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S女小説 名門私立S女学園2「学年制覇」


S女小説 名門私立S女学園2「学年制覇」を電子書籍として出版しました。

内容紹介

女生徒たちの奴隷と化した男性教諭が、さらなる虐待や陵辱を受ける物語

女子高教諭の弘信が犯した校内不倫の代償はあまりにも大きなものだった。女生徒一人ひとりに土下座で詫びさせられ、裸に剥かれ、さらには全員から総計百発に及ぶ一本鞭の罰を受け、挙げ句の果てにはクラス委員長の早川沙樹とクラス委員葉山静香の二人にペニスバンドで尻穴を貫かれたのだ。しかし強度のS性を秘めた少女たちの野望がこの程度にとどまるはずがなかった。クラスを支配し弘信を奴隷状態に置いた沙樹の次なる目標は、学年全体の制覇であった。

第一章 女生徒たちの靴磨き

第二章 母姉への屈辱舌奉仕

第三章 秘密を握る少女たち

第四章 張形はクラスの備品

第五章 美人留学生の鞭打ち

第六章 尻に名前を刻まれて

本文サンプル

第一章 女生徒たちの靴磨き

☆ 一

「で、では……授業を始めます……始めさせていただきます……」
 稲田弘信は教壇に上がり、二年一組の女生徒たちを伏し目がちに見渡すとそう言った。自分の声がいくぶん震えているのが分かる。彼女たちがこちらを見る目がこれまでと明らかに違っている。一年生最後のクラス会において、弘信の担任教師としての権威は地に堕ちてしまった。無理もない。副担任である新任養護教諭、石坂真由美との校内不倫を生徒一人ひとりに土下座で詫びさせられ、裸に剥かれ、さらには全員から総計百発に及ぶ一本鞭の罰を受け、挙げ句の果てにはクラス委員長の早川沙樹とクラス委員の葉山静香の二人にペニスバンドで尻穴を貫かれたのだ。
 あまりのショックに翌日の終業式はもちろん、年次明けの始業式も副担任の石坂真由美に任せ、学校へは出勤したものの、職員室から出ることができなかった。女生徒たちの前に姿を現す勇気がなかった。彼女たちは単なる余興くらいにしか思っていないのかもしれないが、虐待陵辱を受けた当事者にしてみれば、簡単に割り切ることはできなかった。しかし、いつまでもこもってばかりいる訳にもいかない。仕事をしなくては、自分も家族も生きていけない。
「ボーッとしてないで、早く始めて下さいよ」
 早川沙樹がボブヘアの髪を触りながら、切れ長の美しい目で、弘信に強い視線を送っている。教壇に立っていながら、弘信は上から見下ろされているような気になった。
「あ、はい……すみません……では……新しい教科書を開いてください……今日から、数Ⅱに入ります……は、入らせていただきます……」

 幸い授業を妨害されるようなことはなかった。早川沙樹を始め、全員が真面目に勉強に取り組んでいる。そこだけを見れば、歴史ある女子高の優秀な女生徒たちそのものなのである。授業に熱が入るにつれ、弘信は彼女たちの中に棲む悪魔の存在を忘れそうになる。

