「は、はい……」
「計算できるのか?」
「あ、はいっ……」
 馬鹿にしきった口調の亜美に愛想笑いを送ると棚から五キロのウェイトを取ってバーベルの片側に装着する。
「一つずつとってくるんだ」
 仁美があきれたように言うと、冴子も、「それくらい、まとめて持って来いよ。どんだけ非力なの?」
「す、すみません……」
 八十キロに増量されたバーベルを玲奈が持ち上げる。Tシャツの袖から白い筋肉が盛り上がっているのがわかる。
 女性たちから歓声が上がり、渚艦長も「さすがだね」と笑い、首にかけたタオルで汗を拭うと、「じゃあ、頑張って」と言い残して出口へ向かった。
「お疲れさまでしたっ」
 艦長の背中に女性隊員たちが次々に挨拶を送る。肇もそれに交じって、頭を下げながら声を出す。
「お、お疲れさまでございました……」
 七十キロに落としたバーベルに岩村亜美二曹が挑戦し、「くううっ」と声を挙げながら何とかクリアした。
「班長、さすがですね」
 感嘆の声を挙げた伊丹冴子、川村仁美の二人は、六十キロにトライし、揃ってクリアした。
「ところでカス、お前は何キロ上がるの?」
 腕組みをした岩村亜美二曹が、モップ掛けに戻った肇を見据えて言う。
「いえ、そんな……私は、ぜんぜんです……」
「ぜんぜんってどのくらいだよ」
「あ、あまりやったことないので……」
 《ひめぎく》に載せられるような中年曹が自分からトレーニングルームに向かうようなことはまずなかった。
「ようし、じゃあ、測定だ」
「で、でも、わたくしは掃除が……」
「ここを監督してるアタシがやれっていってんだよ。いいからやれよ、命令だ」
 岩村亜美二曹が声を荒げる。
「は、はい……」
 川村仁美にモップを取り上げられ、六十キロのバーベルの下に潜るよう命じられる。
「こ、こんなのとても……」
「男でしょ。しかもいちおうは自衛隊所属の」八十キロを挙げた竹内玲奈一士が呆れたように言う。「六十くらいあげようよ」
「ほら握って」
「は、はい……」
 鉄棒を握って力を込めるも、これを彼女たちがやるように腕を伸ばしきって持ち上げることなど無理だ。しかし命令ならばとりあえずやるしかない。渾身の力を込める。
「ふくううううっ……」
 バーベルがわずかに上がったが、すぐ力尽きて元に戻す。
「なんだよ、それえ」
「ふざけてんの? お前」
 女子たちが騒ぐ。
「す、すみません……」
 ウェイトが五十キロに落とされる。
「さすがにこれなら挙がるでしょ」
「は、はい……」
 しかし胸の上に腕を伸ばしきって静止させるには至らない。
「も、もう駄目です……」
 肇はこれほどの動作で乳酸を出しきってしまう自分の筋力を情けなく思う。
「嘘でしょ」
「ちょっとお、引いちゃうレベルだね……」
「マジ、キモい」
「どんだけ非力なんだよ」
「よ、四十キロなら、たぶん大丈夫だと思います……」
「当たり前だろ」
「そんなの部活やってる女子中学生でも挙げちゃうよ」
 あまりの腑抜けぶりに白けムードが漂う。
「ちょっと待って。カス、お前、四十キロいけるって言ってるけどさ、本当だろうね」
 亜美が仁美に指示して、バーベルのウェイトを四十キロに落とした。
「挙げてみろ」
「は、はい……」
 バーを握ってゆっくりと挙げていくも、続けざまのリフティングで力が入らない。
「え、マジですか?」
「腕、もうガタガタ震えてるし」
 渾身の力を込めて、腕を伸ばしきったつもりだが、すぐに力尽きて、バーベルを戻す。
「なんだよそれ、最低三秒は止めなきゃ。はい、もう一回」
―――あああああ……
「絶望的な顔すんじゃないよ、これくらいで。何やってんの、お前」
「やれよ、早くっ」
 岩村亜美が短パンから伸びた長い脚を上げて、肇の腹を靴で踏み込む。
「あぐううっ……は、はいっ……や、やりますぅっ」
 渾身の力を込めるもバーベルが二度と上がることはなかった。
「糟屋、お前、そんな非力で、いざいくさとなったらどうすんの?」亜美がため息混じりに言う。「ウチらの背中に隠れて、そうやって泣くのか?」
「目に涙一杯貯めちゃって」
「同情引こうっていう気がヤらしいわ」
「班長、気合い入れ直してあげましょうよ」
 女性海士たちが、岩村亜美班長をけしかける。
「ようし、立て、お前」
 ベンチプレスを降り、恐る恐る立った肇の首に亜美が腕を回して、ヘッドロックで固め、マットレスの方へ連れていく。
「うくあああああっ……許して、ください……」
 豊満な乳が顔を覆い、母のような柔らかさや暖かさを感じる一方で、力強い腕が容赦なくグイグイと首を締め付ける。
―――はあうううう……
 Tシャツに短パン姿の亜美は壁を背にして尻を床に着け、大きく広げた股の間に肇を仰向けに寝かせて、あらためて首を締め上げる。
「あうう……は、班長、殿……ど、どうか……」
 プロレスファンの竹内玲奈一士が寄ってきて、チョークスリーパーの形を亜美に教える。首の下にL字に通した右腕の手首を縦に曲げた左腕で固定し、力を加える。
「締め落としちゃおうか」
―――くふううううっ……
「班長、こういうのもありますよ」玲奈がそう言って肇の両脚をとると4の字に交差させて短パン姿の長い脚を絡める。「4の字固めだあっ」
―――うむおおおおおっ……
 すねが折れんばかりの痛みに肇はのたうち回ろうとするも、首を亜美にしっかり固定されており、悲鳴を上げることもままならない。
「竹内一士、脚へし折っちゃっても平気だよ。こんなやつ、使い物にならないんだから」
 亜美はそう言って、少しだけ首を緩めてやる。
「そうですか……」
 玲奈が笑いながら脚に力を入れる。
―――ぎゃああああああっ……
「うるさいよ、お前はっ」
 伊丹冴子士長の靴が、肇の腹を踏む。
―――うくうっ……
「ちょっと力入れただけで、痛いんですね。脚4の字って」
 川村仁美二士が感心するように言う。
「やってみる?」
 玲奈がようやく脚を外し、肇はホッとするも、すぐにスレンダーな仁美の脚が絡みついてくる。
「こうやって、そこに脚かけて、つま先をコイツの太股の裏に入れて」
「こうですか……」
―――くうううううっ……
「そう、それで、少し力入れてみて」
―――うがあああああああっ……
「うるさいよ、お前はっ」
 肇の大きな叫びにムカついた亜美が腕に力を込めて締め上げていく。
―――うくうううああうううむうう……
 肇の意識が静かに遠のいていく。

「ほらっ、起きなっ」
 頬の痛みに肇が目を開けると虹のイラストが入ったTシャツを着た川村仁美二士が馬乗りになって往復ビンタを放っている。
「はううっ……ああああ……」
「やっとお目覚め? 大いびきかいちゃって」
「きれいに落ちちゃったね」
 肇は目をぱちくりとさせる。股間が少し湿っているのを覚える。
「あああああ……す、すみません……」
「掃除だろ、お前の仕事は」仁美が立ち上がり、肇の脇腹を軽く蹴る。「早く続けなよ」
「は、はいっ」
 頭をクラクラさせながら立ち上がり、壁に立てかけておいたモップを手に取って、床掃除を再開する。肇が気絶している間に、女性たちは皆、筋トレ器具やサンドバッグなどを使って一汗かいたようで、部屋の匂いが一段と濃くなっている。
「きょ、今日もご指導ありがとうございました……」
 肇は入り口に立ち、部屋から出て行く女性上官たち一人ひとりに頭を下げる。
「竹内一士、プロレス技いろいろ教えて下さいよ」と仁美。
「いいよ、実験台はたくさんいるからね」
「壊れたら上に頼んでまた補充すればいいだけの話だし」
 彼女たちのそんなやりとりを見送りながら、肇は脚の痛みとめまいを同時に覚える。
 

S女小説 アマゾネスウェーブ3「女軍支配の奴隷艦」

Kindle小説サンプル

S女小説 アマゾネスウェーブ2「矯正指導を厳となせ」

S女小説 アマゾネスウェーブ2「矯正指導を厳となせ」を電子書籍として出版しました。

内容紹介

女性が支配する海自艦内で、ますます激しい矯正指導を受ける男子隊員の物語

アマゾネスウェーブ「血潮の女権革命」続編

海上自衛隊の特別練習艦《ひめぎく》に乗艦する糟屋肇三曹は、女性艦長が発した「特別指導体制」の号令の元、女性幹部や下士官から暴力を含んだ徹底指導を受ける。さらには、当初は遠慮がちだった、二十歳前後の女性海士たちも、幹部たちの全面支援により、男子隊員を積極的に指導し始めたのだった。大海に浮かぶ密閉空間の中で、遙か年下の女性上官にひたすら殴られ、蹴られ続ける中年曹……。ただ、女から男への行き過ぎた指導に疑問を持つ、二階堂留美三尉だけが、肇の心の支えであった。

第五章 女性班長様のブーツ磨き

第六章 美人曹士たちの的になる

第七章 犬なら匂いで嗅ぎ分けろ

第八章 生きたいなら服従すべし

本文サンプル

第五章 女性班長様のブーツ磨き

☆ 二十一

「今日は金曜日か……」
 艦内の食堂から漂ってくるカレーの匂いに気づいて糟屋肇はつぶやく。金曜日の昼食にカレーライスが饗されるのは、海軍時代からの伝統だ。曜日の感覚を失わないためらしいが、確かに不規則な当直生活を繰り返していると、体内時計がおかしくなってくる。
 通常ならば、職歴とともに職位も上がり、きつい当直からも放免されるものだが、肇ら《ひめぎく》の男子海曹の場合は違う。就任したての海士、もしくはそれ以下の待遇で、若い女性隊員たちに厳しくこき使われている。
 肇はバケツを片手に管だらけの狭い廊下を歩く。向こうから若い女性が歩いてくる。女性隊員は職位にかかわらず、男子からはすべて上官扱い。それがこの艦のルールだ。
「お疲れさまです」
 肇は壁に背中をピッタリとくっつけて敬礼し、二十代半ばほどの女性海曹に道を譲る。当初は答礼があったのだが、男子には応じなくてもよいという通達が出されてからは、答礼する女性はほとんどいなくなった。ただでさえ忙しく、それぞれにストレスを抱えている艦内だ。少しでも省力したいのが人情だろう。いまの海曹も、チラと肇を見ただけで、早足に過ぎ去っていった。
 続いて、明らかに新任海士と思われる年頃の長身ウェーブ(WAVE:女性海上自衛官の略称)が急ぎ足でやってくる。よく見ると、新しく肇たちの班に加わった三人の女性海士のうちのひとり、竹内玲奈れいな一士だった。他の女性曹士同様、彼女も紺色迷彩の戦闘服に身を包んでいる。
 基本的にこの艦に乗っている女性は身長一六五センチ以上で、肇ら一六〇センチ以下の男子隊員からみれば、全員が長身なのだが、あえて長身というときは、一七〇センチ以上だ。一七五センチオーバーも珍しくなく、一八〇センチを越える女性海士もいる。その竹内玲奈一士も一七五センチの背丈があった。
「お疲れさまです」
 肇は先ほどと同じように、歩みを止めて体を九〇度回転させ、壁に背中をつける。しかし、握ったバケツを引っ込めるのがわずかに遅れて、玲奈一士の脚にうっかり当たってしまう。
―――ガツッ……
「あっ」
「いったあ!」
 玲奈はやや大げさと思えるほどの大声を挙げて、膝をさする。
「す、すみませんっ……」
「なにやってんのよっ」
 玲奈は両手で肇の頭を挟むようにして壁をドンと突き、上から睨みつける。
「も、申し訳ないです……」
「殴っていいって言われてんだからね、岩村班長から」
「あ、いえ……はい……」
「次は、絶対、許さないかんね……」
 急いでいたのか、今回はまだ躊躇があったのか、竹内玲奈一士は、大きな舌打ちをすると去って行った。同班になって何度か、今日のように怒鳴られ脅されはしたが、これまでのところ、まだ彼女には殴られたことがなかった。
 肇は胸をなで下ろす。
―――しかし、次は絶対やられるな。手を挙げてくるに決まってる……ああいう風にして、ここの女たちは少しずつ距離をつめてくるんだ……
 実際に男子中年曹への教育的体罰は、職位にかかわらずすべての女性隊員に対して、上層部より許可というよりもむしろ奨励されていた。出世にも影響するという噂が立ち、多くの若い女性海士たちが、男たちに体罰を与える空気を探り、タイミングを計っているようだった。
 肇は、気短な女性隊員とすれ違わないように祈りながら、カレーの匂いが充満する食堂を抜けて女性下士官専用の科員室へたどり着く。
 部屋をノックすると、出てきた女性海曹に、「失礼します、二十三班員の糟屋です。岩村班長殿に呼ばれて参りました」
「どうぞ」
「はいっ、失礼します」
 中へ入ると、化粧品と煙草の混じったような匂いがする。科員室は基本的に禁煙のはずなので、女性たちの吐息や体から発散される匂いだろう。とにかくこの艦の女性はヘビースモーカーが多い。
 肇はベッドに腰掛けている岩村亜美三曹を見つけると近づいて敬礼する。敬礼しながら当直あけの頭がクラクラとしてくる。本来ならすでにこの時間はベッドで休めるところだが、これから目の前の上官の当番兵として奉仕しなければならないのだ。彼女が部下であった過去がすでに頭から消え去りつつあった。
 岩村亜美もたった今、当直から戻ったばかりのようでまだ上下迷彩の戦闘服を身につけていて、編み上げのブーツも履いたままだった。
「上官殿、お疲れさまでございます」
「うん、脱がせて」と長い脚を床に放り出す。
「あ、はい……」
 部屋に同僚女性が二人ほどいたのが気になったが、動作が遅れると亜美の平手打ちがすかさず飛んでくると思ったので、すぐにしゃがみ込んで正座する。
「ねえ、なにか気づかない?」
 編み上げの紐を緩めようとする肇に大股を開いた亜美が言う。見上げるとほどいた髪が肩に掛かっている。
「……あ、はい……とても、魅力的でお美しく……」
「ふっ……」二十六歳の女性二曹が、白い歯を見せる。「なに寝とぼけたこと言ってんのよ。靴が汚れてるでしょ、見えないの」
 肇は顔を真っ赤にする。後ろから同僚女性たちのクスクス笑いが聞こえる。
「お前に、そんなこと言われても仕方ないんだよ」
 長い腕が伸びてきて胸ぐらをつかみ、強烈なビンタを一発張られる。
「はうううっ……す、すみませんっ……」
「汚れた靴を磨けって言ってんだよ、脱がせる前にさ。当たり前だろ、そんなこと」
 そう言って女班長は、つま先に鉄板の入った編み上げ靴の片脚で肇の太股を踏みつける。
「あううっ……」
 痛みを堪えながら、バケツに放り込んでおいた靴磨き道具の袋を取り出す。持ってきておいてよかった。
「し、失礼します……」
 膝を踏みつけた靴にブラシを掛ける。艦内には泥などないので、さほど汚れているとは思えない。水しぶきの跡とつま先や縁の方に埃がうっすらとある程度だ。しかし、そんな不満をもちろん口にするわけにはいかない。上官が汚れていると言ったら、汚れているのだし、彼女が満足できる仕上がりにならなければ……そう……殴られるだけだ。
「真ん中の方がやりやすい?」
 亜美はそう言うと、今度は股間を踏みつけてきた。彼女の長い脚は、楽々と肇の急所に到達し、つま先にぐっと力を込める。
「はあうううっ……」
「やらしい声だしてないでさ、ちゃんとやってよ」
「じょ、上官殿……」
 刺激と痛みにもだえながらもなんとか布を靴に当てて、汚れを拭き取っていく。
「クリームもしっかり塗って、艶出すんだよ」
 そう言って、今度は踵で肇の肉竿をグリグリと踏み込む。
「ぐわうううああっ……か、かしこまりましたああっ……」
 女性曹二人が肇の顔が見える位置に回り込んできて、同僚が遙か年上の男部下にセクハラをくわえる様子を見て面白がっている。
「お前たちへのセクハラ、パワハラは上から奨励されてんだからね」
 肇に向けた亜美の台詞に、同僚が、「ホント?」と聞く。
「うん、音を上げて自衛官を辞めたくなるくらいやっていいって。だって、こんな使えない奴らを食べさせるなんて、税金の無駄遣いでしかないでしょ」
「確かに……」
 亜美の同僚は二人とも腕を組んで頷いている。

