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S女小説 アマゾネスウェーブ3「女軍支配の奴隷艦」

S女小説 アマゾネスウェーブ3「女軍支配の奴隷艦」を電子書籍として出版しました。

内容紹介

海自練習艦《ひめぎく》内外で、女性自衛官による指導という名の暴力に怯え震え続ける男子隊員たち

アマゾネスウェーブ2「矯正指導を厳となせ」続編(最終編)

女性海上自衛官=ウェーブが支配する練習艦《ひめぎく》。日が経つほどに、彼女たちの男曹士に対する指導は厳しくなっていくばかりだった。特に自分たちよりも明らかに能力の低い中年曹に対する扱いは酷く、糟屋肇やその仲間は、肉体的にも精神的にも壊れる寸前まで追い込まれていく。男たちは部下というよりももはや女性隊員たちの奴隷としてひたすら奉仕、忍従する日々を強いられた。そんな地獄のような《ひめぎく》の中にあって、肇らにとって、唯一の頼れる女性上司、癒やし的存在が二十四歳の美人分隊士、二階堂留美三尉だったのであるが……。

第九章 便器を舐めろと命じられ

第十章 格闘訓練という名の虐待

第十一章 血に飢えた女上官たち

第十二章 極東の港に口開く地獄

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第九章 便器を舐めろと命じられ

☆ 四十一

「死にたくなったら……」先任伍長の杉浦香織が、足元で彼女のブーツのつま先を舐めている本木に言う。「いつでもアタシのところに来なよ。ひと思いにやったげるから」
 本木は返事をする代わりに、ペチャペチャと舌音をいっそう強く立てる。
「そう、死に物狂いでやんな」ハスキーな香織の声が艦のエンジン音に交じって船艙の狭い機械室倉庫に響く。「死ぬ気でやればなんだってできるでしょ」
「は、はいっ、伍長殿……」
 肇も本木に負けじと、香織の左足ブーツのつま先から側面に唾液をまぶしていく。

 香織からの無線電話で、分隊長の井村文乃一尉とその補佐役である二階堂留美分隊士が上甲板から船艙に降りてきた。直前に、靴舐めを解放された肇と本木が固い倉庫の床に正座したまま首をうなだれている。
「あれで……」香織が天井の管から垂れ下がっているロープを指して言う。「首を括ろうとしたようです」
 二人がどのような反応を示すのか知りたくて肇は少し顔を上げ、上目遣いに伺う。二階堂留美は驚きの表情を見せたが、井村文乃分隊長は、一瞬目を見開いただけで、続きの説明を待つように長い睫の瞳を香織に向けた。二人とも言葉がない。
「指導がよほど堪えたのかもしれませんが……ただ……」
「ただ?」
 文乃一尉がそこでようやく声を発する。
「本当に死ぬ気はなかったようです……」香織が苦々しそうに本木を見下ろす。「どうも、はったりのようで……こういうのが一番たちが悪い」
「そうなのね……」
 井村文乃一尉はつぶやくように言うと、反論は許さぬと言った視線を本木に送る。
「念のために医官に相談しては……」
 二階堂留美がたまりかねたように口を開く。
「私としては……」香織は文乃と留美を交互に見る。「むしろ、今回の彼の行為は、艦の《特別指導体制》への妨害、もっといえば侮辱として受け止めているのですが」
「そ、そんなことは……」
 本木が焦って、女性たちを見上げ首を振る。助けを求めるように肇にも視線を寄こす。
「は、い……そ、そういうことは、ないと……思いますが……」
 肇は恐る恐る本木を擁護する。一歩間違えると自分に火の粉がかかる状況に声が震える。
「確かに……」井村文乃が言う。「杉浦伍長のおっしゃることはよく分かります」
「分隊長……」
 留美が、男たちのうろたえる様を見て、文乃に声を掛ける。
「二階堂さん」文乃が留美をたしなめる。「ここは大切なところだよ。ここで甘い顔見せると、艦長たちが今まで苦労してやられてきたことが台無しになるかもしれないわ」
「ええ」香織がすかさず同調する。「甘やかせば、いくらでもつけあがりますから、彼らは」
 上司や先輩格の二人にそこまで言い込められると、留美としてももはや言葉がなかった。
「それで……」香織が言う。「本木はしばらくまた私のところで、預からせてもらえませんか」
「分かりました。お願いします」二十九歳の分隊長が、三十八歳の先任伍長を頼もしそうな目で見る。「上には私の方からいいように説明しておきます」
「助かります」
 香織は文乃一尉に礼を述べると、肇にロープや一斗缶を片付けるよう命じ、本木を連れて倉庫を出て行った。

「糟屋」
「は、はい……」
 井村文乃一尉に呼ばれ、肇はすぐに気をつけの姿勢を取る。もはやこの艦の女性に糟屋三曹などと職位込みで呼ばれることはなくなった。
「今回の本木のことは他言しないように」
「は、い……承知いたしました……」
「真似する馬鹿が出てこないとも限らないからね」
「はいっ……」
 肇は紺色の制服に身を包んだ麗人に忠誠を誓うように敬礼する。

 艦内放送により、本木を捜索していた二十三班の男子隊員は全員、午前中の持ち場に向かうよう指示を受ける。今日も厳しい課業がさっそく開始されるのだ。
 船艙よりひとつ上の甲板にあるトレーニングルームに向かう途中で、肇は寺井とすれ違う。
「よう、結局、どこにいたんだよ、本木は」と寺井が声を掛けてくる。
「あ、ああ……それが、どうも、杉浦伍長に直接指導受けて、船艙の談話室を掃除していたみたいで……」
 肇は女性上官たちに指示を受けた通りの説明をする。
「なんだよ……じゃあ、お嬢さんの勘違いじゃねえかまた……」
 寺井は二階堂留美三尉のことを懲りずにそのように言った。
「やめといた方がいいって、寺井さん、本当にそういう言い方は……」
 いつになく真剣な肇の口ぶりに一段と頭が薄くなった中年曹の笑みが陰る。
「どうした……しっかしよ、本木を探し回ったおかげで朝飯抜きだよ……」
「しょうがないですね……急がなくちゃ、もう……」
「ああ、だな」
 それぞれ陰鬱な気分で持ち場に向かう。

☆ 四十二

 正式には保養室と呼ばれるトレーニングルームは、十畳ほどの広さがあり、ベンチプレスやトレッドミル、懸垂棒、サンドバッグなど、筋肉を増強する設備が所狭しと並べられ、奥の方には、柔軟体操のできるマットレスも二枚敷かれていた。ここの掃除が肇の担当である。
 奥で女性がベンチプレスを挙げている。それが天海渚艦長であることに気づき、肇は焦る。
「あ、し、失礼いたしましたっ……」
 毎日、筋トレを欠かさないというのは本当のようだった。
「これから清掃を命じられているのですが、いかがいたしましょうか……」
 肇は長袖Tシャツと短パン姿で汗を流す渚艦長に恐る恐る伺いを立てる。ラフな装いの中にあっても格調や威厳という彼女の魅力が損なわれることは一切なかった。
「もうすぐ終わるから、始めてていいわよ」
 肇には到底挙げられそうにないような重さのバーベルを上げながら渚が言う。額からは玉の汗がこぼれている。
「は、はい……すみません、じゃあ、向こうの方からやらせていただきますので……」
 用具ロッカーからモップを出し、床を磨き始める。
 ほどなくして扉が開き、数人の女性たちが入室してくる。
「あ、お疲れさまですっ」
 モップを片手に敬礼をする肇の視線の先には、岩村亜美二曹がいる。班員の女性海士三名も一緒だ。
 四人の曹士は肇を無視して、奥でベンチプレスに励む艦長へ挨拶に行く。
「天海艦長、相変わらず凄いですね」亜美が感心して言う。「何キロを挙げているのですか」
「七十よ」
 渚艦長は挙げたバーベルをホルダーに戻すと上半身を抜いて、ベンチに腰掛けた。
「わたくしは六十までですね」
 亜美がそう言うと、伊丹冴子士長も「私もです」、川村仁美二士も「私も六十ですね」
「毎日続ければもっといけるわよ、あなたたち若いんだから……竹内一士だったっけ? あなたは相当いくでしょう」
「そ、そうですね……八十くらいまでなら」
 艦長に直接話しかけられ、やや緊張気味に応える。日本人男性の平均値が、四十五から五十キロだから、彼女たちの筋力レベルがいかに凄まじいかがわかる。
「凄いね、やって見せて」
 渚艦長がベンチを立ち上がり、竹内玲奈に譲る。
「糟屋っ」と岩村亜美二曹が肇を呼びつける。
「ウェイト、十キロ足して。できるよね?」
「は、はい……」
「計算できるのか?」
「あ、はいっ……」
 馬鹿にしきった口調の亜美に愛想笑いを送ると棚から五キロのウェイトを取ってバーベルの片側に装着する。
「一つずつとってくるんだ」
 仁美があきれたように言うと、冴子も、「それくらい、まとめて持って来いよ。どんだけ非力なの?」
「す、すみません……」
 八十キロに増量されたバーベルを玲奈が持ち上げる。Tシャツの袖から白い筋肉が盛り上がっているのがわかる。
 女性たちから歓声が上がり、渚艦長も「さすがだね」と笑い、首にかけたタオルで汗を拭うと、「じゃあ、頑張って」と言い残して出口へ向かった。
「お疲れさまでしたっ」
 艦長の背中に女性隊員たちが次々に挨拶を送る。肇もそれに交じって、頭を下げながら声を出す。
「お、お疲れさまでございました……」
 七十キロに落としたバーベルに岩村亜美二曹が挑戦し、「くううっ」と声を挙げながら何とかクリアした。
「班長、さすがですね」
 感嘆の声を挙げた伊丹冴子、川村仁美の二人は、六十キロにトライし、揃ってクリアした。
「ところでカス、お前は何キロ上がるの?」
 腕組みをした岩村亜美二曹が、モップ掛けに戻った肇を見据えて言う。
「いえ、そんな……私は、ぜんぜんです……」
「ぜんぜんってどのくらいだよ」
「あ、あまりやったことないので……」
 《ひめぎく》に載せられるような中年曹が自分からトレーニングルームに向かうようなことはまずなかった。
「ようし、じゃあ、測定だ」
「で、でも、わたくしは掃除が……」
「ここを監督してるアタシがやれっていってんだよ。いいからやれよ、命令だ」
 岩村亜美二曹が声を荒げる。
「は、はい……」
 川村仁美にモップを取り上げられ、六十キロのバーベルの下に潜るよう命じられる。
「こ、こんなのとても……」
「男でしょ。しかもいちおうは自衛隊所属の」八十キロを挙げた竹内玲奈一士が呆れたように言う。「六十くらいあげようよ」
「ほら握って」
「は、はい……」
 鉄棒を握って力を込めるも、これを彼女たちがやるように腕を伸ばしきって持ち上げることなど無理だ。しかし命令ならばとりあえずやるしかない。渾身の力を込める。
「ふくううううっ……」
 バーベルがわずかに上がったが、すぐ力尽きて元に戻す。
「なんだよ、それえ」
「ふざけてんの? お前」
 女子たちが騒ぐ。
「す、すみません……」
 ウェイトが五十キロに落とされる。
「さすがにこれなら挙がるでしょ」
「は、はい……」
 しかし胸の上に腕を伸ばしきって静止させるには至らない。
「も、もう駄目です……」
 肇はこれほどの動作で乳酸を出しきってしまう自分の筋力を情けなく思う。
「嘘でしょ」
「ちょっとお、引いちゃうレベルだね……」
「マジ、キモい」
「どんだけ非力なんだよ」
「よ、四十キロなら、たぶん大丈夫だと思います……」
「当たり前だろ」
「そんなの部活やってる女子中学生でも挙げちゃうよ」
 あまりの腑抜けぶりに白けムードが漂う。
「ちょっと待って。カス、お前、四十キロいけるって言ってるけどさ、本当だろうね」
 亜美が仁美に指示して、バーベルのウェイトを四十キロに落とした。
「挙げてみろ」
「は、はい……」
 バーを握ってゆっくりと挙げていくも、続けざまのリフティングで力が入らない。
「え、マジですか?」
「腕、もうガタガタ震えてるし」
 渾身の力を込めて、腕を伸ばしきったつもりだが、すぐに力尽きて、バーベルを戻す。
「なんだよそれ、最低三秒は止めなきゃ。はい、もう一回」
―――あああああ……
「絶望的な顔すんじゃないよ、これくらいで。何やってんの、お前」
「やれよ、早くっ」
 岩村亜美が短パンから伸びた長い脚を上げて、肇の腹を靴で踏み込む。
「あぐううっ……は、はいっ……や、やりますぅっ」
 渾身の力を込めるもバーベルが二度と上がることはなかった。
「糟屋、お前、そんな非力で、いざいくさとなったらどうすんの?」亜美がため息混じりに言う。「ウチらの背中に隠れて、そうやって泣くのか?」
「目に涙一杯貯めちゃって」
「同情引こうっていう気がヤらしいわ」
「班長、気合い入れ直してあげましょうよ」
 女性海士たちが、岩村亜美班長をけしかける。
「ようし、立て、お前」
 ベンチプレスを降り、恐る恐る立った肇の首に亜美が腕を回して、ヘッドロックで固め、マットレスの方へ連れていく。
「うくあああああっ……許して、ください……」
 豊満な乳が顔を覆い、母のような柔らかさや暖かさを感じる一方で、力強い腕が容赦なくグイグイと首を締め付ける。
―――はあうううう……
 Tシャツに短パン姿の亜美は壁を背にして尻を床に着け、大きく広げた股の間に肇を仰向けに寝かせて、あらためて首を締め上げる。
「あうう……は、班長、殿……ど、どうか……」
 プロレスファンの竹内玲奈一士が寄ってきて、チョークスリーパーの形を亜美に教える。首の下にL字に通した右腕の手首を縦に曲げた左腕で固定し、力を加える。
「締め落としちゃおうか」
―――くふううううっ……
「班長、こういうのもありますよ」玲奈がそう言って肇の両脚をとると4の字に交差させて短パン姿の長い脚を絡める。「4の字固めだあっ」
―――うむおおおおおっ……
 すねが折れんばかりの痛みに肇はのたうち回ろうとするも、首を亜美にしっかり固定されており、悲鳴を上げることもままならない。
「竹内一士、脚へし折っちゃっても平気だよ。こんなやつ、使い物にならないんだから」
 亜美はそう言って、少しだけ首を緩めてやる。
「そうですか……」
 玲奈が笑いながら脚に力を入れる。
―――ぎゃああああああっ……
「うるさいよ、お前はっ」
 伊丹冴子士長の靴が、肇の腹を踏む。
―――うくうっ……
「ちょっと力入れただけで、痛いんですね。脚4の字って」
 川村仁美二士が感心するように言う。
「やってみる?」
 玲奈がようやく脚を外し、肇はホッとするも、すぐにスレンダーな仁美の脚が絡みついてくる。
「こうやって、そこに脚かけて、つま先をコイツの太股の裏に入れて」
「こうですか……」
―――くうううううっ……
「そう、それで、少し力入れてみて」
―――うがあああああああっ……
「うるさいよ、お前はっ」
 肇の大きな叫びにムカついた亜美が腕に力を込めて締め上げていく。
―――うくうううああうううむうう……
 肇の意識が静かに遠のいていく。

「ほらっ、起きなっ」
 頬の痛みに肇が目を開けると虹のイラストが入ったTシャツを着た川村仁美二士が馬乗りになって往復ビンタを放っている。
「はううっ……ああああ……」
「やっとお目覚め? 大いびきかいちゃって」
「きれいに落ちちゃったね」
 肇は目をぱちくりとさせる。股間が少し湿っているのを覚える。
「あああああ……す、すみません……」
「掃除だろ、お前の仕事は」仁美が立ち上がり、肇の脇腹を軽く蹴る。「早く続けなよ」
「は、はいっ」
 頭をクラクラさせながら立ち上がり、壁に立てかけておいたモップを手に取って、床掃除を再開する。肇が気絶している間に、女性たちは皆、筋トレ器具やサンドバッグなどを使って一汗かいたようで、部屋の匂いが一段と濃くなっている。
「きょ、今日もご指導ありがとうございました……」
 肇は入り口に立ち、部屋から出て行く女性上官たち一人ひとりに頭を下げる。
「竹内一士、プロレス技いろいろ教えて下さいよ」と仁美。
「いいよ、実験台はたくさんいるからね」
「壊れたら上に頼んでまた補充すればいいだけの話だし」
 彼女たちのそんなやりとりを見送りながら、肇は脚の痛みとめまいを同時に覚える。
 

S女小説 アマゾネスウェーブ3「女軍支配の奴隷艦」

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S女小説 アマゾネスウェーブ2「矯正指導を厳となせ」

S女小説 アマゾネスウェーブ2「矯正指導を厳となせ」を電子書籍として出版しました。

内容紹介

女性が支配する海自艦内で、ますます激しい矯正指導を受ける男子隊員の物語

アマゾネスウェーブ「血潮の女権革命」続編

海上自衛隊の特別練習艦《ひめぎく》に乗艦する糟屋肇三曹は、女性艦長が発した「特別指導体制」の号令の元、女性幹部や下士官から暴力を含んだ徹底指導を受ける。さらには、当初は遠慮がちだった、二十歳前後の女性海士たちも、幹部たちの全面支援により、男子隊員を積極的に指導し始めたのだった。大海に浮かぶ密閉空間の中で、遙か年下の女性上官にひたすら殴られ、蹴られ続ける中年曹……。ただ、女から男への行き過ぎた指導に疑問を持つ、二階堂留美三尉だけが、肇の心の支えであった。

第五章 女性班長様のブーツ磨き

第六章 美人曹士たちの的になる

第七章 犬なら匂いで嗅ぎ分けろ

第八章 生きたいなら服従すべし

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第五章 女性班長様のブーツ磨き

☆ 二十一

「今日は金曜日か……」
 艦内の食堂から漂ってくるカレーの匂いに気づいて糟屋肇はつぶやく。金曜日の昼食にカレーライスが饗されるのは、海軍時代からの伝統だ。曜日の感覚を失わないためらしいが、確かに不規則な当直生活を繰り返していると、体内時計がおかしくなってくる。
 通常ならば、職歴とともに職位も上がり、きつい当直からも放免されるものだが、肇ら《ひめぎく》の男子海曹の場合は違う。就任したての海士、もしくはそれ以下の待遇で、若い女性隊員たちに厳しくこき使われている。
 肇はバケツを片手に管だらけの狭い廊下を歩く。向こうから若い女性が歩いてくる。女性隊員は職位にかかわらず、男子からはすべて上官扱い。それがこの艦のルールだ。
「お疲れさまです」
 肇は壁に背中をピッタリとくっつけて敬礼し、二十代半ばほどの女性海曹に道を譲る。当初は答礼があったのだが、男子には応じなくてもよいという通達が出されてからは、答礼する女性はほとんどいなくなった。ただでさえ忙しく、それぞれにストレスを抱えている艦内だ。少しでも省力したいのが人情だろう。いまの海曹も、チラと肇を見ただけで、早足に過ぎ去っていった。
 続いて、明らかに新任海士と思われる年頃の長身ウェーブ(WAVE:女性海上自衛官の略称)が急ぎ足でやってくる。よく見ると、新しく肇たちの班に加わった三人の女性海士のうちのひとり、竹内玲奈れいな一士だった。他の女性曹士同様、彼女も紺色迷彩の戦闘服に身を包んでいる。
 基本的にこの艦に乗っている女性は身長一六五センチ以上で、肇ら一六〇センチ以下の男子隊員からみれば、全員が長身なのだが、あえて長身というときは、一七〇センチ以上だ。一七五センチオーバーも珍しくなく、一八〇センチを越える女性海士もいる。その竹内玲奈一士も一七五センチの背丈があった。
「お疲れさまです」
 肇は先ほどと同じように、歩みを止めて体を九〇度回転させ、壁に背中をつける。しかし、握ったバケツを引っ込めるのがわずかに遅れて、玲奈一士の脚にうっかり当たってしまう。
―――ガツッ……
「あっ」
「いったあ!」
 玲奈はやや大げさと思えるほどの大声を挙げて、膝をさする。
「す、すみませんっ……」
「なにやってんのよっ」
 玲奈は両手で肇の頭を挟むようにして壁をドンと突き、上から睨みつける。
「も、申し訳ないです……」
「殴っていいって言われてんだからね、岩村班長から」
「あ、いえ……はい……」
「次は、絶対、許さないかんね……」
 急いでいたのか、今回はまだ躊躇があったのか、竹内玲奈一士は、大きな舌打ちをすると去って行った。同班になって何度か、今日のように怒鳴られ脅されはしたが、これまでのところ、まだ彼女には殴られたことがなかった。
 肇は胸をなで下ろす。
―――しかし、次は絶対やられるな。手を挙げてくるに決まってる……ああいう風にして、ここの女たちは少しずつ距離をつめてくるんだ……
 実際に男子中年曹への教育的体罰は、職位にかかわらずすべての女性隊員に対して、上層部より許可というよりもむしろ奨励されていた。出世にも影響するという噂が立ち、多くの若い女性海士たちが、男たちに体罰を与える空気を探り、タイミングを計っているようだった。
 肇は、気短な女性隊員とすれ違わないように祈りながら、カレーの匂いが充満する食堂を抜けて女性下士官専用の科員室へたどり着く。
 部屋をノックすると、出てきた女性海曹に、「失礼します、二十三班員の糟屋です。岩村班長殿に呼ばれて参りました」
「どうぞ」
「はいっ、失礼します」
 中へ入ると、化粧品と煙草の混じったような匂いがする。科員室は基本的に禁煙のはずなので、女性たちの吐息や体から発散される匂いだろう。とにかくこの艦の女性はヘビースモーカーが多い。
 肇はベッドに腰掛けている岩村亜美三曹を見つけると近づいて敬礼する。敬礼しながら当直あけの頭がクラクラとしてくる。本来ならすでにこの時間はベッドで休めるところだが、これから目の前の上官の当番兵として奉仕しなければならないのだ。彼女が部下であった過去がすでに頭から消え去りつつあった。
 岩村亜美もたった今、当直から戻ったばかりのようでまだ上下迷彩の戦闘服を身につけていて、編み上げのブーツも履いたままだった。
「上官殿、お疲れさまでございます」
「うん、脱がせて」と長い脚を床に放り出す。
「あ、はい……」
 部屋に同僚女性が二人ほどいたのが気になったが、動作が遅れると亜美の平手打ちがすかさず飛んでくると思ったので、すぐにしゃがみ込んで正座する。
「ねえ、なにか気づかない?」
 編み上げの紐を緩めようとする肇に大股を開いた亜美が言う。見上げるとほどいた髪が肩に掛かっている。
「……あ、はい……とても、魅力的でお美しく……」
「ふっ……」二十六歳の女性二曹が、白い歯を見せる。「なに寝とぼけたこと言ってんのよ。靴が汚れてるでしょ、見えないの」
 肇は顔を真っ赤にする。後ろから同僚女性たちのクスクス笑いが聞こえる。
「お前に、そんなこと言われても仕方ないんだよ」
 長い腕が伸びてきて胸ぐらをつかみ、強烈なビンタを一発張られる。
「はうううっ……す、すみませんっ……」
「汚れた靴を磨けって言ってんだよ、脱がせる前にさ。当たり前だろ、そんなこと」
 そう言って女班長は、つま先に鉄板の入った編み上げ靴の片脚で肇の太股を踏みつける。
「あううっ……」
 痛みを堪えながら、バケツに放り込んでおいた靴磨き道具の袋を取り出す。持ってきておいてよかった。
「し、失礼します……」
 膝を踏みつけた靴にブラシを掛ける。艦内には泥などないので、さほど汚れているとは思えない。水しぶきの跡とつま先や縁の方に埃がうっすらとある程度だ。しかし、そんな不満をもちろん口にするわけにはいかない。上官が汚れていると言ったら、汚れているのだし、彼女が満足できる仕上がりにならなければ……そう……殴られるだけだ。
「真ん中の方がやりやすい?」
 亜美はそう言うと、今度は股間を踏みつけてきた。彼女の長い脚は、楽々と肇の急所に到達し、つま先にぐっと力を込める。
「はあうううっ……」
「やらしい声だしてないでさ、ちゃんとやってよ」
「じょ、上官殿……」
 刺激と痛みにもだえながらもなんとか布を靴に当てて、汚れを拭き取っていく。
「クリームもしっかり塗って、艶出すんだよ」
 そう言って、今度は踵で肇の肉竿をグリグリと踏み込む。
「ぐわうううああっ……か、かしこまりましたああっ……」
 女性曹二人が肇の顔が見える位置に回り込んできて、同僚が遙か年上の男部下にセクハラをくわえる様子を見て面白がっている。
「お前たちへのセクハラ、パワハラは上から奨励されてんだからね」
 肇に向けた亜美の台詞に、同僚が、「ホント?」と聞く。
「うん、音を上げて自衛官を辞めたくなるくらいやっていいって。だって、こんな使えない奴らを食べさせるなんて、税金の無駄遣いでしかないでしょ」
「確かに……」
 亜美の同僚は二人とも腕を組んで頷いている。