 授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。昼休みだ。
「では……時間も来ましたので、今日はここで終わりにします……」
「先生」
「あ、はい……早川さん……」
「今日はずいぶん久しぶりだったね……」
 沙樹は窓際最前列の自席で片頬杖をつき、斜に構えて言う。二年生になって髪が少し長めになり、一段と大人の女性へ近づいている。
「あ、はあ……ちょっと、体調を崩していまして……」
「学校を休むほどじゃなかったんでしょ。出勤はしてたって聞いてるよ」
「え、あ……す、すみません……」
「終業式も始業式も、石坂さんにまかせっきりで、ちょっとたるんでるんじゃない?」
「い、いえ……あ、は、い……」
 次第に強くなっていく沙樹の口調と対照的に弘信は口ごもっていく。
「こっち、おいでよ。アタシが話してるんだからさ」
「あ、はい……」
 弘信は手に持ちかけていた教科書類を教卓に戻すと、沙樹の席へ赴いた。弁当を広げたり、食堂や売店へ赴こうとしていた女生徒たちが寄ってきて人垣を作る。
「座んな、そこ」
 沙樹は体を半回転させ、机の下から脚を出すと、自分の足元を顎で指して言った。
「は、早川さん……」
「早くしなさいよ、言われているでしょ」
 目の大きな葉山静香が弘信の背中を叩いて言う。バレーボール部の長身美女、時本結菜が腕組みをして近づいてくるのが見えて、弘信はすぐさま従った。固い床に跪いて正座の姿勢を取る。
「ねえ、どうして仮病なんて使ったの?」
 沙樹は紺ハイソックスを履いた長い脚を組みながら聞いた。上履きのつま先が弘信の鼻をかすめそうになる。
「はうああ……い、いえ……仮病ではありません……本当に具合が悪くて……」
「でも、学校には来れたわけでしょ」
「そ、それは、そうですが……」
「それが仮病って言うんだよ」
 いきなり上から白いブラウスの腕が伸びてきて、弘信の頭髪を鷲づかみにし、ぐいと引き上げた。
「きひいいいいっ……す、すみませんっ……」
「どうしてサボった? 終業式も、始業式も、今日のホームルームだって、石坂さんにまかせっきりで……あんた、担任なんてやる資格ないよ」つかんだ髪を前後に揺らしながら罵倒する。「ああっ?」
「きひっ、くわあああっ……も、申し訳ありませんっ……」
「いっそのこと、担任と副担任、交代したら?」
 静香の声がする。
「だよね」沙樹が髪をつかんだ手にいっそう力を加えて頷く。「それがウチらの要望だよ……いや、命令かな」
「あああ……早川さん……沙樹様……」
 クスクスと周囲から笑い声が聞こえる。
「何、恥ずかしそうにアタシの名前呼んでんだよ。ここじゃ、やりにくいか?」
 沙樹が言うとおり、さすがに教室では、様付けした女生徒の名前をはっきりと声に出すのにはためらいがあった。
「……は、い……すみません……」
「じゃあ、ウチらもお腹空いてきたし、続きは放課後やろうか……例の場所でさ」

 放課後、弘信は体育倉庫へ赴く前に、石坂真由美のいる保健室を覗いてみる。
「稲田です」
「どうぞ」
 ドアを開けて部屋にへ入ると白衣の美女の足元に跪いた。
「ま、真由美様……」
「どうだった? 授業は」
 栗色のセミロングヘアをかき上げて、二十四歳の美人教師は聞いた。
「は、はい……授業の方は特に問題なかったのですが、今日、これから体育倉庫の方へ呼ばれています……」
「そう、じゃあ、頑張ってこないと」
「は、い……それと、沙樹様の方から、担任と副担任を交代するよう言われまして……」
「……そう」
 弘信は、真由美の顔色をうかがいながら続ける。
「……さすがにそれは人事の領域になりますので……問題があるかと……」
「そうかな。校内の最終的な人事権は校長だよね、確か。学年主任に進言してもらう形を取れば、できるんじゃない?」
「ま、真由美様の方はそれで……」
「私は問題ないわよ。実際、ここのところ生徒の前に出て担任の役割してるのは私なんだから。コソコソしてるあなたが副担任やった方がいいって生徒たちが思うのも当然じゃないかしら」
「あ、あああ……は、い……」
「要は、あなた次第ってことでしょ。どうなの? 表向きも、アタシの下に着く覚悟ある?」
「そ、それは……」
 弘信の中でいろんな思いが錯綜する。世間への体裁もあるし、妻にはどう説明すればいいだろう。責任の負担は減るものの、雑用が多いのはむしろ副担任の方だ。
「も、もう少し、考えさせてください……すみません……」
「ふっ……じゃ、そうなさい……それより早く行った方がいいんじゃない? 体育倉庫で拷問受けるんでしょ、沙樹様に」
 真由美が茶化すように言った。
「ま、真由美様……」
 弘信はすっかり女主人ぶりが板に付いた恋人の言葉に慌てる。壁の時計の時間を見て、「はい、では行って参ります……」と立ち上がり、一礼をして部屋を出た。

