Kindle小説サンプル

S女小説「シークレットリング」


S女M男小説「シークレット・リング」をKindle本としてリリースしました。

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美しく強い女性ボクサーたちになじられ、殴られ、蹂躙され続ける中年男たちのストーリーです。

ご一読いただけると幸いです。

目次

  • 第一章 ブーツの輝き
  • 第二章 淑女の下で
  • 第三章 美しき姉妹
  • 第四章 娘は鬼上司
  • 第五章 ワインと逆レイプ
  • 第六章 処刑ラウンド
  • エピローグ

本文サンプル

第一章 ブーツの輝き

☆1

「脱がなくてもいいよね?」
そう聞く女性を見上げ、「あ、はい……」と返事をすると、彼女は足置き台にロングブーツの右脚を置いた。
こんなことは初めてだった。靴磨きのバイトを始めてひと月が過ぎようとしていたが、そんな女性は初めてだった。そもそも男である自分に靴磨きを頼む女性自体が少ない。おそらく一割にも満たないだろう。その全員が、靴をいったん脱いで、私に預け、磨き終わるまで椅子に座って待った。しかし彼女は違った。私は改めてその女性を見上げた。背が高く上品な顔立ちをしている。カーキ色のコートを着ていても、その豊満さがわかるバストの持ち主だった。年の頃は、おそらく三十代半ばくらいか。であるならば、五十歳を間近に控えた私より、一回り年下ということになる。
「よかったら、椅子を使って下さい」
私は緊張気味にそういった。
「時間かかるの?」
「そうですね、長さのある靴なので。でも十分くらいいただければ……」
「じゃあいいわ。このままで」
「あ、あと、すみません、ロングブーツですので、プラス千円になりますけど……」
「うん」
女性は静かな微笑みを返した。
「ありがとうございます」
そういった瞬間、なぜか私の目に涙がじわっとにじんだ。私はやはり靴磨きの仕事をしているのだと思った。女性だろうが年下だろうが、目の前に差し出された靴は磨かなければならない。
彼女が履いているのは、黒い本革のロングブーツだった。靴の銘柄には詳しくないが、おそらく外国製のブランドものだろう。
「いいお靴ですね」
私は自分の仕事意識を高めるかのようにそういった。
「そう?」
女性はいつのまにか携帯電話を取りだし、それをいじっていた。スマートフォンと呼ばれている大きなサイズの電話だ。
「うん、いや、安物じゃないよ、確かフランス製の……だから、大事にお願いね」
彼女は、電話に目をやったままそういった。
「は、はいっ」
私にはブランドの詳しい知識は無かったが、明らかに上等な靴だ。しかもその細身の形が、彼女の長い脚に、ピッタリとフィットしていた。
「凄くお似合いですね」
私は思わず、日頃あまり口にしないようなことをいってしまった。いってしまったあとで、恥ずかしい気持ちがこみ上げてきた。
「ありがと。それはいいけど、手、動いてる?」
彼女は、私の心の内を見透かすように冗談めいた口調で言った。
「すみません……」
私は慌てて自分の仕事に戻った。通りを行き交うひとびとの視線をいつも以上に感じる。やはり、このような形で、靴を磨かせる女性というのは珍しいのだと思う。しかし、当の女性は、そんなことをあまり気にしない様子である。こんなひともいるのだと、私は改めて女性についてのイメージを更新させられたような気がした。
シャープなつま先から、いくぶん皺の入ったくるぶし、そしてふくらはぎへと、ブラシをかけていく。
「すみません、靴の裏、あげてもらっていいですか?」
履いたまま磨く場合はあまりやらないのだけれど、ブーツの靴裏もきれいにしてあげようと思った。
「こう?」
彼女は、踵を支点にして、靴の裏側が見えるようにつま先を上向けた。
「はい、ありがとうございます……」
靴裏用の硬めのブラシを使って、溝に詰まった汚れなどをこそぐように落とす。
「やっぱり、椅子借りちゃおうかな」
「あ、どうぞ」
彼女は、脇にどかしていた脚の長い丸形スツールを引き寄せて腰掛けた。楽々、足置き台に届く角度を見て、いかに彼女の脚が長いかがわかる。特に膝から下が長い。欧米モデルのような体型だ。私はもう一度彼女をそれとなく見上げた。栗色に輝く髪が肩口のところでやや内側にカールしている。今このままでもファッション誌の被写体として通用するのではないかと思われる美貌だ。私は思わず見とれてしまう。
「どうした?」
私の視線に気づいて、笑みを見せる。
「いえ、すみません……あまりにお美しいと思ったもので……」
「上手ね。悪いけど何も出ないわよ」
視線を電話に戻しながらからかうようにいう。
「煙草吸っていい?」
「あ、もちろん……」
私はなぜかどきどきしながら、腰を上げて、スタンド式の灰皿を彼女の方へ寄せる。なんだか特別な体験をしているように思えた。世の中にはこんな女性もいるのだ。カチッと音がして、ややあって、フーッと煙を吐く吐息が聞こえた。
私は「失礼します」と彼女の靴底を少し持ち上げ、裏側の奥、ヒールの方までタオルで手早く拭いた。それからタオルを替えて、やはりつま先から、くるぶし、ブーツの筒の部分を丁寧に拭いていく。女性の脚がそのまま感じられる程にそのロングブーツは彼女に密着していた。かなり長めにつくられているが、彼女の脚がそれ以上に長いために、膝下から少し降りたところに履き口が位置している。抜けるような白い肌と黒革のコントラストが芸術作品のようである。素足にブーツのスタイル。このひともそうだ。最近は、そういう女性が増えている。
「悪いけどさ、灰皿、こっち側にやってくんない? 私、左利きなの」
「あ、は、はい……」
私はすぐに手を止め灰皿を持ち上げ移動させた。非力な私には、思わぬ重労働であったが、彼女の落ち着いたハスキーボイスには、有無を言わさぬものがあった。
ブーツの汚れがとれたところで、クリームを塗り込んでいく。細部にもまんべんなく塗っていく。シンプルな形状の靴だからやりやすい。そのあと、再びつま先から仕上げの布で磨き上げていく。油分を補充された革は、光沢を取り戻していく。かくして、女性の右脚のロングブーツは、ピカピカに磨き上げられた。
「すみません、お客様、反対側の脚をお願いします」
女性は、煙草の火を灰皿で揉み消すと右脚を下ろし、代わりに左脚のブーツをカツッと台を踏み下ろすようにして、私の目の前に置いた。私は彼女を見上げ、もう一度、「すみません」と小さく頭を下げ、後半の仕事に取りかかった。