「いかがでございましょうか。上官殿……」
 肇は、亜美が広げているファッション雑誌を裏から見上げて恐る恐る声を掛ける。亜美は雑誌を脇へ置くと、「どれ」と威厳たっぷりの所作でブーツの艶を確かめる。「ようし、靴磨きはなんとかできるようになったようね」
「あ、ありがとうございます……上官殿に鍛えていただいたおかげです……」
「ふっ……」亜美が蔑みの目で見据える。「男としてのプライドもなんにもないんだね、お前は、ホント……ねえ、知ってる?」近くの同僚に声を掛ける。「コイツ昔さ、アタシの上司だったんだよ」
「え、マジ?」
「ホント。佐世保にいた頃……ね」
「それがいまじゃ、亜美の靴磨き?」用事で離れていたもう一人も聞きつけてまた戻ってくる。「なんでもやるんだね。そのうち、下着だって洗ってくれるんじゃない?」
「やだー、最低」と同僚。
 つられて肇も笑ってしまう。そんな馬鹿な話はないという顔を思わずしてみせる。そうだ、元部下だったのだ、彼女は。かつて自分の下に着いていた女の下着を、娘のような年頃の女子の下着を、五十間近の男が洗うなんて、そんなことができるわけがない。無理だ。
「ふーん」
 亜美が嗜虐的な表情で見下ろす。こんな男に自分の下着を洗わせる気などなかったが、それ以上にいまの顔つきが気にくわない。少しでも女を舐めたような態度を見せるのであれば徹底矯正する必要がある。
「そうだね。洗ってもらおうか」
「え、いえ……じょ、上官殿……」
 肇は二十六歳の長身女性を見上げて本意を探る。
「なに? アタシの下着を洗濯しろって言ってんのよ。ブラとショーツ、それと靴下もね……そこの引き出しのビニル袋に入ってるから、持ってって」
 どうやら冗談ではなさそうだった。
「し、しかし……岩村班長殿……バスでは皆の目がありますので……それに、万が一紛失してしまっては……」
 風呂場で女物の下着を洗濯するところを想像してゾッとする。ものがものであるだけに、盗難にあわないとも限らない。
「それは、お前の責任だよ。なくしたりしたら承知しないよ。大問題だかんな」
「この艦内で男が女子の下着盗んだなんてなったら……」
 同僚が意地の悪そうな口調で言う。
「上の会議に掛けられて、一発解雇だよね……」
「そう、懲戒解雇は間違いないだろうね」
 別の同僚の言葉を、あらためて亜美が言い直す。
 懲戒解雇……肇がもっとも忌み嫌う、聞きたくない言葉だ。
「バスじゃなくて、洗濯室で洗えばいいじゃない」
 再び同僚から声が飛ぶ。
「そうだよね、どうしてそうお前は機転が利かないの? 糟屋」
 亜美が磨きたての靴で肇の腕を蹴る。
「あううっ……は、はいっ……すみません……」
「とっとと段取りつけな……分かってると思うけど、洗濯機使うなんて横着すんじゃないよ。手洗いで丁寧にね。アタシの下着は。安物じゃないんだから」
「は、いっ」
「ほらっ、とっとと靴を脱がせて、脚を揉めっ」
「あ……は、はい……」
 編み上げの紐を解いて黒革の靴を脱がせる。固い床の上に、正座の足がしびれてくる。苦痛にゆがむ顔を亜美が意地悪そうな目で見下ろしてくる。
「靴下も脱がせて。それも洗っときなよ、もちろん」
「か、かしこまりました……」
 黒い靴下を脱がせて、香ばしい匂いとともに下着のビニルに入れる。
 揉めと言われてもどこからどう手を着けていいのか迷っていると、「んとにお前は、なんにもできないね……」素足のつま先で額を軽く小突かれる。「土踏まずを親指で押して、それからふくらはぎだよ……糟屋……カス、お前はこれから『カス』でいいね」
 背中で女性二人の笑い声が起こる。
 ファッション雑誌を手にした亜美の脚をひとしきり揉むと彼女は「眠くなってきた」と肇に部屋の掃除を命じ自分は下着だけの姿になってブランケットに潜り込んだ。
 肇も眠い目を擦りながら、なるべく音を立てないように床を掃き、持ってきたバケツに水を汲んで、命令されていた部屋の拭き掃除を一通り済ませた。手抜かりがないか、肇なりに念を入れてチェックすると、科員室に戻って少し仮眠することにした。

☆ 二十二

「糟屋くん、昼だよ」
 寺井に起こされ目を覚ます。時計を見ると一三時五分前だった。カレーの匂い漂う食堂へ向かう。女性曹たちの食事サポートは、別班の男子曹たちが行っていた。
「食事当番なしはありがたいね」
「しかも今日はカレーだし」
 二十三班(岩村班)の男たちは眠い目を擦りながらもカレーライスとサラダの載ったプレートを前に幸せそうな顔をしている。
「いただきます」
 六人がそれぞれに手を合わせて昼食を始める。
「大丈夫かい、ちゃんと噛める?」
 肇は向かいに座った片山を心配そうに見る。眼鏡の片山は誰の目にも明らかなほど顔を腫らせている。彼がこれまで少し顔を腫らせて戻ってくることはあったが、それは艦長に殴られていたからなのだとようやくわかった。
「ええ、なんとか。まだだいぶ痛いですけど……」
「先生には診てもらった?」
「はい……それくらいなら大丈夫と……」
 片山は苦笑いをしながらスプーンを口に運ぶ。
「何が大丈夫だ」隣の寺井が憤る。「気が狂ってるよ、ここの女どもは、まったく……」
「寺井さん……」
 向かいに座る赤ら顔の関島がなだめる。寺井は関島と一緒に、たしか杉浦香織伍長の相手をさせられたはずだ。おそらく寺井は自分と同じような惨め極まりない役割を強制されたのだろうと肇は想像した。
 取り繕っていたような幸せが次第にしぼんでいき、いつも以上にどんよりとした空気が男たちを包んでいった。

「なにやってんの」
 洗濯室の洗い場で水を流し下着を洗おうとした肇を、見回りに立ち寄った第三分隊の若い女性海士長が咎める。
「あ、すみません……班長の命令で下着を洗濯に……」
「ていうか誰? あんた」
「あ、第二分隊の糟屋です。申し遅れました……」
「応急長の許可は? 聞いてないわよ」
「あ……それは、まだ……」
 水事情のよくない艦内では真水の使用については厳しく管理されている。もちろんそのことを知らないわけではなかったが、洗うものがものだけに、こういう場合、どう上にお伺いを立てて良いものか迷いながら洗濯室まで来てしまった。たまたま誰もいなかったのでいまこっそりやってしまえば大丈夫だと勝手に判断してしまったのだった。
「あなた、アタシたちの許可もなしに、勝手に水使ってるの?」
 女性はことを大げさにする意図を多分に込めて、大声を放った。
「も、申し訳ありません……」
 まだ二十代前半と思われる迷彩服女性に平謝りする。

 肇はどうすればよいか分からぬまま、士官室の二階堂留美分隊士を訪ねた。まさに新任海士の気分である。女性がつくった独自のルールで動いているこの艦では最下層の立場であることがあらためて身にしみた。
「そう……岩村班長も言い出したら聞かないから、そこはとりあえず従っといた方がいいでしょうね」
 留美は仕事の手を止め、脇に起立する肇を見上げて言う。立場としては留美の方が亜美より上であるが、現場の下士官とはなるべく良好な関係を保っておきたい。聡明な彼女は、ここは静観すべきと判断した。
 一方肇としては、男部下に女物の下着を洗わせるなどと言う暴挙をいさめてもらうことを少しは期待していたので多分にがっかりとした。
「だけど、応急長はよく知ってる先輩だから」
 留美はここから離れた壁際の席でパソコンを開いている西谷美玲二尉のところへ肇を連れていく。
 二十七歳の応急長は留美からの説明を一通り聞くと、「そうね……下着洗うのは別にかまわないけど……ひとり分のために貴重な真水を使うのは困るわ。五人分とか、それ以上まとめてやるのなら、許可出せないこともないけど」
「そうですか……」留美が肇に変わって返事をする。「五人分以上なら大丈夫ですね」

「ど、どうすれば……」
 肇は席に戻った留美に指示を仰いだ。
「聞いてたでしょ」
 仕事の資料をめくりながら、ぶっきらぼうに言う。よほど忙しい様子だ。
「やはり五人分の下着を、でしょうか……」
 まさか男の下着を混ぜるわけには行かない。かといって下着の洗濯許可を直接頼める女性など、この艦内にいるはずもなかった。
 留美は無言で仕事に集中している。
「分隊士殿……お願いできませんでしょうか……」
「私に頼むことじゃないでしょ。そこは班長に相談して」
 留美はいらついた調子で応える。こういうときの彼女には逆らわない方がいい。一見、柔らかい物腰だが、根は気丈なのだ。
「……うう……は、はい……ありがとうございました……お忙しいところをすみませんでした……」
 肇は仕方なくすごすごと退散する。

「どうでした? 洗濯の件は」
 夜の巡検の帰り際に、二階堂留美が聞く。
「そ、それがまだ……班長になかなかお会いできず……いまからまた相談に行くつもりです……」

 

S女小説 アマゾネスウェーブ「血潮の女権革命」

Kindle小説サンプル

S女小説 アマゾネスウェーブ「血潮の女権革命」

S女小説 アマゾネスウェーブ「血潮の女権革命」を電子書籍として出版しました。

内容紹介

女性幹部が支配する海自艦船内で、恨みを含んだ矯正指導を受け続ける男子隊員の物語

五十歳を目前にして、二曹への昇任試験に失敗した糟屋肇三曹は、海上自衛隊の特別練習艦《ひめぎく》への転属を命じられた。万年三曹の肩たたき船と言われる《ひめぎく》を実質的に運用しているのは「WAVE(ウェーブ)」の略称で呼ばれる女性自衛官たちであった。他艦で女性に不利益な事件が起こる度に、女性艦長が定める艦の規律は、男性クルーに厳しい内容へと更新されていったが、糟屋肇が乗船した直後、それはこれまでとはまったく違った次元の「特別指導体制」へと引き上げられたのだった。