☆ 二

 体育倉庫に着いた弘信は、まだ誰も来てないのが分かって安堵した。扉を閉めて明かりを点け、奥の体操マットの上に正座をして待った。
 前室の本倉庫では聞こえていたバレーボール部の打球音や掛け声が、奧のこの部屋ではほとんど聞こえない。
 弘信も最近知ったのだが、かつて教員同士で組まれたバンドの練習場として使われていたことがあって、その際に完全防音処理が施されたらしい。どうりで用具倉庫にしては分厚い扉が使われているわけだ。
 そんなとりとめのない思いに時間を潰していたら、扉が開く音がして女生徒たちが入室してきた。
 委員長の沙樹を始め、静香、結菜、陽子のクラス委員が全員揃っている。加えて、十人を超えるクラスの生徒が見学に来ている。
「あれ?」
 沙樹が正座する弘信の前に仁王立ちになって、首をかしげた。
「あ、はい……」
 遅刻もしておらず、正座の姿勢で待っていた弘信は、自分に落ち度を認めることができず、ただ大きく唾を伸び込んで、沙樹の方へ首を伸ばす。
「服、着てていいの?」
 沙樹が腕を組み、ため息をつく。
「あ、いえ……」
 まさか、裸で待っているのが当然だとでも言いたいのだろうか。
「ウチらが、この部屋でアンタを指導しようっていってんだからさ」と静香が続ける。
「素っ裸になって、待ってるのが当然だよね」
 そう言う陽子は長い黒髪に赤いフレームの眼鏡がよく似合っている。一年次にはかけてなかったので、視力が落ちたのか、もしくはコンタクトをしていたのだろう。
「すみません、言われてなかったもので……」
 弘信は沙樹を仰ぎ見、反省しきりの顔で言った。立ち上がってベルトを緩め、シャツを脱ぎ、ズボンを降ろし、すばやくパンツ一枚になった。沙樹にジロリとねめつけられ、パンツも脱いで気をつけをする。
 嘲るような蔑むような声があちこちから上がるも、大人の男の裸体を目の前にした少女たちの興奮が伝わってくるように弘信は思った。
「言われなかったから、脱いでないんだ……服を着たまま待ってるんだね、お前は……」
 沙樹が、弘信の怯えを弄ぶようにつぶやく。
 白いウェアに赤い短パン……バレーボール部のユニフォームを身につけた結菜が背後に回るのを見て、弘信は思わず、肩をびくつかせる。
「体で分からせてあげようか……」
 沙樹がそう言った次の瞬間、後ろから長くていかにも健康的な腕が回ってきて弘信の首にからみつき、そのままじわじわと締め上げていった。