「ありがと。艶バッチリじゃない」
女性は脚の角度を変え、ブーツの内側や外側を見ながら満足そうにいった。
「いえ、どういたしまして……喜んでいただけると嬉しいです」
「そういえばさ、ここ、前は違うおじさんだったでしょ」
「あ、はい……実は彼が入院中でして、臨時で私が留守を頼まれまして……でも来週戻ってくるんです」
「そうなんだ……で、あなたはどうすんの?」
「無職になります、ね……」
私は、赤面するのを感じながら、あえておどけた調子でそういった。
「ふうん……あなた、いくつ?」
「え、あ……四十八になります」
不意を突かれた質問に私はどぎまぎした。
「健康? ずいぶんスリムだけど」
「あ、はい……痩せてますけど、もう十年くらい、風邪一つ引いてません」
何やら期待が湧いて、彼女にそんなアピールをしていた。
「そう、実は私、ジム経営してんだけど、ボクササイズの。ちょうど今スタッフ探してて、よかったら面接にきてみない?」
「ほ、ホントですか? はいぜひ……」
私は仕事の内容も聞かずにそう答えた。
「じゃさ、来週いつこれる?」
「えっと、月曜日にここの主が戻ってくるんで、それ以降だったら、いつでも大丈夫です」
「そう、じゃあ、火曜の朝十時、いい? 近くだから」
そういって、彼女は、私に名刺を渡した。名刺には、「ローズ・レディースボクササイズジム 会長 山岸由香」と書いてあった。裏返すと簡単な地図も記載されていて、確かにここから徒歩で十分とかからない場所にある。
「あ、ありがとうございます」
「よろしくね、待ってるから……いくら?」