第一章 直属上司はうら若き乙女

第二章 男の非力を嗤う女海士達

第三章 完全女性上位体制の発令

第四章 上級幹部の部屋付当番へ

本文サンプル

第一章 直属上司はうら若き乙女

☆ 一

くれですか……やはり……」
糟屋肇かすやはじめはうなだれる。
「はい、基地は呉ですが、そこから北上する艦船ですので。お体に気をつけて」
 辞令書を渡した女性事務官は、微笑を浮かべながらも感情を抑えるようにして言った。極めて事務的な態度だった。
「ありがとうございます。長いことお世話になりました」
 二〇代半ばの女性事務官に一礼して四十八歳の海上自衛官は建物を出る。
 佐世保基地の敷地内ベンチに腰掛け、港に浮かぶヘリコプター搭載型護衛艦を前に、濃紺の作業着に忍ばせておいた缶コーヒーを開ける。春の昇任試験前に同僚から言われた言葉を思い出す。
―――糟屋、俺たちたぶん、これがラストチャンスだぞ。ここで、二曹に上がっておかないと、《ひめぎく》行きになっちまうぞ……
 《ひめぎく》は、五年前から運用が開始された特別練習艦で、その主な目的は女性幹部(士官)の指導力強化および女性曹士の実践力鍛錬にあった。そして、《ひめぎく》にはもうひとつの役割があるというのがもっぱらの噂だった。それは、任務遂行能力の低い中高年の万年三曹を肩たたきすることである。同僚は続けた。
―――いいか糟屋、俺たちはもうじき五十だ。しかも、俺もお前も体格の面でハンディがある。おまけにお前は独身ときてる。このまま三曹のままだったら、近いうちに《ひめぎく》行きになるのは確実だよ……
 同僚は試験間近になってもなかなかやる気を示さない肇の肩を叩いた。
―――なあ……《ひめぎく》行きになった連中がどうなるか知ってるか? 年下の女に奴隷みたくこき使われるんだぜ……
 にわかには信じがたい話だった。
―――そんな馬鹿なって思ってるだろ……だって現に《ひめぎく》にいったん乗って無事に復帰できた人間なんていないんだから。みな音を上げて自主退官するか、女たちの万年奴隷だよ……
 結局、危機感を募らせたその同僚は二曹に無事昇格した。彼の言葉どおり、肇だけが《ひめぎく》が待っている呉基地行きを命じられたのだった。
「噂だろ、そんなの。誰かがつくった……」糟屋肇は、目の前の護衛艦がたなびかせる旭日旗を眺めて、生ぬるい缶コーヒーをあおった。「そんなことあり得ないじゃないか……」自分に言い聞かせるようにつぶやき、アルミの缶を握りつぶす。

―――二週間後。
 呉基地に到着した糟屋肇は赤煉瓦庁舎の門をくぐり、指定された個室で待機する。衣類や生活品をつめたビニルバッグを椅子に置き、壁に設えられた鏡の前に立つ。いつも濃紺の作業着ばかり着ているので、白い制服姿がなんだかぎこちなく映る。また少し痩せた。ベルトの穴がもう一つ奥になった。女だらけのふねに乗せてもらえるなんて、かえってありがたいことだ、などと強がってはみたものの、心のどこかで怯えている自分がいた。転属を言い渡された日から、食欲が急激に落ちて、体重は五〇キロを切ろうとしていた。
 肇はバッグの隣の椅子に腰掛け担当者を待つ。
 ほどなくしてノックの音がした。
「はいっ」
 肇の返事を聞いて、ドアが開く。純白の海自制服に身を包んだ若い女性が入室してきた。肇は彼女の肩に階級章があるのを見て、すばやく立ち上がり、敬礼する。
「か、糟屋肇三曹です。佐世保基地より、この度こちらに着任することになりました」
 しなやかな動きで答礼した女性幹部は、着席するよう促し、自分もテーブルを挟んだ向かいに座る。
「二階堂です。よろしくお願いします」
 二階堂留美三尉はやや緊張気味に口を開く。一昨年、防衛大学校を卒業し、一年に及ぶ幹部候補生学校での教育訓練を経て、国内巡航に続く遠洋練習航海を終えた二十四歳は、海の職場にようやく慣れつつあったが、自分の父親ほどの年齢の男性を直接の部下として迎えるのは初めての体験になる。
「こ、こちらこそ、よろしくお願いいたします」
 肇は遠慮がちに留美の顔を見る。いくら年下の女性であろうが、上官と話すときには目を逸らしてはならない。整った面立ちに意思の力をもたらしているのは二重まぶたの澄み切った双眸であり、品位を与えているのはスッと通った鼻筋だった。四十八歳の独身男にはまぶしすぎる美しさだった。
「もう承知かと思いますが、私たちと一緒に乗ってもらうのは、特別練習艦の《ひめぎく》です」
 練習艦は、士官教育のために使用される艦で、通常護衛艦タイプの艦船が使用される。自衛隊で使うので護衛艦などという婉曲な呼称を与えられているが、要は軍艦である。国際法上もそう呼ばれている。
 ひめぎくの乗員は、総員約一五〇名。うち一割ほどが幹部で、艦長、副長をはじめ幹部は全員女性だという。肇が噂で聞いた通りだった。
「はいっ」
 肇は留美が説明の間を置くたびに、目を見て、好印象を与えるための返事に努める。思ったよりすんなりと年下の女性上官を受け入れている自分に驚く。
「なにか、ご質問は?」
 艦について一通りの説明を終え、留美が聞く。
「あ、あの……男性の乗組員は、やはり私のような年代ばかりの……」
 言い淀む肇に留美は多少苛立ちの表情を見せて、首をかしげる。
「い、いえ、すみません……なんでもありません……出航は、いつでありましょうか……」
「明日です」
「明日!」
「ええ……じゃあ、もう、行きましょうか、艦へ……あとのことは、中に入ってからの方がいいでしょうから」
 皆の前で聞きにくいことがあればと思って、事前に個別の時間を取った留美だったが、ここで打ち切ることにした。
「はいっ、よろしくお願いいたします」
 そう言って深々と頭を下げる肇に、留美の方は軽く会釈を返すと立ち上がり、キビキビとした動作で部屋を出て行く。中年海曹は荷物を抱えて、慌ててあとを追う。立ち上がってみて、自分がいかに背の低い男であるかを痛感させられた。前を歩く女性は、特段高いヒールを履いているわけでもないのに、自分よりかなり上背がある。

 艦に入ればなおさらだった。大きな女たちの指揮、指導で小さな男たちがちょこまかと動いている。
 女性艦長の意向で女性隊員は身長一六五センチ以上を中心に、男性隊員は一六〇センチ以下限定で選ばれていた。
「男性の部屋は、少し狭くて申し訳ないんですが……」
 そう言いながら留美が案内した下甲板の男子科員室は、通常の護衛艦が備えている三段ベッドとロッカーの雑居区画だったが、確かにスペースにしてもベッドの規格にしてもやや小ぶりだと、肇は思った。事実そのとおりで、すべては女子の科員室にゆとりをもたせるためのしわ寄せであった。
「い、いえ、大丈夫です……」
 肇は自分ひとりだけが、稼働中の艦にあとから乗ることが初めての経験だったので、そのことについて尋ねた。
「いえ、糟屋さんだけじゃありませんよ。この班にも、他の班にも転属は多数います。昨日も、その前も、搭乗日がずれているだけで。ただ、私もまだ乗ったばかりで詳しくは知りませんが、この艦は特別で、独自のルールも多いと聞いています……なんにしろ、糟屋さんだけではありませんから」
「そ、そうですか……」
 安心していいのかよくわからない返答だったが、肇は了解したように何度か頷いた。
「じゃあ、上がりましょう。みな、明日の出航に向けて、準備を進めていますから……作業服に着替えてください」
「はいっ」
 濃紺の上下に着替えて、連れて行かれたのは食料の搬入現場だった。いったん露天甲板に上がった後、岸へかけたタラップを降りる。大半の食料は搬入済みだったが、このトラック一台分が最終到着便とのことだった。
「彼、新しく入った糟屋三曹」
 留美が長身の女性二曹に紹介する。
「あ……」
 肇は絶句する。七年前、佐世保の部下であった岩村亜美だ。当時は十九歳でまだ一士だった。しかし目の前の帽子と腕の階級章は肇より上の二曹だ。二十六歳にして、四十八歳の肇を追い抜く出世である。
 亜美も一瞬驚いた様子だったが、「どうも。お久しぶりです」と努めて冷静を装い、「そこに入ってお願いします」とバケツリレーの列に、かつての上司を嵌め込んだ。
「お元気でしたか……」
 そう言いかけた肇を制し、そんな悠長な話にいま付き合っている暇はないとばかり、「はいっ、スピードあげてえっ、間に合いませんよ、そんなんじゃあっ」
 亜美は、痩せて小柄な中年男たちが汗をかきかき、食材の段ボールを搬入する列へ大声を浴びせる。
「はいっ」
 声を揃える男たちに、肇も慌てて返事をあわせ、作業に参加する。
「じゃあ、岩村さん、よろしく」と留美。
 敬礼する亜美の姿をチラリと見た肇は、彼女の成長ぶりに驚いた。自信を持って任務に当たっている気概が伝わってくる。このふねにいる女性は、すべてそうなのかもしれない。肇は、早くも荷物を運ぶ腕にきつさを感じながら思った。これまで男中心の職場で見てきた女性隊員たちとはちょっと違う。

☆ 二

「これ、マジで間に合わないですねえ」
 白い制服に制帽、ズボンを履いた岩村亜美が、汗まみれになって働く男たちの脇を大股で歩きながら、これ見よがしに言うと、大きくため息をついた。どうやら、艦上では女性は制服(夏は白、冬は紺)、男は作業服の濃紺になっているようだ。
 亜美が無線電話で応援を要請すると、すぐに甲板から、四人の女性海士たちが降りてきた。やはり、白の上下で、全員が亜美と同じかそれ以上の長身だった。体躯はみな一見スリムに見えるが、屈強さを感じさせる。日々、鍛錬を怠っていないことは、動きを見れば分かる。全員が若く、二十代前半だ。女たちは、男の列と平行になるように別の列を組み、亜美の指示を待つことなく、率先して食料を積み込み始めた。男の列より一人少ないにもかかわらず、彼らの倍近いスピードで荷物が次々と運び込まれる。
「はい、男性、頑張ってください」
 亜美がパンパンと手を打ちながら、一人ひとりに発破をかけていく。
―――屈辱的だ……
 肇は頭ではそう思いつつも、体の方がついていかない。他の男たちも似たり寄ったりだ。圧倒的な女性たちの馬力を目の当たりにして、もはや諦めの気持ちが生じたのか、安堵したのか、中年男たちが運ぶ荷物はさらにスピードを落とした。
 そうするうちに、さらに他の部署からも、体力の有り余った女性海士たちが降りてきた。
「はい、じゃあ、男性さん、作業やめえっ」
 亜美は、肇たちに手を止めさせ、彼女たちに取って代わらせた。
「どうしたの?」
 通りがかった井村文乃一尉が仕事にあぶれて所在なくしている男たちに目をやって尋ねる。二十九歳の彼女は、肇が所属する第二分隊の分隊長である。男たちは文乃の存在に気づくと敬礼をして、その場で直立不動の姿勢を取る。肇も慌てて皆にあわせる。
「あ、分隊長……」
 岩村亜美二曹から事情を聞き終えた井村文乃一尉は、腕組みをして男たちの列の前をゆっくりと歩く。
「きちんと整列しなさいっ」
「はいっ」
 しとやかなルックスに似合わぬ大声に驚き、男たちはバラバラだった間隔を整える。肇も左右を見て自分の立ち位置を調節する。
「気をつけええっ」
 さらなる大声に男たちはびくついて姿勢を整える。
「休めっ……その姿勢のまま……女性たちの仕事ぶりを見ていなさい」
 長い睫を持つ女性一尉は、男たちにいくぶん侮蔑が交じった視線を放ちながら言う。
「はいっ」
 目の前で若い女性たちが食料の段ボールを次から次へ艦内へ運び込んでいる。声を出し合い、溌剌とした雰囲気で、肇たちのような悲観的な態度はみじんも見られない。
「あなたたち、どういう状況か分かってる? 仕事を取り上げられたのよ」
「はいっ……申し訳ありません」
 返事までは揃っていたが、その後の謝罪の言葉はバラバラにしかも尻切れトンボの調子に終わる。それが覇気のなさに映り、普段は物静かな井村文乃一尉の怒りを誘う。
「ねえ、情けないと思わないの? いい年した男が。揃いも揃って」
 十も一回りも、あるいはそれ以上も年下の女性に強い説教を受けても、男たちはまったく反論などできない。艦の中は完全なる階級社会であるからだ。
「あれ、なんの荷物運んでるの? ねえ、寺井三曹」
 文乃は、目の前で顔をこわばらせている五十過ぎの貧相な海曹をねめつけて言う。
「あ、はっ、食料です、だと思います」
「だよねえ」
 文乃は中年男たちを見回してひときわ大きな声を出す。
「自分たちで食べる物資すら、まともに運べないってどういうことよ」
「はっ……申し訳ありません」
 肇は多少うんざりした表情で皆にあわせる。他にもそのような態度を示した仲間がいたようだった。
「なに? なにか不満?」
「いえっ……申し訳ありません……」
 男たちに悲壮な雰囲気が漂う。
 そのとき文乃一尉に無線が入る。
「了解、すぐ行きます」
 レーダー部署で新規格の機器導入の際にトラブルが生じたようだった。機器管理に詳しい文乃一尉のアドバイスを受けたいとの要請だった。
「岩村さん」文乃は、岩村亜美二曹に声を掛ける。「彼ら、作業が終わるまで、このままで」
「はいっ」
 亜美の敬礼を受け、井村文乃一尉は甲板に戻っていった。