「くぅううう……く、苦しい、です……」
 弘信は、背後から首を締め上げる結菜の腕を数度叩いた。
「何それ、ギブアップのつもり?」
 沙樹が嗤う。
「もう降参なの?」
 静香が言うと、見学に来た女生徒たちから嘲笑が漏れた。弘信は苦しさと恥ずかしさで顔を赤くする。
「きひいいいっ……許してください……ゆ、結菜、様……」
「弱すぎるよ、アンタ」
 結菜は腕を緩めると、やれやれといった調子で立ち上がる。
「分かった?」
「反省してる?」
「どうすんの、次からは」
 沙樹と静香、陽子が矢継ぎ早に言葉で責める。
「は、はい……すみませんでした、本当に。こ、今度からは、皆様方にお呼び出しをうけたら…………必ず服を脱いでお待ちします……」
 弘信は途中で咳き込みながらも、なんとか応える。
「全裸で?」と沙樹。
「は、い」
「誰か他の人が入ってきたら、どうすんの?」
「そ、それは……」
「どうするつもりなの? 分かんない?」
「す、すみません……」
 うつむく弘信の目に沙樹のローファーが目に入る。クラス委員のメンバーは、ユニフォーム姿の結菜以外、上履きでなく革のローファーだった。
「この頭は、算数の計算しかできないのか?」
 沙樹の足が跳ね上がり、ローファーがコツンと側頭部を蹴った。再び周囲からクスクスと笑い声が上がった。
「も、申し訳ありません……分かりません……」
「そうか、分かんないか……じゃあ、アタシのローファー磨きながら考えよっか……あれ、こっちへもっといで」
 青いバケツを顎で指した。
「は、はい……」
 弘信は裏返しになったバケツを沙樹の足元へ移動させる。昨年度、この上に載った真由美のブーツを舐めさせられたことを思い起こす。
「磨くくらいは簡単だよね?」
「は、い……」
 舐めるよりはよほどましだ。沙樹もきっとあのときのことを思い出して言ったのだろう。弘信はさらのハンカチをポケットから取りだし、すでに黒光りしているつま先にさらなる磨きを掛けていった。沙樹のローファーは、あらためて磨く必要が無いほどに手入れが施されていた。あの手下のように扱っていた兄に磨かせているのだろうか。兄の顔を思い出し、同時に真由美が彼にバックから犯される映像が甦ったので、弘信は慌てて頭から追い払った。
―――ううう……
 クスクスクスとまたもや周囲から笑い声が聞こえたかと思うと頭頂部に冷たい感触があった。ハッとして頭を上げると、沙樹のすぼめた口から唾液が糸のように垂れ落ちて、頭頂部から額、そして眉間を濡らしている。
「ひぃあああっ……」
「ボーッとしてるからだよ」
 結菜の大きな足が背中を蹴る。
「くわううっ……すみませんっ……」
「答えはどうなってんだよ、てめえっ」
 突然、沙樹が叫び、ローファーの甲が弘信の頬を激しく捉えた。
「がぶふううっ……ひいいいっ……も、申し訳ありません……考えつきません……」
 そうだった。問いを投げかけられているのだった。全裸でいるところに誰かが入ってきたらどうするのか……弘信にはまったく思いつかない。
「ひい、だって……聞いた? みんな」
 静香が嗤うと皆がうなずきながら嘲笑を浴びせた。
「すぐに腕立てはじめんだよ」沙樹がローファーで顎を上向かせながら言った。「トレーニング中だとしたら、不自然じゃないでしょ」
「あ、はいっ……」
 弘信は、沙樹に対して否定の返事はありえないとでもいうように裏返った声を出して頷く。
「それにしてもやっぱ全裸はおかしくない?」陽子が笑いながら言う。「いくらなんでも」
「そうだね」静香が続ける。「ブリーフぐらい履かせてあげたら、沙樹」
「確かに」と結菜。
「ほら、みんな優しいね」沙樹がつま先で顎下を軽く蹴る。「ブリーフは履いてていいんだってよ」
「あ、ありがとうございます……」
 弘信は目の前の教え子を見上げて、すぐに再び頭を下げる。短い丈のスカートの奥の白いショーツがチラリと目に入ってしまい、ドギマギする。
「アタシだけにじゃないでしょう」
「はいっ、み、皆さま、ありがとうございます…お、お気持ちに感謝……いたします…」
 弘信は、周囲の女生徒たちにもペコペコと頭を下げる。
「なんか雑じゃない? ウチらには」
 そう言う静香にもう一度、丁寧に頭を下げる。
「あ、ありがとうございます……です……」
「もっとひれ伏せよ」