私は彼女にお釣りを渡しながら、靴磨きはもちろん、面接の機会まで与えてもらったことに何度もお礼をした。相手が遙かに年下の女性であることなど、関係なかった。

☆2

火曜日の朝、約束の二十分前、薄桃色の建物の前に私はいた。外壁の上部には「ROSE LADIES BOXERCISE GYM」という銀色に光る英文の看板がセンス良く配置されている。道路に面した建物の一階には、さほど大きくないガラスドアとガラスの窓があしらわれていて、そこからなかの様子を伺うことができた。平日の午前中ということもあってか、なかにはまだ人影は見当たらず、パステルカラーに彩られたリングやサンドバッグが、独特の雰囲気を醸し出していた。まさしく、女性のためのボクシングジムと言った色合いだった。
私は時間調整のために、そこをいったん離れて近くを散策することにした。繁華街から徒歩で十分程度離れた場所だが、すでに都会の喧噪からは解放された気分がある。しかし、住宅はあまりなく、事務所が詰まった雑居ビルや小さな会社のオフィスビルなどが連なるエリアだった。
「山岸由香さん……」
私は名刺をポケットから取り出し、彼女の氏名を声に出してつぶやいた。あんな美しい人がこんな自分を雇ってくれるなんて……。いや、まだ決まったわけじゃないんだ。でもなんとか自分を使ってもらえないだろうか。彼女の要望に何でも応える心づもりはできている。一張羅のスーツを売らずにとって置いてよかったとつくづく思った。
ジムの建物が属するブロックを一周して戻ってくると十時三分前になっていた。私は、ガラス扉に自分の姿を写し見た。ずいぶんと頭髪がさみしくなっている。考えてみるとあと二年で五十なのだ。そして、この恰幅のなさと言ったらありはしない。確かに食べられてないのだから仕方が無い。カップラーメンばかり食べているから、やせ細っているのに、下腹だけは少し出ている。私はまがい物の腕時計が十時一分前を指したのを確認すると、指定された裏口の方へ回った。インターフォンを押す。
「はい」
「あ、細田です……靴磨きの……」
少し待って、扉が開いた。
「おはよう」
「お、おはようございますっ」
白いTシャツを来た由香さんの顔には、うっすらとした上品な笑顔が浮かんでいた。先日とはまったく違ったカジュアルな雰囲気で、化粧っ気もなかったが、地の美しさがきらめいていた。大きなバストに思わず目が行ってしまう。
私は一気に緊張と興奮の度合いを高めた。
「どうぞ」
彼女について二階へと上がる。デニムのショートパンツから伸びた白くて長い脚は筋肉質でありながらしなやかに輝いている。
部屋は行き届いた空調のせいか、かなり温かかった。しかし、コートを持たない私にはちょうど良かった。むしろ暑いくらいかもしれない。現に彼女は、まるで盛夏のような軽装だ。私はその女性会長に指示されて、白くて広いテーブルの椅子に座る。スタッフ用の打ち合わせテーブルのようだ。
「履歴書持ってきた?」
「はいっ」
私は借り物の手提げカバンからそれを取り出し、向かいに腰掛ける由香さんに手渡した。彼女はざっとそれを眺めた。三十秒も見ただろうか。
「健康だよね? もう一度聞くけど」
「あ、はい……それはもう……痩せてはいますけど」
私の身長は百六十一センチしかない。体重は、おそらく四十キロ前半だろう。適正体重を考えるとかなり危ない状態だ。栄養失調と診断されても仕方が無いレベルである。しかし、ここは何としても彼女に雇ってもらわなくては、この体重さえも維持できないだろう。
「ホント?」
「は、はい……でも少し痩せ気味なので、もう少し体重を増やして、体力もつけていこうと思ってます」
「だよね……腕見せて」
「はい」
私は前に腕を差し出した。するとそれに平行になるように彼女も腕を伸ばした。
「やばいよ、あなた。ガリガリじゃない」
由香さんの白い腕は、私よりずっと太く逞しかった。私はもはや照れ笑いを浮かべるしかなかった。
「じゃあさ、ちょっと頼りないけど、体は健康だっていうから、雇うことにするわ」
「ほ、本当ですか? ありがとうございます」
