陽子の強打が、中年練習生を襲う。
ボクシングジム受講料免除の代わりに、女子ボクサーのスパーリングパートナーを引き受けたのが、間違いだった。
男は後悔したが時すでに遅しだった。
女性のパンチがそんなに軽いはずがなかった。
「これでも相当手加減してるつもりなんだけど……」
陽子は、涼しい顔をしてそういうが、これまで病院送りになった男性メンバーは後を立たない。
「も、もう勘弁してください……許して下さい……」
陽子はそんな男の泣き言が聞こえないふりをして、冷徹に男の顔面やボディに、ハードなパンチを繰り出す。
鍛え上げられた強靱な肉体は、どれだけ男を殴り続けても疲れや衰えをまったく感じさせない。
何よりも、彼女は、図体だけがむやみにでかい男を殴り倒すのが大好きなのだ。
まるで、象を狙ってライフルを構えるハンターのように。