「いかがでございましょうか。上官殿……」
 肇は、亜美が広げているファッション雑誌を裏から見上げて恐る恐る声を掛ける。亜美は雑誌を脇へ置くと、「どれ」と威厳たっぷりの所作でブーツの艶を確かめる。「ようし、靴磨きはなんとかできるようになったようね」
「あ、ありがとうございます……上官殿に鍛えていただいたおかげです……」
「ふっ……」亜美が蔑みの目で見据える。「男としてのプライドもなんにもないんだね、お前は、ホント……ねえ、知ってる?」近くの同僚に声を掛ける。「コイツ昔さ、アタシの上司だったんだよ」
「え、マジ?」
「ホント。佐世保にいた頃……ね」
「それがいまじゃ、亜美の靴磨き?」用事で離れていたもう一人も聞きつけてまた戻ってくる。「なんでもやるんだね。そのうち、下着だって洗ってくれるんじゃない?」
「やだー、最低」と同僚。
 つられて肇も笑ってしまう。そんな馬鹿な話はないという顔を思わずしてみせる。そうだ、元部下だったのだ、彼女は。かつて自分の下に着いていた女の下着を、娘のような年頃の女子の下着を、五十間近の男が洗うなんて、そんなことができるわけがない。無理だ。
「ふーん」
 亜美が嗜虐的な表情で見下ろす。こんな男に自分の下着を洗わせる気などなかったが、それ以上にいまの顔つきが気にくわない。少しでも女を舐めたような態度を見せるのであれば徹底矯正する必要がある。
「そうだね。洗ってもらおうか」
「え、いえ……じょ、上官殿……」
 肇は二十六歳の長身女性を見上げて本意を探る。
「なに? アタシの下着を洗濯しろって言ってんのよ。ブラとショーツ、それと靴下もね……そこの引き出しのビニル袋に入ってるから、持ってって」
 どうやら冗談ではなさそうだった。
「し、しかし……岩村班長殿……バスでは皆の目がありますので……それに、万が一紛失してしまっては……」
 風呂場で女物の下着を洗濯するところを想像してゾッとする。ものがものであるだけに、盗難にあわないとも限らない。
「それは、お前の責任だよ。なくしたりしたら承知しないよ。大問題だかんな」
「この艦内で男が女子の下着盗んだなんてなったら……」
 同僚が意地の悪そうな口調で言う。
「上の会議に掛けられて、一発解雇だよね……」
「そう、懲戒解雇は間違いないだろうね」
 別の同僚の言葉を、あらためて亜美が言い直す。
 懲戒解雇……肇がもっとも忌み嫌う、聞きたくない言葉だ。
「バスじゃなくて、洗濯室で洗えばいいじゃない」
 再び同僚から声が飛ぶ。
「そうだよね、どうしてそうお前は機転が利かないの? 糟屋」
 亜美が磨きたての靴で肇の腕を蹴る。
「あううっ……は、はいっ……すみません……」
「とっとと段取りつけな……分かってると思うけど、洗濯機使うなんて横着すんじゃないよ。手洗いで丁寧にね。アタシの下着は。安物じゃないんだから」
「は、いっ」
「ほらっ、とっとと靴を脱がせて、脚を揉めっ」
「あ……は、はい……」
 編み上げの紐を解いて黒革の靴を脱がせる。固い床の上に、正座の足がしびれてくる。苦痛にゆがむ顔を亜美が意地悪そうな目で見下ろしてくる。
「靴下も脱がせて。それも洗っときなよ、もちろん」
「か、かしこまりました……」
 黒い靴下を脱がせて、香ばしい匂いとともに下着のビニルに入れる。
 揉めと言われてもどこからどう手を着けていいのか迷っていると、「んとにお前は、なんにもできないね……」素足のつま先で額を軽く小突かれる。「土踏まずを親指で押して、それからふくらはぎだよ……糟屋……カス、お前はこれから『カス』でいいね」
 背中で女性二人の笑い声が起こる。
 ファッション雑誌を手にした亜美の脚をひとしきり揉むと彼女は「眠くなってきた」と肇に部屋の掃除を命じ自分は下着だけの姿になってブランケットに潜り込んだ。
 肇も眠い目を擦りながら、なるべく音を立てないように床を掃き、持ってきたバケツに水を汲んで、命令されていた部屋の拭き掃除を一通り済ませた。手抜かりがないか、肇なりに念を入れてチェックすると、科員室に戻って少し仮眠することにした。

☆ 二十二

「糟屋くん、昼だよ」
 寺井に起こされ目を覚ます。時計を見ると一三時五分前だった。カレーの匂い漂う食堂へ向かう。女性曹たちの食事サポートは、別班の男子曹たちが行っていた。
「食事当番なしはありがたいね」
「しかも今日はカレーだし」
 二十三班(岩村班)の男たちは眠い目を擦りながらもカレーライスとサラダの載ったプレートを前に幸せそうな顔をしている。
「いただきます」
 六人がそれぞれに手を合わせて昼食を始める。
「大丈夫かい、ちゃんと噛める?」
 肇は向かいに座った片山を心配そうに見る。眼鏡の片山は誰の目にも明らかなほど顔を腫らせている。彼がこれまで少し顔を腫らせて戻ってくることはあったが、それは艦長に殴られていたからなのだとようやくわかった。
「ええ、なんとか。まだだいぶ痛いですけど……」
「先生には診てもらった?」
「はい……それくらいなら大丈夫と……」
 片山は苦笑いをしながらスプーンを口に運ぶ。
「何が大丈夫だ」隣の寺井が憤る。「気が狂ってるよ、ここの女どもは、まったく……」
「寺井さん……」
 向かいに座る赤ら顔の関島がなだめる。寺井は関島と一緒に、たしか杉浦香織伍長の相手をさせられたはずだ。おそらく寺井は自分と同じような惨め極まりない役割を強制されたのだろうと肇は想像した。
 取り繕っていたような幸せが次第にしぼんでいき、いつも以上にどんよりとした空気が男たちを包んでいった。

「なにやってんの」
 洗濯室の洗い場で水を流し下着を洗おうとした肇を、見回りに立ち寄った第三分隊の若い女性海士長が咎める。
「あ、すみません……班長の命令で下着を洗濯に……」
「ていうか誰? あんた」
「あ、第二分隊の糟屋です。申し遅れました……」
「応急長の許可は? 聞いてないわよ」
「あ……それは、まだ……」
 水事情のよくない艦内では真水の使用については厳しく管理されている。もちろんそのことを知らないわけではなかったが、洗うものがものだけに、こういう場合、どう上にお伺いを立てて良いものか迷いながら洗濯室まで来てしまった。たまたま誰もいなかったのでいまこっそりやってしまえば大丈夫だと勝手に判断してしまったのだった。
「あなた、アタシたちの許可もなしに、勝手に水使ってるの?」
 女性はことを大げさにする意図を多分に込めて、大声を放った。
「も、申し訳ありません……」
 まだ二十代前半と思われる迷彩服女性に平謝りする。

 肇はどうすればよいか分からぬまま、士官室の二階堂留美分隊士を訪ねた。まさに新任海士の気分である。女性がつくった独自のルールで動いているこの艦では最下層の立場であることがあらためて身にしみた。
「そう……岩村班長も言い出したら聞かないから、そこはとりあえず従っといた方がいいでしょうね」
 留美は仕事の手を止め、脇に起立する肇を見上げて言う。立場としては留美の方が亜美より上であるが、現場の下士官とはなるべく良好な関係を保っておきたい。聡明な彼女は、ここは静観すべきと判断した。
 一方肇としては、男部下に女物の下着を洗わせるなどと言う暴挙をいさめてもらうことを少しは期待していたので多分にがっかりとした。
「だけど、応急長はよく知ってる先輩だから」
 留美はここから離れた壁際の席でパソコンを開いている西谷美玲二尉のところへ肇を連れていく。
 二十七歳の応急長は留美からの説明を一通り聞くと、「そうね……下着洗うのは別にかまわないけど……ひとり分のために貴重な真水を使うのは困るわ。五人分とか、それ以上まとめてやるのなら、許可出せないこともないけど」
「そうですか……」留美が肇に変わって返事をする。「五人分以上なら大丈夫ですね」

「ど、どうすれば……」
 肇は席に戻った留美に指示を仰いだ。
「聞いてたでしょ」
 仕事の資料をめくりながら、ぶっきらぼうに言う。よほど忙しい様子だ。
「やはり五人分の下着を、でしょうか……」
 まさか男の下着を混ぜるわけには行かない。かといって下着の洗濯許可を直接頼める女性など、この艦内にいるはずもなかった。
 留美は無言で仕事に集中している。
「分隊士殿……お願いできませんでしょうか……」
「私に頼むことじゃないでしょ。そこは班長に相談して」
 留美はいらついた調子で応える。こういうときの彼女には逆らわない方がいい。一見、柔らかい物腰だが、根は気丈なのだ。
「……うう……は、はい……ありがとうございました……お忙しいところをすみませんでした……」
 肇は仕方なくすごすごと退散する。

「どうでした? 洗濯の件は」
 夜の巡検の帰り際に、二階堂留美が聞く。
「そ、それがまだ……班長になかなかお会いできず……いまからまた相談に行くつもりです……」

 

S女小説 アマゾネスウェーブ「血潮の女権革命」

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S女小説 アマゾネスウェーブ「血潮の女権革命」

S女小説 アマゾネスウェーブ「血潮の女権革命」を電子書籍として出版しました。

内容紹介

女性幹部が支配する海自艦船内で、恨みを含んだ矯正指導を受け続ける男子隊員の物語

五十歳を目前にして、二曹への昇任試験に失敗した糟屋肇三曹は、海上自衛隊の特別練習艦《ひめぎく》への転属を命じられた。万年三曹の肩たたき船と言われる《ひめぎく》を実質的に運用しているのは「WAVE(ウェーブ)」の略称で呼ばれる女性自衛官たちであった。他艦で女性に不利益な事件が起こる度に、女性艦長が定める艦の規律は、男性クルーに厳しい内容へと更新されていったが、糟屋肇が乗船した直後、それはこれまでとはまったく違った次元の「特別指導体制」へと引き上げられたのだった。

第一章 直属上司はうら若き乙女

第二章 男の非力を嗤う女海士達

第三章 完全女性上位体制の発令

第四章 上級幹部の部屋付当番へ

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第一章 直属上司はうら若き乙女

☆ 一

くれですか……やはり……」
糟屋肇かすやはじめはうなだれる。
「はい、基地は呉ですが、そこから北上する艦船ですので。お体に気をつけて」
 辞令書を渡した女性事務官は、微笑を浮かべながらも感情を抑えるようにして言った。極めて事務的な態度だった。
「ありがとうございます。長いことお世話になりました」
 二〇代半ばの女性事務官に一礼して四十八歳の海上自衛官は建物を出る。
 佐世保基地の敷地内ベンチに腰掛け、港に浮かぶヘリコプター搭載型護衛艦を前に、濃紺の作業着に忍ばせておいた缶コーヒーを開ける。春の昇任試験前に同僚から言われた言葉を思い出す。
―――糟屋、俺たちたぶん、これがラストチャンスだぞ。ここで、二曹に上がっておかないと、《ひめぎく》行きになっちまうぞ……
 《ひめぎく》は、五年前から運用が開始された特別練習艦で、その主な目的は女性幹部(士官)の指導力強化および女性曹士の実践力鍛錬にあった。そして、《ひめぎく》にはもうひとつの役割があるというのがもっぱらの噂だった。それは、任務遂行能力の低い中高年の万年三曹を肩たたきすることである。同僚は続けた。
―――いいか糟屋、俺たちはもうじき五十だ。しかも、俺もお前も体格の面でハンディがある。おまけにお前は独身ときてる。このまま三曹のままだったら、近いうちに《ひめぎく》行きになるのは確実だよ……
 同僚は試験間近になってもなかなかやる気を示さない肇の肩を叩いた。
―――なあ……《ひめぎく》行きになった連中がどうなるか知ってるか? 年下の女に奴隷みたくこき使われるんだぜ……
 にわかには信じがたい話だった。
―――そんな馬鹿なって思ってるだろ……だって現に《ひめぎく》にいったん乗って無事に復帰できた人間なんていないんだから。みな音を上げて自主退官するか、女たちの万年奴隷だよ……
 結局、危機感を募らせたその同僚は二曹に無事昇格した。彼の言葉どおり、肇だけが《ひめぎく》が待っている呉基地行きを命じられたのだった。
「噂だろ、そんなの。誰かがつくった……」糟屋肇は、目の前の護衛艦がたなびかせる旭日旗を眺めて、生ぬるい缶コーヒーをあおった。「そんなことあり得ないじゃないか……」自分に言い聞かせるようにつぶやき、アルミの缶を握りつぶす。

―――二週間後。
 呉基地に到着した糟屋肇は赤煉瓦庁舎の門をくぐり、指定された個室で待機する。衣類や生活品をつめたビニルバッグを椅子に置き、壁に設えられた鏡の前に立つ。いつも濃紺の作業着ばかり着ているので、白い制服姿がなんだかぎこちなく映る。また少し痩せた。ベルトの穴がもう一つ奥になった。女だらけのふねに乗せてもらえるなんて、かえってありがたいことだ、などと強がってはみたものの、心のどこかで怯えている自分がいた。転属を言い渡された日から、食欲が急激に落ちて、体重は五〇キロを切ろうとしていた。
 肇はバッグの隣の椅子に腰掛け担当者を待つ。
 ほどなくしてノックの音がした。
「はいっ」
 肇の返事を聞いて、ドアが開く。純白の海自制服に身を包んだ若い女性が入室してきた。肇は彼女の肩に階級章があるのを見て、すばやく立ち上がり、敬礼する。
「か、糟屋肇三曹です。佐世保基地より、この度こちらに着任することになりました」
 しなやかな動きで答礼した女性幹部は、着席するよう促し、自分もテーブルを挟んだ向かいに座る。
「二階堂です。よろしくお願いします」
 二階堂留美三尉はやや緊張気味に口を開く。一昨年、防衛大学校を卒業し、一年に及ぶ幹部候補生学校での教育訓練を経て、国内巡航に続く遠洋練習航海を終えた二十四歳は、海の職場にようやく慣れつつあったが、自分の父親ほどの年齢の男性を直接の部下として迎えるのは初めての体験になる。
「こ、こちらこそ、よろしくお願いいたします」
 肇は遠慮がちに留美の顔を見る。いくら年下の女性であろうが、上官と話すときには目を逸らしてはならない。整った面立ちに意思の力をもたらしているのは二重まぶたの澄み切った双眸であり、品位を与えているのはスッと通った鼻筋だった。四十八歳の独身男にはまぶしすぎる美しさだった。
「もう承知かと思いますが、私たちと一緒に乗ってもらうのは、特別練習艦の《ひめぎく》です」
 練習艦は、士官教育のために使用される艦で、通常護衛艦タイプの艦船が使用される。自衛隊で使うので護衛艦などという婉曲な呼称を与えられているが、要は軍艦である。国際法上もそう呼ばれている。
 ひめぎくの乗員は、総員約一五〇名。うち一割ほどが幹部で、艦長、副長をはじめ幹部は全員女性だという。肇が噂で聞いた通りだった。
「はいっ」
 肇は留美が説明の間を置くたびに、目を見て、好印象を与えるための返事に努める。思ったよりすんなりと年下の女性上官を受け入れている自分に驚く。
「なにか、ご質問は?」
 艦について一通りの説明を終え、留美が聞く。
「あ、あの……男性の乗組員は、やはり私のような年代ばかりの……」
 言い淀む肇に留美は多少苛立ちの表情を見せて、首をかしげる。
「い、いえ、すみません……なんでもありません……出航は、いつでありましょうか……」
「明日です」
「明日!」
「ええ……じゃあ、もう、行きましょうか、艦へ……あとのことは、中に入ってからの方がいいでしょうから」
 皆の前で聞きにくいことがあればと思って、事前に個別の時間を取った留美だったが、ここで打ち切ることにした。
「はいっ、よろしくお願いいたします」
 そう言って深々と頭を下げる肇に、留美の方は軽く会釈を返すと立ち上がり、キビキビとした動作で部屋を出て行く。中年海曹は荷物を抱えて、慌ててあとを追う。立ち上がってみて、自分がいかに背の低い男であるかを痛感させられた。前を歩く女性は、特段高いヒールを履いているわけでもないのに、自分よりかなり上背がある。

 艦に入ればなおさらだった。大きな女たちの指揮、指導で小さな男たちがちょこまかと動いている。
 女性艦長の意向で女性隊員は身長一六五センチ以上を中心に、男性隊員は一六〇センチ以下限定で選ばれていた。
「男性の部屋は、少し狭くて申し訳ないんですが……」
 そう言いながら留美が案内した下甲板の男子科員室は、通常の護衛艦が備えている三段ベッドとロッカーの雑居区画だったが、確かにスペースにしてもベッドの規格にしてもやや小ぶりだと、肇は思った。事実そのとおりで、すべては女子の科員室にゆとりをもたせるためのしわ寄せであった。
「い、いえ、大丈夫です……」
 肇は自分ひとりだけが、稼働中の艦にあとから乗ることが初めての経験だったので、そのことについて尋ねた。
「いえ、糟屋さんだけじゃありませんよ。この班にも、他の班にも転属は多数います。昨日も、その前も、搭乗日がずれているだけで。ただ、私もまだ乗ったばかりで詳しくは知りませんが、この艦は特別で、独自のルールも多いと聞いています……なんにしろ、糟屋さんだけではありませんから」
「そ、そうですか……」
 安心していいのかよくわからない返答だったが、肇は了解したように何度か頷いた。
「じゃあ、上がりましょう。みな、明日の出航に向けて、準備を進めていますから……作業服に着替えてください」
「はいっ」
 濃紺の上下に着替えて、連れて行かれたのは食料の搬入現場だった。いったん露天甲板に上がった後、岸へかけたタラップを降りる。大半の食料は搬入済みだったが、このトラック一台分が最終到着便とのことだった。
「彼、新しく入った糟屋三曹」
 留美が長身の女性二曹に紹介する。
「あ……」
 肇は絶句する。七年前、佐世保の部下であった岩村亜美だ。当時は十九歳でまだ一士だった。しかし目の前の帽子と腕の階級章は肇より上の二曹だ。二十六歳にして、四十八歳の肇を追い抜く出世である。
 亜美も一瞬驚いた様子だったが、「どうも。お久しぶりです」と努めて冷静を装い、「そこに入ってお願いします」とバケツリレーの列に、かつての上司を嵌め込んだ。
「お元気でしたか……」
 そう言いかけた肇を制し、そんな悠長な話にいま付き合っている暇はないとばかり、「はいっ、スピードあげてえっ、間に合いませんよ、そんなんじゃあっ」
 亜美は、痩せて小柄な中年男たちが汗をかきかき、食材の段ボールを搬入する列へ大声を浴びせる。
「はいっ」
 声を揃える男たちに、肇も慌てて返事をあわせ、作業に参加する。
「じゃあ、岩村さん、よろしく」と留美。
 敬礼する亜美の姿をチラリと見た肇は、彼女の成長ぶりに驚いた。自信を持って任務に当たっている気概が伝わってくる。このふねにいる女性は、すべてそうなのかもしれない。肇は、早くも荷物を運ぶ腕にきつさを感じながら思った。これまで男中心の職場で見てきた女性隊員たちとはちょっと違う。

☆ 二

「これ、マジで間に合わないですねえ」
 白い制服に制帽、ズボンを履いた岩村亜美が、汗まみれになって働く男たちの脇を大股で歩きながら、これ見よがしに言うと、大きくため息をついた。どうやら、艦上では女性は制服(夏は白、冬は紺)、男は作業服の濃紺になっているようだ。
 亜美が無線電話で応援を要請すると、すぐに甲板から、四人の女性海士たちが降りてきた。やはり、白の上下で、全員が亜美と同じかそれ以上の長身だった。体躯はみな一見スリムに見えるが、屈強さを感じさせる。日々、鍛錬を怠っていないことは、動きを見れば分かる。全員が若く、二十代前半だ。女たちは、男の列と平行になるように別の列を組み、亜美の指示を待つことなく、率先して食料を積み込み始めた。男の列より一人少ないにもかかわらず、彼らの倍近いスピードで荷物が次々と運び込まれる。
「はい、男性、頑張ってください」
 亜美がパンパンと手を打ちながら、一人ひとりに発破をかけていく。
―――屈辱的だ……
 肇は頭ではそう思いつつも、体の方がついていかない。他の男たちも似たり寄ったりだ。圧倒的な女性たちの馬力を目の当たりにして、もはや諦めの気持ちが生じたのか、安堵したのか、中年男たちが運ぶ荷物はさらにスピードを落とした。
 そうするうちに、さらに他の部署からも、体力の有り余った女性海士たちが降りてきた。
「はい、じゃあ、男性さん、作業やめえっ」
 亜美は、肇たちに手を止めさせ、彼女たちに取って代わらせた。
「どうしたの?」
 通りがかった井村文乃一尉が仕事にあぶれて所在なくしている男たちに目をやって尋ねる。二十九歳の彼女は、肇が所属する第二分隊の分隊長である。男たちは文乃の存在に気づくと敬礼をして、その場で直立不動の姿勢を取る。肇も慌てて皆にあわせる。
「あ、分隊長……」
 岩村亜美二曹から事情を聞き終えた井村文乃一尉は、腕組みをして男たちの列の前をゆっくりと歩く。
「きちんと整列しなさいっ」
「はいっ」
 しとやかなルックスに似合わぬ大声に驚き、男たちはバラバラだった間隔を整える。肇も左右を見て自分の立ち位置を調節する。
「気をつけええっ」
 さらなる大声に男たちはびくついて姿勢を整える。
「休めっ……その姿勢のまま……女性たちの仕事ぶりを見ていなさい」
 長い睫を持つ女性一尉は、男たちにいくぶん侮蔑が交じった視線を放ちながら言う。
「はいっ」
 目の前で若い女性たちが食料の段ボールを次から次へ艦内へ運び込んでいる。声を出し合い、溌剌とした雰囲気で、肇たちのような悲観的な態度はみじんも見られない。
「あなたたち、どういう状況か分かってる? 仕事を取り上げられたのよ」
「はいっ……申し訳ありません」
 返事までは揃っていたが、その後の謝罪の言葉はバラバラにしかも尻切れトンボの調子に終わる。それが覇気のなさに映り、普段は物静かな井村文乃一尉の怒りを誘う。
「ねえ、情けないと思わないの? いい年した男が。揃いも揃って」
 十も一回りも、あるいはそれ以上も年下の女性に強い説教を受けても、男たちはまったく反論などできない。艦の中は完全なる階級社会であるからだ。
「あれ、なんの荷物運んでるの? ねえ、寺井三曹」
 文乃は、目の前で顔をこわばらせている五十過ぎの貧相な海曹をねめつけて言う。
「あ、はっ、食料です、だと思います」
「だよねえ」
 文乃は中年男たちを見回してひときわ大きな声を出す。
「自分たちで食べる物資すら、まともに運べないってどういうことよ」
「はっ……申し訳ありません」
 肇は多少うんざりした表情で皆にあわせる。他にもそのような態度を示した仲間がいたようだった。
「なに? なにか不満?」
「いえっ……申し訳ありません……」
 男たちに悲壮な雰囲気が漂う。
 そのとき文乃一尉に無線が入る。
「了解、すぐ行きます」
 レーダー部署で新規格の機器導入の際にトラブルが生じたようだった。機器管理に詳しい文乃一尉のアドバイスを受けたいとの要請だった。
「岩村さん」文乃は、岩村亜美二曹に声を掛ける。「彼ら、作業が終わるまで、このままで」
「はいっ」
 亜美の敬礼を受け、井村文乃一尉は甲板に戻っていった。