「ごくろうさま」
 岩村亜美二曹は、トラック一台分の食料を積み終えた女性海士たちをねぎらうと、惨めに整列させられている中年男たちを眺めやる。
「ねえ……こんなんじゃ、先が思いやられますよ」
 一七〇センチを越す長身の二十六歳が一人ひとりの顔をざっと見渡しながらあきれたように言う。肇は心なしか、自分を見ている時間が少し長かったように思えた。
「はいっ……も、申し訳ありません……」
 脚を少し開き、後ろで腕を組んだ四十、五十の男たちは、うつむきかげんで声を絞り出す。二十六歳の女性二曹に行動を支配されていることに恥ずかしさを噛みしめている。彼女の元上司であった肇はなおさらだった。
「甲板に上がって、あなたたちにでもできる作業をやりますから。今度は真剣に取り組んでくださいね」
「……は、はいっ……」
 幾人かはその言われ様に納得がいかない様子だった。
「いいですねっ」
 亜美は返事のやり直しを命じるように強い口調でもう一度問う。
「はいっ」
 男たちは悔しさをにじませながらも今度は声を揃える。

 課業を終え、一七時ちょうどに夕食が始まる。肇たちの班の順番になり、食堂へ降りて金属製のトレーを取ろうとすると、すぐ後ろに並んでいた同じ班の寺井という男が、「あ、それは女性専用だ。男子はそっち」と一回り小さなトレーを指さした。肇は一瞬絶句したが、「あ、どうも」と小さな声で言いながら、寺井に頭を下げると、目の前で仕事をしている女性の給養員(調理係)の目に遠慮し、小さなトレーにふさわしい控えめな盛りで、肉や野菜の料理を装っていった。

「いや、まいったね。驚いたでしょ」
 寺井がトンカツのソースをつけた口で、肇に言った。五十二歳の寺井は同じく三曹であるが、彼はもう一年ほど、この《ひめぎく》に乗り続けているという。
「はい……びっくりしました。女性が天下のふねだとは聞いていましたが」
「でもね、こんなもんじゃないよ。あの二人はまだ優しい方だよ。怖いのは先任伍長だ」寺井はあたりを見回し、他の科員たちが集まってきたのを見て声を潜める。「もちろん女だけど」
「そ、そうなんですね……」
「とにかく、この艦では絶対、女に逆らっちゃいけないよ」

 ほとんどの雑用は男子科員の仕事である。寺井は食卓番として皿洗いに従事し、肇は食堂の床を拭き掃除する。女性下士官の監視の目があるので、もちろん手を抜くことなどできない。

 床掃除などの雑用を終えた肇が、ようやく風呂に入り、科員室に戻ってベッドの上に疲れた体を横たえていると、周囲が慌ただしくなる。
―――もうこんな時間か……
 時計を見ると一九時半、巡検の時間だ。同じ班の六人が揃って、廊下に並び、整列する。

 

S女小説 アマゾネスウェーブ「血潮の女権革命」

Kindle小説サンプル

S女小説 美少女姉妹「残酷」兄虐め

S女小説 美少女姉妹「残酷」兄虐めを電子書籍として出版しました。

内容紹介

恋人を持つ二十五歳の男が、一回り近く年の離れた妹たちに虐待・陵辱される物語

岩田正則(25)は、夏休みを利用したバレーボールのエリート合宿のために上京してきた妹、紗織を自身のアパートに寝泊まりさせることになるが、恋人の倉瀬美樹(21)は、紗織が見ている前で、正則を虐待し始める。正則と美樹は、ついひと月ほど前の正則の被虐願望告白により、厳格な主従関係を築きつつあったのだった。最初は戸惑っていた美樹だが、次第に彼女の方が虐待の悦びにのめり込むようになっていた。正則のアパートで繰り広げられる美樹の嗜虐性は、次第に紗織へと伝わり、正則は背徳的な躊躇を感じつつも、妹から虐められる至福に溺れていくのだった。夏が終わり、甘くも激しい快楽の余韻の秋を過ぎると、冬休みを利用して、今度は、下の妹、詩織がアイドルオーディションを受けるために正則を頼って上京してきた。彼女の前でも、恋人の美樹は、激しく正則を責めたて、いたいけな少女を容赦のない女王への道へと誘うのだった。

  • 第一章 愛する妹が見ている前で
  • 第二章 JC妹に責め虐められて
  • 第三章 JS妹に踏まれ打たれて
  • 第四章 美しき姉妹の暴力と陵辱

本文サンプル

第一章 愛する妹が見ている前で

☆ 一

「もう一年半くらい会ってないので……」
 滑り込んでくる新幹線を目で追いながら、岩田正則いわたまさのりが言う。彼は二十五歳でIT系の自営業者だ。
「中学校二年生っていったら、マサといくつ違うんだっけ?」
 正則の恋人、倉瀬美樹くらせみきが隣にくっついて尋ねる。ふんわりしたボブヘアがよく似合う二一歳の美女だ。正則の取引先でOLをしている。
「十一……」
「えーっ、そんなに下なんだ。ほぼ一回りね」
 二人は、夏休みを利用してバレーボール合宿のために上京してくる正則の妹、岩田紗織さおりを迎えにきたところだった。
 ドアが開いて、次々と乗客が降りてくる。
「……あれえ……この車両のはずなのに」
 最後の乗客らしい女性が降りたところで、正則は首をかしげる。そのサングラスを掛けたいかにもいいオンナふうの女性が、大きなトランクを転がしてこちらへ近づいてくる。
「お兄ちゃん、久しぶり」
「ああっ、さ、紗織っ」
 見上げるほど上背がある長身中学生は、サングラスを外して、煌めくような笑顔を見せる。やや茶色がかったショートヘア。白いコットンシャツに赤いキュロットスカート、そこから伸びる白いスニーカーまでの脚の長さが尋常ではなかった。
 三人は正則の車でいきつけのファミリーレストランへ向かう。

「あらためて、はじめまして、岩田沙織です」
 レストランに入って着席すると紗織が向かいに座る美樹に挨拶した。
「こちらこそ」美樹は感心しきりの様子で返礼する。「なんか、しっかりしてるわねえ沙織ちゃん。とてもマサの妹さんだなんて思えない」
「いや、そんな……」
 正則は美樹の方を見て声にならない声を放つ。妹の前ではアブノーマルな関係はとりあえず控えておいて欲しいと事前に頼んであるが、いきなり《マサ》と呼び捨てられドギマギする。
「いえ、ありがとうございます」沙織は、うろたえる正則とは対照的に、しっかりと相手の目を見て受け答えをした。「お兄ちゃんの彼女がこんな素敵な女性ひとだなんて、私の方こそ驚いてます」

「それにしても背高いね沙織ちゃん、何センチあるの?」食後のティーグラスを手に、美樹が尋ねる。「ごめん、聞いちゃっていいのかな」
「はい……一七六です」
 中二の紗織は平均的な成年男子よりも高い身長をバレーボール選手としてのアドバンテージと考えることはあっても、コンプレックスに感じることはなかった。それよりもテーブルを囲む三人の中でいちばん身長の低い兄がどう思っているのか少し気にはなった。
「凄い! 一七六センチ? いま十四歳でしょ? まだまだ伸びるよ。将来の全日本代表間違いなしだね」
「いえ……そうなれればいいですけど……」
 紗織は照れながらも兄の恋人が口に出した夢が現実になることを願っている。
「母親が昔、全日本にいて。レギュラーメンバーではなかったんだけど」と正則。
「へええっ、なるほどね……で、この二人の違いはなんなの?」
 美樹は紗織と正則を交互に見比べて言う。
 紗織がクスリと笑う。
「いや、それは……話してなかったかな……」正則は多少の戸惑いをみせながら笑顔のまま美樹に言う。「父親が違って。僕の父は凄く小さかったから」
「なるほど……」美樹は一瞬、ばつの悪い表情を見せたが、すぐに笑顔を戻し、「長身のお母さんをしても、いかんともしがたかったわけね」
「ま、まあ……」
 正則は苦笑いをする。
「合宿はいつから?」と美樹。
「はい……明日から……二週間です……」
 合宿は全国から集まる女子バレーボールのエリート選手のためのもので、実際に毎年、この合宿の参加者の中から代表候補が選ばれているのだという。
「そっかあ、凄いね沙織ちゃん、頑張って。なんかあったらいつでも連絡してよ」
 美樹は紗織と電話番号とメッセージIDを交換した。
「あ、はい」
 それが紗織にはことのほか嬉しかった。見ず知らずの都会に相談できる女性の先輩ができたのだ。姉が現れたような気分だった。

「じゃあ、私、今日は自分ち帰るから」
 店を出て美樹が正則に言う。
「送るよ」
「大丈夫。すぐそこだし。歩いて帰れるから」
 ヒールを履いた状態で立つと美樹も一七〇センチくらいの上背があった。正則がひとり小さい。
「あ、そう……」
 正則は少し残念そうに言う。明日は土曜日で二人とも仕事は休みなので、いつもならどちらかのアパートに泊まるところだ。
「あ、美樹さん、遠慮しないでください。私、大丈夫ですから」
 空気を察した沙織が言う。
「いいのよ。せっかく、久しぶりに兄妹きょうだい水入らずなんだから」
「いえ……美樹さんも……」紗織は連絡先を交換して急に親しみを覚えた美樹の腕に触って言う。「一緒に行きましょう」
「紗織もそう言ってるし」
 正則もそう促し、結局三人で彼のアパートへ向かった。

「じゃあ、紗織が明日早いことだし、そろそろ寝ますか」
 リビングでひとしきり話し込んだ三人はテーブルの上を片付ける。アルコールがあまり強くない正則はビールとワイン一杯で顔をすっかり赤らめているが、ワインを三杯飲んだ美樹は平然としている。
「強いんですね、美樹さん、お酒」
 紗織がグラスをキッチンに運びながら言う。
「普通よ。あなたのお兄ちゃんが弱いの。大人になったら一緒に飲もうね」
「はいっ」
 後片付けをして、交代でシャワーを浴びた。

「じゃあ、紗織はこっちの部屋使って。ちょっと物置みたいで悪いけど」
 正則は、実際に物置部屋として使っていた部屋を片付け、真新しい布団一式を妹のために用意していた。
「OK、ありがと」
「じゃ、おやすみ」
 正則は隣の部屋、美樹が待つ寝室へと向かう。
 寝具の上で雑誌を眺めている彼女のそばにすりより、「お待たせしました」と密やかな声で頭を下げる。美樹はパジャマに着替えている。
「服なんて着てていいの? 正則、お前
 ジャージ姿の正則を見て言う。
「み、美樹さん、今日は、さすがに……妹がきてますので……ご勘弁ください……」

「もう大丈夫だよ、脱ぎな」
 半時間ほど経って美樹が再び言う。
「で、でも……」
「もう寝てるよ、脱げ」
 隣室を隔てる壁を見て言う。
「は、はい……」
 正則は部屋着の上下を脱ぎ捨て、下着も外し、素っ裸になる。
「うん、それでいいんだよ、お前は」美樹は満足そうに頷く。「ここで服着てるマサを見てる方が不自然だよ」
「は、はい……」
「ワインとってきて」
「え……」
「キッチンから、ワインとってこいっつってんの」
「あ、は、い……」
 脱ぎ捨てた下着を拾おうとした正則を見て、美樹は寝具から立ち上がる。髪の毛をつかみ上げ、指先を揃えた手のひらを高く上げる。
「うううう……」
「派手な音させちゃ、まずいかな」
 美樹はそう言うと上げた手のひらを握って拳をつくり、正則の頬をゴツリと打った。
「うぐっ……す、すみません……」
 正則がささやくように言う。
「裸のまま、キッチンからワインとってこいって」
 もう一度そう言うと美樹はヘッドロックの体勢に入り、四つ年上の恋人の首をぐいと締め付ける。
「くううううううっ……」
 正則は、すぐに美樹の背中を手のひらで二度叩く。ギブアップの合図だ。美樹が少し力を緩めると、「行きます、とってきますので、美樹さん……」
 正則は、そっと寝室のドアを開き、なるべく足音を立てないようにしながらキッチンへ向かい、冷蔵庫からワイン、戸棚からグラスをとって急ぎ部屋へ戻る。
「びびってんじゃないわよ」
 美樹は正則にワインを注がせながら微笑む。
「え、あ……はい……」
「もう、寝てるでしょ」
「でしょうか、たぶん……」
「やろうか」
「え……」
「セックスしようよ」
「で、でも……今日は紗織が……」
「寝てるでしょ、もう。って言うかいつもどおりでお構いなくって言ったの彼女でしょ」
 美樹はだいぶ酔いが回ってきている様子だった。
「そ、そういう意味では……それに、まだ中学生だし……ですし……」
「いいじゃない。中二女子なんてもう、普通にオンナだよ……」