私は思わず喜びと感謝を口にした。半々の確率で、不合格にされるだろうと思っていたのだ。まずは年齢的なことがあった。いや、それがこの上ないネックだと思った。あらかじめ年齢は申告済みだったが、思い直すということもあり得る。事実、これまで、たくさんのバイト面接に臨んだが、ことごとく年齢制限にひっかかったのだ。その都度、(年齢で切るのなら、最初から呼ばないで欲しい)と思った。
「じゃ、契約だね」
遼子さんは、テーブルの上のクリアファイルから、書類を一枚取りだし、私の方へ向けて置いた。
「そこの一番下の欄にサインして」
その口調には有無を言わさぬ圧力があった。サインの欄の上は、法律用語のような小さな文言でぎっしりと埋め尽くされていた。
「あ、はい……」
私には、ここですぐにサインをすることこそが、彼女にたいしての感謝や忠誠を示すことに他ならないと考え、実行した。細かな文言を読むことはあえてしなかった。
「印鑑なんて持ってきてないよね」
「あ、はい……」
「拇印でいいから」
遼子さんは、部屋の隅の棚から、朱肉を取り出して、ふたを開け、私の前に置いた。
「はい……」
拇印を押した瞬間に、冷たい感触が背骨からせり上がってくるように感じた。
「心配しないで。形式的なことだから」
「あ、はい……」
私は、もちろんです、とでもいうようにして彼女に対して多分にご愛想的な笑みを見せた。その後すぐに、私は、働く時間や時給も決めていないことに気づいたが、それは大した問題ではないと自分に言い聞かせた。今日この場で、私を雇うことに決めた彼女に敬意を払うことが何よりも大切なのだ。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「ところでさ、住むところはどうしてんの? うち一応、寮があるんだけど」
「え、ホントですか」
願ってもない話だった。家賃が払えない程切迫していた私は、住処を大家さんに追い出され、友人を頼って転々としていたところだったのだ。
「ぜ、ぜひお願いします」
「そう……わかった。だけど、寮の掃除なんかもきっちりやってもらうけど、いい?」
「はい、それはもちろん……」
「おはようございます」
ふいに部屋の入り口から声がした。私と同じ背格好の男性が立っている。年齢はもう少し上だろうか。
「ずいぶんとゆっくりしたご出勤じゃない。何してた?」
「すみません、家の方の片付けが時間掛かってしまいまして」
「ったく……なにやってんの……つったってないで、入っといで」
「はい……」
男性は緊張気味に私たちのテーブルに近づいてきた。私にもその緊張感が伝わる。
「彼、うちの夫。ジムのなかではいちスタッフだけど」
「あ、この度お世話になることになりました、細田といいます」
私は立ち上がって挨拶をした。
「山岸です。よろしくお願いします」
これが由香さんの夫であるとはにわかには信じがたい風貌だった。痩せてみすぼらしい六〇前後のおじさんである。頭は両脇を残してきれいに禿げあがっている。ただ顔立ちは悪くない。美男と言っていいと思ったが、全体のイメージとのアンバランスさが妙に滑稽に見えた。
「コイツがジムの掃除とか雑用を全部やってんだけど、要はそれを手伝ってくれれば良いから」
由香さんが自分の夫をコイツ呼ばわりしたことに私は驚いた。しかもそれに対して彼は異を唱えることなく頷いている。いったいこの二人はどんな関係なのか。
「じゃあ、もういいから、仕事に戻んな」
「はい……」
彼は由香さんに丁寧にお辞儀をして下がっていった。私はあっけにとられた。
「何? どうかした?」
由香さんは、何がおかしいのかといった風に私を見た。
「いえ、なんでもありません……優しそうな旦那さんですね」
「もうちょっと、仕事ができればいいんだけどね。あなたも頑張ってね」
「あ、はいっ、よろしくお願いします」
「じゃあ、明日からよろしく」
私はその後、ジムから歩いて行ける距離にある寮へと案内され、その日のうちに、すべての荷物を移動させた。荷物といっても、衣服を中心とした手荷物だけだったので、引越しはごく簡単だった。かくして私の新しい生活が始まった。

(続く)

シークレット・リング(Kindle本)

どうぞよろしくお願いしますm(__)m


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