「ごくろうさま」
 岩村亜美二曹は、トラック一台分の食料を積み終えた女性海士たちをねぎらうと、惨めに整列させられている中年男たちを眺めやる。
「ねえ……こんなんじゃ、先が思いやられますよ」
 一七〇センチを越す長身の二十六歳が一人ひとりの顔をざっと見渡しながらあきれたように言う。肇は心なしか、自分を見ている時間が少し長かったように思えた。
「はいっ……も、申し訳ありません……」
 脚を少し開き、後ろで腕を組んだ四十、五十の男たちは、うつむきかげんで声を絞り出す。二十六歳の女性二曹に行動を支配されていることに恥ずかしさを噛みしめている。彼女の元上司であった肇はなおさらだった。
「甲板に上がって、あなたたちにでもできる作業をやりますから。今度は真剣に取り組んでくださいね」
「……は、はいっ……」
 幾人かはその言われ様に納得がいかない様子だった。
「いいですねっ」
 亜美は返事のやり直しを命じるように強い口調でもう一度問う。
「はいっ」
 男たちは悔しさをにじませながらも今度は声を揃える。

 課業を終え、一七時ちょうどに夕食が始まる。肇たちの班の順番になり、食堂へ降りて金属製のトレーを取ろうとすると、すぐ後ろに並んでいた同じ班の寺井という男が、「あ、それは女性専用だ。男子はそっち」と一回り小さなトレーを指さした。肇は一瞬絶句したが、「あ、どうも」と小さな声で言いながら、寺井に頭を下げると、目の前で仕事をしている女性の給養員(調理係)の目に遠慮し、小さなトレーにふさわしい控えめな盛りで、肉や野菜の料理を装っていった。

「いや、まいったね。驚いたでしょ」
 寺井がトンカツのソースをつけた口で、肇に言った。五十二歳の寺井は同じく三曹であるが、彼はもう一年ほど、この《ひめぎく》に乗り続けているという。
「はい……びっくりしました。女性が天下のふねだとは聞いていましたが」
「でもね、こんなもんじゃないよ。あの二人はまだ優しい方だよ。怖いのは先任伍長だ」寺井はあたりを見回し、他の科員たちが集まってきたのを見て声を潜める。「もちろん女だけど」
「そ、そうなんですね……」
「とにかく、この艦では絶対、女に逆らっちゃいけないよ」

 ほとんどの雑用は男子科員の仕事である。寺井は食卓番として皿洗いに従事し、肇は食堂の床を拭き掃除する。女性下士官の監視の目があるので、もちろん手を抜くことなどできない。

 床掃除などの雑用を終えた肇が、ようやく風呂に入り、科員室に戻ってベッドの上に疲れた体を横たえていると、周囲が慌ただしくなる。
―――もうこんな時間か……
 時計を見ると一九時半、巡検の時間だ。同じ班の六人が揃って、廊下に並び、整列する。

 

S女小説 アマゾネスウェーブ「血潮の女権革命」

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S女小説 美少女姉妹「残酷」兄虐め

S女小説 美少女姉妹「残酷」兄虐めを電子書籍として出版しました。

内容紹介

恋人を持つ二十五歳の男が、一回り近く年の離れた妹たちに虐待・陵辱される物語

岩田正則(25)は、夏休みを利用したバレーボールのエリート合宿のために上京してきた妹、紗織を自身のアパートに寝泊まりさせることになるが、恋人の倉瀬美樹(21)は、紗織が見ている前で、正則を虐待し始める。正則と美樹は、ついひと月ほど前の正則の被虐願望告白により、厳格な主従関係を築きつつあったのだった。最初は戸惑っていた美樹だが、次第に彼女の方が虐待の悦びにのめり込むようになっていた。正則のアパートで繰り広げられる美樹の嗜虐性は、次第に紗織へと伝わり、正則は背徳的な躊躇を感じつつも、妹から虐められる至福に溺れていくのだった。夏が終わり、甘くも激しい快楽の余韻の秋を過ぎると、冬休みを利用して、今度は、下の妹、詩織がアイドルオーディションを受けるために正則を頼って上京してきた。彼女の前でも、恋人の美樹は、激しく正則を責めたて、いたいけな少女を容赦のない女王への道へと誘うのだった。

  • 第一章 愛する妹が見ている前で
  • 第二章 JC妹に責め虐められて
  • 第三章 JS妹に踏まれ打たれて
  • 第四章 美しき姉妹の暴力と陵辱

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第一章 愛する妹が見ている前で

☆ 一

「もう一年半くらい会ってないので……」
滑り込んでくる新幹線を目で追いながら、岩田正則いわたまさのりが言う。彼は二十五歳でIT系の自営業者だ。
「中学校二年生っていったら、マサといくつ違うんだっけ?」
正則の恋人、倉瀬美樹くらせみきが隣にくっついて尋ねる。ふんわりしたボブヘアがよく似合う二十一歳の美女だ。正則の取引先でOLをしている。
「十一……」
「えーっ、そんなに下なんだ。ほぼ一回りね」
二人は、夏休みを利用してバレーボール合宿のために上京してくる正則の妹、岩田紗織さおりを迎えにきたところだった。
ドアが開いて、次々と乗客が降りてくる。
「……あれえ……この車両のはずなのに」
最後の乗客らしい女性が降りたところで、正則は首をかしげる。そのサングラスを掛けたいかにもいいオンナふうの女性が、大きなトランクを転がしてこちらへ近づいてくる。
「お兄ちゃん、久しぶり」
「ああっ、さ、紗織っ」
見上げるほど上背がある長身中学生は、サングラスを外して、煌めくような笑顔を見せる。やや茶色がかったショートヘア。白いコットンシャツに赤いキュロットスカート、そこから伸びる白いスニーカーまでの脚の長さが尋常ではなかった。
三人は正則の車でいきつけのファミリーレストランへ向かう。

「あらためて、はじめまして、岩田沙織です」
レストランに入って着席すると紗織が向かいに座る美樹に挨拶した。
「こちらこそ」美樹は感心しきりの様子で返礼する。「なんか、しっかりしてるわねえ沙織ちゃん。とてもマサの妹さんだなんて思えない」
「いや、そんな……」
正則は美樹の方を見て声にならない声を放つ。妹の前ではアブノーマルな関係はとりあえず控えておいて欲しいと事前に頼んであるが、いきなり《マサ》と呼び捨てられドギマギする。
「いえ、ありがとうございます」沙織は、うろたえる正則とは対照的に、しっかりと相手の目を見て受け答えをした。「お兄ちゃんの彼女がこんな素敵な女性ひとだなんて、私の方こそ驚いてます」

「それにしても背高いね沙織ちゃん、何センチあるの?」食後のティーグラスを手に、美樹が尋ねる。「ごめん、聞いちゃっていいのかな」
「はい……一七六です」
中二の紗織は平均的な成年男子よりも高い身長をバレーボール選手としてのアドバンテージと考えることはあっても、コンプレックスに感じることはなかった。それよりもテーブルを囲む三人の中でいちばん身長の低い兄がどう思っているのか少し気にはなった。
「凄い! 一七六センチ? いま十四歳でしょ? まだまだ伸びるよ。将来の全日本代表間違いなしだね」
「いえ……そうなれればいいですけど……」
紗織は照れながらも兄の恋人が口に出した夢が現実になることを願っている。
「母親が昔、全日本にいて。レギュラーメンバーではなかったんだけど」と正則。
「へええっ、なるほどね……で、この二人の違いはなんなの?」
美樹は紗織と正則を交互に見比べて言う。
紗織がクスリと笑う。
「いや、それは……話してなかったかな……」正則は多少の戸惑いをみせながら笑顔のまま美樹に言う。「父親が違って。僕の父は凄く小さかったから」
「なるほど……」美樹は一瞬、ばつの悪い表情を見せたが、すぐに笑顔を戻し、「長身のお母さんをしても、いかんともしがたかったわけね」
「ま、まあ……」
正則は苦笑いをする。
「合宿はいつから?」と美樹。
「はい……明日から……二週間です……」
合宿は全国から集まる女子バレーボールのエリート選手のためのもので、実際に毎年、この合宿の参加者の中から代表候補が選ばれているのだという。
「そっかあ、凄いね沙織ちゃん、頑張って。なんかあったらいつでも連絡してよ」
美樹は紗織と電話番号とメッセージIDを交換した。
「あ、はい」
それが紗織にはことのほか嬉しかった。見ず知らずの都会に相談できる女性の先輩ができたのだ。姉が現れたような気分だった。

「じゃあ、私、今日は自分ち帰るから」
店を出て美樹が正則に言う。
「送るよ」
「大丈夫。すぐそこだし。歩いて帰れるから」
ヒールを履いた状態で立つと美樹も一七〇センチくらいの上背があった。正則がひとり小さい。
「あ、そう……」
正則は少し残念そうに言う。明日は土曜日で二人とも仕事は休みなので、いつもならどちらかのアパートに泊まるところだ。
「あ、美樹さん、遠慮しないでください。私、大丈夫ですから」
空気を察した沙織が言う。
「いいのよ。せっかく、久しぶりに兄妹きょうだい水入らずなんだから」
「いえ……美樹さんも……」紗織は連絡先を交換して急に親しみを覚えた美樹の腕に触って言う。「一緒に行きましょう」
「紗織もそう言ってるし」
正則もそう促し、結局三人で彼のアパートへ向かった。

「じゃあ、紗織が明日早いことだし、そろそろ寝ますか」
リビングでひとしきり話し込んだ三人はテーブルの上を片付ける。アルコールがあまり強くない正則はビールとワイン一杯で顔をすっかり赤らめているが、ワインを三杯飲んだ美樹は平然としている。
「強いんですね、美樹さん、お酒」
紗織がグラスをキッチンに運びながら言う。
「普通よ。あなたのお兄ちゃんが弱いの。大人になったら一緒に飲もうね」
「はいっ」
後片付けをして、交代でシャワーを浴びた。

「じゃあ、紗織はこっちの部屋使って。ちょっと物置みたいで悪いけど」
正則は、実際に物置部屋として使っていた部屋を片付け、真新しい布団一式を妹のために用意していた。
「OK、ありがと」
「じゃ、おやすみ」
正則は隣の部屋、美樹が待つ寝室へと向かう。
寝具の上で雑誌を眺めている彼女のそばにすりより、「お待たせしました」と密やかな声で頭を下げる。美樹はパジャマに着替えている。
「服なんて着てていいの? 正則、お前
ジャージ姿の正則を見て言う。
「み、美樹さん、今日は、さすがに……妹がきてますので……ご勘弁ください……」

「もう大丈夫だよ、脱ぎな」
半時間ほど経って美樹が再び言う。
「で、でも……」
「もう寝てるよ、脱げ」
隣室を隔てる壁を見て言う。
「は、はい……」
正則は部屋着の上下を脱ぎ捨て、下着も外し、素っ裸になる。
「うん、それでいいんだよ、お前は」美樹は満足そうに頷く。「ここで服着てるマサを見てる方が不自然だよ」
「は、はい……」
「ワインとってきて」
「え……」
「キッチンから、ワインとってこいっつってんの」
「あ、は、い……」
脱ぎ捨てた下着を拾おうとした正則を見て、美樹は寝具から立ち上がる。髪の毛をつかみ上げ、指先を揃えた手のひらを高く上げる。
「うううう……」
「派手な音させちゃ、まずいかな」
美樹はそう言うと上げた手のひらを握って拳をつくり、正則の頬をゴツリと打った。
「うぐっ……す、すみません……」
正則がささやくように言う。
「裸のまま、キッチンからワインとってこいって」
もう一度そう言うと美樹はヘッドロックの体勢に入り、四つ年上の恋人の首をぐいと締め付ける。
「くううううううっ……」
正則は、すぐに美樹の背中を手のひらで二度叩く。ギブアップの合図だ。美樹が少し力を緩めると、「行きます、とってきますので、美樹さん……」
正則は、そっと寝室のドアを開き、なるべく足音を立てないようにしながらキッチンへ向かい、冷蔵庫からワイン、戸棚からグラスをとって急ぎ部屋へ戻る。
「びびってんじゃないわよ」
美樹は正則にワインを注がせながら微笑む。
「え、あ……はい……」
「もう、寝てるでしょ」
「でしょうか、たぶん……」
「やろうか」
「え……」
「セックスしようよ」
「で、でも……今日は紗織が……」
「寝てるでしょ、もう。って言うかいつもどおりでお構いなくって言ったの彼女でしょ」
美樹はだいぶ酔いが回ってきている様子だった。
「そ、そういう意味では……それに、まだ中学生だし……ですし……」
「いいじゃない。中二女子なんてもう、普通にオンナだよ……」

☆ 二

「今夜は刺激的だね」
美樹は寝室の入り口の引き戸を少しだけ開け、仰向けに寝ている正則の方へ戻ってくる。寝具マットは引き戸の隙間からよく見える位置に移動させた。美樹はパジャマ姿のまま、全裸の恋人の乳首をつまむ。
「なんだかんだ言って、興奮してんじゃない。もう、固く勃っちゃってるよ」
「ああああ……み、美樹さん……」
美樹は、正則の左の乳首を右手で虐めながら、右の乳首を軽く噛む。
「はうううっ……」
壁を隔てたすぐ向こうに妹がいると思うと正則は出してしまった声を飲み込むようにする。
「遠慮しないでさ、いつもみたいに女の子みたいな甲高い声で、あえいでみせなよ」
「くうううっ……や、やめて……美樹さん……」
妹の隣部屋でそんな台詞を発することに正則は強い興奮を覚える。
「ほら、もうこっちも勃ってきた。いつもより元気なんじゃない? 沙織ちゃんに見られながら犯されたいって言ってるみたいだよ。ガマン汁だらだら流しちゃって」
美樹は正則の竿をしなやかな手で握るとそのまま意地悪く力を込める。
「かうはわああっ……い、痛いです……」
「ふん、あとでもっと締め付けてあげるからね」
美樹はそう言いながら、握った親指を上へ延ばして亀頭の鈴口をなでるようにする。たっぷりとカウパー腺液をまぶした親指を正則の口へもっていき、ねじ入れる。
「ううむうううぷ……」
「ほらあっ、なんだよ、これはさあっ。いやだいやだいいながらさ、めてほしいんでしょ、沙織ちゃんが見てるとこで」
正則は、その場面を想像しつつ、首を横に振る。
「やめて、ホントに、お願い……美樹さん……」
美樹は妖艶な笑みを浮かべて正則を見下ろしながら、自分の下半身をすべて脱ぎ降ろし、パジャマのボタンを外して前をはだける。ブラジャーはしていない。豊満な胸の桃色乳首が露わになる。

―――あれは、やっぱり大人のあれかなあ……
紗織は隣の部屋の物音や気配に耳をそばだてる。布団に潜り込んで無理矢理眠ろうと思ったが、そうすれば反対に好奇心が湧いてきて、いっそう目が冴えてしまった。
寝具を隣部屋の方へ寄せる。壁ギリギリまで近づけると時折、かすかに悲鳴のような声がする。壁に耳をそっとつけてみる。
(あっ、ああっ、ああん、あん……)
女性のあえぎ声とともに、断続的な振動が伝わってくる。
―――やっぱり……お兄ちゃんたち、セックスしてる……
ここのところ、Hに興味のあるクラス女子たちの間ではもっぱらその話題でもちきりだ。紗織は彼女たちの前では、バージンを装っていたが、実のところ地元のバレーボールコーチとすでに何度か経験済みだった。
どうやら壁のすぐ向こうに二人はいるらしい。よく耳をすますと肉と肉がパンパンと当たりこすれたり、くちゅくちゅと挿入するような音まで聞き取ることができた。
紗織は頭の中で隣部屋の風景を想像してみる。
―――きっと美樹さんの上に、お兄ちゃんが……
そんな想像をしていたら、ふいに尿意が襲ってきた。
―――お茶やジュース、たくさん飲んだからなあ……
壁の向こうにもう少し聞き耳を立てていたかったが、紗織はそっと立ち上がって、なるべく静かに部屋の戸を開け、外へ出る。
―――え……
真っ暗なLDKの床に光の筋が走っている。隣の部屋の戸がわずかに開いているのだ。
―――ああん、あん、はああん、あん、あん……
聞いていて恥ずかしくなる甲高い声が今度ははっきりと聞こえる。
トイレに行くには、その戸の前を横切る必要がある。紗織は唾を大きく飲んで、音を立てずに歩を進め、ちらりと戸の隙間に目をやり通り過ぎる。一人がもう一人の体に馬乗りになっているのが見えた。通り過ぎた紗織は、その残像に違和感を覚える。
―――んん? ……
そおっと後戻りして戸の隙間から中を覗いてみる。
―――ああああっ……
上に乗って髪を振り乱しながら腰を振っているのが美樹で、両手首を押さえ込まれて、甲高いあえぎ声を出しているのが兄だった。
―――ええっ、セックスって本当はこうなの? ……
紗織はしばしその場に立ち尽くすようにして、二人の睦み合いを目に焼き付け、トイレへ向かう。

トイレの水が流れる音が響く。
―――あ……
美樹に犯され続けている正則が目を見開く。
足音が聞こえてきて、そのまま隣の部屋へ入る。
「見られたかもね」
紗織はそう言い、うっすら笑みを浮かべて、膣をキュッと締め付けるとフィニッシュへ向けて怒濤の抽送へと入っていった。

翌朝、みなでトーストとコーヒーの朝食を済ませたあと、正則の車で紗織の合宿先である体育館へ向かった。朝食の時からそうだったが、妙な沈黙が車内を包む。美樹は昨晩、正則を騎上位で犯しながら、目の端に紗織の気配を認めていた。
みな昨日のことが頭に渦巻き、なかなか言葉が出てこない。
そうこうするうちに、車は目的地へ近づく。
「見学とかできるの? バレーボールの練習」
美樹が後部座席の紗織を振り返る。
「あ、はい……できますよ……結構、父兄の人たちとかきてます……」
「ちょっと見てこうか……いい?」
美樹は正則に言い、紗織にも確認する。
「はい」
紗織は自信に満ちた眼差しで返事をする。

「ありがと、じゃあ」
美樹と正則に手を振り、案内図を片手に控え室の方へ向かう紗織は、白地に赤のストライプで彩られたトレーナーと短パンがよく似合っている。中二ながら、散漫さのない機敏な身のこなしで、いかにも優秀なアスリートという印象を早くも周囲にもたらしている。
美樹と正則は建物の中へ入り、さきほど美樹から説明を受けたとおりに、階段を上る。三面のバレーボールコートを囲むようにして高い位置に見学席が設けられている。
「まあまあ、いるね」
見学者はまばらにいて、美樹たちが座る席の両隣には、いずれも選手の姉妹だろうか、若い女性たちが雑談しながら待っていた。選手たちはまだ現れてこない。
「み、美樹さん……やっぱり昨晩のはまずかったんじゃ……」
「いいじゃない、いつまでもウジウジ気にしてんじゃないわよ、男のくせに」美樹は少し大きめの声で言う。「沙織ちゃん、見てたよ」
「えっ……そんな……」
「なによ、その顔、白々しい。そんなこと言って、お前本当は見られたかったんでしょ」
美樹はウェーブの掛かった髪を触りながら言う。
「み、美樹さんは平気なんですか?」
「別に……ただセックスしてるだけじゃん。男と女がつきあってて当たり前でしょ。そんなことよりさ、パンプス汚れてるわ。磨いてよ」
デニム生地のミニスカートから伸びた長い脚を組んで言う。
「いま、ここでですか?」
正則は唾を飲み込み、左右を見渡す。右側は、中学生と高校生くらいの姉妹らしき二人。左側には、高校生と大学生くらいのやはり二人。こちらも姉妹だろうか、いずれも年の差の離れ具合からおそらくそうだろう。
「うん、やって……」
正則は、もう一度左右を確認したが、やはり躊躇してうつむく。
美樹は少し微笑むと次の瞬間、「パンプスきれいに磨いとけっていったよねえ」と周囲に聞こえるほどの声で言い放ち、正則の頭髪をつかみ椅子から引きずり下ろすと頬を一発パンと張った。周囲の空気が一瞬にして凍り付き、女性たちの視線を一気に感じる。
「ご、ごめんなさい……すみません……」
正則は震える手でポケットからハンカチを取り出すと、美樹の足元に正座し、彼女の赤いパンプスを尖ったつま先から磨きはじめる。
「ちゃんとやれよ、殴られる前にさあ」
整った顔が気色ばむ。
「は、はい……申し訳ありません……」
正則は顔を真っ赤にしながら左側の中高生姉妹の方にチラと目をやる。二人は少し緊張の面持ちながらも、なにが起こっているのだろうかという目でこちらを見ている。正則は勇気を振り絞ってもう一度二人の方を見て、ぎこちない笑みを浮かべ少し頭を下げる。とたんに軽蔑の眼差しが二人から注がれる。
右側から女性たちの押し殺した笑い声が聞こえてくる。
「ほら、ボーッとしてないで手ぇ動かせよ」
美樹のパンプスのつま先が正則の側頭部をコーンと蹴る。右側からの笑い声がわっと高まり、左側からもクスクスと嘲笑が聞こえてくる。

☆ 三

「ほら、出てきたよ」
美樹が言い、正則が跪いた姿勢のまま後ろを振り向く。大柄な女子たちが、キュッキュッという足音とともにコートに姿を現す。それぞれ自分たちが所属するバレーボールチームのユニフォームを着ている。体育館の空気が華やいでいく。
「あ……もう、よろしいでしょうか……」
正則の伺いに美樹は黙って頷き、靴磨き終了の許可を与える。椅子に戻って美樹と一緒に沙織の姿を探す。
「あ、あそこ」
美樹が指さした先には、白地に赤のストライプが入ったシャツと赤い短パンのユニフォームに着替えた妹の姿があった。鼻筋がスッと通った母親似の美しい面立ち。強靱なパワーを秘めながらもモデルのようなスリムさを併せ持つバランスの取れた体つき。彼女と同じくらい長身の女子も何人かいたが、いちばん目立っていたのは紗織だった。
「スターになるわよ、きっと彼女」
「……でしょうか……」
「マサの妹とは思えないわね、ホントに」
彼女たちは、しばらくいくつかの輪になってトス練習を始めたが、そのうちに監督やコーチと思われる女性たちが姿を現し、指導を始めていった。正則はその女性たちの凜として威厳のある姿にも心を奪われる。おそらく同い年や少し年下かもしれない。