 ドスンと背中に重たい足が載る。感触からして、結菜のシューズだろう。
「くわああっ……す、すみません……結菜様……」
「静香様も、申し訳ありません……」
「陽子様、ご無礼いたしました……ありがとうございました……」
 クラス委員を一人ひとり名指しして、頭を上げて目をしっかりとあわせ、次いで、床に額をこすりつけ、精一杯の誠意を見せる。他の教え子たちの視線を痛いように感じる。彼女たちはきっとこの事態を目の当たりにして、自分たちも同じように担任を虐めてかまわない。そんな権利が生じたように理解しているのではないだろうか。
「靴磨きはもうおしまいなの?」
 懸命に愛想を振りまいている弘信の背中に、沙樹の冷たい声が浴びせられる。
「あ、いえ、すみません、沙樹様……」
「ほらほら、忙しいよ」
 クラス委員とは別の女生徒の声がして、その周囲が笑う。弘信は、一段と心音を大きくして沙樹の元へ向かった。今度は左の靴で裏返しのバケツを踏んでいる。
「ピッカピカにすんだよ、息でハーハーしながらやってみ」
「あ……はい……」
 弘信は教え子の命令に従って、ローファーのつま先にハーッと息を吐きかけ、ハンカチを使って磨き上げていく。
 他の女生徒たちは、跳び箱や重ねたマットなど、思い思いに腰を落ち着ける場所を見つけて座り、担任教師の醜態を眺めている。
「沙樹も座ったら?」
 静香が折りたたみ椅子を持ってきた。
「ああ、ありがと」
 沙樹は腰を下ろすと、「こういうことはさ、そもそも、アンタが気がつかないと。稲田」
「あ、あああ……すみません……」
「お前、奴隷だろっ? アタシの」
 沙樹はいきなり声を荒げ、激しくバケツを蹴る。けたたましく転がる音が部屋の緊張感を一気に高めた。
「ひいいいっ……申し訳ありませんっ……」
―――泣きそうな顔しちゃって……
―――よほど沙樹が怖いんだね……
―――完全にビビっちゃってるよ……
―――惨め過ぎるわ、稲田先生……
 女生徒たちのひそひそ声が聞こえる。
「要らないんだよ、もう」
 転がったバケツを取りに行こうとした弘信の脇腹に追いかけてきた沙樹の鋭い蹴りが入る。
「ぐはううっ」
 バクンと音がして、哀れな中年教師はしばし、その場にのたうち回る。
―――ぎうううううう……くはぅわああああ……
 呼吸困難と痛みがようやく治まったところで、すぐに正座の姿勢に体を戻し、脂汗を流しながら、厳し過ぎる教え子を怯えきった目で見上げる。
「片方の手で、靴を持って。もう片方で磨くんだよ」
 椅子に座り直した沙樹は組んだ脚をぶらぶらさせながら凄みの利いた声で言う。
「は、はいっ……」
 弘信は、すぐさま命令に従い、土足の底を左手で支え、革靴に息を吐きかけながら、右手のハンカチで磨いていった。
「で、担任と副担任が入れ替わる件はどうした?」
 切れ長の目を持つ女子高生は威厳たっぷりに聞く。
「あ、ああっ、は、はい……さきほど石坂先生にも、相談しまして、させていただきまして、問題ないとのお返事をいただきました……」
 弘信は、この件についてなんらかのアクションを起こしておいてよかったと、とりあえず安堵する。
「だったら、すぐそうしなよ。明日からでも」
「あ、はい……ただ、これは人事に関わることですので、学年主任や校長先生の同意を得る必要が……」
「肩書きなんてあとからでいいでしょ」長い黒髪の陽子が口を挟んだ。「うちのクラスの中で、現実的にあなたが副担任に降格したということで」
「あ、は、はい……」
 クラスでトップクラスの成績を誇る才媛の口から放たれた『降格』という言葉が弘信の胸に重くのしかかる。
 沙樹が椅子から立ち上がり、静香と交代する。
「し、失礼します……」
 弘信は、沙樹よりはいくぶんサイズが小さいと思われる静香のローファーを手に取り、まずは全体の埃を落としていく。
「ホームルームの時間はさ、稲田」
 沙樹が腰に両手を当てて言う。
「は、はい……」
「手は止めないっ。動かしながら聞きな」
 沙樹の大声が部屋に響く。
 結菜のシューズが伸びて来て、弘信の側頭部を軽く蹴る。
「きひっ、す、すみませんっ……」
 慌てて、静香のローファーに息を吐き着け、熱心に磨く様をアピールする。
「ホームルームの時間は……お前はみんなの靴磨きやろうか。暇でしょ。もう担任じゃなくて、副担任なんだからさ」