☆ 二

「今夜は刺激的だね」
 美樹は寝室の入り口の引き戸を少しだけ開け、仰向けに寝ている正則の方へ戻ってくる。寝具マットは引き戸の隙間からよく見える位置に移動させた。美樹はパジャマ姿のまま、全裸の恋人の乳首をつまむ。
「なんだかんだ言って、興奮してんじゃない。もう、固く勃っちゃってるよ」
「ああああ……み、美樹さん……」
 美樹は、正則の左の乳首を右手で虐めながら、右の乳首を軽く噛む。
「はうううっ……」
 壁を隔てたすぐ向こうに妹がいると思うと正則は出してしまった声を飲み込むようにする。
「遠慮しないでさ、いつもみたいに女の子みたいな甲高い声で、あえいでみせなよ」
「くうううっ……や、やめて……美樹さん……」
 妹の隣部屋でそんな台詞を発することに正則は強い興奮を覚える。
「ほら、もうこっちも勃ってきた。いつもより元気なんじゃない? 沙織ちゃんに見られながら犯されたいって言ってるみたいだよ。ガマン汁だらだら流しちゃって」
 美樹は正則の竿をしなやかな手で握るとそのまま意地悪く力を込める。
「かうはわああっ……い、痛いです……」
「ふん、あとでもっと締め付けてあげるからね」
 美樹はそう言いながら、握った親指を上へ延ばして亀頭の鈴口をなでるようにする。たっぷりとカウパー腺液をまぶした親指を正則の口へもっていき、ねじ入れる。
「ううむうううぷ……」
「ほらあっ、なんだよ、これはさあっ。いやだいやだいいながらさ、めてほしいんでしょ、沙織ちゃんが見てるとこで」
 正則は、その場面を想像しつつ、首を横に振る。
「やめて、ホントに、お願い……美樹さん……」
 美樹は妖艶な笑みを浮かべて正則を見下ろしながら、自分の下半身をすべて脱ぎ降ろし、パジャマのボタンを外して前をはだける。ブラジャーはしていない。豊満な胸の桃色乳首が露わになる。

―――あれは、やっぱり大人のあれかなあ……
 紗織は隣の部屋の物音や気配に耳をそばだてる。布団に潜り込んで無理矢理眠ろうと思ったが、そうすれば反対に好奇心が湧いてきて、いっそう目が冴えてしまった。
 寝具を隣部屋の方へ寄せる。壁ギリギリまで近づけると時折、かすかに悲鳴のような声がする。壁に耳をそっとつけてみる。
(あっ、ああっ、ああん、あん……)
 女性のあえぎ声とともに、断続的な振動が伝わってくる。
―――やっぱり……お兄ちゃんたち、セックスしてる……
 ここのところ、Hに興味のあるクラス女子たちの間ではもっぱらその話題でもちきりだ。紗織は彼女たちの前では、バージンを装っていたが、実のところ地元のバレーボールコーチとすでに何度か経験済みだった。
 どうやら壁のすぐ向こうに二人はいるらしい。よく耳をすますと肉と肉がパンパンと当たりこすれたり、くちゅくちゅと挿入するような音まで聞き取ることができた。
 紗織は頭の中で隣部屋の風景を想像してみる。
―――きっと美樹さんの上に、お兄ちゃんが……
 そんな想像をしていたら、ふいに尿意が襲ってきた。
―――お茶やジュース、たくさん飲んだからなあ……
 壁の向こうにもう少し聞き耳を立てていたかったが、紗織はそっと立ち上がって、なるべく静かに部屋の戸を開け、外へ出る。
―――え……
 真っ暗なLDKの床に光の筋が走っている。隣の部屋の戸がわずかに開いているのだ。
―――ああん、あん、はああん、あん、あん……
 聞いていて恥ずかしくなる甲高い声が今度ははっきりと聞こえる。
 トイレに行くには、その戸の前を横切る必要がある。紗織は唾を大きく飲んで、音を立てずに歩を進め、ちらりと戸の隙間に目をやり通り過ぎる。一人がもう一人の体に馬乗りになっているのが見えた。通り過ぎた紗織は、その残像に違和感を覚える。
―――んん? ……
 そおっと後戻りして戸の隙間から中を覗いてみる。
―――ああああっ……
 上に乗って髪を振り乱しながら腰を振っているのが美樹で、両手首を押さえ込まれて、甲高いあえぎ声を出しているのが兄だった。
―――ええっ、セックスって本当はこうなの? ……
 紗織はしばしその場に立ち尽くすようにして、二人の睦み合いを目に焼き付け、トイレへ向かう。

 トイレの水が流れる音が響く。
―――あ……
 美樹に犯され続けている正則が目を見開く。
 足音が聞こえてきて、そのまま隣の部屋へ入る。
「見られたかもね」
 紗織はそう言い、うっすら笑みを浮かべて、膣をキュッと締め付けるとフィニッシュへ向けて怒濤の抽送へと入っていった。

 翌朝、みなでトーストとコーヒーの朝食を済ませたあと、正則の車で紗織の合宿先である体育館へ向かった。朝食の時からそうだったが、妙な沈黙が車内を包む。美樹は昨晩、正則を騎上位で犯しながら、目の端に紗織の気配を認めていた。
 みな昨日のことが頭に渦巻き、なかなか言葉が出てこない。
 そうこうするうちに、車は目的地へ近づく。
「見学とかできるの? バレーボールの練習」
 美樹が後部座席の紗織を振り返る。
「あ、はい……できますよ……結構、父兄の人たちとかきてます……」
「ちょっと見てこうか……いい?」
 美樹は正則に言い、紗織にも確認する。
「はい」
 紗織は自信に満ちた眼差しで返事をする。

「ありがと、じゃあ」
 美樹と正則に手を振り、案内図を片手に控え室の方へ向かう紗織は、白地に赤のストライプで彩られたトレーナーと短パンがよく似合っている。中二ながら、散漫さのない機敏な身のこなしで、いかにも優秀なアスリートという印象を早くも周囲にもたらしている。
 美樹と正則は建物の中へ入り、さきほど美樹から説明を受けたとおりに、階段を上る。三面のバレーボールコートを囲むようにして高い位置に見学席が設けられている。
「まあまあ、いるね」
 見学者はまばらにいて、美樹たちが座る席の両隣には、いずれも選手の姉妹だろうか、若い女性たちが雑談しながら待っていた。選手たちはまだ現れてこない。
「み、美樹さん……やっぱり昨晩のはまずかったんじゃ……」
「いいじゃない、いつまでもウジウジ気にしてんじゃないわよ、男のくせに」美樹は少し大きめの声で言う。「沙織ちゃん、見てたよ」
「えっ……そんな……」
「なによ、その顔、白々しい。そんなこと言って、お前本当は見られたかったんでしょ」
 美樹はウェーブの掛かった髪を触りながら言う。
「み、美樹さんは平気なんですか?」
「別に……ただセックスしてるだけじゃん。男と女がつきあってて当たり前でしょ。そんなことよりさ、パンプス汚れてるわ。磨いてよ」
 デニム生地のミニスカートから伸びた長い脚を組んで言う。
「いま、ここでですか?」
 正則は唾を飲み込み、左右を見渡す。右側は、中学生と高校生くらいの姉妹らしき二人。左側には、高校生と大学生くらいのやはり二人。こちらも姉妹だろうか、いずれも年の差の離れ具合からおそらくそうだろう。
「うん、やって……」
 正則は、もう一度左右を確認したが、やはり躊躇してうつむく。
 美樹は少し微笑むと次の瞬間、「パンプスきれいに磨いとけっていったよねえ」と周囲に聞こえるほどの声で言い放ち、正則の頭髪をつかみ椅子から引きずり下ろすと頬を一発パンと張った。周囲の空気が一瞬にして凍り付き、女性たちの視線を一気に感じる。
「ご、ごめんなさい……すみません……」
 正則は震える手でポケットからハンカチを取り出すと、美樹の足元に正座し、彼女の赤いパンプスを尖ったつま先から磨きはじめる。
「ちゃんとやれよ、殴られる前にさあ」
 整った顔が気色ばむ。
「は、はい……申し訳ありません……」
 正則は顔を真っ赤にしながら左側の中高生姉妹の方にチラと目をやる。二人は少し緊張の面持ちながらも、なにが起こっているのだろうかという目でこちらを見ている。正則は勇気を振り絞ってもう一度二人の方を見て、ぎこちない笑みを浮かべ少し頭を下げる。とたんに軽蔑の眼差しが二人から注がれる。
 右側から女性たちの押し殺した笑い声が聞こえてくる。
「ほら、ボーッとしてないで手ぇ動かせよ」
 美樹のパンプスのつま先が正則の側頭部をコーンと蹴る。右側からの笑い声がわっと高まり、左側からもクスクスと嘲笑が聞こえてくる。

☆ 三

「ほら、出てきたよ」
 美樹が言い、正則が跪いた姿勢のまま後ろを振り向く。大柄な女子たちが、キュッキュッという足音とともにコートに姿を現す。それぞれ自分たちが所属するバレーボールチームのユニフォームを着ている。体育館の空気が華やいでいく。
「あ……もう、よろしいでしょうか……」
 正則の伺いに美樹は黙って頷き、靴磨き終了の許可を与える。椅子に戻って美樹と一緒に沙織の姿を探す。
「あ、あそこ」
 美樹が指さした先には、白地に赤のストライプが入ったシャツと赤い短パンのユニフォームに着替えた妹の姿があった。鼻筋がスッと通った母親似の美しい面立ち。強靱なパワーを秘めながらもモデルのようなスリムさを併せ持つバランスの取れた体つき。彼女と同じくらい長身の女子も何人かいたが、いちばん目立っていたのは紗織だった。
「スターになるわよ、きっと彼女」
「……でしょうか……」
「マサの妹とは思えないわね、ホントに」
 彼女たちは、しばらくいくつかの輪になってトス練習を始めたが、そのうちに監督やコーチと思われる女性たちが姿を現し、指導を始めていった。正則はその女性たちの凜として威厳のある姿にも心を奪われる。おそらく同い年や少し年下かもしれない。

S女小説 美少女姉妹「残酷」兄虐め

Kindle小説サンプル

S女小説「女子トイレ専任掃除夫の涙」

S女小説 「女子トイレ専任掃除夫の涙」を電子書籍として出版しました。

内容紹介

女子高を懲戒解雇された元男性教師が、女子トイレ専任掃除夫として女性たちに冷厳な指導を受け続ける物語。

私立桜花女子高校の地理教諭で生活指導部長だった干川清彦(42)は、新任美人教師の秋村架純(23)に片想いを寄せながらも、生活指導副部長の女性教諭三宅淳子(28)と不貞行為を繰り返していた。ある放課後、不良女生徒の武井亜紀(18)を厳しく指導したものの、自らは彼女の担任でもある三宅淳子と事もあろうに、女生徒が去った後の生活指導室で行為に及ぶ。しかしその様子は武井亜紀によって、密かに撮影されていたのだった。その証拠はほどなく彼女の叔母で校長の豊田真帆(42)の手に渡る。真帆が主導権を握る理事会により、本来なら男女二人に厳罰が下るところだったが、清彦が強淫を自白することを交換条件に、清彦のみが退職することで真帆からの容赦を得た。教職にいくぶん辟易していた彼にとっては半ば望むところの選択だったが、これをきっかけに想像を絶する屈辱の日々が繰り広げられていく。

 

プロローグ

第一章 女性校長、逆セクハラ地獄

第二章 女性部長、鬼の土下座強要

第三章 美人担当者、魔の便器特訓

第四章 女子高生、元教師への復習

エピローグ

本文サンプル

プロローグ

「そろそろ行きますか」
 雨上がりの朝、私立桜花おうか女子高等学校の校門前で、生活指導部長の干川清彦ほしかわきよひこが、最後の生徒が校舎へ消えるのを見届けると、副部長の三宅淳子に促した。
「ええ」
 もう少しでホームルーム開始の時刻である。
 二人して校舎の方へ戻ろうとしたそのとき、干川清彦は、頭を茶色に染めた女生徒がひとり遅れて登校してくるのを見つける。
「あいつ……なんだ、あの頭の色は……」
 三年生の武井亜紀だった。いかにも気の強そうな、不良女生徒である。
「おい、お前、ちょっとこっちこいっ。武井だったよな……たしか三宅先生のクラスの」
 茶髪女子を呼びつけ、忌々しげに三宅淳子の方を見る。担任の彼女はばつの悪い表情をして黙っている。
「なんですか、急いでるんだから……」
 校長の姪でもある彼女は強気の口調で言って足を止めずに校舎の方へ進もうとする。
「おい、ちょっと待てって……」
 校庭のスピーカーからメロディが流れる。
「先生」三宅淳子が興奮気味の清彦の肩に手を掛ける。「も、もう、ホームルームが始まりますし、放課後に指導室の方で……私が連れていきますから……」
「わかりました。でもホント困りますよ、三宅先生。担任としてしっかり監督してくれないと」
 武井亜紀の背中を見送りながら、清彦は苦々しく言った。