S女小説 美少女姉妹「残酷」兄虐め

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S女小説「女子トイレ専任掃除夫の涙」

S女小説 「女子トイレ専任掃除夫の涙」を電子書籍として出版しました。

内容紹介

女子高を懲戒解雇された元男性教師が、女子トイレ専任掃除夫として女性たちに冷厳な指導を受け続ける物語。

私立桜花女子高校の地理教諭で生活指導部長だった干川清彦(42)は、新任美人教師の秋村架純(23)に片想いを寄せながらも、生活指導副部長の女性教諭三宅淳子(28)と不貞行為を繰り返していた。ある放課後、不良女生徒の武井亜紀(18)を厳しく指導したものの、自らは彼女の担任でもある三宅淳子と事もあろうに、女生徒が去った後の生活指導室で行為に及ぶ。しかしその様子は武井亜紀によって、密かに撮影されていたのだった。その証拠はほどなく彼女の叔母で校長の豊田真帆(42)の手に渡る。真帆が主導権を握る理事会により、本来なら男女二人に厳罰が下るところだったが、清彦が強淫を自白することを交換条件に、清彦のみが退職することで真帆からの容赦を得た。教職にいくぶん辟易していた彼にとっては半ば望むところの選択だったが、これをきっかけに想像を絶する屈辱の日々が繰り広げられていく。

 

プロローグ

第一章 女性校長、逆セクハラ地獄

第二章 女性部長、鬼の土下座強要

第三章 美人担当者、魔の便器特訓

第四章 女子高生、元教師への復習

エピローグ

本文サンプル

プロローグ

「そろそろ行きますか」
 雨上がりの朝、私立桜花おうか女子高等学校の校門前で、生活指導部長の干川清彦ほしかわきよひこが、最後の生徒が校舎へ消えるのを見届けると、副部長の三宅淳子に促した。
「ええ」
 もう少しでホームルーム開始の時刻である。
 二人して校舎の方へ戻ろうとしたそのとき、干川清彦は、頭を茶色に染めた女生徒がひとり遅れて登校してくるのを見つける。
「あいつ……なんだ、あの頭の色は……」
 三年生の武井亜紀だった。いかにも気の強そうな、不良女生徒である。
「おい、お前、ちょっとこっちこいっ。武井だったよな……たしか三宅先生のクラスの」
 茶髪女子を呼びつけ、忌々しげに三宅淳子の方を見る。担任の彼女はばつの悪い表情をして黙っている。
「なんですか、急いでるんだから……」
 校長の姪でもある彼女は強気の口調で言って足を止めずに校舎の方へ進もうとする。
「おい、ちょっと待てって……」
 校庭のスピーカーからメロディが流れる。
「先生」三宅淳子が興奮気味の清彦の肩に手を掛ける。「も、もう、ホームルームが始まりますし、放課後に指導室の方で……私が連れていきますから……」
「わかりました。でもホント困りますよ、三宅先生。担任としてしっかり監督してくれないと」
 武井亜紀の背中を見送りながら、清彦は苦々しく言った。

「おはようございます」
 職員室の自席で待機していた清彦の隣にホームルームから戻ってきた秋村架純が着席する。この春、新卒で赴任したばかりの二十三歳の美人教師だ。二重まぶたの目が凜々しく、笑うとえくぼができる彼女は、まばゆいほどの若さにあふれていて、初見した日から清彦をぞっこんにした。
「うん、おはようございます」
 生活指導で正門に立つことが多い清彦は、このところ自クラスのホームルームは副担任の彼女に任せきりだった。
「ところで先生、真剣に考えてくれました?」
 清彦は秋村架純の耳元にそっと囁く。
「いえ……だからそれは何度もお断りしてるように……」
 一ヶ月程前から、清彦は結婚を前提とした交際を架純に申し込み続けていた。四十二歳の清彦は、一度結婚したことがあるのだが、五年前に離婚して、現在は独身である。架純の方では清彦のことを特段好きでも嫌いでもなかったが、倦怠ぎみの交際からようやくフリーになったばかりで、しばらくは教師という仕事に全力で取り組んでみようと決意していた。とにかくいまは異性と付き合いたい気分ではなかった。

「ううむ、そうですか……お忙しいなら……わかりました……」
 放課後、架純にカラオケの誘いも断られた清彦は気を取り直して、テストの採点にいそしむ。その背中に、「干川先生」と手が触れた。
「はい、あ、先生……」
 振り返ると生活指導副部長の三宅淳子が立っている。
「どうします、武井亜紀、指導室に待たせてますけど」
「あっ、そうか……そうでしたね……」

「言いたいことはいくらでもあるぞ、武井」
 清彦は机を挟んだ女子生徒の前に椅子の音を荒々しくたてて座りながら、苛立たしそうに言う。秋村架純に振られたことが苛立ちをさらに募らせている。三宅淳子は武井亜紀の隣に少し離れて腰掛ける。
「まずはその金髪」
 清彦は手を伸ばして茶色に染めた亜紀の髪をつまもうとする。
「触らないでっ、金髪なんかじゃありませんから」
 大きな目をかっと見据える。
「耳を見せてみなさいっ」
 清彦の方も負けじと横の髪をすくって亜紀の耳たぶを露わにする。
「ほらっ、穴が空いてるじゃないか。ピアスのだろ……あと、遅刻にサボり、無断で飲食のアルバイトしてるって噂も聞いてるぞ……三宅先生、いったいどうなってるんです彼女……」
 淳子は「すみません……」と言ってうつむく。
「先生が謝る必要ないですよ」亜紀は、そう言って清彦の方にあらためて強い視線を送る。「だから、どうだって言うんです。そもそも、うちの学校にそんな校則ありましたっけ?」
 確かに亜紀の言うとおりではあった。進学校でもあるこの女子高には校則というものが存在せず、風紀については生徒の自主性に任されていた。実際、武井亜紀は素行にこそ問題があったが、学業成績は常に上位を保っていた。
「常識ってもんがあるだろうっ」
 清彦が興奮して立ち上がる。
「常識ってなんですか? 落ち着いてくださいよ、先生」
 亜紀はまったくひるむことなく、むしろ昂ぶった男教師をなだめるように言う。
「な、なにいいっ……じゃ、じゃあなあ、言うけど、知ってるんだぞ、武井、お前が不純異性交遊してることだって……」
「せ、先生……」
 タブーに触れてはならないとばかりに、思わず淳子が口を開く。しかし、それにも亜紀はまったく動じなかった。
「それって、セックスのこと、ですか? 自由でしょ、それも。ちゃんと恋愛してるんだから、避妊だってきちんとしてるし」
「な、なにをっ」
 清彦は身を乗り出し亜紀の頬をパンと打った。
「先生っ」
 再び淳子が口を開く。
 叩かれた亜紀が口元にかすかな笑みを浮かべながら、横向いた顔を戻す。
「見ましたよね、先生」と淳子に確認する。「そっちの方が問題ですよ。いまどき体罰なんて。常識ないのは、あなたの方じゃないですか?」
 生徒にあなた呼ばわりされ、清彦は頭に昇った血をたぎらせる。
「た、武井っ」
 亜紀の胸ぐらをつかんで、右手を挙げる。
「次やったら、叔母に言いますよ、校長に……いいんですか?」
 清彦はその言葉を聞いて我に返る。校長の耳に入れば、懲罰委員会にかけられるだろう。体罰は御法度のご時世だ。場合によっては懲戒解雇もあり得ると聞く。
「……いや……」
 一気に脱力して、亜紀の胸をつかんでいた腕がだらりと下がる。
「お話は以上でしょうか?」
 亜紀は清彦、そして淳子の方を見る。淳子は清彦が放心状態なのを見て取ると、「うん、大丈夫。行って。だけど、なるべく高校生らしい外見と振る舞いを、ね、お願い、武井さん」
「わかりました、できるだけ努力します」
 亜紀は微笑を浮かべ立ち上がると、淳子の方にだけ軽く会釈し、指導室を出て行った。

「ごめんなさい、干川先生……き、清彦さん……」
「まずいよ、淳ちゃん、僕に恥をかかせてくれてさ」
 図書館棟の奥にある指導室は、放課後の時間帯、近くにも人影がない。それを承知で清彦は淳子の隣に腰掛けるといきなり唇を重ねた。
「んむふぅっ……だ、だめ……こんなとこで……」
「いいじゃない、この時間、ここには誰もこないから。今日はもう抑えられないよ」
 生活指導部といっても清彦と淳子の二人きりである。昨年の暮れの反省会をきっかけに、二人は男女の関係になっていた。それ以降、清彦は月に一度ほど、夫婦の倦怠期に差し掛かっていた淳子を誘って、睦み合いを重ねていた。二十七歳の淳子は、とびきりの美人ということでもなかったが、女子アナを彷彿とさせるまずまずのルックスで、清彦のお気に入りのセックスフレンドであった。
「入れるだけでいい、入れたいんだ」
 清彦はそんな都合の良い欲求を淳子に押しつける。彼女が首を横に振らないのを確認すると散らばっていた机を並べて、簡易ベッドをこしらえる。
「さあ、上がって」
 淳子はまるでまな板の上に乗るような心持ちになって、清彦の言う通りに従い、自らストッキングごとショーツを脱いで、急ごしらえの硬いベッドに上る。清彦も続いて上り、ベルトを緩め、ズボンをパンツごと膝まで下ろし、淳子の、見た目よりむっちりとした太股を押し広げ、すでにいきり立ったペニスの亀頭を秘芯の割れ目にこすりつける。
「お、もう、ぐっしょりだね……」
「……ああ、言わないで、先生、清彦さん……」
 清彦はゆっくりと腰を押し進め、ほどよく熟した淳子の蜜壺に、ズブズブと勃起を沈めていく。根元まで嵌め込んだところで、細身の割りに豊かな双乳をひしと抱きしめ、いったん体を浮かしてブラウスの上から両手で揉みし抱いていく。
「あん、ああああ、はん……」
 あえぎ声を塞ぐように再び唇を重ね、今度は歯を押し開いて、舌を押し込み、唾液を送る。
「んむぅっ……うあはあああん……」
 性の快楽の奥深さを知り始めた女体は、逢瀬を重ねるごとに過敏になっていく。また学校の敷地内で、男教師と女教師が、股間を合わせている事実に、清彦も淳子も興奮をなおのことかき立てられている。
「こういうの、ときたまやろうよ……」
「駄目よ、あはん、も、もし、見つかっちゃったら、なにもかもお終いよ……」
「こうやって、服着てさ、下半身だけあわせて。人の気配がしたら、スカート戻して、ズボンあげれば、いいんだから。スリリングじゃない? だから、淳子もこんなに濡れまくってるんでしょ」
 そう言いながら、清彦は抽送の勢いを強める。並べた机同士が当たって、ガチャガチャと音を立てる。
「あはああん、ああ……、う、うん……いい、もっと、入れて……」
「入れてるじゃない、もっと? こうか……」
 清彦はつかの間、架純への恋心も忘れて、淳子との交わりに没頭している。こっそりと戻ってきた武井亜紀が、携帯カメラで撮影しているのも知らずに。
―――干川と三宅さんができてるって噂は、やっぱりホントだったか……しっかし、いい大人が、バッカだね……犬畜生か、お前ら……

 亜紀は、教師二人の濃厚な交わりをひととおり撮り終えると、にんまり微笑んで指導室のある棟をあとにする。

第一章 女性校長、逆セクハラ地獄

☆ 一

「生活指導は、上手くいってる?」
 校長の豊田真帆が、校長室に呼び出した干川清彦の目をじっと見据えて言う。二人は応接テーブルを挟んで革張りのソファに腰掛けている。
「は、はい……それは、なんとか……」
 清彦は自分と同学年の美人校長に緊張の面持ちで答える。同学年であるが早生まれと遅生まれの差で、実際は清彦が一年近く年かさだった。
―――それにしても朝から急に呼び出したりして、いったいなんだろう……
「そう? なんか変わったことない?」
「え、ええ、特にはありませんが……あ、あの……これを校長先生に申し上げていいのか、ちょっと迷ってるのですが……」
「なによ、なんかあるならいいなさい」
 顎に拳を当て、清彦のことを上から覗き込むようにする。長身の豊田真帆は、それだけで存在感がたっぷりだが、ここ数年で言動にも女性校長としての貫禄、威厳が備わってきた。相手が年上だろうが、男だろうが、部下の教師には相応の態度で接する。
「は、はい……実は姪御さんの……武井亜紀、さんのことで……」
 清彦は亜紀の外見が乱れ、素行もあまりよくないことを遠慮気味に告発する。
「そう……成績はどうなの、亜紀……」
「はい、そ、それが、成績の方は申し分ありませんで……」
「なら、多少は大目に見てやってよ。生徒の自主性に任せるのが、うちの伝統でもあるんだからさ……」
「あ、は、はい……」
「それよりさ、あなた、自分の学校生活の方はどうなの?」
 グリーンのスーツを上品に着こなした真帆が鋭い眼光でねめつける。
「わ、私ですか……」
 急に思いもしないことを言われ、清彦は言葉に詰まる。
「うん、問題ない? 自分自身の風紀には」
「あ、いえ、すみません……校長先生、な、なにかそんな、私のことを誰かが? ……」
「いまは私が聞いてるのよ。質問に答えなさい」
 真帆の顔から笑みが消える。
「あ、はいっ、すみません……も、問題はない、と思いますが……」
「大丈夫なのね。わかった。じゃあさ、この写真について説明してくれる?」
 真帆は応接テーブルの上に、一枚ずつ写真を置いていく。ズボンを降ろした清彦が、大股を広げた女性に自身のものを挿入している。女性は同僚の三宅淳子教諭だとはっきりわかる。別の写真はバックスタイルで交わるところを前方から撮られている。もう一枚は、立ってズボンを降ろした清彦のペニスを淳子がフェラチオしているシーンだった。二人とも衣服を身につけたままだが、それがかえって不道徳を強調しているように見えた。
「こっ、これはっ……」
「あなたねえ、学校をどこだと思ってんの?」
「あああ……あああああ……す、すみません、申し訳ありません……」
 清彦はソファを降り、サンダルを脱いで、テーブルの横に正座し、床に深く頭を下げる。
「理事会にかけたら懲戒解雇は間違いないわね」
「ふ、二人ともでしょうか?」
「もちろんよ。合意のセックスでしょ。ラブホじゃないんだからね、学校は」
「み、三宅先生はどうか……助けてあげてください……」
 どういう心理か、清彦はついそう口にした。三宅淳子を心から愛しているわけでもなく、正義感が強いタイプでもさらさらなかったが、そう言うことで、真帆校長の温情を誘おうと無意識の計算が働いたのかもしれない。
「そんなわけにはいかないわよ。あなたが無理矢理やったってなら別だけど」
「そ、そういうことならば、彼女は助かるんでしょうか?」
 成り行きから清彦はそう言葉を続けてしまう。
「……そうね……ええ、そうなるでしょうね。あなたが証言するなら」
 真帆は写真の中から女教師がフェラチオしている一枚だけを手に取ると忌々しそうに破り、灰皿に燃やした。
「わ、わかりました……」
「認めるのね。あなたが強姦したって。ちょっと待って……」
 強姦という言葉が、清彦に重く引っかかったが、真帆は自席の引き出しからICレコーダーを取り出してくると、スイッチを押し、「話して」と捜査官が自白を促すように言った。

 清彦がひととおり話し終えたあと、真帆はレコーダーのスイッチを切ると、「OK、あなたのお望み通り、三宅先生はおとがめなしということで……」
 清彦は一気に脱力し、頭を床に着けてその場にうずくまる。
「干川さん、休んでる暇ないわよ、行きましょうか」
「えっ」意を決するような真帆の強い声に清彦は驚き、顔を上げる。「ど、どこにでしょうか……」
「警察よ、決まってるでしょ。あなた《強姦》したんだから。自分でそう言ったじゃない」
「そ、そんな……こ、校長先生……わ、私は、ただ、先生の言われるままに……」
「なによそれ、私が言わせたとでも? 言ってないわよ、私はなにも。あなたが自分の罪を自白し、強姦してる証拠写真もある。それだけのことよ」
 清彦としては実のところ、教師という職業に退屈し始めてもいた。いまさらながら、本当に向いているのだろうかと考えることもあった。それが自白の強要を容易に受け入れたのかもしれない。ここを解雇され再就職する覚悟はなんとかできつつあった。だがしかしだ……犯罪者として裁かれる未来など、とうてい受け入れることはできない。
「どうか、校長先生、許してください……先生のご裁量でなんとか……」
 清彦は目に涙を浮かべて、懇願する。
「泣いたって駄目だよ。自分の犯した罪を後悔しなさい。入るべきところへ入ってしっかり反省してくるの」
 真帆は暗に刑務所の檻を示して、清彦の反応を見る。
「…………そんな……せ、先生、どうかっ、な、なんでもしますから……」
「なんでもするぅ?」
 真帆は上辺では落ち着いた表情を見せながら、股間から込み上げてくる熱いうずきに体を火照らせる。
「は、はいっ、私にできることがあれば、なんでもおっしゃってください……」
 清彦はどうして自分がそんなことを言いだしたのかよくわからなかったが、とにかくこの窮地から助かりたい一心で声に出した。
「そう……」真帆は輝くような白い歯を覗かせてうっすら微笑む。「なんでもしてくれるんだ、干川先生は……」
 ソファを立ち、ドアへ行って、カチャリと内鍵を閉める。大きな執務机の脇に置いてあるパンプスを取って、清彦の膝元に置き、もう一度ソファに腰掛ける。
「履かせて、それ」
 そう言ってサンダルを突っかけた足を清彦の方へ差し出す。
「え……」
「なんでもしてくれるんでしょ。じゃなかったっけ?」
 そう言って真帆は首をかしげる。しばし、妙な沈黙が校長室を支配した。真帆の顔が一転険しくなるのを察知した清彦は意を決して声をあげる。
「や、やります……すみません、やります、先生……」

 真帆の命令で応接テーブルを少しずらした清彦は、彼女の足元にきちんと正座する。
「し、失礼します……」
 そう言って、エメラルドグリーンのサンダルを足から外すと、黒くてつま先とヒールの尖ったパンプスを履かせる。モデルさながらの引き締まった長い脚は、黒いストッキングで覆われていた。香ばしい微臭が鼻を突く。こんな惨めなことをさせられながらも、清彦はなぜか倒錯的な興奮をわずかに感じ始めていた。
「もうちょっとこっちにきなさい」
 真帆は軽くため息をつくとなんと清彦の頭髪をつかんで自分の方へ引き寄せた。
「あうわああっ……」
 清彦は思わず情けない声を上げながら、膝を擦って前進する。
「磨いて」
 女性校長はこともなげにそう言うと、清彦の膝の上に、パンプスの片脚を載せた。
「せ、先生……」
「いちいち、そんな目しないの。なんでもやるっていったでしょ。やめますか? もう警察行こうか、やっぱり」
 いまにも立ち上がらんばかりの勢いでそう言い放つ。
「い、いえ、先生、や、やります……やりますので……」
「じゃあやってよ、早く。ハンカチもってんでしょ?」
「は、はい……」
 清彦は尻のポケットから、柄物のハンカチを取り出した。
「きれいなんでしょうね?」
「はいっ、まだ使ってませんので……」
 清彦はハンカチを使って靴磨き屋よろしく、膝の上のパンプスをつま先から磨き始めた。

☆ 二

「雨降ってたから、汚れてるでしょ」
 濃いグリーンのスーツ―――ジャケットとスカートを身につけた豊田真帆がソファの上から清彦を見下ろす。
「は、はい……」
 清彦は上司とは言え、ほぼひとつ年下の女性の埃っぽいパンプスをつま先から踵の方へハンカチで磨いていく。ところどころに泥が跳ねたあともある。清彦は息をハーハー吐きかけながら、早くこの惨めな作業から解放されたいと思った。
「もっと丁寧にやりなさいよ、雑だね、あなた」
 膝を踏んだヒールに力が込められる。
「うぐううううっ……」
「きちんとやらないと許さないよ」
 力を込めたヒールを左右にねじ込む。
「はあううぐううっ……や、やります、すみません、校長先生……」

「い、いかがでしょうか……」
 左右のパンプスを磨き終えた清彦が真帆にお伺いを立てる。
「ふん、汚れ取っただけ? 艶は出ないの?」
「す、すみません……クリームもなにもないもので……」
「じゃあ、今度、持ってきなさい」
「あ、はい……」
 これから、この部屋で本格的に彼女の靴磨きをしなければならないのだろうか。そう思うと清彦は背筋に寒気を覚えた。
「それと……靴底はきれいになってるのかしら? 干川先生」
 この場面で、先生呼ばわりされることがかえって屈辱的だ。
「あ、いえ、それは、まだ……すみません……」
「ほら、どう?」
 真帆は足を上げ、靴底を清彦の顔面に蹴らんばかりに近づける。
「あ、よ、汚れています……だいぶ……」
 雨降る道を歩いてきたパンプスの靴底は埃に加え、泥の塊もこびりついていた。
「ねえ、アタシ、足きついんだけど」
 尖ったつま先が額を突いた。
「あうっ……」
 こともあろうに土足で顔を足蹴にされ、清彦は驚愕の眼差しを美人校長に送る。
「なによ、その目は。なんか文句ある? 警察行こうか?」
「い、いえ……すみません……」
「足がきついっていってるでしょう?」
 もう一度、つま先が額を蹴る。今度は体が後ろにのけぞるほど強いキックだった。
「はがうううっ……も、申し訳ありませんっ……」
 清彦は体を戻すと慌ててパンプスの踵に両手を添える。
「きれいにしなよ、早く」
「は、はいっ」
 清彦が片手でハンカチをつかんで靴底を拭こうとするが、大柄な真帆の長い脚は重く、片手で支えきれず、ぐっと下がってしまう。
「なんだよ、それ、力ないのね、あんた」
 真帆の踵はほとんど清彦の膝の上に乗った状態になる。
「あああああ……」
「そんなのできちんと靴底が磨けるわけないでしょっ、ちゃんと靴底を目の前に持ってきてしっかり見ながらやんないと……」
「は、はい……すみません……」
 そう言いながらも片手だけでは、顔の前まであげることができない。真帆も非協力的で、逆に下へ降ろそうと力を加えるほどだった。

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内容紹介

女が男を犯すことに特化した最新鋭の逆レイプディルド。その開発に強制参加させられた中年男の悲哀。

女子医大病院に付属する医療素材開発センター内のシリコーン素材研究室の室長として、部下の女子研究員たちを意のままに従えていた藪田昌人(40)。密室に近い研究室内での絶対的な立場を利用し、セクハラ、パワハラ、やりたい放題だった彼は、ほんの出来心から研究費の横領にまで手を染めてしまっていた。一方、研究所では友人のドイツ人女性社長から依頼を受けた女性所長の決定で、女性専用のディルド開発を秘密裏に執り行わなければならなくなっていた。その責任者に任命された美人部長、北川冴子(38)が目をつけたのが、藪田昌人率いるシリコーン素材研究室だった。横領の事実を冴子に突きつけられた昌人は、みるみるうちに転落の一途を辿っていく。女性上司はもちろん、元部下の女子研究員、女家族……その他大勢の女性に虐げられ蹂躙される日々は、まさしく終わりなき地獄だった。

  • プロローグ
  • 第一章 王座からの転落
  • 第二章 男を試す女たち
  • 第三章 妻に犯された男
  • 第四章 女たちの肉人形
  • エピローグ