☆ 三

「では、朝のホームルームを始めます」
 弘信の代わりに担任としてホームルームを進行する真由美の声が聞こえる。
「し、失礼します……」
 弘信は机の脇から出た大きなローファーにハンカチを当てる。長い脚の持ち主はバレーボール部の結菜である。
「しっかり磨きなさいよ」
「は、はい……承知しました……」
 弘信は、長身のハンサム少女をもう一度見上げて、愛想笑いをつくる。やや茶色がかったショートヘアが窓から差し込む朝日に輝いている。周囲の女生徒たちからの蔑視や嘲笑を背中に感じながら、弘信は最後列に座る結菜のローファーを懸命に磨いている。
「石坂先生、ちょっといいですか?」
 真由美の話の途中で、沙樹が手を挙げる。
「はい、どうぞ」
「みんな、稲田先生の靴磨きが気になってしょうがないみたいだから、前でやってもらってはどうでしょう?」
「……ああ……そうね、そうしましょうか」
 たわいのない、教師と生徒のやりとりのように聞こえるが、生徒から教師への実質的な命令である。このクラスにおいて、もはや沙樹の意見は絶対的なものになりつつあった。
 沙樹の指示で弘信は自ら教壇に、窓と教卓の間に、折りたたみ椅子を運び、広げる。そこへノートと筆記具を手にした結菜が座り、濃紺ハイソックスの長い脚を組んだ。
「し、失礼します……」
 弘信は女生徒たちの視線を一斉に浴びながら、再び結菜の大きなローファーを磨いていく。
「手で、しっかり支えてくださいよ」
 強い口調で結菜が上から叱咤する。
「す、すみませんっ……」
 弘信は、蹴りのひとつでも飛んでくるのではないかと、一瞬、体を縮こめる。
「何、ビビってんのよ、あんまりトロいと、ホントに蹴るわよ」
 結菜はそう言って、つま先を少し上下に揺らす。
「ひっ……や、やります……やりますので……」
「やりますので、何よ」
「……お、お許しください……どうか……」
「じゃあ、やってよ、早く」
「は、はいっ……失礼いたしますっ……」
 教室のあちこちから嘲笑が起こる中、弘信は片手で支えた結菜のつま先にハーッと息を吐きかけ、ハンカチを使って丹念に磨きを掛けていく。
「では、実力考査の日程ですが……」
 真由美がホームルームを進めていく。弘信の屈辱極まりない靴磨きが借景やBGMのように、このクラスにおいてごく自然な存在として扱われている。教師に黒革のローファーを磨かせている結菜は太股に置いたノートに几帳面な字で、真由美からの情報をメモしていった。
 メモを取りながら、結菜がおもむろに口を開く。
「稲田」
「は、はいっ」
 いきなりの呼び捨てに、弘信は声を裏返して、長身美少女を見上げる。
「次から、バインダーを用意しときな。メモ取りにくいから」
「あ、はい……承知しました……」
「アンタ、それくらい自分で気づかないと」
 近くの席の沙樹が言った。再びホームルームが中断し、弘信に女生徒たちの視線が集まる。
「ウチらに言わせた時点で、アウトだよ」
 結菜が続ける。
「す、すみません……気がつきませんで、申し訳ありません……」
「ホントに分かってんのかなあ。とりあえず、謝ってるだけじゃね?」
 肩幅の広い女子アスリートは、勘ぐって言う。
「い、いえ、そんなことはありませんっ、時本さん、反省しています、本当です……」
 弘信は焦り声を出し、少し後ろへ下がって、頭を深々と下げた。
「なあんか怪しいんだよなあ」
 上から結菜の声が降って来て、後頭部に固い靴底がのしかかる。
「ああああ……すみません……」
―――あーあ、踏まれちゃってるよ……
―――ふふっ、女の子に土足でね……
―――最高、いや、最低か……
―――土下座教師、頭を踏まれる……
 教室のざわめきが、火照る弘信の体をさらに熱くした。
「稲田」沙樹の声が聞こえる。「今日はペナルティだよ。このホームルーム、終わるまでそのままな」
「あ、は、はい……承知いたしました……」
 後頭部にのしかかる圧力が卑屈な言葉を嘲笑うようにして高まっていく。

 桜女学園では、朝の授業前と午後の授業後に、それぞれ十分間のホームルームが行われることになっている。弘信は、午後のホームルームが始まる少し前に結菜の元へ向かった。机に腰掛けて、クラスメイトと雑談をしている彼女の足元に跪く。
「今朝は申し訳ありませんでした……要領を得ませんで……そ、それで、時本さん、よかったら、もう一度、靴磨きの方を勉強させていただけませんでしょうか」
「何、それ、アタシに取り入ろうってつもり?」
 結菜は白い歯をこぼして言う。
「あ……えへ、すみませんです……」
 図星を突かれ、弘信は頭をかきながら愛想笑いを浮かべる。
「で? 上靴を磨くの? お前、アタシの上靴を磨くのか?」
 背が高い分だけ脚も長い女生徒は、弘信の鼻の先で上履きのつま先を動かしながら凄む。
「あ……いえ……」
「磨きたいんだったら、てめえでローファー取って来いよっ」
 結菜の恫喝が教室に響き、上靴のつま先が弘信の額を小突いた。
「ひいいっ……す、すみませんっ……」