「おはようございます」
 職員室の自席で待機していた清彦の隣にホームルームから戻ってきた秋村架純が着席する。この春、新卒で赴任したばかりの二十三歳の美人教師だ。二重まぶたの目が凜々しく、笑うとえくぼができる彼女は、まばゆいほどの若さにあふれていて、初見した日から清彦をぞっこんにした。
「うん、おはようございます」
 生活指導で正門に立つことが多い清彦は、このところ自クラスのホームルームは副担任の彼女に任せきりだった。
「ところで先生、真剣に考えてくれました?」
 清彦は秋村架純の耳元にそっと囁く。
「いえ……だからそれは何度もお断りしてるように……」
 一ヶ月程前から、清彦は結婚を前提とした交際を架純に申し込み続けていた。四十二歳の清彦は、一度結婚したことがあるのだが、五年前に離婚して、現在は独身である。架純の方では清彦のことを特段好きでも嫌いでもなかったが、倦怠ぎみの交際からようやくフリーになったばかりで、しばらくは教師という仕事に全力で取り組んでみようと決意していた。とにかくいまは異性と付き合いたい気分ではなかった。

「ううむ、そうですか……お忙しいなら……わかりました……」
 放課後、架純にカラオケの誘いも断られた清彦は気を取り直して、テストの採点にいそしむ。その背中に、「干川先生」と手が触れた。
「はい、あ、先生……」
 振り返ると生活指導副部長の三宅淳子が立っている。
「どうします、武井亜紀、指導室に待たせてますけど」
「あっ、そうか……そうでしたね……」

「言いたいことはいくらでもあるぞ、武井」
 清彦は机を挟んだ女子生徒の前に椅子の音を荒々しくたてて座りながら、苛立たしそうに言う。秋村架純に振られたことが苛立ちをさらに募らせている。三宅淳子は武井亜紀の隣に少し離れて腰掛ける。
「まずはその金髪」
 清彦は手を伸ばして茶色に染めた亜紀の髪をつまもうとする。
「触らないでっ、金髪なんかじゃありませんから」
 大きな目をかっと見据える。
「耳を見せてみなさいっ」
 清彦の方も負けじと横の髪をすくって亜紀の耳たぶを露わにする。
「ほらっ、穴が空いてるじゃないか。ピアスのだろ……あと、遅刻にサボり、無断で飲食のアルバイトしてるって噂も聞いてるぞ……三宅先生、いったいどうなってるんです彼女……」
 淳子は「すみません……」と言ってうつむく。
「先生が謝る必要ないですよ」亜紀は、そう言って清彦の方にあらためて強い視線を送る。「だから、どうだって言うんです。そもそも、うちの学校にそんな校則ありましたっけ?」
 確かに亜紀の言うとおりではあった。進学校でもあるこの女子高には校則というものが存在せず、風紀については生徒の自主性に任されていた。実際、武井亜紀は素行にこそ問題があったが、学業成績は常に上位を保っていた。
「常識ってもんがあるだろうっ」
 清彦が興奮して立ち上がる。
「常識ってなんですか? 落ち着いてくださいよ、先生」
 亜紀はまったくひるむことなく、むしろ昂ぶった男教師をなだめるように言う。
「な、なにいいっ……じゃ、じゃあなあ、言うけど、知ってるんだぞ、武井、お前が不純異性交遊してることだって……」
「せ、先生……」
 タブーに触れてはならないとばかりに、思わず淳子が口を開く。しかし、それにも亜紀はまったく動じなかった。
「それって、セックスのこと、ですか? 自由でしょ、それも。ちゃんと恋愛してるんだから、避妊だってきちんとしてるし」
「な、なにをっ」
 清彦は身を乗り出し亜紀の頬をパンと打った。
「先生っ」
 再び淳子が口を開く。
 叩かれた亜紀が口元にかすかな笑みを浮かべながら、横向いた顔を戻す。
「見ましたよね、先生」と淳子に確認する。「そっちの方が問題ですよ。いまどき体罰なんて。常識ないのは、あなたの方じゃないですか?」
 生徒にあなた呼ばわりされ、清彦は頭に昇った血をたぎらせる。
「た、武井っ」
 亜紀の胸ぐらをつかんで、右手を挙げる。
「次やったら、叔母に言いますよ、校長に……いいんですか?」
 清彦はその言葉を聞いて我に返る。校長の耳に入れば、懲罰委員会にかけられるだろう。体罰は御法度のご時世だ。場合によっては懲戒解雇もあり得ると聞く。
「……いや……」
 一気に脱力して、亜紀の胸をつかんでいた腕がだらりと下がる。
「お話は以上でしょうか?」
 亜紀は清彦、そして淳子の方を見る。淳子は清彦が放心状態なのを見て取ると、「うん、大丈夫。行って。だけど、なるべく高校生らしい外見と振る舞いを、ね、お願い、武井さん」
「わかりました、できるだけ努力します」
 亜紀は微笑を浮かべ立ち上がると、淳子の方にだけ軽く会釈し、指導室を出て行った。

「ごめんなさい、干川先生……き、清彦さん……」
「まずいよ、淳ちゃん、僕に恥をかかせてくれてさ」
 図書館棟の奥にある指導室は、放課後の時間帯、近くにも人影がない。それを承知で清彦は淳子の隣に腰掛けるといきなり唇を重ねた。
「んむふぅっ……だ、だめ……こんなとこで……」
「いいじゃない、この時間、ここには誰もこないから。今日はもう抑えられないよ」
 生活指導部といっても清彦と淳子の二人きりである。昨年の暮れの反省会をきっかけに、二人は男女の関係になっていた。それ以降、清彦は月に一度ほど、夫婦の倦怠期に差し掛かっていた淳子を誘って、睦み合いを重ねていた。二十七歳の淳子は、とびきりの美人ということでもなかったが、女子アナを彷彿とさせるまずまずのルックスで、清彦のお気に入りのセックスフレンドであった。
「入れるだけでいい、入れたいんだ」
 清彦はそんな都合の良い欲求を淳子に押しつける。彼女が首を横に振らないのを確認すると散らばっていた机を並べて、簡易ベッドをこしらえる。
「さあ、上がって」
 淳子はまるでまな板の上に乗るような心持ちになって、清彦の言う通りに従い、自らストッキングごとショーツを脱いで、急ごしらえの硬いベッドに上る。清彦も続いて上り、ベルトを緩め、ズボンをパンツごと膝まで下ろし、淳子の、見た目よりむっちりとした太股を押し広げ、すでにいきり立ったペニスの亀頭を秘芯の割れ目にこすりつける。
「お、もう、ぐっしょりだね……」
「……ああ、言わないで、先生、清彦さん……」
 清彦はゆっくりと腰を押し進め、ほどよく熟した淳子の蜜壺に、ズブズブと勃起を沈めていく。根元まで嵌め込んだところで、細身の割りに豊かな双乳をひしと抱きしめ、いったん体を浮かしてブラウスの上から両手で揉みし抱いていく。
「あん、ああああ、はん……」
 あえぎ声を塞ぐように再び唇を重ね、今度は歯を押し開いて、舌を押し込み、唾液を送る。
「んむぅっ……うあはあああん……」
 性の快楽の奥深さを知り始めた女体は、逢瀬を重ねるごとに過敏になっていく。また学校の敷地内で、男教師と女教師が、股間を合わせている事実に、清彦も淳子も興奮をなおのことかき立てられている。
「こういうの、ときたまやろうよ……」
「駄目よ、あはん、も、もし、見つかっちゃったら、なにもかもお終いよ……」
「こうやって、服着てさ、下半身だけあわせて。人の気配がしたら、スカート戻して、ズボンあげれば、いいんだから。スリリングじゃない? だから、淳子もこんなに濡れまくってるんでしょ」
 そう言いながら、清彦は抽送の勢いを強める。並べた机同士が当たって、ガチャガチャと音を立てる。
「あはああん、ああ……、う、うん……いい、もっと、入れて……」
「入れてるじゃない、もっと? こうか……」
 清彦はつかの間、架純への恋心も忘れて、淳子との交わりに没頭している。こっそりと戻ってきた武井亜紀が、携帯カメラで撮影しているのも知らずに。
―――干川と三宅さんができてるって噂は、やっぱりホントだったか……しっかし、いい大人が、バッカだね……犬畜生か、お前ら……

 亜紀は、教師二人の濃厚な交わりをひととおり撮り終えると、にんまり微笑んで指導室のある棟をあとにする。

第一章 女性校長、逆セクハラ地獄

☆ 一

「生活指導は、上手くいってる?」
 校長の豊田真帆が、校長室に呼び出した干川清彦の目をじっと見据えて言う。二人は応接テーブルを挟んで革張りのソファに腰掛けている。
「は、はい……それは、なんとか……」
 清彦は自分と同学年の美人校長に緊張の面持ちで答える。同学年であるが早生まれと遅生まれの差で、実際は清彦が一年近く年かさだった。
―――それにしても朝から急に呼び出したりして、いったいなんだろう……
「そう? なんか変わったことない?」
「え、ええ、特にはありませんが……あ、あの……これを校長先生に申し上げていいのか、ちょっと迷ってるのですが……」
「なによ、なんかあるならいいなさい」
 顎に拳を当て、清彦のことを上から覗き込むようにする。長身の豊田真帆は、それだけで存在感がたっぷりだが、ここ数年で言動にも女性校長としての貫禄、威厳が備わってきた。相手が年上だろうが、男だろうが、部下の教師には相応の態度で接する。
「は、はい……実は姪御さんの……武井亜紀、さんのことで……」
 清彦は亜紀の外見が乱れ、素行もあまりよくないことを遠慮気味に告発する。
「そう……成績はどうなの、亜紀……」
「はい、そ、それが、成績の方は申し分ありませんで……」
「なら、多少は大目に見てやってよ。生徒の自主性に任せるのが、うちの伝統でもあるんだからさ……」
「あ、は、はい……」
「それよりさ、あなた、自分の学校生活の方はどうなの?」
 グリーンのスーツを上品に着こなした真帆が鋭い眼光でねめつける。
「わ、私ですか……」
 急に思いもしないことを言われ、清彦は言葉に詰まる。
「うん、問題ない? 自分自身の風紀には」
「あ、いえ、すみません……校長先生、な、なにかそんな、私のことを誰かが? ……」
「いまは私が聞いてるのよ。質問に答えなさい」
 真帆の顔から笑みが消える。
「あ、はいっ、すみません……も、問題はない、と思いますが……」
「大丈夫なのね。わかった。じゃあさ、この写真について説明してくれる?」
 真帆は応接テーブルの上に、一枚ずつ写真を置いていく。ズボンを降ろした清彦が、大股を広げた女性に自身のものを挿入している。女性は同僚の三宅淳子教諭だとはっきりわかる。別の写真はバックスタイルで交わるところを前方から撮られている。もう一枚は、立ってズボンを降ろした清彦のペニスを淳子がフェラチオしているシーンだった。二人とも衣服を身につけたままだが、それがかえって不道徳を強調しているように見えた。
「こっ、これはっ……」
「あなたねえ、学校をどこだと思ってんの?」
「あああ……あああああ……す、すみません、申し訳ありません……」
 清彦はソファを降り、サンダルを脱いで、テーブルの横に正座し、床に深く頭を下げる。
「理事会にかけたら懲戒解雇は間違いないわね」
「ふ、二人ともでしょうか?」
「もちろんよ。合意のセックスでしょ。ラブホじゃないんだからね、学校は」
「み、三宅先生はどうか……助けてあげてください……」
 どういう心理か、清彦はついそう口にした。三宅淳子を心から愛しているわけでもなく、正義感が強いタイプでもさらさらなかったが、そう言うことで、真帆校長の温情を誘おうと無意識の計算が働いたのかもしれない。
「そんなわけにはいかないわよ。あなたが無理矢理やったってなら別だけど」
「そ、そういうことならば、彼女は助かるんでしょうか?」
 成り行きから清彦はそう言葉を続けてしまう。
「……そうね……ええ、そうなるでしょうね。あなたが証言するなら」
 真帆は写真の中から女教師がフェラチオしている一枚だけを手に取ると忌々しそうに破り、灰皿に燃やした。
「わ、わかりました……」
「認めるのね。あなたが強姦したって。ちょっと待って……」
 強姦という言葉が、清彦に重く引っかかったが、真帆は自席の引き出しからICレコーダーを取り出してくると、スイッチを押し、「話して」と捜査官が自白を促すように言った。

 清彦がひととおり話し終えたあと、真帆はレコーダーのスイッチを切ると、「OK、あなたのお望み通り、三宅先生はおとがめなしということで……」
 清彦は一気に脱力し、頭を床に着けてその場にうずくまる。
「干川さん、休んでる暇ないわよ、行きましょうか」
「えっ」意を決するような真帆の強い声に清彦は驚き、顔を上げる。「ど、どこにでしょうか……」
「警察よ、決まってるでしょ。あなた《強姦》したんだから。自分でそう言ったじゃない」
「そ、そんな……こ、校長先生……わ、私は、ただ、先生の言われるままに……」
「なによそれ、私が言わせたとでも? 言ってないわよ、私はなにも。あなたが自分の罪を自白し、強姦してる証拠写真もある。それだけのことよ」
 清彦としては実のところ、教師という職業に退屈し始めてもいた。いまさらながら、本当に向いているのだろうかと考えることもあった。それが自白の強要を容易に受け入れたのかもしれない。ここを解雇され再就職する覚悟はなんとかできつつあった。だがしかしだ……犯罪者として裁かれる未来など、とうてい受け入れることはできない。
「どうか、校長先生、許してください……先生のご裁量でなんとか……」
 清彦は目に涙を浮かべて、懇願する。
「泣いたって駄目だよ。自分の犯した罪を後悔しなさい。入るべきところへ入ってしっかり反省してくるの」
 真帆は暗に刑務所の檻を示して、清彦の反応を見る。
「…………そんな……せ、先生、どうかっ、な、なんでもしますから……」
「なんでもするぅ?」
 真帆は上辺では落ち着いた表情を見せながら、股間から込み上げてくる熱いうずきに体を火照らせる。
「は、はいっ、私にできることがあれば、なんでもおっしゃってください……」
 清彦はどうして自分がそんなことを言いだしたのかよくわからなかったが、とにかくこの窮地から助かりたい一心で声に出した。
「そう……」真帆は輝くような白い歯を覗かせてうっすら微笑む。「なんでもしてくれるんだ、干川先生は……」
 ソファを立ち、ドアへ行って、カチャリと内鍵を閉める。大きな執務机の脇に置いてあるパンプスを取って、清彦の膝元に置き、もう一度ソファに腰掛ける。
「履かせて、それ」
 そう言ってサンダルを突っかけた足を清彦の方へ差し出す。
「え……」
「なんでもしてくれるんでしょ。じゃなかったっけ?」
 そう言って真帆は首をかしげる。しばし、妙な沈黙が校長室を支配した。真帆の顔が一転険しくなるのを察知した清彦は意を決して声をあげる。
「や、やります……すみません、やります、先生……」