本文サンプル

プロローグ

「結論からいいますとね、ちょっと厳しいかな、というところです」
 ここ《シリコーン研究室》の室長である藪田昌人やぶたまさとは、不安げな表情をしている今西麻美あさみに意地の悪い視線を送って言う。
「せ、先生、どの部分が悪かったのでしょうか。すぐに再提出しますので」
 女子医大一年生の麻美は目鼻立ちの整った美貌をゆがめて焦る。
 シリコーン研究室は、中央女子医大に付属する医療素材開発センター内の機関で、その名の通り医療用のシリコーンを研究開発する部署である。毎年一名ずつ、中央女子医大から研修生を受け入れているが、修了時に彼女たちはレポートを提出する必要があった。研修実習は、進級に欠かせない単位となっており、合否を決定する権限は室長である藪田昌人にあった。
「どの部分がって言うかね…………ううむ、君、とんでもないことやってくれたよね」
「えっ」
コピペやったでしょ。ほら、この辺とか、地肌や毛穴への影響の部分、化粧品素材としてのシリコーンのくだりの辺り」
「あああ、先生、そ、それは資料としての引用部分で……」
「引用ねえ、にしては長すぎない? レポートの本編に入れ込むにはさ」
 そう言われては仕方ないが、藪田の指定した膨大なレポートの枚数は、そうでもしなければクリアできそうになかった。
「延べ十日ちょっとしかない研修結果から、この分量のレポートを起こすにはちょっと情報不足で……」
 麻美は形の良い桃色の唇を噛む。
「何それ? 僕のカリキュラムにいちゃもんつけるわけ?」
「……い、いえ……そんな意味じゃ……」
「情報を読み取る力がないんだよ、あなたに。適当にやっても単位取れるってことになったら、この研究室の信用低下になるから、悪いけど……」
 昌人はすげなく話を打ち切ろうとする。
「先生、なんとかなりませんか……私、留年ってことでしょうか……」
 ここの研修単位は、二年次進級に必須の単位だ。
「コピペは悪質だからね……」
 そう言って藪田はさきほどから机の脇に立たせたままの麻美の顔をまじまじと見る。人形のように整った顔立ちがいまにも泣き出しそうである。白衣の下はどのようになっているのだろう。美しい顔と白衣から出たスラリとした脚が魅力的なことだけは分かっている。
「先生……」
 麻美は翻意を促すようにじっと藪田の目を見つめる。何としても留年は回避しなければならない。高い授業料を払ってもらっている郷里の親に合わせる顔がない。
「あっちで少し話しましょうか」
 藪田は研究室の内鍵を閉めると応接ソファに麻美を案内する。
「あ、白衣脱いで」
 藪田は自分も白衣を脱ぎながら、ソファに座るときは当然だとでもいうふうに麻美に告げる。
「あ、え、でも……」
「どうした?」
「下着だけなので……ご、ごめんなさい……」
 麻美はこの季節、いつも白衣の下は、ブラとショーツだけを身につけているのだった。
「……僕はかまわないけど……」
「そ、それは……」
 麻美は眉毛をゆがめる。
「白衣脱げないなら、このソファには座れないよ。ソファに座れないなら、話はできない。いいの? 僕と話をしとかなくて」
「先生……」
「早く」
 じっと見つめる藪田の視線に押され、麻美はゆっくりと白衣を脱いだ。水色のブラジャーとビキニショーツ。ストッキングは履いていなかった。
「いや、恥ずかしい……」
 麻美は大きな胸を腕で覆うように隠す。
「ほら、そんなの人と話すときにする姿勢じゃないでしょ。腕下ろして、ここに座りなさい」
 藪田昌人は自分の隣をポンポンと叩いていう。
「……あ、はい……」
 しかし麻美が座った途端、昌人は彼女を押し倒し、一気に唇を無理矢理重ねようとする。
「あああっ、先生っ、何するんです、やめてくださいっ……」
 激しく首を振る麻美の顔を両手で押さえて正面を向かせる。
「今西君、君のことが好きなんだ。キスだけさせてくれないか。レポートは合格にする。約束するよ。ね、いいだろ」
 好きだと言われて、麻美は思わず抵抗の力を緩めてしまう。小柄ではあるが、男性として嫌いなタイプではなかったのだ。
「ほ、本当ですか……」
 麻美が潤んだ目でいう。
「うん、ホントだよ……」
 次の瞬間には、昌人は麻美のぽってりとした薄桃色の唇に己の唇を押し当てていた。今度は抵抗の気配がない。しかしそれは受け入れているというよりはじっと我慢している様子であった。昌人は舌を伸ばして麻美の前歯を押し開けるようにして中に侵入させる。
「うううう……」
 想定外のディープキスに麻美は戸惑う。かまわず昌人はブラジャーの上から、麻美の乳房を撫でるように揉む。
「あああああ……先生、駄目、です……」
 麻美の口が緩んだところにさらに唾液を送って濃密に舌を絡ませる。
 フロントホックが外され、張りのある乳房が露わになる。
「くううう……」
―――約束が、違う……
 目を見開いて抗議しようとする麻美の口を封じるように昌人はさらに執拗でねっとりとした接吻を続ける。続けながら、麻美の両太股を脚で挟み込みソファの上に完全に乗せて跨がった。ようやく唇を外すと、すかさず両乳を同時に揉む。
「はううううっ……せ、先生、やめてくださいっ、約束が違います……」
 麻美はミディアムスタイルの柔らかな髪を左右に振り乱して叫ぶ。
「気が変わったよ。もう少し、君のことが知りたいんだ。いいだろ……」
 二本の指で乳首を挟み虐めながら、弾力のある巨乳を揉みしだく。
「はううっ、あああん……」
「うん、乳首の感度は良好のようだね」
 昌人は麻美の右胸に集中し、左手で揉みながら、人差し指の腹で乳頭をコリコリと転がすように刺激する。
「くわうううっんんっ……」
 麻美はいまだ左右に首を振りながらも、抗議の言葉をもはや口にする余裕がない。
「ほう……乳首が、麻美ちゃんの弱点なんだね。評価欄に書き加えておこう」
 昌人はそんなジョークをうそぶきながらさらに手を下ろす。ショーツの上から割れ目をスーッとなぜていく。
「はううううううっ……」
「うん、湿ってるね。これは」
「……んんんん……だ、駄目……」
「駄目じゃないでしょ、もうここまできたら……」
 昌人は麻美のショーツの中に手を入れ、茂みに覆われた秘部をまさぐる。
「はうあああああっ……」
「濡れまくってるじゃない。中央女子医大の学生さんは、みんなこんななの?」
 実は薬学部出身である昌人は女子医大の生徒には並々ならぬコンプレックスを持っていた。自分の上司を含め、彼女たちは女のくせに、簡単に上位の役職を手に入れることができるのだ。いま自分の下にいる麻美だって、ひょっとしたら将来自分の上司になる可能性がある。そうならばもっと大切に扱う必要があるのかもしれないが、そんな余裕はいまの彼にはなかった。
「ああああ、違いますっ、も、もうホントに、先生、これくらいで……」
「だめだよ、もう止まらないよ。医学生だったら、男の性衝動がどれくらいのものかくらい、知ってるでしょ。授業で習わなかったの?」
「……そ、そんな授業ありませんっ……」
「そっか、じゃあ、僕が教えてあげるよ。そうだ。これを補習ということにしよう。補習に合格できれば、レポートの単位をあげるよ……」
 そう言うと昌人は麻美のビキニショーツに両手を掛けて、一気に引き下ろした。
「はうああああっ……や、やめてえええ……」
「ちょっとうるさいなあ、君は」
 いくら独立棟にある防音済みの施設とはいえ、こんなに大きな金切り声を出されれば、通りがかりの警備員に気づかれないとも限らない。昌人はソファ下に隠しておいた手錠を取り出すと麻美の体をソファから下ろし、後ろ手に拘束した。
「な、何をするんです……」
「だから、うるさいってんだよ」
 床に落ちていた水色のショーツを拾い上げると小さく丸めて、愛らしい口のなかに詰め込む。昌人の顔にサディスティックな笑みが浮かぶ。
―――うくうううううっ……
 あまりの凶行に目を白黒させる麻美の口を長めのスポーツタオルで覆い後頭部で結んで猿ぐつわをさせる。何もかもあらかじめ想定し準備して置いた段取りだ。
 麻美は床に額を着け、尻を突き出した惨めな格好でうめき声を上げている。
「そらっ」
 昌人は麻美の胸の下に両手を入れて抱え上げると、向きを横に九十度回転させ、うつぶせせに上半身をソファに預けさせた。そして、彼女の後方に立って、自身のベルトを外し、ズボンとパンツを一気に降ろす。
「麻美、安心しな、すっかりオマンコぐしょぐしょになってるみたいだし、もう半分合格だ」
―――うむううううううっ……
 麻美は呻きながら、体を左右に揺さぶって抵抗しようとするが、昌人に腰をしっかりつかまれる。
「さてと……」
 立て膝をついた悪徳室長が、いきり立ったペニスの亀頭を、すっかり濡れそぼった女子医大生の陰唇に押し当てる。
―――うううううううっ……
「じゃあ、一緒に、レポートを仕上げましょうね」
 昌人はそう言うと一気に腰を突いて、自身のものを根元まで教え子の膣に埋め込んだ。

第一章 王座からの転落

☆ 一

「うら、うら、うら、うらあっ……」
 昌人の腰が麻美の尻をパンパンパンパンと激しく打ち付ける。
「あっ、ああっ、はうあっ、あああん……」
「だいぶ、いい音色を上げるようになってきたな、今西君」
「あああん、藪田先生、も、もう……駄目ですぅ……」
 麻美は初めてレイプされて以来、毎週、この研究室へ来る度に、昌人に犯され続けている。今日も全裸にさせられ、打ち合わせテーブルに上半身をうつぶせる格好で、バックからもう長いこと昌人の抽送を受け続けている。
「駄目じゃないだろ、いいオマンコしてるよ、今西君は。このキュッと締め付けてくる感じがたまらないねえ……くううっ……」
 昌人は前後の抽送に回転運動を交えていく。
「あああっ、先生、ああっ、いやああっ……ああん……」
「奈美恵っ!」昌人は右側のデスクで研究にいそしんでいるロングヘアの研究員、浅田奈美恵を呼ぶ。「内鍵はちゃんとかけてるだろうな」
「は、はいっ……」
 二十八歳の奈美恵は念のために席を立って確認した。
「大丈夫です、先生……」
「お前も早く入れて欲しいんだろ?」
「い、いえ……私は……」
 眼鏡を掛けた美人は、顔を赤らめてうつむく。
「分かった。仕事に戻れ。あとでたっぷり、ぶちこんでやるよ」
 その会話中も、麻美の膣にゆっくりとした抽送を続けている。
「沙樹っ!」今度は左側のデスクでレポートを作っているショートヘアの研究員、二十五歳の新垣沙樹に声をかける。「数値はまとまったか?」
「あっ、は、はいっ、だいたい揃ってます……」
 色白の白衣美女は、振り返って返事をする。
「見せてみろ」
 沙樹がグラフ資料を持ってくると、魔羅をずっぷりと挿入した麻美の尻の上を指さして、「ここに置け」と命令する。
「あ、は、はい……」
「バカヤローっ、そのまま置いたら資料が濡れちまうじゃねえかっ。興奮してるコイツの汗でよおっ」
 昌人はわざと大きな荒くれ声を出し、女たちを怯えさせる。
「す、すみません……」
 奈美恵も沙樹もすでに麻美がくる以前から、昌人の掌中にあった。彼は室長という立場を最大限に利用し、女性研究員たちを性奴隷化していたのだった。
 沙樹は、まずクリアファイルを二枚並べて、麻美の尻の上に、申し訳なさそうに敷き、その上に資料を載せる。老眼ぎみの昌人にはちょうどいい目線の距離だった。抽送を一時ストップさせる。しばらく眺めて、少し考える。
「沙樹よ、このBの12から15までの数値。これじゃ、つじつま合わねえだろ」
「は、はい……でも、何度やっても、そこまでしか理想値に近づかなくて」
「バカヤロー、無理矢理にでも合わせろっ。こんなデータじゃ、上からの予算が満額降りねえじゃねえか」
「は、はい……」
 不条理な昌人の指示だが、逆らうことはできない。沙樹が麻美の尻の上の資料を回収して、席へ戻ると、再び激しい抽送を始める。
「はああっ、ああん、あん、あん、ああん……」
 麻美のかん高い喘ぎが、またもや研究室にこだまする。研究室は、実験装置の騒音が出ることを理由に昨年昌人が予算を申請し、防音工事が施されていた。
「ようし、今日は立ちバックでフィニッシュといくか」
 昌人はそう言うと麻美が打ち合わせデスクを抱えるようにして左右に伸ばしていた腕を取り、すばやく両手首をつかむと、彼女の体を机から引き剥がして後退する。
「ほらっ、脚は開いたままだっ」
「……ああっ、は、はい……」
 腰を下から入れ直して、挿入を安定させ、ゆっくりと打ち合わせテーブルを一周する。麻美は少し脚を開いて、昌人のペニスを膣に埋め込まれたまま、よたよたと歩みを進める。
「ほら、ほら、犯され麻美が研究室を巡回するよ……」
「はうっ、ああん、はああん、せ、先生、やめて……恥ずかしい……ああん……」
「よがりながら何いってんだよ。そうだな、自分の口で言ってもらおうか、そのかわゆいお口でな、ははっ」
 昌人はそう言って両腕をぐっと引きつけると、麻美に耳打ちする。
「い、いやですっ……そ、そんなこと言えませんっ……」
「いいのか? 言うまで終わらないよ。何周だってやらせるから。今西君、いい加減、僕の性格分かってるだろ。どうなんだ」
 昌人はバイアグラで増強したペニスを強く打ち付ける。
「はううっ……あああ、い、言います……な、奈美恵さん、さ、沙樹さん、い、淫乱麻美は……ま、昌人先生の太いチンポなしでは生きていけません……い、いまから研修室を一周しますので、恥ずかしい姿を見てやってください……あああ……はん、あああん……」
「そら、一回だけじゃないぞ、ずっと言い続けるんだ」
「は、はい……な、奈美恵さん…………」
 麻美は昌人の言う通りに立ちバックで犯され研究室を巡りながら、恥ずかしい台詞を繰り返す。
「ほら、お前たちも呼ばれてるんだから、しっかり見てあげないか。真面目にやりゃいいってもんじゃねえぞ、結果を出しつつ、要領よくやれっ、いつも言ってるだろうがっ」
 またもや、最近凝っているヤクザ映画に影響を受けた言葉遣いを女たちに浴びせる。二人の研究員は手を止め、体の向きを変えて、室長に犯されまくる研修生に哀れみの眼差しを送る。
「ようし、いくぜ。そこに手を着けっ」
 ソファ脇の壁に麻美の両手をつけさせ、激しい抽送を開始する。まだそんなに男慣れしていない十九歳の膣は締め付けがよく、昌人はあっという間に欲望を白濁化して彼女のなかに放出してしまう。
「うううっ、くうううううっ……ふわあああっ……」
「はああああん、あああああん、あああああっ……」

「ようし、じゃあ、いつものように、後片付けしてもらいましょうか」
 昌人は前をはだけた白衣を脱いで全裸になり、ソファに浅めに座ると大股を広げる。最初のうちは拒絶していた麻美だが、もはやそれが無駄なことだと分かっているので、素直にザーメンまみれのペニスを口に頬張る。
「ちゅぱちゅぱ吸って、きれいに舐め取ってちょうだいよ」
 麻美は汗で額に張り付いた髪を後ろへ何度か拭うと意を決して掃除フェラチオに取り組んだ。
「僕のミルク、残さずゴックンしてね」
 言う通りにしないと、またヤクザのような口調で怒鳴り散らされることは分かっている。早く仕事を終わらせた方が得策だと分かっている麻美は一生懸命、室長が放出した精液を喉に送っていく。
「ようし、じゃあ、いつものコースいくか。どっちがキスだ?」
 それを聞いた途端に、奈美恵と沙樹の体がびくつき、二人同時に席を立ち、こちらへ駆け寄ってくる。
「わ、私が……」
「先生、わたくしにさせてください……」
「おい、おい、そんなにせがんでくるなよ。じゃあ、先に全裸になった方にキス権をやろう」
 奈美恵は今日も昌人がこのゲームを行う可能性があると思い、通常は身につけている服を着ずに、白衣の下はブラとショーツだけにしていた。白衣のボタンを速攻で外して脱ぎ、沙樹の方を見て驚く。
「奈美恵、残念だったね」昌人があざ笑うように言う。「沙樹の方が一枚上手だったよ」
 白衣の下を全裸にしていた沙樹が、まっさきに昌人の唇を求めてきて、昌人もそれを受け入れる。
「おいおい、慌てるな」
 昌人が唇からショートヘアの沙樹を剥がすようにして苦笑する。昌人は麻美を床に仰向けに寝かせると、上から顔を跨ぐようにして、バイアグラのおかげでまだいくぶん勃起したままのペニスを口腔に無理矢理押し込む。
「まだ残り汁が出るから、しっかりしゃぶって、飲んでくれ。な」
 そう言って、麻美の頭の上方、少し離れた位置に仰向けに寝させた沙樹に覆い被さるようにして、ディープキスを始める。残った奈美恵は屈辱の仕事を始めなければならなかった。眼鏡を外すと、麻美の下半身をまたいで屈む。いまから、目の前にある昌人の尻の穴を舐めなければならないのだ。
「くうううっ、いいぜ、たまらん……」
 研修生の麻美にペニスをしゃぶられ、沙樹の口腔でねっとりと舌をからませあい、そして、ロングヘアの奈美恵にはアナルに舌を突っ込んでもらう……。まさしく至福の瞬間を堪能していたそのとき、防音ドアをノックする鈍い音がかすかに聞こえた。
「せ、先生……」
 奈美恵が思わず、声を掛ける。
「かまうもんか、続けろ」
 誰が尋ねてきたのか気にはなったが、若い美女たちによる至極の4Pプレイを中断するつもりは毛頭なかった。
 しばらくして、研究室の電話が鳴る。十回ほど鳴って、止んだが、再び鳴り始める。ここが留守でないことを知っているのか、それともよほどの緊急の要件か。昌人はしぶしぶ、奈美恵に応答するよう指示する。
「はい、藪田研究室です……あ、北川部長……は、はいっ、すみません……」

☆ 二

「ぶ、部長、どうもすいませんでした……」
 藪田昌人が、研究室に訪れた北川冴子に下卑た笑みを浮かべる。年齢は昌人より二つ下の三十八歳。その若さでしかも女性ながら、整形外科系の医療素材研究を統括する第三研究部の部長である。研究員教育には厳しく、男女年齢関係なく叱咤できる長身美人である。
「みんないたんでしょ。どうして鍵なんて掛けてるわけ? それって、いつも?」
 白衣の美女は、応接ソファに腰掛けると向かいの昌人に開口一番そう問い詰めた。
「い、いえ……たまたま全員研究に没頭していまして。そんなときは、集中を高めるために鍵を掛けることがありまして……」
 昌人の苦しい言い訳に、冴子は疑念の目を向ける。くっきりとした目の上には優雅ながらも力強い眉、鼻筋がスッと通り、適度なボリュームのある唇は完璧な造形を呈している。正統派美人とは彼女のことだろう。冴子は昌人を始め女性研究員の妙に汗ばんだ肌や乱れた髪、呼吸の荒さなどに違和感を覚えたが、いまは追求しないことにした。いずれこの研究室が閉鎖になることは間違いないのだから。
「まあ、それはいいわ。あなたに至急尋ねたいことがあったから来たの」

S女小説 レディーマグナム「逆レイプディルド開発室」

Kindle小説サンプル

S女小説 男虐めと逆陵辱「妻の復讐」

S女小説 男虐めと逆陵辱「妻の復讐」を電子書籍として出版しました。

内容紹介

仕事のできないDV夫が妻や娘に復讐を受け、虐待・陵辱される物語。

とある事件を起こして子会社に転籍させられたのが男の運の尽きだった。平井達夫(42)は若き女性上司の下で働くことになった屈辱とストレスから、家庭内でDVを起こすようになり、妻や娘に当たり散らす日々に溺れる。一方職場では、日頃からミスの絶えない達夫を見かねた女性主任がやがてパワハラ指導を行うようになり、さらには強度のセクハラへと発展する。ほどなく、可憐な雰囲気を持った新人OLが赴任し、これによって達夫の職場環境がバラ色に一転するかと思われたのもつかの間、彼女も女性主任同様、あるいはそれ以上のサディストであることが判明する。会社で女性たちに虐められれば虐められるほど、家で妻に同様の仕打ちをしてしまう達夫であった。そんなある日、達夫は女性上司たちから、指導上の理由で、妻・貴子を会社に連れてくるよう命令される。焦る達夫。しかし正社員からの降格をちらつかせる上司たちには逆らえない。渋々連れてきた妻が会社で見たものは、家にいるときとはまるで別人の夫だった。これ以降、夫婦の立場が大きく逆転していく……。