 シューズロッカーまで駆け込んで来て、弘信は困惑する。
―――しまった……時本くんは何番だったっけ……
 結菜の出席番号が定かでない。二十番台だったとは思うが、万が一間違えでもしたら……。想像するだに恐ろしかった。
「どうしました?」
 振り返ると、陽子が立っていた。クラスでいちばんの才媛は今日も長い黒髪に赤い眼鏡がよく似合っている。
「あ、いえ、木橋さん……あの、時本さんの靴って分かりますでしょうか……」
「覚えてないんですか? 出席番号……信じらんない……」
 眼鏡の奥から、強い視線を放ちながら言った。
「あ、ちょっと、思い出せなくて……すみません……」
「そこですよ」
「あ、ああ……」
 陽子が指さした靴箱にはひときわ大きなローファーが置かれていた。
―――そうだよ。大きさで見ればよかったんだ。まったく、どうかしてる……
 弘信は、注意力が散漫になっている自分を心の中で嘆いた。
 手に取るとずっしりと重たく、中敷きには二十六・五センチと表記されている。弘信よりもずっと大きなサイズだ。
「お、大きいですね……」
 思わずつぶやいてしまう。
「いいの、そんなこと言って。結菜、案外気にしてるかもしれないよ」
「ああ……ど、どうか、ご内密に……」
 陽子に懇願する。
「っていうか、次は私じゃないんですか? 靴磨いてもらうの」
―――そうだった……
 陽子も自分のローファーを取りに来たのだ。
「あ、ああ、はい、すみません……ちょっと朝のやり直しがありまして」
「えーっ」
 思いがけぬほど、陽子が気分を害したようだったので、弘信は慌てる。
「あ、で、でも、少ししたらすぐに木橋さんの方に行きます、伺いますので、ちょ、ちょっとだけ待ってください……お待ちください……」
「ふふっ、分かった。なるべく早く来て下さいね」
 陽子はせせら笑うように言うと、目の前の冴えない教師にきっちり手入れさせる心づもりのローファーを手にして、スタスタと教室へ向かった。

 ホームルームが始まり、真由美はいくつかの連絡事項を伝える。「……っと、今日のところは私からはこれくらいです。あと皆さんの方から何かあったら……」しばし全員を見渡す。「特になければ、時間まで自習にします」そう言い残すと、貯まっている残務を処理するために足早に教室を出て行った。弘信が担任時にも行っていた、よくある流れである。
 しかしその弘信は今、教壇の端に正座し結菜のローファーを懸命に磨いている。陽子を待たせているため、手早く片方の足をすませた。
「すみません……向こうのおみ足をよろしいでしょうか……」
「ずいぶん早いわね。もっとちゃんとやってよ」
「あ、あの……それが……すみません、時本さん……木橋さんをお待たせしていまして……」
「何なの、それ」
 舌打ちが聞こえて、結菜のローファーが弘信の側頭部を蹴る。
「はうううっ……も、申し訳ありませんっ……」
 軽く蹴ったつもりだろうが、頭の芯が揺らぐような衝撃だった。クラクラしている弘信の耳に苛立たしげなローファーの足音が聞こえてくる。
「結菜、いいよ私、次で。明日の朝でも」
 陽子の声がそう言っている。弘信は、じっと床を見つめたままだ。椅子をずらす音があちこちから聞こえ、たくさんの足音が集まってくる。
「この馬鹿、まさかのダブルブッキング?」
 沙樹の声がする。
「い、いえ、すみません、先に時本さんをやって、それから木橋さんをと……そのつもりで……」
 弘信はかすかに揺れる黒革のつま先を見つめながら言う。
十分じゅっぷんしか時間ないのにさ、無理でしょ」
「そんないい加減な仕事しようと思ってたわけ?」
 結菜と陽子が畳み掛けるように言う。
「そんな下ばっかり見てないでさ」結菜のつま先が弘信の顎を上向かせる。「どういうつもりなのか、説明しなよ」

「も、申し訳ありません……何と言っていいのか……」
 弘信は、目の前に仁王立ちする結菜と陽子を交互に見上げて言った。
「みんなにいい顔しようとするから、そういうことになるんだよ」
 背中越しに、沙樹の声が聞こえる。
「あああ……」
「違うの?」
 結菜のローファーが頬を蹴る。
「がううっ……そうです、仰る通りです……」
 軽く蹴ったつもりだろうが、上履きの時とは破壊力がまるで違う。早くも口の中で血の味がする。
「で? どうすんだよ」
「きょ、今日は、時本さんのローファーをお磨きします……」
 弘信は、結菜にそう言って、陽子の方へ膝を向けた。
「木橋さん、も、申し訳ありませんが、明日にさせていただけませんでしょうか……」
「わざわざローファー持ってきたんだよ……」
「申し訳ございません……」

 

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