 真帆の命令で応接テーブルを少しずらした清彦は、彼女の足元にきちんと正座する。
「し、失礼します……」
 そう言って、エメラルドグリーンのサンダルを足から外すと、黒くてつま先とヒールの尖ったパンプスを履かせる。モデルさながらの引き締まった長い脚は、黒いストッキングで覆われていた。香ばしい微臭が鼻を突く。こんな惨めなことをさせられながらも、清彦はなぜか倒錯的な興奮をわずかに感じ始めていた。
「もうちょっとこっちにきなさい」
 真帆は軽くため息をつくとなんと清彦の頭髪をつかんで自分の方へ引き寄せた。
「あうわああっ……」
 清彦は思わず情けない声を上げながら、膝を擦って前進する。
「磨いて」
 女性校長はこともなげにそう言うと、清彦の膝の上に、パンプスの片脚を載せた。
「せ、先生……」
「いちいち、そんな目しないの。なんでもやるっていったでしょ。やめますか? もう警察行こうか、やっぱり」
 いまにも立ち上がらんばかりの勢いでそう言い放つ。
「い、いえ、先生、や、やります……やりますので……」
「じゃあやってよ、早く。ハンカチもってんでしょ?」
「は、はい……」
 清彦は尻のポケットから、柄物のハンカチを取り出した。
「きれいなんでしょうね?」
「はいっ、まだ使ってませんので……」
 清彦はハンカチを使って靴磨き屋よろしく、膝の上のパンプスをつま先から磨き始めた。

☆ 二

「雨降ってたから、汚れてるでしょ」
 濃いグリーンのスーツ―――ジャケットとスカートを身につけた豊田真帆がソファの上から清彦を見下ろす。
「は、はい……」
 清彦は上司とは言え、ほぼひとつ年下の女性の埃っぽいパンプスをつま先から踵の方へハンカチで磨いていく。ところどころに泥が跳ねたあともある。清彦は息をハーハー吐きかけながら、早くこの惨めな作業から解放されたいと思った。
「もっと丁寧にやりなさいよ、雑だね、あなた」
 膝を踏んだヒールに力が込められる。
「うぐううううっ……」
「きちんとやらないと許さないよ」
 力を込めたヒールを左右にねじ込む。
「はあううぐううっ……や、やります、すみません、校長先生……」

「い、いかがでしょうか……」
 左右のパンプスを磨き終えた清彦が真帆にお伺いを立てる。
「ふん、汚れ取っただけ? 艶は出ないの?」
「す、すみません……クリームもなにもないもので……」
「じゃあ、今度、持ってきなさい」
「あ、はい……」
 これから、この部屋で本格的に彼女の靴磨きをしなければならないのだろうか。そう思うと清彦は背筋に寒気を覚えた。
「それと……靴底はきれいになってるのかしら? 干川先生」
 この場面で、先生呼ばわりされることがかえって屈辱的だ。
「あ、いえ、それは、まだ……すみません……」
「ほら、どう?」
 真帆は足を上げ、靴底を清彦の顔面に蹴らんばかりに近づける。
「あ、よ、汚れています……だいぶ……」
 雨降る道を歩いてきたパンプスの靴底は埃に加え、泥の塊もこびりついていた。
「ねえ、アタシ、足きついんだけど」
 尖ったつま先が額を突いた。
「あうっ……」
 こともあろうに土足で顔を足蹴にされ、清彦は驚愕の眼差しを美人校長に送る。
「なによ、その目は。なんか文句ある? 警察行こうか?」
「い、いえ……すみません……」
「足がきついっていってるでしょう?」
 もう一度、つま先が額を蹴る。今度は体が後ろにのけぞるほど強いキックだった。
「はがうううっ……も、申し訳ありませんっ……」
 清彦は体を戻すと慌ててパンプスの踵に両手を添える。
「きれいにしなよ、早く」
「は、はいっ」
 清彦が片手でハンカチをつかんで靴底を拭こうとするが、大柄な真帆の長い脚は重く、片手で支えきれず、ぐっと下がってしまう。
「なんだよ、それ、力ないのね、あんた」
 真帆の踵はほとんど清彦の膝の上に乗った状態になる。
「あああああ……」
「そんなのできちんと靴底が磨けるわけないでしょっ、ちゃんと靴底を目の前に持ってきてしっかり見ながらやんないと……」
「は、はい……すみません……」
 そう言いながらも片手だけでは、顔の前まであげることができない。真帆も非協力的で、逆に下へ降ろそうと力を加えるほどだった。

S女小説「女子トイレ専任掃除夫の涙」

Kindle小説サンプル

S女小説 レディーマグナム「逆レイプディルド開発室」

S女小説 レディーマグナム「逆レイプディルド開発室」を電子書籍として出版しました。

内容紹介

女が男を犯すことに特化した最新鋭の逆レイプディルド。その開発に強制参加させられた中年男の悲哀。

女子医大病院に付属する医療素材開発センター内のシリコーン素材研究室の室長として、部下の女子研究員たちを意のままに従えていた藪田昌人(40)。密室に近い研究室内での絶対的な立場を利用し、セクハラ、パワハラ、やりたい放題だった彼は、ほんの出来心から研究費の横領にまで手を染めてしまっていた。一方、研究所では友人のドイツ人女性社長から依頼を受けた女性所長の決定で、女性専用のディルド開発を秘密裏に執り行わなければならなくなっていた。その責任者に任命された美人部長、北川冴子(38)が目をつけたのが、藪田昌人率いるシリコーン素材研究室だった。横領の事実を冴子に突きつけられた昌人は、みるみるうちに転落の一途を辿っていく。女性上司はもちろん、元部下の女子研究員、女家族……その他大勢の女性に虐げられ蹂躙される日々は、まさしく終わりなき地獄だった。

  • プロローグ
  • 第一章 王座からの転落
  • 第二章 男を試す女たち
  • 第三章 妻に犯された男
  • 第四章 女たちの肉人形
  • エピローグ

本文サンプル

プロローグ

「結論からいいますとね、ちょっと厳しいかな、というところです」
 ここ《シリコーン研究室》の室長である藪田昌人やぶたまさとは、不安げな表情をしている今西麻美あさみに意地の悪い視線を送って言う。
「せ、先生、どの部分が悪かったのでしょうか。すぐに再提出しますので」
 女子医大一年生の麻美は目鼻立ちの整った美貌をゆがめて焦る。
 シリコーン研究室は、中央女子医大に付属する医療素材開発センター内の機関で、その名の通り医療用のシリコーンを研究開発する部署である。毎年一名ずつ、中央女子医大から研修生を受け入れているが、修了時に彼女たちはレポートを提出する必要があった。研修実習は、進級に欠かせない単位となっており、合否を決定する権限は室長である藪田昌人にあった。
「どの部分がって言うかね…………ううむ、君、とんでもないことやってくれたよね」
「えっ」
コピペやったでしょ。ほら、この辺とか、地肌や毛穴への影響の部分、化粧品素材としてのシリコーンのくだりの辺り」
「あああ、先生、そ、それは資料としての引用部分で……」
「引用ねえ、にしては長すぎない? レポートの本編に入れ込むにはさ」
 そう言われては仕方ないが、藪田の指定した膨大なレポートの枚数は、そうでもしなければクリアできそうになかった。
「延べ十日ちょっとしかない研修結果から、この分量のレポートを起こすにはちょっと情報不足で……」
 麻美は形の良い桃色の唇を噛む。
「何それ? 僕のカリキュラムにいちゃもんつけるわけ?」
「……い、いえ……そんな意味じゃ……」
「情報を読み取る力がないんだよ、あなたに。適当にやっても単位取れるってことになったら、この研究室の信用低下になるから、悪いけど……」
 昌人はすげなく話を打ち切ろうとする。
「先生、なんとかなりませんか……私、留年ってことでしょうか……」
 ここの研修単位は、二年次進級に必須の単位だ。
「コピペは悪質だからね……」
 そう言って藪田はさきほどから机の脇に立たせたままの麻美の顔をまじまじと見る。人形のように整った顔立ちがいまにも泣き出しそうである。白衣の下はどのようになっているのだろう。美しい顔と白衣から出たスラリとした脚が魅力的なことだけは分かっている。
「先生……」
 麻美は翻意を促すようにじっと藪田の目を見つめる。何としても留年は回避しなければならない。高い授業料を払ってもらっている郷里の親に合わせる顔がない。
「あっちで少し話しましょうか」
 藪田は研究室の内鍵を閉めると応接ソファに麻美を案内する。
「あ、白衣脱いで」
 藪田は自分も白衣を脱ぎながら、ソファに座るときは当然だとでもいうふうに麻美に告げる。
「あ、え、でも……」
「どうした?」
「下着だけなので……ご、ごめんなさい……」
 麻美はこの季節、いつも白衣の下は、ブラとショーツだけを身につけているのだった。
「……僕はかまわないけど……」
「そ、それは……」
 麻美は眉毛をゆがめる。
「白衣脱げないなら、このソファには座れないよ。ソファに座れないなら、話はできない。いいの? 僕と話をしとかなくて」
「先生……」
「早く」
 じっと見つめる藪田の視線に押され、麻美はゆっくりと白衣を脱いだ。水色のブラジャーとビキニショーツ。ストッキングは履いていなかった。
「いや、恥ずかしい……」
 麻美は大きな胸を腕で覆うように隠す。
「ほら、そんなの人と話すときにする姿勢じゃないでしょ。腕下ろして、ここに座りなさい」
 藪田昌人は自分の隣をポンポンと叩いていう。
「……あ、はい……」
 しかし麻美が座った途端、昌人は彼女を押し倒し、一気に唇を無理矢理重ねようとする。
「あああっ、先生っ、何するんです、やめてくださいっ……」
 激しく首を振る麻美の顔を両手で押さえて正面を向かせる。
「今西君、君のことが好きなんだ。キスだけさせてくれないか。レポートは合格にする。約束するよ。ね、いいだろ」
 好きだと言われて、麻美は思わず抵抗の力を緩めてしまう。小柄ではあるが、男性として嫌いなタイプではなかったのだ。
「ほ、本当ですか……」
 麻美が潤んだ目でいう。
「うん、ホントだよ……」
 次の瞬間には、昌人は麻美のぽってりとした薄桃色の唇に己の唇を押し当てていた。今度は抵抗の気配がない。しかしそれは受け入れているというよりはじっと我慢している様子であった。昌人は舌を伸ばして麻美の前歯を押し開けるようにして中に侵入させる。
「うううう……」
 想定外のディープキスに麻美は戸惑う。かまわず昌人はブラジャーの上から、麻美の乳房を撫でるように揉む。
「あああああ……先生、駄目、です……」
 麻美の口が緩んだところにさらに唾液を送って濃密に舌を絡ませる。
 フロントホックが外され、張りのある乳房が露わになる。
「くううう……」
―――約束が、違う……
 目を見開いて抗議しようとする麻美の口を封じるように昌人はさらに執拗でねっとりとした接吻を続ける。続けながら、麻美の両太股を脚で挟み込みソファの上に完全に乗せて跨がった。ようやく唇を外すと、すかさず両乳を同時に揉む。
「はううううっ……せ、先生、やめてくださいっ、約束が違います……」
 麻美はミディアムスタイルの柔らかな髪を左右に振り乱して叫ぶ。
「気が変わったよ。もう少し、君のことが知りたいんだ。いいだろ……」
 二本の指で乳首を挟み虐めながら、弾力のある巨乳を揉みしだく。
「はううっ、あああん……」
「うん、乳首の感度は良好のようだね」
 昌人は麻美の右胸に集中し、左手で揉みながら、人差し指の腹で乳頭をコリコリと転がすように刺激する。
「くわうううっんんっ……」
 麻美はいまだ左右に首を振りながらも、抗議の言葉をもはや口にする余裕がない。
「ほう……乳首が、麻美ちゃんの弱点なんだね。評価欄に書き加えておこう」
 昌人はそんなジョークをうそぶきながらさらに手を下ろす。ショーツの上から割れ目をスーッとなぜていく。
「はううううううっ……」
「うん、湿ってるね。これは」
「……んんんん……だ、駄目……」
「駄目じゃないでしょ、もうここまできたら……」
 昌人は麻美のショーツの中に手を入れ、茂みに覆われた秘部をまさぐる。
「はうあああああっ……」
「濡れまくってるじゃない。中央女子医大の学生さんは、みんなこんななの?」
 実は薬学部出身である昌人は女子医大の生徒には並々ならぬコンプレックスを持っていた。自分の上司を含め、彼女たちは女のくせに、簡単に上位の役職を手に入れることができるのだ。いま自分の下にいる麻美だって、ひょっとしたら将来自分の上司になる可能性がある。そうならばもっと大切に扱う必要があるのかもしれないが、そんな余裕はいまの彼にはなかった。
「ああああ、違いますっ、も、もうホントに、先生、これくらいで……」
「だめだよ、もう止まらないよ。医学生だったら、男の性衝動がどれくらいのものかくらい、知ってるでしょ。授業で習わなかったの?」
「……そ、そんな授業ありませんっ……」
「そっか、じゃあ、僕が教えてあげるよ。そうだ。これを補習ということにしよう。補習に合格できれば、レポートの単位をあげるよ……」
 そう言うと昌人は麻美のビキニショーツに両手を掛けて、一気に引き下ろした。
「はうああああっ……や、やめてえええ……」
「ちょっとうるさいなあ、君は」
 いくら独立棟にある防音済みの施設とはいえ、こんなに大きな金切り声を出されれば、通りがかりの警備員に気づかれないとも限らない。昌人はソファ下に隠しておいた手錠を取り出すと麻美の体をソファから下ろし、後ろ手に拘束した。
「な、何をするんです……」
「だから、うるさいってんだよ」
 床に落ちていた水色のショーツを拾い上げると小さく丸めて、愛らしい口のなかに詰め込む。昌人の顔にサディスティックな笑みが浮かぶ。
―――うくうううううっ……
 あまりの凶行に目を白黒させる麻美の口を長めのスポーツタオルで覆い後頭部で結んで猿ぐつわをさせる。何もかもあらかじめ想定し準備して置いた段取りだ。
 麻美は床に額を着け、尻を突き出した惨めな格好でうめき声を上げている。
「そらっ」
 昌人は麻美の胸の下に両手を入れて抱え上げると、向きを横に九十度回転させ、うつぶせせに上半身をソファに預けさせた。そして、彼女の後方に立って、自身のベルトを外し、ズボンとパンツを一気に降ろす。
「麻美、安心しな、すっかりオマンコぐしょぐしょになってるみたいだし、もう半分合格だ」
―――うむううううううっ……
 麻美は呻きながら、体を左右に揺さぶって抵抗しようとするが、昌人に腰をしっかりつかまれる。
「さてと……」
 立て膝をついた悪徳室長が、いきり立ったペニスの亀頭を、すっかり濡れそぼった女子医大生の陰唇に押し当てる。
―――うううううううっ……
「じゃあ、一緒に、レポートを仕上げましょうね」
 昌人はそう言うと一気に腰を突いて、自身のものを根元まで教え子の膣に埋め込んだ。