第一章 奉仕を命令する女性上司

第二章 淫液を飲ませる新人OL

第三章 肉便器を強要する美人妻

第四章 ディルドで貫く才媛JK

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プロローグ

ぬるいよ、このコーヒー」
平井達夫たつおは、一口だけ飲んだカップを妻の貴子たかこに不服顔で突き返す。
「す、すみません……淹れ直します」
エプロンを着けた貞淑な美人妻はしおらしい仕草でカップを下げる。窓から差し込む朝の光が、白い肌をまばゆく照らしている。
「おい。なんなんだよ、最近。俺に不満でもあるのか?」
達夫は口をとがらせ、妻を見やる。
「い、いえ、そんなことは……」
「ふん、子会社に飛ばされた夫はもう尊敬できないか?」
先ほど妻に持ってこさせた新聞を手に取りながら、憎々しげに言う。
「あなた……私は一度もそんなこと……」
「いいから、早く淹れ直せよっ」
「……は、い……」
「お母さん、行ってきまあすっ」
達夫の背中を通って、女子高に通う十七歳の娘が出て行こうとする。学校でも評判の美少女は、バスケットボール部に所属していて上背もある。
「おい、聡美さとみっ」
「何?」
娘は達夫の方を一度振り返ってきっと睨むと、そのまま出て行こうとした。最近、母親に辛く当たることが多くなった父親への尊敬は薄れ始めている。
「何だ、待ちなさい」
達夫が席を立って娘の肩を捉まえる。
「何よ、触らないでよっ」
母親譲りのきれいな面立ちをゆがめて叫ぶ。
「何だ、親に向かって、その態度はっ」
達夫は向こう側の肩もつかんで娘を正対させ、頬を平手打ちする。ボブヘアがわさっと揺れる。
「あっ」
声を挙げたのは母親だった。いくら機嫌が悪くても夫は娘や自分に手を挙げることはいままで一度もなかった。
「ちょっとこっちへ来なさい」
ショックで肩を震わせる娘にそう言い、達夫はダイニングテーブルに戻る。娘を立たせ自分は座ったままで、夜更かしやスカートの丈の長さなど、何度も繰り返しているいつもの小言を始める。本心では、聡美が母親の貴子にだけ向けて、「行ってきます」を言ったのが気にくわないのだ。
「お前、いい加減に生活態度を改めないとなあ……」
達夫は大仰にため息をつく。
「あ、あなた……聡美そろそろ出ないと間に合わないから……」
貴子が淹れ直したコーヒーを夫に差し出しながら、叩かれたショックにいまだ固まっている娘に助け船を出す。
「……行きなさい。夜、もう一度、きちっと話をしよう」
達夫は舌打ち交じりに言う。
「さあ、早く」
母親に優しく促されて、聡美はこっくり頷くと、達夫の顔は見ずに出て行った。
「どうして、ああなったのかなあ。前は良い子だったのに」
いまでも良い子ですよと言おうとして、妻の貴子はいったんその言葉を飲み込んだ。娘の変化の原因は明らかに達夫にあるのに、本人は気づかない。いや、気づいていても認めようとしないのかも知れなかった。
「なあ、貴子。お前の教育が悪いんじゃないのか?」
達夫はさきほどの娘の態度に胸をムカつかせながら、妻に無神経な言葉を浴びせる。
「…………」
妻の無言にいらだちを高まらせ、夫は乱暴に席を立ち、洗い物を始めた彼女に背中から抱きつく。
「俺が聞いてるんだから、返事くらいしろよ」
胸の下から締め上げるようにする。
「はああっ、あ、あなた、何するんですか……やめてください……」
乳房を刺激され思わずあげた妻の官能的な一声に、夫は過敏に反応する。
「ちょっと、お仕置きが要るかもな、貴子。母親としての無教育に」
達夫はエプロンの下に両手を入れ直して、部屋着の上から妻の双乳を揉みしだく。
「あああ……あなた、や、やめてください。ホントに、こんなとこで」
「どこだっていいじゃないか。俺が愛してやろうって言ってんだから」
達夫は右手を下ろしてスカートに手を入れるとショーツの上から貴子の秘芯をまさぐり始める。
「あうん……ああ、やめて……あなた……」
三十六歳の美人妻は官能的な声をあげながらも、かすかに抵抗を示す。
「やめるもんか……もう、じっとりしてるじゃないか……ちょっと乳を揉んだくらいで。この……淫乱が……」
「ああ、ひどい……やめてください……それに、も、もう、お出にならないと……」
貴子は早く出社するよう促す。
「そうだよ、早く出なくちゃいけないんだから、協力してくれよ。脱げよ、自分で」
達夫はそう言っていったん妻から体を離す。
「えっ」
二つの性感帯から手が離れ、貴子は一瞬複雑な気分に陥る。
「早くしてくれないと遅刻しちまうぞ。評価が下がって、給料が減ってもいいのか? パートに出てもらうことになるぞ」
「そ、そんな……」
結婚して十八年になるが、初めての夫の要望に妻はうろたえる。これまで服を自分で脱げなどと言われたことは一度だってなかった。
「ふん、生娘きむすめじゃあるまいし……」
「……」
「脱げよっ」
夫の大声に体をびくつかせ、仕方なく貴子はエプロンを外し、部屋着の上下を脱ぎ、ベージュ色のブラジャーとショーツだけになる。
「下着もだよっ。素っ裸になって、その上からエプロンだけ着けろ」
「あ、あなた……」
貴子は、驚き、軽蔑するような眼差しを夫に向ける。
「や、やれよっ。俺がやれっていってるんだ」
夫はごまかすようにさらに大きな声を出し、妻の頬を平手で打つ。
「あうっ……」
一瞬、夫を見上げようとした視線を胸辺りで止め、屈辱と恥じらいに身を固くしながら、ブラを外し、ショーツを脱ぐ。そして紺の縦縞が入ったエプロンを拾い上げるとそれを身につけた。
「ようし、それでこそ、従順な俺のワイフだ」
達夫はややおどけた調子でそう言うと、妻を抱き寄せて接吻をする。舌を差し入れて、唾液を送り込む。
「むむううっ……」
夫は舌を絡めながらエプロンの脇から手を入れ、貴子の乳を再び揉みしだく。ボリュームのある乳房はまだ弾力に満ちて若々しい。乳首を二本の指で挟むようにして、乳頭と乳房を同時に責める。
「はううっ……」
「貴子、お前、いやだなんて言っといて、もう濡れてたりしたら、承知せんぞお」
達夫は意地悪い口調でいいながら、下半身に手を下ろし、エプロンのなかをまさぐる。太股を左右にペチペチと叩くようにして股を広げさせる。
「ああああっ……」
じらすように何度か太股をさすり、妻の顔を覗き込む。
「もう濡れてたら、相当な淫乱妻だな、お前は」
「あ、あなた……そんなこと言わないで、ください……」
妻は目を閉じて口を半開きにし、肩で息をする。
「どうれ」
達夫は貴子の秘芯に中指の腹を当てる。予想通り、そこはすでに女の蜜ですっかり濡れそぼっていた。
「なんだ、ぐっちょぐちょじゃないか」
膣の中に指を入れ込みかき回す。
「はあああん、あああ……はううっ……」
「どういうことだよ、これは」
指を抜いて、エプロンから手を出し、妻の顔に近づける。
「ほら、なんだこれは」
目を開けた妻の前に、自分の蜜がヌラヌラとまとわりついた夫の指が差し出される。
「はああ、あなた……うぷうっ」
達夫は貴子の口に指を突っ込み、抜き差しする。
「ヤらしいな、貴子、お前は本当に、淫乱妻だよ」
「あうむううっ……」
妻は美しい顔を妖しくゆがめる。
「そうか、早く入れて欲しいのか。時間もないしな。ようし、分かった。向こうを向いて手を着け」
達夫は貴子にシンクの縁を両手でつかむよう命令する。
「ほら、体を落として、尻を突き出すんだよ。その淫らな尻をよ」
「ああああ……」
寝室以外の場所でしかもこんな屈辱的な体位は始めてである。貴子は夫の心に闇を見る思いであった。
「へっへっ、じゃあ、朝の一発をぶちこんでやろう。俺のぶっといものをな」
達夫はベルトを緩めてズボンをパンツごと膝まで落とす。あえて脱がない横着さが、さらに妻を貶めているようで嗜虐心をくすぐる。いきり立った肉竿を左手で握りしめると右手を妻のむっちりした太股に当てる。
「もっと、股を広げろ」
「ほらっ、早くっ、返事はっ」
「……は、はい……」
妻は悲しげな声をあげて、左右の脚を開く。
「もっとだ」
夫はそう言うとしゃがんで、妻の股間を覗き込む。
「すっかり、ぐしょぐしょじゃないか」
中指をヴァギナに入れて、くちゃくちゃと出し入れする。
「あはあん、あ、あなた、いや……恥ずかしい……」
「何が恥ずかしいだ。早く入れて欲しいんだろうが。ここはそう言ってるじゃないか」
指を二本にして奥から女汁が湧き出してくるなか、膣壁をいじくり回す。
「あああああ……ううううっ……あん……」
「ようし、時間もないことだし……」
達夫はそう言うと立ち上がり、なおさら固くなった肉竿の切っ先を濡れそぼった妻のヴァギナにつける。あてがうもすぐには挿入せず、膣口の周りを亀頭で撫でるようにする。
「あああ……あなた……」
「どうした? 入れて欲しいのか?」
「…………」
「だったら、そう言えよ。じゃないと終わらないぞ。遅刻しちまう」
じらされた性欲の高まりと焦りが、貞淑な妻に淫らな言葉を吐かせる。
「……い、入れて、ください……あなた……」
今度こそ膣口の中央に狙いを定め、達夫は腰を強く突き上げた。固い怒張が、妻の奥深くへズブズブとめり込んでいく。

第一章 奉仕を命令する女性上司

☆ 一

「す、すみません……浅間主任、遅くなりまして」
平井達夫は出社後すぐに上司のデスクへ向かって頭を下げる。二十九歳の女性上司、浅間由紀恵は今日こそこのふがいない部下にけじめをつけておかねばならないと思った。一回り以上年上の男性部下に。
「今日は何ですか?」
艶めいた長い黒髪、切れ長の目で鋭く達夫を睨む。
「いえ、あの……ちょっと忘れ物を取りに戻りまして……」
相変わらずの美しさに息を呑みながらも、達夫の体は緊張で凝り固まる。家で威張り腐っている彼からは想像も付かない態度だ。
「それで一時間も遅刻?」
「すみません、主任。バスに乗ってだいぶ行ってしまったところで気づいちゃいまして……」
達夫は頭をかきかき今日も調子よく言い逃れしようとする。まさか妻をキッチンレイプしていて遅れたとは言えない。
達夫の勤め先は、会社と言っても、隣接する倉庫を管理するだけのプレハブオフィスで、ここで働く正社員は今のところ主任の浅間由紀恵と平社員に降格した平井達夫だけだ。
誠実さにかける達夫を無言で見据え由紀恵は怒りを募らせる。
一方、達夫にしてみれば、いくら直属の上司とは言え、十三歳も年下の女性だ。どこか素直に言うことを聞けない自分がいた。それが度重なる遅刻や失態につながっていることは否めない。達夫はいつも以上に強い目力に気圧され、「じゃ、じゃあ仕事を始めさせてもらいます」と体を回し自席に戻ろうとした。
「待って……待ちなさい」
由紀恵は男性部下に対して始めて命令口調を使った。
「あ、はい……」
達夫はギクリとして振り返り、身を硬くする。
「まだ話終わってないよね」
これまでになかった強い物言いに思わず達夫は、「す、すみません」と視線を落とす。
「どうしてそんな態度なの? あなた、アタシに対して。上司と部下だよね、いちおう。年下の女だと思ってなめてない? あなたがそんなつもりだったら、アタシもそれなりにやるわよ」
「す、すみません……浅間主任」
心のなかでは屈折した思いを持っていても上辺では部下として接してきたつもりではあったが、由紀恵にはそんな中途半端な態度を見透かされてしまったようだった。
「本社の人事からさ、正社員減らしたいって言ってきてるのよ。あなた契約社員にならない? だったら、少々遅刻しても、ポカやってもさ、アタシもそんなに言わないから」
「しゅ、主任……」
達夫の顔がみるみる青ざめる。
「どうしたの。そっちの方が、あなたには向いてるでしょ。楽だし。ただ、お給料はぐっと下がっちゃうけど」
「そ、そんな……浅間主任、どうか……心を入れ替えて頑張りますので」
「どうだか……あんたの口先にはもう騙されないわ。それが本当なら、態度で見せなさいよ」
「は、はいっ」
それからしばし、由紀恵は達夫の日頃の生活態度ややる気のなさに対して説教を施した。達夫は由紀恵の脅しに顔を引きつらせたまま、「はいっ、はいっ……」といちいち切れの良い返事をする。
「ほら、そろそろ倉庫にトラック入ってくるわよ、行きな」
「あ、は、はいっ……」
いったん由紀恵に背を向けた達夫だが、再度振り返り、「きょ、今日はすみませんでした。あ、ありがとうございました……」と消え入るような声で言った。
「何? 大きな声ではっきりいいなよ」
自信たっぷりの口調で由紀恵が言う。
「あ、浅間主任、今日は本当に申し訳ありませんでした。ご指導いただき、あ、ありがとうござますっ」
達夫は顔を真っ赤にしてそう言うといっそう威厳を増した女性上司に一礼し、自席に置いたバインダーを抱え倉庫の方へ出て行った。

達夫が倉庫業務から戻ってくると由紀恵は応接ソファへ移動し、仕事の資料をチェックしていた。
「平井」
そう呼ばれて、達夫は背筋に寒気を覚える。これまで彼女に、いや年下の女性に名字を呼び捨てられたことなどなかったからだ。一瞬憤りを覚えるも、さきほどの脅しが甦る。契約社員への降格。親会社にいたころ実際にそうなった人物を見ているだけに恐ろしい。月給はぐんと下がり、賞与も当然無い。正社員との待遇差は雲泥の開きがある。
「何ボーッとしてんのよっ、呼ばれたら返事。すぐここにくるっ」
机を叩きながら、ヒステリックな叫び声を響かせる。
「……は、はいっ」
達夫は由紀恵の態度が急変したことに驚く。声といい、態度といい、表情といい、何らかの覚悟を決めたようなたたずまいだ。急ぎ、女性上司の下に駆け寄って姿勢を正す。
由紀恵は達夫を脇に立たせたままおもむろに、テーブルの煙草に手を伸ばす。火をつけてフーッと大きく煙を吐く。禁煙だった親会社勤務のときにはありえないことだった。
煙草が苦手な達夫は広がってくる煙に嫌悪感を抱きつつも顔には出せずにいる。このオフィスの長は浅間由紀恵だ。彼女が室内で喫煙していいと決めたのなら、それに逆らうことはできない。前々から機会があればやめてもらうようお願いするつもりだったが、もはやそんなことはおくびにも出せない状況になってしまった。
「何? この日報」
由紀恵はそう言って煙草をくわえ、昨日達夫が提出した報告書を差し向けた。達夫はそれを受け取り、「は、はあ」と困ったような返事をする。
「はあ、じゃないわよ。何、このいい加減な報告は。午前中、午後、そして残業。それぞれ何をどれだけやったのか、詳しく書きなさいよ」
「で、でしょうか……し、しかし前の会社では……」
親会社では、むしろ簡潔にまとめるよう指導されていた。達夫はそれをなるべく角が立たないよう説明したつもりだったが、すべてを聞き終わる前に、由紀恵は激高した。
「はあ? 何言ってんの、お前」
手元のバインダーで、机を思いっきり叩く。大きな音とともに筆記用具が飛び散り、オフィスがとてつもない緊張感に覆われる。
「す、すみませんっ」
一回り以上も年下の女性上司に、お前呼ばわりされ、達夫は大きなショックを受ける。
「ここは、親会社じゃないんだよ。アタシのルールでやってんだよ。あ、そう……そういうことね、契約社員に成り下がりたいんだ、お前は、ねえ、平井、そうなんだ」
オリーブブラウンのアイシャドウを施した目で睨みつける。
「ち、違います……申し訳ありませんっ……」
達夫は頭を下げて詫びるが、由紀恵の方はまったく収まらない。
「あああ、気分が悪い。ふざけるんじゃないわよ、ったく」
「す、すみませんでした……本当に……」
達夫の顔が青白くなっていく。
「本当に悪いと思ってんの?」
由紀恵は苛ついたように灰皿で煙草を揉み消しながら言う。
「は、はい……」
「じゃあ、そんな謝り方じゃだめでしょ」
「……は、はあ……」
「土下座しな」
女上司は、床の方にチラと視線をやる。
「え?」
達夫は思わず由紀恵の顔を凝視する。その顔に笑みが浮かんで、「冗談よ」と言うのを待つ。しかし、彼女の視線はいっそう厳しさを増し、達夫は耐えられなくなって目をそらす。
「だから土下座しろって。悪いと思ってんでしょ。違うの?」
「は、はい……」
達夫はそう返事しつつも、体が思うように動かない。これまでの人生で誰にだって土下座なぞしたことがない。ましてや年下の女性になんて。
「やんなよ。アタシたちしかいないんだからさ。いまやんないんだったら、来週、新しい女子社員の前でやらせようか?」
「い、いえ……それは……」
来週から、新人の女子社員が来ることは知っているが、そんなことをさせられたらもはや男として生きていけない。達夫は靴を脱いで脇に置き、応接ソファの脇、由紀恵の足元に正座する。埃っぽい床でズボンが汚れそうだが仕方ない。
「ほら、お前がきちんとモップ掛けやらないから、そんなとき困るでしょ。自業自得だよ」
由紀恵が達夫の心を見透かすように言った。
「そっちでやろ」
由紀恵は立ち上がると、壁に沿った三人掛けの休憩ソファの方へ移動した。そこなら、前にテーブルもない。

 

 

S女小説 男虐めと逆陵辱「妻の復讐」

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S女小説「男を嫐り犯す女獣たち」

S女小説「男を嫐り犯す女獣たち」を電子書籍として出版しました。

内容紹介

まるで淫獣とも言える性欲たくましい美女たちに嫐られ陵辱される男の物語。

年下の女性上司に仕事の指導と称して陵辱を受け続けた藤川朋也はついに会社を辞めざるを得なくなる。キャリアウーマンの美人妻・藤川紀香は、主夫となった夫を家政夫のように扱い、ついには奴隷化してしまう。待っていたのは、妻からの暴力、そして完全女性上位の陵辱。しかも彼を弄び虐めるのは妻だけではなかった。妻の妹、そして、最愛の娘までが彼を女淫煮えたぎる地獄へと導いていく。

  • 第一章 主夫を辱める麗しき鬼妻
  • 第二章 バイト上司は淫欲女軍曹
  • 第三章 美人義妹は逆強姦ナース
  • 第四章 長身実娘の剛棒に貫かれ

本文サンプル

プロローグ

「すみません、出野いずの課長、チェックをお願いします」
 藤川朋也ともやは、七つ年下の女性上司、出野いずの美樹のデスクに向かうと、書き直した企画書を差し出した。
「今度は大丈夫?」
 三十五歳の女性課長は、あきれぎみの表情で朋也の目を見る。ショートヘアにカチッとしたスーツが似合う美人は強い目力で中年平社員を萎縮させる。
「は、はい……たぶん……すみません……」
「たぶん?」
「い、いえ……大丈夫と思います……よろしくお願いします……」
 朋也は別の女性上司から頼まれていた仕事も遅れていたので、美樹に頭を下げて席に戻ろうとした。
「待ちなさいよ、いま見てあげるから、そこにいなさい」
「は、はい……」
 近くのデスクの若い女子社員たち数人がほくそ笑んで、こちらを見ている。朋也はいたたまれなくなって床を見つめる。
 女性ばかりのオフィスフロアに男性社員は彼ひとりでしかも最年長。しかし半年前に転職してきたばかりとあって、立場は新卒の女子社員と同じだ。いや厳密に言うと高卒の朋也は彼女たちよりも下の階級に甘んじている。最も安い給料で使われている。
「藤川」
「は、はい……」
 美樹が三ヶ月程前から、朋也を名字で呼び捨てにし始めた影響で、他の女性上司もそれに倣い始めた。彼の立場が急激に悪化したのはその頃からである。
「ダメだね、こんなのじゃ、話になんない。今晩、アタシ残業があるから、ついでにみっちりやったげるわ」
「あ、あの……」
 妻の誕生日で外食の約束をしていた朋也はそのことを口に出そうとして引っ込める。この日のために月曜日からずっと残業をし続けたのだが、鬼課長には言いだせなかった。
「何よ。不満でもあるの?」
「い、いえ、すみません」
 そう言いながらも、朋也の顔には無念が漂っている。それを美樹は見逃さず上司に対する不服従とみなした。チッと大きな舌打ちを鳴らす。
「あんたさあ」
 美樹は怒りにまかせて立ち上がる。
「いい加減にしなよっ」
 朋也の頬を平手で激しく殴打した。
「はぐううっ……す、すみませんっ……」
 まさか手を挙げられるとは思わなかった朋也は過呼吸ぎみのパニックに陥る。
「も、はううっ、ふも、ももっ、申し訳ありませんっ」
 辺りがシーンと静まる。若い女性社員達は、あっけにとられていたが、それもしょうがないというような思いで見つめていた女性も多かった。部下にあんないい加減な仕事をされたら自分だって手を挙げるだろうとでも言いたげに。
「時間ないんだから、さっさと行きなさいよ。他にも何か頼まれてんでしょ?」
「は、はい……失礼しますっ……」
 朋也が席に戻るとほどなく、昼の時間になった。携帯電話を持って誰もいない休憩室へと向かう。女性に殴られたショックで心臓はまだ高鳴っている。
「ごめんなさい、今日、残業になっちゃって……」
 必死で謝る朋也に妻は、「馬鹿」とひとことだけ返して電話を切った。

 午後五時半を回り、女子社員たちが一人、二人と退社していく。美容品商社の販促課であるこの部署は、本社とは独立した雑居ビルのワンフロアにある。メディア関連の企業が多いエリアにあって、遊撃的な役割を担っているのだ。
 ついにオフィスは、出野美樹と朋也の二人きりになった。
 朋也は美樹に企画書の指導をしてもらう機会を伺ったが、女性課長はずっとキーボードを打ちっぱなしで、七時を回っても、いっこうに向こうから声を掛けてくれる気配がない。妻のことも気になった。少しでも早く帰って、誕生祝いの乾杯だけでもしなければ、また機嫌を損ねてしまうだろう。
「出野課長、も、もし、お手すきでしたら、ご指導の方、よろしくお願いします」
 朋也はたまりかねて、美樹の元へ向かい、おどおどしながら声を掛ける。
「……これが、お手すきに見える? ねえ」
 美樹は苛ついたように、ENTERキーを強く叩く。タンという音がフロアに響き、朋也は思わず身をすくめる。
「す、すみません……」
 すごすごと自席に戻ると、美樹が大きく伸びをして席を立ち、冷蔵庫から缶ビールをとって朋也の近くにある休憩用ソファに座って飲み始めた。女性管理職たちが残業後にここでアルコールを口にするのを朋也はたびたび目にした。
「あああ、疲れちゃった……藤川っ」
 美樹が首を回しながら言う。
「は、はいっ」
 朋也は立ち上がって美樹を見る。ショートヘアに白シャツが似合うなんという格好いい美人だろう。女子社員たちにあだ名されている《ハンサムレディ》という言葉がまさしくしっくりくる。しかし暴力を振るわれたあとでは、その女性課長に対する畏怖の念が倍増したようにも思えた。
「ちょっとここきて、揉んでくれない。肩、凝っちゃった」
 自分の隣をポンポンと叩く。
「え、あ、は、い……」
 朋也は美樹の隣に腰掛けると「し、失礼します……」と言って、背中を向けた彼女の肩に両手を伸ばす。白いシルクのシャツ越しに肩を揉む。首筋までの長さのショートヘアはゆるく波打って明るいブラウンに輝いている。香水と女性の匂いが混ざり合ってほんのりと香り立つ。
「凝ってるでしょ」
「で、ですかね……」
 朋也は命じられるまま十分ほど肩を揉み続けた。その間、美樹はスマートフォンでニュースをチェックしている。
「ねえ、裸になって」
「は、い?」
 朋也は美樹が何を言っているのか一瞬理解できなかった。
「もう、肩はいいから」
 頬がビールでほんのり染まっている。女優のように整った横顔だ。鼻がスッと通って、朱色の口元はキリリと引き締まっている。
「指導してあげるって言ったでしょ」
 体をこちらに向けて言う。
「あ、あの……」
 朋也は、冗談でしょうとでも言いたげに、美樹を見るが、女性課長はいたって真顔だ。
「何度も言わせないでよ。上司の命令よ。聞かないんだったら、明日また厳しく指導するわよ、若い女の子たちが見ている前で」
 女性たちの前で今日以上の暴力を振るう宣言をしているのだと理解した四十二歳は、観念してズボンからベルトを外し、シャツのボタンに手を掛ける。
「十時までは警備はこないはずだけど、一応、内鍵閉めときなよ」
 鍵を掛けて戻ってきた朋也が全裸になると三十五歳の女性課長はいきなりソファに押し倒す。
「ああっ」
 華奢な体も朋也のコンプレックスだった。身長百七十センチは越すであろう美樹の腕力の前ではなすすべがない。
「や、やめて……ください……そんな……」
「やめてじゃないでしょ、ほら、こんなに勃ってきてるじゃない」
 美樹は、朋也の乳首を親指と中指で弄りながら言う。
「ああああ……だめですっ……」
「抵抗すんなって」
 美樹は朋也の体を床に下ろしてのしかかり、太股で両腕を固定するとソファの下に手を入れて、さきほど朋也がトイレに行っている間にこっそり用意していた手錠とカッターナイフを取り出す。カッターの刃をカチカチと長く出し、朋也の頬にピタッと当てる。
「じっとしてないと、ブスリといくわよ」
「あ、ああああ……」
 返事の代わりに何度も首を縦に振って、抵抗の意思がないことを示す。
 ―――カチャリ……
 冷たい金属音がオフィスに響き渡り、朋也の両腕は頭の上でソファの足に固定される。
「最近、男と別れてさ、たまってんのよ。発散させてもらうわよ、企画書指導の授業料としてね。前金で」
 朋也を組みしだくことをあらかじめ企てていたのか、すでにストッキングは履いていない。立ち上がってサンダルを足から外して、シルバーグレーのタイトスカートを脱ぐと、ショーツも脱ぎ捨て、シャツはボタンだけ全部外す。ベージュ色をしたハーフカップのブラジャーの上に豊かな乳房がなまめかしい谷間を作っている。
「ほら、勃てなよ」美樹は勃起が十分でない朋也のものを素足で弄る。「こんなフニャチンじゃ入んないよ」
「あああ……ど、どうか……課長様……」
 無理矢理とは言え、姦通されれば、やはり妻への裏切りとなるだろう。それが恐ろしかった。
「ねえ、藤川」美樹が笑みを浮かべて見下ろす。「お前さあ、マゾでしょ」
「…………」
「見てたら分かるんだよ、なんとなく。みんな言ってるよ。女の子たち。さっきもさ、アタシに殴られて、ぽーっとしてたじゃん」
「そ、そんなことは、ありません……」
「そんなことあるだろ」
 美樹の踵が朋也の胸を強く踏む。
「あああううううっ……」
 悲しいことに、朋也の局部がむっくりと起き上がってきた。
「ほら、やっぱりそうじゃない」美樹は踏んだ足を左右にねじり、華奢な男をさらに苦しめる。
「ひいいいいっ……」
 痛みとは裏腹に朋也のいくぶん心許ないものは美樹を受け入れられそうな大きさと固さになんとか達していた。
「ようし、めてみるか」
 美樹は余裕たっぷりに年上部下の体を跨ぐとM字の脚で腰を下ろし、亀頭を股間にあてがった。
「湿りがイマイチだね」
 まるで自慰用の玩具でも扱うように朋也のものを握り、自身の割れ目に押し当て胴の部分を上下にこすって刺激する。
「ふーっ……」
 上向いて目をつぶり、自分の好きな映画俳優とのセックスを想像する。
「あああ○○っ」
 その男の下の名前を実際に口にする。
 朋也はイヤイヤするように首を左右に振り、耳を塞ぎたいが、両手が自由にならない。手錠の音がガチャガチャと空しく響く。
「うるさいわねえっ」
 片手で朋也ののど元を押さえ、空いた手で頬に強いビンタを張る。
「はうううっ……」
 さらに往復で二発、三発、四発と張る。
「ああっ……やっ……くわあっ……ご、ごめんなさい……許して……」
「うらあっ」
 美樹が勇ましい声を上げると同時に、朋也のものをズブリと飲み込んだ。
「はあううっ……」
 美樹は朋也を根元まで完全に咥え込んで前後に強い律動を始める。
「ああっ、あっ、はああっ、ああっ……」
 動きに合わせて、朋也のかん高い声が、オフィスに響き渡る。
―――の、紀香……ごめんなさい……
 朋也は心のなかで妻の名を呼んで必死に詫びる。

第一章 主夫を辱める麗しき鬼妻

☆ 一

のりちゃん、実は会社辞めようと思うんだ」
 朋也は日曜日の夕食時、妻の紀香のりかにそう打ち明けた。藤川紀香は、朋也より五つ年下の三十七歳、中堅商社に勤めるキャリアウーマンである。有能な上に目鼻立ちのくっきりとした端正なフェイスの持ち主である。メリハリの利いた長身の体躯は、ダイナマイトボディという形容がふさわしい才色兼備の麗人だった。
「簡単に言わないでよ、そんなこと。どうしたの?」
 朋也がこしらえたハンバーグステーキをナイフで切りながら言う。共働きである彼らは家事をほぼ平等に分担していた。
「上司のパワハラが酷いんだ……」
 さすがに本番を強要されているセクハラのことは言い出せなかったが、暴力を含んだパワハラだけでも退社する理由に足ると思った。
「上司って、女性でしょ。しかもあなたよりうんと年下の」
「う、うん……でも……手を挙げられることもしょっちゅうだし。それも若いたちが見てる前で……」
「前も聞いたけどさ、それって、結局あなたがやることやってないからだけじゃないの? 私も年上の男性部下持ってるからよくわかるわ」
「…………」
 てっきり暴力を一緒になって非難してくれるものと思ったのだが、そのように言われては何の反論もできなかった。
「それで最近食が細いんだ」
 紀香は自分の半分の大きさしかない朋也のハンバーグを見て言った。大きなひとかけらをフォークに差し、ソースがこぼれないよう口に持って行く。
「うん……ちょっと喉に通らないって言うか……」
 半分は本当だったが、正直に言うと、半分は紀香に同情を買うための演技もあった。
「どうしても耐えられないんだったら仕方ないけど、その代わり家事は全部やってもらうわよ。もちろん毎日ハローワークに行って、次の仕事を探すこと」
 紀香は、自分の収入だけでも十分やっていけることは分かっていたが、男は甘やかせばいくらでも怠惰になるので締めておかねばならないと思った。
「う、うん、分かった。じゃ、さっそく明日にでも辞表を出そうと思うんだけど……」
 この決断が実は地獄の始まりであることは、いまの朋也には分かっていなかった。

 夫が会社を辞めると妻は激変した。
「朋也」
 まずは、名前を呼び捨てにするようになった。
「靴が出てないっ!」
 大きな声がするので、朝食の洗い物を途中で止めて、すぐに玄関先へと向かう。
「あ、ごめん……」
「青いパンプス履いてくって言っといたでしょ」
 朋也は靴箱から取り出すと彼女の足元に置いた。
「今日は飲み会で遅くなるから」
 パンプスを履きながらそう言う。
「あ、うん、わかった……」
「じゃあ、これ今日の分ね」
 靴箱の上に千円札を一枚置く。朋也の小遣いである。紀香に給料の振り込み通帳を預けていた夫には個人的な蓄えというものが一切なかった。夕食の材料や日用品の購入には、クレジットカードが一枚渡されていたが、もちろんそれを私用に使うことはできない。
「あ、ありがと……」
 朋也は口ごもって言う。
「え?」
 紀香の険しい眼差しに、朋也はすくみ上がる。
「あ、ありがとう、ございます。い、いってらっしゃい」
「掃除、きちんとね。隅々まで。よく埃がたまってるわよ」
「あ、は、はい……」

「いくら何でも、朝四時なんて……」
 朝食のトーストを準備しながら、エプロン姿の朋也は、昨日明け方近くに帰ってきた紀香にもう一度恨み節を言う。
「仕事のつきあいだから、しょうがないでしょ。朝帰りみたいにいわないでよ。夜中の四時だから」
「仕事の話をそんなに遅くまで?」
 商談の相手はおそらく男性だろう。嫉妬もあってうっかり朋也はそのように尋ねてみた。しかも少しネチっこさを伴ったその言い方が紀香の癪に障った。
「関係ないでしょ。詮索しないでよ。っていうか、あなたはどうなの? 次の仕事探してるの? もう一ヶ月近くなるけど」
 紀香はそう言い残すと、さっさと身支度をして出社した。
 その日は、靴箱の上に置かれるはずの千円札がなかった。朋也は背筋がゾッとした。
 いつものようにハローワークに赴くも、四十歳を過ぎているためとにかく面接までたどり着けない。

 夕食を作って妻の帰りを待つ朋也だったが、いっこうにその気配がない。仕方なく自分だけすませて、後片付けをする。紀香が帰宅したのは、夜中の十二時過ぎだった。
「連絡くらいしてくれたっていいじゃない……」
 スーツの上着を脱がせながら、朋也は言う。
「急な仕事でそれどころじゃなかったのよ」
「だいぶ、お酒臭いよ……」
「仕事が片付いたあと、チームのメンバーで少し飲んだのよ」
 少しという割りには紀香はかなり酔っ払っているようだった。
「夕飯作って待ってたのに……」
「だから何? こっちは朝から晩まで働いてんのよ。一回、連絡しなかったくらいでどうだって言うの?」
 紀香の強い剣幕に気圧され、朋也は彼女に背を向ける。これ以上やり合っては危険だと思った。しかし、妻は夫のその態度に激高する。
「何、それ? ねえ」
 大柄の紀香が、夫の肩をつかんでこっちを向かせる。
「あああっ」
 妻の右腕が大きく上がるのを見て、朋也は驚く。次の瞬間には、強烈な平手が彼の頬を打ちのめした。
「はううっ……」
 学生時代、バレーボール部のアタッカーだった彼女のビンタの威力は凄まじく、夫は床に倒れ伏した。しかし、それくらいでは妻の怒りは収まらない。
「何なの、その態度はっ」
 ストッキングの長い脚が、夫の腰を激しく踏み下ろす。
「わがあううっ……ご、ごめんなさい……」
 とにかく彼女の興奮を静める必要があると思った。事の是非はともかく謝らなくては。紀香の無慈悲な蹴りが今度は脇腹に炸裂する。二十五センチ半ある足の甲が放つ衝撃は、夫をつかの間呼吸困難に陥れる。
「くわううううっ…………」
 朋也はしばし、床にのたうち回る。妻は酔った勢いもあり、さらに肩や太股に踵を落としまくる。朋也は凶暴な妻にとにかく許しを乞うべく、彼女の脚にすがる。
「ご、ごめんなさい……紀さんんっ……」
 呼吸がようやく落ち着いた朋也はもう一度紀香に詫びる。しかし、アルコールによって興奮をさらに高めている妻は簡単には許さない。
「アタシに文句言うより先にさあ、もっと家事をちゃんとやんなよ。来てみ」
 妻は夫を蹴ってリビングの隅へ追い立てる。朋也は四つん這いのまま、表に面したサッシ窓のところへ連れて行かれる。
「見て見なよ、その溝。埃がびっしり詰まってるでしょ。詰めが甘いのよ、お前は。そりゃ、女上司も殴るでしょうよ。私だって同じよ」
「ご、ごめんなさい……明日、きれいにしておきます」
「ダメ、いまやれ」
 そう言いつけて、ソファに座る。
 生活の基盤を握られ、自分の命令に逆らうことができず、掃除のやり直しをさせられている夫を、ソファにふんぞり返って眺めているうちに、紀香のなかに嗜虐的な欲望がメラメラと湧き上がってくる。
とも、こっちこい」
 まるで飼い犬でも呼びつけるように、夫を手招きする。
「舐めてきれいにして」
 ストッキングを脱いだ足を夫の目の前に差し出す。
「の、紀さん……そ、それは……」

S女小説「男を嫐り犯す女獣たち」

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S女小説「先生、私の奴隷になりなさい」

S女小説「先生、私の奴隷になりなさい」を電子書籍として出版しました。

内容紹介

小説家、政治家、医師、教師……社会的に尊敬されがちな立場、いわゆる「先生」と呼ばれる職種に就く男たちは、嗜虐性をたっぷり含んだDNAを受け継ぐ女性たちに暴行を受け、弄ばれ、陵辱される運命に陥るのだった。彼らのプライドの裏にピッタリと張り付いているマゾヒスティックな願望を、美しきサディスト達が、本能のままに暴いていく。男たちの想像以上に激しく、残酷な女獣たちの頭のなかには、容赦という言葉が一欠片も存在していなかった。

  • プロローグ
  • 第一章 老議員を虐める女性秘書
  • 第二章 病院長をいたぶる看護婦
  • 第三章 担任教師を犯す女子高生
  • 第四章 家庭教師を狩る長身JC
  • エピローグ

本文サンプル

プロローグ

「先生、ではそういうことで、原稿の方、よろしくお願いいたします」
 若い女性編集者は、綾部左千夫に辞儀をして、彼の自宅兼事務所を立ち去った。
「どう、先生、お仕事の方は?」
 左千夫が振り返ると妻の美由紀が腕組みをして立っている。左千夫より六つ年下で四十二歳の彼女は、まだ三十代前半に見えるほどの若さにあふれた麗人である。
「あ、はい……なんとか……」
 売れない小説家の左千夫は、資産家の娘である妻美由紀にまったく頭が上がらない。彼の収入は微々たるもので、ほぼ彼女に食べさせてもらっているも同然だった。その状況は結婚当初から変わらない。
「ふん、なんとかじゃないわよ。たいして仕事もしてないくせに。もうちょっと自分の方から売り込んでみたらどうなの?」
 ライトグレーのワンピースを着た妻は、上がり口の脇にあるソファに腰掛けた。
「あ、あああ……ま、まあ、それも、なかなか……」
 年齢だけは中堅に達した作家は、いまさらそんな営業回りもできず、苦笑いを浮かべるしかない。
「まったくこれまでどれだけ援助してもらってると思ってんのよ」
「は、はい……」
「はいって、分かってんの? ホントに。投資損したみたいね。罪滅ぼしに何かやってもらおうかな」
「あああ、美由紀さん……」
 先日、わずかな額だが隠していた借金がバレ、はじめて妻に手を挙げられて以来、夫は彼女のことをさんづけで呼ぶようになっていた。家のなかでの彼の地位が急速に転落していた。
「脚揉んでよ」
「ど、どうか、そんなことは……」
 左千夫は引きつった笑みを浮かべる。
「アタシが冗談で言ってるとでも思ってるの? やってもらうわよ。たいした原稿料取ってこれないんだから、出資者に対してそれくらいやらなくちゃ。最低限の礼儀でしょ。それとももう援助するのやめようか。この家出て、ひとりでやっていけば?」
「いえ、そんな……無理です……」
「だったら、考えることないでしょ。やんなよ」
 そう言って妻は少々大げさに脚を組み替えてみせた。
「いつまでそうやってボーッと立ってるつもり?」
「ああ、じゃ、じゃあ少しだけ……」
 そう言って左千夫は妻の足元にしゃがみこむ。
「そんなのあなたが決めることじゃないでしょ。私がいいって言うまでやってもらうわよ。ほら、きちんと正座して」
 美由紀は素足のつま先を、左千夫の鼻に触れんばかりに差し出す。
「揉んで、ほら」
「…………」
 夫は黙って妻の脚を揉もうとするも、何をどうしていいのか戸惑っている様子だ。
「ねえ、あなた自分の立場ホントに分かってる? アタシがなんか言ったらまず返事をしなさいよ」
「……うん……」
「はい、でしょ。返事は」
 妖艶な朱色の唇でため息をついて、長い髪をかき上げる。
「は、はい……」
「これから、日課としてやってもらうから。失礼しますって言って、そうね、まずふくらはぎからやってもらおうかしら」
「…………」
「作家さんには屈辱的? だって、たいした仕事してないんだから偉そうにできる立場じゃないでしょ。少なくとも私の前では。違う?」
 何も言い返せない左千夫は、体を震わせながら、「はい……し、失礼します」と言い、妻の長い脚のふくらはぎに手を添えた。
「しっかり揉んでね」
 そう言いながらミニテーブルの上の煙草を手に取る。
「ただいま」
 玄関の引き戸が開いて、左千夫はびくりと反応し、慌てて妻の脚から体を離す。長女の明美が帰宅したのだった。
「おかえり」
「何、ママ?」
 看護婦をしている二十三歳の娘は、足元で正座させられている父親を鼻で笑うように見て言う。
「脚揉んでもらってるの、先生に。続けなさいよ、ほら」
 左千夫の手を足の甲で軽く蹴って言う。
「そっか、大先生、ついにそんなことまでやらされるようになったんだ」
 明美も疲れた体をソファに預ける。隣の母が、「吸う?」と煙草のパッケージを渡す。
「ありがと」
 明美はメンソールのシガレットを一本抜いて、母親に火を着けてもらう。灰皿が母娘の間に移される。
「ふーっ、夜勤明けの一服は美味しいわ」
 娘は先日、母が父の頬を激しく殴打するのを見て以来、完全に彼を見下すようになった。こんな立場の父親なら、母親に脚を揉むよう命じられても仕方がない。
「ちょっとお、しっかり揉んでよ、ぜんぜん効かないわよ、そんなんじゃ」
 妻は夫の肩を軽く蹴る。左千夫は、思わず謝罪しそうになるが、娘の手前、声に出せなかった。
「何?その顔。明美の前だからって、何か意地張ってない?」
「顔伏せちゃって、こっち見てごらん」と娘が父に言う。
「見なさいよ」
「も、もう……」
「何よ、もうって」妻が苛立ちを見せる。「何なの? 何だよ」つま先で無理矢理夫の顎を上向かせた。
「ははっ」娘が笑い声を上げる。「ほら、自分からやんないから、そうなるんだよ。アタシの方見てよ」
「ちゃんと明美の目を見ながら、アタシの脚を揉むのよ。ねえ、先生」
「う、ううううう……」
 左千夫は悔しそうに歯を食いしばる。揉む手を下ろして、両手の拳を床につけ、体を震わせている。
「何、それ」
 娘の明美があきれたように「ふーっ」と煙を吹かす。
「も、もう……本当に二人ともこのくらいで……あ、明美ちゃんも、煙草は体に悪いから……」
「ふっ」妻の美由紀が、気でも違ったのかと言うように鼻で笑う。「ビンタくらいじゃ、分からないようね。もうちょっと痛い目見ないと」
 妻は火の着いた煙草を灰皿に置くと立ち上がり、「ねえ」と夫の太股を強く踏みしだいた。
「うわあああっ……」
 情けないことに、財力のみならず、体力でも夫は妻にかなわなかった。
「ご、ごめんなさい……美由紀さん……」
「調子に乗るんじゃないわよ」
 詫びる夫の腰に、次の蹴りを放つ。
「がわうううっ……すみません……」
「私に口答えしたらこうなるの。よく覚えておきなさいっ」
 背中に重たい踵が落とされる。
「ぐわあああああっ……」
「分かった?」
 興奮した妻は肩で息をしながら、再びソファに腰を下ろす。
「わ、分かりました……」
 娘が見ている前で、徹底的な暴力を振るわれ、圧倒的な立場の差を見せつけられ、左千夫は父権というものが音を立てて崩れ落ちるのを感じた。
「どうしようもないね、ホント」
 娘はそう言うと煙草をくわえたまま両手を頭の後ろで組んで伸びをした。
「煙草が体に悪いって? 余計なお世話よ、そんなのアタシの勝手でしょ」
 明美は、そう言ってみると、目の前の情けない小男に意見されたことに改めて腹が立ってきた。
「こっちおいでよ」
 明美は左千夫のネクタイを引っ張ってたぐり寄せる。
「うううううっ……あ、明美さん……」
 父はこのとき初めて娘のことをさん呼ばわりした。それを聞いて娘の顔に嗜虐的な笑みが浮かぶ。
「だいたい、作家先生のくせになんで、ネクタイなんてしてんの?」
「きょ、今日は編集者さんが打ち合わせにおいでてたもので……」
「そういうところには気が回るのよ」妻が蔑んだ調子で言う。「要は小物なのよ。ちゃんとした小説書けてるんなら、どうでもいいでしょ、そんなこと」
「口開けな、小物先生」
 娘が言う。
「ほらあっ」
 ほとんど股間につま先が届くように父親の太股を踏みつけ、ネクタイをぐいっと引く。
「あうううっ……あいっ」
 父はたまらず口を開ける。
「上向いて、舌を出すっ」
「あ、あいっ……」
 父が出した舌の上に、娘は煙草の灰を落とした。
「この家じゃ、お前はしょせん灰皿程度なんだよ」
 妻の赤いマニキュアの手も伸びてきて、夫の舌の上で同じく灰が落とされる。
「あら、久美、出かけるの?」
 身支度をして二階から降りてきた高校二年生の次女に、母が声を掛ける。
「うわっ、何っ?」
 母と姉に口を灰皿代わりに使われている惨めな父を見て声を上げる。
「見ての通り、どうしようもないから、この大先生は……」
「ねえ」意外にもそれ以上驚かなかった次女は、父親の肩に手を掛けていう。「アタシのブーツ、磨いてくれた?」
「あ、久美ちゃん……そ、それはまだ……」
 口のなかを灰だらけにした父親がもごもごと言う。
「何言ってんのか分かんない」次女は、父親の頭を小馬鹿にしたように軽く叩き、「え? マジでやってないの? いまから出かけるんだけど」
「ご、ごめんなさい……」
「やってよ、今すぐに」
 左千夫は、次女が履いたままの黒革の膝丈ブーツを土間に這いつくばって磨きながら、時折口を開け、舌を出して、妻と長女の煙草の灰を口のなかに受けている。
「ただいま」
 再び、玄関の戸が開いて声がした。今度は三女の帰宅だった。
「何やってんの?」
 中学三年生の雅美は、哀れに過ぎる父親の醜態に軽蔑の眼差しを送ると、そそくさと二階に上がっていった。

第一章 老議員を虐める女性秘書

☆ 一

「先生、お久しぶりです」
 綾部左千夫の妻、美由紀は、向かいに座る市議会議員の笹川淳一郎とワイングラスをあわせる。
「本当に久しぶりだ。君がうちの事務所を離れてどのくらいになる」
「そうですね、まだ二十代でしたから、ずいぶんですね。もう十年以上」
 美由紀は当時若いながらも秘書として、淳一郎の事務所に世話になっていた。
「そうか。私も老けるわけだ」
「いえいえ、先生はまだお若くいらっしゃるわ」
 白髪を後ろになでつけた笹川は御年六十三だが、美由紀は半分お世辞、しかし彼の全身からみなぎるバイタリティをそれこそ若さだと思った。自分の夫にはまったく感じられない若さだ。
「どうだろう、もう一度、うちのスタッフとして戻ってもらえないかね」
 笹川は、分厚いステーキ肉にナイフを入れながら言う。
「また、ご冗談を……先生、どうせまたよその愛人さんに飽きちゃって、たまたま気まぐれで私に連絡寄こしたってところじゃないですか?」
 ほぼ図星であった。
「はっはっは。綾部君にはかなわないな。そんなことはないが、君が魅惑的な女性であることは確かだよ」
「相変わらずお上手ですね。それで何人の女が騙されてきたのかしら」
 こういったさばけた調子が美由紀の魅力である。笹川は彼女に対しては順序を踏んだ芝居は不要であると思った。ホテルのレストランを出て、バーへ移ると率直な言動に出た。
「ズバリ言おう。私の愛人になって欲しい」
「まあ、ストレートね。私、そんなに若くないし、人妻ですよ」
「私が頼んでいる時点で、そんなこと意に介していないということだよ。もっとも、君がよければの話だが」
「言っときますけれど、私、そんなに安い女じゃありませんよ」
「ふふっ、分かっているよ。資産家のお嬢さんをそんなに安く買い叩けるとは、この笹川も思っとらんよ。じゃあ、決まりだな」
 その場でホテルの部屋を取り、二人はさっそくベッドを共にしたのだった。

「お、おかえり……」
 午前二時半頃、ようやく帰宅してきた妻に左千夫は声を掛ける。
「ただいま。リビングで仕事してたの?」
「あ、うん……落ち着かなくて……」
「私が、浮気でもしてると思った?」
 セックス後のビールで美由紀の頬はほんのりと色づいている。
「い、いや……」
 左千夫は、テーブルの上に散らばっている原稿や資料を端に寄せる。
「ワイン持ってきてよ。もうちょっと飲みたいわ」
 その言い方が命令口調だったので、左千夫は「はい」と返事をしてキッチンへ立った。
 妻にワインを注ぎ、自分はコーヒーをお代わりした。美由紀はソファに、左千夫は足元の座布団に座る。
「ねえ、アタシが浮気してたとしたらどうする?」
「そ、そんな……」
 左千夫は狼狽ぶりを隠すようにコーヒーカップを口に持って行く。
「思うんだけどさ、あなたもっと色気のある話書いたら? 推理ものなんていまどき流行んないわよ」
「でももうずっとそれでやってきてるし……」
「別のペンネームでもいいじゃない。とにかく売れる本書かないと」
「色気のある話なんて……書いたこともないし、ネタもないし」
「ネタは私が提供するわよ。いまから話すから。浮気される夫の話。メモ取って」
「み、美由紀さん……ど、どうか……」
 左千夫は、美由紀の笑みに寒気を感じ、思わず彼女のストッキングの脚にすがりつく。
「おら、ちゃんと取材しなよ、小説家先生でしょ、あんた」
 足元にまとわりつく夫の頬を脚で蹴って引き離す。
「あ、あああ……」
「話すわよ」美由紀はワインを片手にソファに深く座り直す。「妻は、今日、昔世話になった市議会議員さんと久々に会いました……」