第一章 王座からの転落

☆ 一

「うら、うら、うら、うらあっ……」
 昌人の腰が麻美の尻をパンパンパンパンと激しく打ち付ける。
「あっ、ああっ、はうあっ、あああん……」
「だいぶ、いい音色を上げるようになってきたな、今西君」
「あああん、藪田先生、も、もう……駄目ですぅ……」
 麻美は初めてレイプされて以来、毎週、この研究室へ来る度に、昌人に犯され続けている。今日も全裸にさせられ、打ち合わせテーブルに上半身をうつぶせる格好で、バックからもう長いこと昌人の抽送を受け続けている。
「駄目じゃないだろ、いいオマンコしてるよ、今西君は。このキュッと締め付けてくる感じがたまらないねえ……くううっ……」
 昌人は前後の抽送に回転運動を交えていく。
「あああっ、先生、ああっ、いやああっ……ああん……」
「奈美恵っ!」昌人は右側のデスクで研究にいそしんでいるロングヘアの研究員、浅田奈美恵を呼ぶ。「内鍵はちゃんとかけてるだろうな」
「は、はいっ……」
 二十八歳の奈美恵は念のために席を立って確認した。
「大丈夫です、先生……」
「お前も早く入れて欲しいんだろ?」
「い、いえ……私は……」
 眼鏡を掛けた美人は、顔を赤らめてうつむく。
「分かった。仕事に戻れ。あとでたっぷり、ぶちこんでやるよ」
 その会話中も、麻美の膣にゆっくりとした抽送を続けている。
「沙樹っ!」今度は左側のデスクでレポートを作っているショートヘアの研究員、二十五歳の新垣沙樹に声をかける。「数値はまとまったか?」
「あっ、は、はいっ、だいたい揃ってます……」
 色白の白衣美女は、振り返って返事をする。
「見せてみろ」
 沙樹がグラフ資料を持ってくると、魔羅をずっぷりと挿入した麻美の尻の上を指さして、「ここに置け」と命令する。
「あ、は、はい……」
「バカヤローっ、そのまま置いたら資料が濡れちまうじゃねえかっ。興奮してるコイツの汗でよおっ」
 昌人はわざと大きな荒くれ声を出し、女たちを怯えさせる。
「す、すみません……」
 奈美恵も沙樹もすでに麻美がくる以前から、昌人の掌中にあった。彼は室長という立場を最大限に利用し、女性研究員たちを性奴隷化していたのだった。
 沙樹は、まずクリアファイルを二枚並べて、麻美の尻の上に、申し訳なさそうに敷き、その上に資料を載せる。老眼ぎみの昌人にはちょうどいい目線の距離だった。抽送を一時ストップさせる。しばらく眺めて、少し考える。
「沙樹よ、このBの12から15までの数値。これじゃ、つじつま合わねえだろ」
「は、はい……でも、何度やっても、そこまでしか理想値に近づかなくて」
「バカヤロー、無理矢理にでも合わせろっ。こんなデータじゃ、上からの予算が満額降りねえじゃねえか」
「は、はい……」
 不条理な昌人の指示だが、逆らうことはできない。沙樹が麻美の尻の上の資料を回収して、席へ戻ると、再び激しい抽送を始める。
「はああっ、ああん、あん、あん、ああん……」
 麻美のかん高い喘ぎが、またもや研究室にこだまする。研究室は、実験装置の騒音が出ることを理由に昨年昌人が予算を申請し、防音工事が施されていた。
「ようし、今日は立ちバックでフィニッシュといくか」
 昌人はそう言うと麻美が打ち合わせデスクを抱えるようにして左右に伸ばしていた腕を取り、すばやく両手首をつかむと、彼女の体を机から引き剥がして後退する。
「ほらっ、脚は開いたままだっ」
「……ああっ、は、はい……」
 腰を下から入れ直して、挿入を安定させ、ゆっくりと打ち合わせテーブルを一周する。麻美は少し脚を開いて、昌人のペニスを膣に埋め込まれたまま、よたよたと歩みを進める。
「ほら、ほら、犯され麻美が研究室を巡回するよ……」
「はうっ、ああん、はああん、せ、先生、やめて……恥ずかしい……ああん……」
「よがりながら何いってんだよ。そうだな、自分の口で言ってもらおうか、そのかわゆいお口でな、ははっ」
 昌人はそう言って両腕をぐっと引きつけると、麻美に耳打ちする。
「い、いやですっ……そ、そんなこと言えませんっ……」
「いいのか? 言うまで終わらないよ。何周だってやらせるから。今西君、いい加減、僕の性格分かってるだろ。どうなんだ」
 昌人はバイアグラで増強したペニスを強く打ち付ける。
「はううっ……あああ、い、言います……な、奈美恵さん、さ、沙樹さん、い、淫乱麻美は……ま、昌人先生の太いチンポなしでは生きていけません……い、いまから研修室を一周しますので、恥ずかしい姿を見てやってください……あああ……はん、あああん……」
「そら、一回だけじゃないぞ、ずっと言い続けるんだ」
「は、はい……な、奈美恵さん…………」
 麻美は昌人の言う通りに立ちバックで犯され研究室を巡りながら、恥ずかしい台詞を繰り返す。
「ほら、お前たちも呼ばれてるんだから、しっかり見てあげないか。真面目にやりゃいいってもんじゃねえぞ、結果を出しつつ、要領よくやれっ、いつも言ってるだろうがっ」
 またもや、最近凝っているヤクザ映画に影響を受けた言葉遣いを女たちに浴びせる。二人の研究員は手を止め、体の向きを変えて、室長に犯されまくる研修生に哀れみの眼差しを送る。
「ようし、いくぜ。そこに手を着けっ」
 ソファ脇の壁に麻美の両手をつけさせ、激しい抽送を開始する。まだそんなに男慣れしていない十九歳の膣は締め付けがよく、昌人はあっという間に欲望を白濁化して彼女のなかに放出してしまう。
「うううっ、くうううううっ……ふわあああっ……」
「はああああん、あああああん、あああああっ……」

「ようし、じゃあ、いつものように、後片付けしてもらいましょうか」
 昌人は前をはだけた白衣を脱いで全裸になり、ソファに浅めに座ると大股を広げる。最初のうちは拒絶していた麻美だが、もはやそれが無駄なことだと分かっているので、素直にザーメンまみれのペニスを口に頬張る。
「ちゅぱちゅぱ吸って、きれいに舐め取ってちょうだいよ」
 麻美は汗で額に張り付いた髪を後ろへ何度か拭うと意を決して掃除フェラチオに取り組んだ。
「僕のミルク、残さずゴックンしてね」
 言う通りにしないと、またヤクザのような口調で怒鳴り散らされることは分かっている。早く仕事を終わらせた方が得策だと分かっている麻美は一生懸命、室長が放出した精液を喉に送っていく。
「ようし、じゃあ、いつものコースいくか。どっちがキスだ?」
 それを聞いた途端に、奈美恵と沙樹の体がびくつき、二人同時に席を立ち、こちらへ駆け寄ってくる。
「わ、私が……」
「先生、わたくしにさせてください……」
「おい、おい、そんなにせがんでくるなよ。じゃあ、先に全裸になった方にキス権をやろう」
 奈美恵は今日も昌人がこのゲームを行う可能性があると思い、通常は身につけている服を着ずに、白衣の下はブラとショーツだけにしていた。白衣のボタンを速攻で外して脱ぎ、沙樹の方を見て驚く。
「奈美恵、残念だったね」昌人があざ笑うように言う。「沙樹の方が一枚上手だったよ」
 白衣の下を全裸にしていた沙樹が、まっさきに昌人の唇を求めてきて、昌人もそれを受け入れる。
「おいおい、慌てるな」
 昌人が唇からショートヘアの沙樹を剥がすようにして苦笑する。昌人は麻美を床に仰向けに寝かせると、上から顔を跨ぐようにして、バイアグラのおかげでまだいくぶん勃起したままのペニスを口腔に無理矢理押し込む。
「まだ残り汁が出るから、しっかりしゃぶって、飲んでくれ。な」
 そう言って、麻美の頭の上方、少し離れた位置に仰向けに寝させた沙樹に覆い被さるようにして、ディープキスを始める。残った奈美恵は屈辱の仕事を始めなければならなかった。眼鏡を外すと、麻美の下半身をまたいで屈む。いまから、目の前にある昌人の尻の穴を舐めなければならないのだ。
「くうううっ、いいぜ、たまらん……」
 研修生の麻美にペニスをしゃぶられ、沙樹の口腔でねっとりと舌をからませあい、そして、ロングヘアの奈美恵にはアナルに舌を突っ込んでもらう……。まさしく至福の瞬間を堪能していたそのとき、防音ドアをノックする鈍い音がかすかに聞こえた。
「せ、先生……」
 奈美恵が思わず、声を掛ける。
「かまうもんか、続けろ」
 誰が尋ねてきたのか気にはなったが、若い美女たちによる至極の4Pプレイを中断するつもりは毛頭なかった。
 しばらくして、研究室の電話が鳴る。十回ほど鳴って、止んだが、再び鳴り始める。ここが留守でないことを知っているのか、それともよほどの緊急の要件か。昌人はしぶしぶ、奈美恵に応答するよう指示する。
「はい、藪田研究室です……あ、北川部長……は、はいっ、すみません……」

☆ 二

「ぶ、部長、どうもすいませんでした……」
 藪田昌人が、研究室に訪れた北川冴子に下卑た笑みを浮かべる。年齢は昌人より二つ下の三十八歳。その若さでしかも女性ながら、整形外科系の医療素材研究を統括する第三研究部の部長である。研究員教育には厳しく、男女年齢関係なく叱咤できる長身美人である。
「みんないたんでしょ。どうして鍵なんて掛けてるわけ? それって、いつも?」
 白衣の美女は、応接ソファに腰掛けると向かいの昌人に開口一番そう問い詰めた。
「い、いえ……たまたま全員研究に没頭していまして。そんなときは、集中を高めるために鍵を掛けることがありまして……」
 昌人の苦しい言い訳に、冴子は疑念の目を向ける。くっきりとした目の上には優雅ながらも力強い眉、鼻筋がスッと通り、適度なボリュームのある唇は完璧な造形を呈している。正統派美人とは彼女のことだろう。冴子は昌人を始め女性研究員の妙に汗ばんだ肌や乱れた髪、呼吸の荒さなどに違和感を覚えたが、いまは追求しないことにした。いずれこの研究室が閉鎖になることは間違いないのだから。
「まあ、それはいいわ。あなたに至急尋ねたいことがあったから来たの」

S女小説 レディーマグナム「逆レイプディルド開発室」