「妻は、議員さんの愛人契約をほ、本当に受けたんでしょうか?」
 話が一段落したところで、夫は真顔で聞き返す。
「受けたわよ。もちろん、じゃないと話が進まないじゃない」
「は、はい……」
 左千夫は正座の姿勢でノートを取り続ける。
「それに月々のお手当てもたいそうな金額だったから。あ、言い忘れてたけど、妻の夫は、売れない作家先生ね」
「…………」
「何よ、私の空想の話をしてんのよ」
「夫の稼ぎが少ないと、妻もそんな誘惑に乗りやすいのよ。あなたも注意した方がいいかもよ」
 そう言って美由紀は空になったグラスを夫に差し出す。左千夫はペンを置き、ボトルを両手で持ってワインを注ぐ。
「で、さっそくその足で、ホテルの部屋に行くわけね」
「そ、その日にですか……」
「もちろんよ。だってもう契約したんだから。部屋はセミスイート。広くて豪華よ。しがない作家さんじゃ手も脚も出ない高級ルームだわ。そんな部屋に泊めてもらったのは、新婚旅行だけだよね。私」
「…………」
 左千夫は屈辱に体を震わせながらも、妻の命令に忠実に従うべくノートを取る。昨日も受けた腰への蹴りがまだ痛む。
「部屋の細かいところは、ネットでも調べて、脚色しときな」
「は、はい……」
「まずは、ソファでディープキスね。シャワーも浴びずに。お互いの舌と舌をねっとりと絡め合うの。大人のキスよ」
 左千夫は五十歳近くになっても、そのような口づけなどまるで経験が無かった。
「誰かさんみたいに下手くそじゃないわ。そうね、言って見ればキスだけでひとつの性戯として成立してる感じね。敏感な女ならこれだけであそこがぐしょぐしょに濡れちゃうんじゃない。もちろんこの話に出てくる妻も。ねえ、ちゃんと書いてる?」
「あ、はい……」
 あっけにとられる左千夫を見て美由紀は微笑む。
「あなたも興奮してきたんじゃないの? 脱いじゃっていいわよ、てか脱ぎな。脱いで、裸になって、私の話を聞きなよ」
「そ、そんな……」
「文句あんの? 出て行く? この家から」
「い、いえ、美由紀さん……」
「じゃあ、早く脱ぎなよっ」
 妻はワイングラスをテーブルに置くと、夫の頬を一発強く張った。
「はううっ……」
 左千夫は痛む頬を押さえながら、すぐに立ち上がってシャツとズボンそして下着を脱いだ。
「そう。はい、座って。正座しなさい。続きね。妻はよその男の人とセックスがしたくてしたくてたまらなかったから、自分から服を脱いだわ。議員さんにしてみれば、渡りに船ってところでしょうね。どうしてそんなにやりたかったか分かる?」
「い、いえ……」
「夫がもの足らなかったからよ。男としての魅力、愛撫の技術、そしてアレの大きさ。すべてが妻を満足させるに至らない。どうしてこんな男と結婚しちゃったのかしら」
 そう言って美由紀はじっと左千夫の顔を見る。強く美しい眼差しに耐えきれず、夫は目を伏せる。
「裸になった妻はね、『ああ、これが欲しい、欲しい』と言いながら、議員さんのズボンを降ろすの。そして、そそり立った巨大なあそこにしゃぶりついたわ。見た瞬間、こんな大きなものが入るのかしらというくらいの巨根。ときどき大きさは関係ないなんて話があるけど、そんなことないわ。大きい方が気持ちいいに決まってるじゃない。あなたのモノのそうね、二倍は楽にあるわ。長さも太さも。それを口でくわえると議員さんのものはさらに大きくなったわ。顎がはずれるかと思うくらい。議員さんはソファに腰掛けたの、人妻にペニスを咥えさせたまま。彼の手が伸びて、人妻の乳を揉みしだく。彼女はたまらず、もう片方の乳を自分の手で揉んだわ。そして、もう一方の手は下半身へ」
 議員の下半身については多少誇張も含めて話す。
「み、美由紀さん……も、もうどうか……それくらいで……」
「書きなさいよ、途中でしらけさすんじゃないわよ」
 長い脚が伸びて足先がするどく左千夫の頬を打つ。
「はううっ……ご、ごめんなさい……」
 左千夫は脚を正座し直して、衝撃的に過ぎる妻の告白をノートに取っていく。
「妻は議員さんの下半身から口を外すと言うの。『入れて、これをアタシのなかに、早く』。びしょびしょに洪水みたいになったあそこに自分の指を出し入れしながらお願いするのよ。だって、こんな大きなものは家では入れられないからね」
「ううう……み、美由紀さん……」
「二人はベッドに行って、そして……」
 

S女小説「先生、私の奴隷になりなさい」

Kindle小説サンプル

S女小説「妹の玩具に堕ちるまで」

S女小説「妹の玩具に堕ちるまで」を電子書籍として出版しました。

内容紹介

夏目家の長男、幼一は、子供の頃からマゾヒスティックな願望を抱えていた。中一のある日、女子ボクシングの観戦をきっかけに、妄想は膨らみ、実の妹にパンチを受けたいと強く願うようになる。幼一の妹、小五の美香は冬休みの宿題をやってもらった代わりに、兄の願望に軽い気持ちで応えるが、それが彼女の奥底に眠っていたサディスティックな欲望に火を着けることになる。さらには経年とともに、彼らが想像もしなかった夏目家の秘密が明らかになっていく。

プロローグ

第一章 美香の豹変

第二章 彩香の軽蔑

第三章 瑠菜の冒険

第四章 麻子の残虐

本文サンプル

プロローグ

「すっごい迫力だったね、ゴジラ。今度は何見に行く? お兄ちゃん」
 小五の美香は、まだ興奮冷めやらぬ様子だ。
「……あ、うん、ちょ、ちょっと待ってて……」
 中一の兄、幼一は、そう言うと妹を置いて、映画館から出てきた道を後戻りする。彼の目は、電柱に貼られた一枚のポスターに釘付けになっている。
「ちょっとお、お兄ちゃん、何よお、もう」
 美形の女性ボクサーたちが革グローブをつけてファイティングポーズを取っているポスターに幼一はしばし見とれていた。
「早く帰ろうよ、美香、お腹空いちゃったよ」
 妹にせかされ、幼一は試合日の日付とチケットの金額、それから購入方法をすばやく頭に入れた。
「何よ、お兄ちゃん、あんなのに興味があるの?」
「い、いや、別に……」

 家に戻った幼一は、母親が用意してくれておいたおやつもそこそこに、今現在の所持金を計算した。
―――少し足りないなあ……
 一番安い席でもあと数百円足りなかった。

「お母さん、お願いがあります」
 休日、キッチンに立つ母親に幼一は思い切って言ってみる。
 母の麻子は、そのかしこまった物言いに思わず吹き出しそうになる。
「何?」
 まだ若々しく美しい母は、料理の手を止めずに聞く。
「あ、あの……見に行きたいイベントがあるんだけど、お小遣いが足りなくて……」
「何の?」
 幼一は後ろ手に隠し持っていたチラシを恥ずかしそうに母に見せる。
「女子ボクシング? 興味があるの?」
 母はようやくそこで手を止め、タオルで手を拭き、チラシを受け取る。
 幼一は顔を真っ赤にしてこっくりとうなずいた。美しく背の高い母親に自分の秘密を少し知られたことに幼一は興奮する。

 女子ボクシングの試合会場は、幼一が着いた頃にはまだ半分ほどの入りだった。客の多くは若い女性だった。幼一はリングから遠い席にポツンと腰掛ける。
 母親から借りたオペラグラスを試してみる。コーナーポストに書かれた広告文字が大きく見える。これがあれば、闘っている女性の顔もよく見えるだろう。前の席に大きな大人が座らなければいいがと彼は思った。
 試合までまだだいぶ時間があるので、リュックからコミックを取り出す。女性ボクサーが主人公の漫画だ。幼一のお気に入りは、ヒロインの美人ボクサーが、男子を徹底的に打ちのめし、ノックアウトするシーンで、そこを何度も読み返している。女子ボクシングの会場でそれを読んでいるとまるで現実の女子ボクサーの肉体が生々しく感じられ、幼一はどぎまぎしながらコミックに没頭した。
「僕、何読んでるの?」
 幼一がハッとして声の方を向くとスポーツタオルを肩からかけた女子ボクサーが隣に座ってきた。
「あっ……」
 ポスターにひときわ大きく写っていたスター選手だった。手に白いバンテージを巻いている。
「ひとりで来たの?」
「は、はい……」
 女子ボクサーは幼一のマンガにサッと手をやり、表紙をちらりと見て、「ふうん、女子ボクシング好きなんだ」
「あ、はい……あ、あの……こ、これに、サインをいただけますか? ファンなんです……」
 幼一はとっさにそう言っていた。
「いいよ、ペンは?」
「あ、ああ……」
 幼一がうろたえていると、女子ボクサーが、大きな声で、近くにいた男性スタッフに「ヒロノリ! ペン」と手でサインをするジェスチャをして言った。彼女よりだいぶ年上と思われる男性は、卑屈な笑みを浮かべながらそれを持ってきて手渡す。
「遅いっ! チンタラすんなっていってるでしょ、いつも。ミックスファイト、覚悟しときなよ」
 彼女を含めた二三のスター選手で持っている興業では、実力のある美人ボクサーは女王ともいうべき存在だった。
 幼一は興奮する。女性が男性を叱咤したこともそうだが、ミックスファイト、覚悟しろとは……男女混合戦だろうか。語彙から何となくそれを想像して、期待を高める。
 脅されて泣きそうな顔をした男性スタッフからペンを受け取ると、女性ボクサーは、サインをしながら、「キミみたいな男性ファンにもっと来て欲しいんだけどな。友達たくさん連れてきてよ」
「は、はいっ、今度来るときは誘ってきます」
 幼一はあてなどなかったけれど、思わずていのいい返事をした。
「よろしくね」
「あ、ありがとうございます!」
 幼一は、『竜崎りゅうざきマヤ』というサインを見て、感激した。
「ここじゃ、よく見えないでしょ。おいで」
 女性ボクサーは、幼一を連れて、リングサイド席に向かう。幼一は彼女の背中を追いながら、鍛え抜かれた肉体にどぎまぎする。広い肩幅、くびれた腰のライン、こんがりと焼けた長い四肢はスリムであるにもかかわらず、力強さに溢れていた。
「ここ座わんな」
「え? い、いいんですか……」
 美人ボクサーは首から掛けておくようにとスタッフタオルを渡し、さらには幼一のチケットにサインをして、係員から何か言われたら見せるように言って控え室に戻っていった。

 ゴングが鳴り、試合が始まる。美女たちの攻防は見事だった。幼一が思っていたよりずっと迫力があった。頭のどこかにやっぱり女だからという思いもあったが、そんな心配は鍛え抜かれた筋力をまざまざと感じさせてくれる女性たちのパンチによって見事に吹き飛ばされた。
 試合が進むほどに、パンチの音が大きくなり、選手たちのスピードもアップしていった。どのボクサーも鍛え上げられた肉体美を持つ美形ばかりだった。

 中休みの余興として、ミックスボクシングが行われるというアナウンスがあった。これについては、幼一としてもまったく嬉しい誤算だった。男女の混合ボクシング。もし、男性が女性に打ちのめされる試合が見られるのならば、毎回だって駆けつける。小遣いの全額をこれに投入してもいいと、幼一は思った。
 最初に入場してきたのは、さきほど竜崎マヤにペンを渡したヒロノリという中年の男だった。無理やりボクサーの恰好をさせられているだけのただのやせっぽちに見えた。簡単な紹介が終わると、続いて会場の照明が落とされ、派手な音楽が鳴り、スポットライトを浴びながら、女子のスター選手が入場する。竜崎マヤだ。リングに入って男と並ぶことにより、いかに彼女の方が肉体的に優れているかがありありとわかった。体格差だけではない、オーラの違い、人間としての価値そのものに大差があるようにすら思われた。
 ゴングが鳴り、両者ファイティングポーズで間合いを計る。大きな歓声が上がる。幼一は後ろを振り返って驚く。気がつけば、会場は満員だった。男性もチラホラいるようだったが、やはり、二十代くらいまでの女性が中心のようだった。
 マヤが黒いグローブで来い来いと挑発する。それが命令であるかのように、中年男性は無我夢中でステップを踏み、盲めっぽうのパンチを繰り出す。マヤは軽快なステップを取り、まるで踊りでも踊るようにしてかわしていった。指笛と歓声が沸き起こる。男が早くも疲れてきたのを見て取ると、懐に入り込み、軽く数発のジョブを放った。それはことごとく顔面にヒットし、男は顔色を変える。
―――スゴイ…… 幼一は生唾を呑み込む。―――やっぱり、マヤさんの方が圧倒的に強い……
 一発、強烈なストレートが叩き込まれ、男はよろけて後ずさると、ロープを背にして、怯えた表情を見せる。顔を守るガードをはねのけるようにしてマヤの乱打が始まる。男が何か言っているようだ。すみません、許してください……なにやら、詫びている様子だ。
 会場から女性たちのブーイングが巻き起こる。
「今日は、マヤ先輩、機嫌が悪そうだね」
 トレーナー姿のスタッフらしき女性たちが幼一の隣で話している。
「ヒロノリ、また馬鹿やったんじゃない」
「最近、立て続けだもんね」
 がら空きになったヒロノリのボディに、マヤが凄まじい連打を放っている。苦しみもだえながら、倒れそうになる男の喉を左グローブで抑え、ダウンさせずに、何発も殴り続けている。男性レフリーはオロオロしながらも試合を止めなかった。
「お、お許しください……マヤさま……」
 かすれるような声で男が懇願する。リングサイドの幼一にははっきり聞こえた。若い女子ボクサーは左手を放し、ずるりと落ちそうになる男を下からアッパーカットで殴り起こすと、さらに顔面に強烈なストレートを叩き込んだ。
 男の顔から血しぶきが上がる。
 ロープの反動で、男が倒れ込んでくるのを、マヤはサッとかわして、赤コーナーに戻る。
 男性レフリーが青ざめた表情で十カウントを取るも、男はピクリとも動かない。
「レフリーもビビってるわね」
 あまりのシーンに感動すら覚えている幼一の脇で女性たちがまた会話している。
「レフリーストップなしだって、マヤさんに言われてるんでしょ」
「うん、逆らったら、自分がやられ役に回されちゃうからね」
いやなら辞めればいいのに」
「中年男性の就職、大変らしいから、こんな仕事でも彼らにはありがたいらしいよ」
 目の前の凄惨な光景に釘付けになっている幼一の股間は、いまにも爆発しそうだった。

第一章 美香の豹変

☆ 一

「ふーっ、疲れちゃった」美香は大きく伸びをする。「ちょっと、休憩していい? お兄ちゃん」
「うん、そうだね。おやつにしようか」
「やったー、アタシ取ってくる」
 美香はキッチンの方へ向かった。
 冬休みも残り少なくなり、幼一は、美香の宿題を見てやるように、母親から頼まれていた。勤務医の母親は仕事で留守にしており、数年前に離婚した夫、彼らにとっては父親もおらず、夏目家にいまいるのは兄妹だけである。
 美香がクッキーとココアをトレーに載せて運んできて、リビングのテーブルに置く。
「いただきまあすっ」
 幼一は美香を見て、容姿がつくづく大人びてきたなと思った。母親に似て鼻筋のスッと通った美女に変貌しつつあった。長身であるのも母親譲りで、まだ小五なのに中一の幼一よりだいぶ高い。
「なあに、そんなに見て」
 幼一は美香がより大人びて見えるのは、緩くパーマをあてたセミロングの髪型にあるかもしれないと思った。母親にねだり倒して、クリスマス前に、美容院へ行ったようだった。クラスの間で流行っているらしい。
「あのさ、美香」
「何?」
「身長、測りっこしようか」
 幼一は唐突にそう持ちかけた。
「え、いいの?」
 美香は、兄が気にしているだろうと思って、身長のことを話題にしたことは一度も無かった。
「うん、やろ」
「わかった。メジャー持ってくる」
 美香は母親の部屋に行き、裁縫箱を探した。勉強に飽きてきていたので、兄からの提案は大歓迎だった。
「僕の部屋に行こう」
 兄はメジャーを持ってきた妹を自室に連れて行く。
「じゃあ、あそこに立って」
 幼一は白い壁を指す。
「ちゃんと背を伸ばしてね」
 今日の美香は水色のセーターに真っ赤なミニスカートだった。背中をぴったりと背につける。幼一は鉛筆を持つ手を伸ばして頭頂のところで壁に印をつける。
「百六十三だね」
 メジャーで測って一六二センチと半のところを幼一はそう言った。
「そんなにあるう?」
「うん、あるよ」
「じゃあ、今度はお兄ちゃんね」
 交替して美香が測ると、一五三センチ四ミリだった。
「惜っしいね」
「そうか、じゃあ、四捨五入で一五三。美香より、一〇センチも低いのか」
「……だね……」
 美香は何とも言えないトーンで返事する。もっとも、幼一としては二人の身長差が一〇センチあるという認識を共有できたことに悦びを感じていた。
「あ、あのさ、美香、お願いがあるんだけど……」
 幼一はもう一度壁際に背をつけて言った。
「どしたの? もう一度測り直すの? でも私よりは高くならないかもよ」
 美香は冗談っぽく言ってみる。そんな台詞が妹から出るとは思わず、幼一は嬉しくなる。彼の気持ちを勢いづける。
「あのね、ここ殴ってくれる?」
 寝間着代わりのトレーナー姿の幼一は自分の腹を指す。
「殴るの?」
 美香はたいして疑問にも思わず、拳を握るとそれを軽く兄の腹に当てた。
「いや、もっと強く」
「これくらい?」
「ま、まだ……」
「え? じゃあ、こう?」
 美香は軽くステップを取って兄の腹を殴ってみる。
「ま、まだ……大丈夫……」
「えええーっ、痛いよお」
「大丈夫だから」
「じゃあ、いくよ、いい?」
 美香はハイソックスの脚を前後に開くと、下からの拳を兄の腹へ強めに突いた。
―――ううっ……
「ほらっ、痛いって」
 美香が心配そうに幼一の顔を下からのぞき込む。
「だ、大丈夫。もう一回」
「駄目だってえ、痛いよお」
 美香は心配そうな顔をして言った。
「大丈夫だって。お願い、美香、ちゃん……」
 兄にちゃんづけで呼ばれたのは初めてだったから、美香は妙な気分になった。そんなにして欲しいのならもう少しつきあってあげようかと思った。
「じゃ、じゃあ、いくよ。ホントにいいの? 強く突いて」
 空手を習っている妹は、脚をもう一度前後に開き、下突きに構えながら言う。
「う、うん、お願い……」
「そいやっ」
―――ううううっ……
 予想以上に強烈なボディパンチを受け、幼一の体は壁からずり落ちる。
「ああっ……ご、ごめん、大丈夫? お兄ちゃん」
「謝らなくていい、いいよ、美香ちゃん、それくらい強くて。も、もう少しやって……」
「駄目だよもう。それに、変だよお兄ちゃん、こんなの」
「お願い、美香ちゃん、宿題手伝ってあげるから……」
「え、ホント?」
 美香の反応を見て、幼一は嬉しくなった。よほど宿題が重荷らしい。幼一にしてみれば小学生の宿題などお安い御用だ。
「うん、ホント。約束する」
 しゃがみ込んだ幼一はミニスカートからちらりと覗く白いショーツを見て、ドキリとした。思わず妹に女性を感じてしまう。
「じゃあ、立って。お兄ちゃん」
「う、うん……」
 大柄の妹にそう言われると、今度は少し怖くなってきた。
「いくわよ」
 思ったより強いパンチに幼一は驚く。
―――ううううううっ……
「そらっ、そらっ……」
 かまわず美香は兄の腹を連打した。
「もっとやって、美香ちゃん、お兄ちゃんがいいと言うまで止めないで。お兄ちゃんを殴り続けて」
 幼一は息を荒くし、すがるような目で長身の妹を見上げる。
「いいの? ホントに?」
「うん、残りの宿題。お兄ちゃんが全部やってあげる」
「そう、それなら……」
 美香はミニスカートのポケットからゴムバンドを取り出して、セミロングの髪を後ろで留める。
「いくよ、お兄ちゃん」
 左手で兄の肩を押さえて、右の下突きを構える。
「そらっ、そらっ、それっ、そらっ…………」
 結んだ髪を揺らしながら、妹は兄の腹を突きまくる。
―――ううっ、あうっ、うわっ、うぐうっ……あああ……
 幼一は、目の前の妹を先日見た女性ボクサーに重ねる。
「み、美香ちゃん、あああっ、す、凄いっ……あああああああ……ううう……」
 幼一はたまらずその場にしゃがみ込む。
「だ、大丈夫? お兄ちゃん……」
 思わず興奮して打ちまくった美香が、我に返って心配そうにする。
「あ、うん……平気、ありがとう……」
 パンツを汚してしまった幼一はそろそろと起き上がるとトイレに駆け込んだ。
―――わっ、駄目だ。こんなに汚しちゃった……
 幼一は風呂場横の脱衣場でズボンを脱ぎ、パンツも下ろす。
「お兄ちゃん、ヤダ、何してんの?」
 様子を見にきた妹が言う。
「だ、駄目だよ、美香、ちゃん」
 下半身を裸にした兄は赤面して股間を両手で押さえる。急いでパンツをはこうとして、脱衣場に着替えのストックがないことに気づく。
「ないの? パンツ?」
 美香がいたずらっぽい目をして言う。
「……あ、うん……」
「とってきてあげようか?」
 美香はテラスに干してあった兄のブリーフをとって、脱衣場に戻る。
「はい」
「あ、ありがと……」
 兄がブリーフを受け取ろうとすると、美香はそれをすばやく引っ込めて後ろ手に隠した。
「あ、あああ……美香ちゃん、駄目だって……」
「どうして、パンツ履き替えてんの? お兄ちゃん」
 美香は笑みを見せながら言う。
「ちょ、ちょっと汚れちゃったから……」
「どうして、汚れちゃったの?」
 美香のクラスでは女子だけの性教育の授業があって以降、休み時間など女の子同士その話題で持ちきりだった。
「……いや、その……」
「ちゃんといわなきゃ、パンツあげないよ」
 美香は人差し指でブリーフをくるくると回してみせる。
「わ、わかった……その……さっき、美香、ちゃんに殴られたときに……」
「へえええっ……そんなんで、あれ出ちゃうんだ……へえんなのっ」
 美香は幼一にブリーフを投げつけるとリビングに戻った。

「お腹、ホントに大丈夫? お兄ちゃん」
 リビングに戻ってきた幼一を美香は心配そうに見る。ヘアバンドを外して、首を振るとセミロングの美しい髪がふわりと広がった。
「うん、平気、平気」
 ずきずきと痛む腹に悦びを感じながら、幼一は微笑む。
「なら、いいけど……」
「また、やってくれる?」
「いいよ、お兄ちゃんがいいなら」
「あ、あと……美香ちゃん、もうひとつお願い」幼一は手を着けてない自分のクッキーを妹の方に押し渡しながら言う。「お兄ちゃんのことこれから、お兄ちゃんって呼ばないでくれる?」
「ふふっ、じゃあなんて呼ぶの」
「幼一、でいいよ。二人きりのときは」
「え? 美香のことは?」
「それは必ず美香ちゃんって呼ぶから。もし呼び捨てなんてしたら、叱って」
「殴っちゃっていいの? さっきみたく」
 そう言って兄からもらったクッキーを口に運ぶ。

S女小説「妹の玩具に堕ちるまで」