小説出版

S女小説「ハイスクールドミナ」

女性上位小説「ハイスクールドミナ」を電子書籍として出版しました。

School

内容紹介

リストラで私立女子高に転任してきた男性教師、忠(ただし)。そのミッション系女子高は、理事長、校長はじめ、女系一族が支配する女尊男卑的な学校で、彼の上司には校長の娘、彼が受け持つクラスには理事長の娘がいた。
大柄でサディスティックな女性たちが貧弱な中年男を虐待・陵辱するストーリー。

第一章 女子高就任
第二章 羞恥カラオケ
第三章 バレーボール虐め
第四章 性教育をもう一度
第五章 黒革とセーラー服
第六章 ブーツ登校
第七章 性奴隷教室

本文サンプル

第一章 女子高就任

☆ 一

「失礼します」
関根忠は、緊張の面持ちで理事長室の扉を開く。理事長の須藤真紀子が執務机を立ち応接ソファへ向かう。
「どうぞ」
自分の前に座るよう関根忠に促す。二人は四〇歳の同い年だ。忠はそう聞いている。須藤真紀子はモスグリーンのスーツを上品に着こなした美人で、年齢よりいくぶん若く見えた。
「下内さんのご親戚なんですって?」
「あ、はい、いとこになります」
関根忠のいとこの下内孝夫は、このミッション系女子高に先代から出入りする製靴業者だ。関根忠は、彼の口利きで、この職場を紹介された。
「いまお勤めの学校は規模を縮小で?」と理事長の須藤真紀子がきく。
「はい……生徒の減少で、これまでの三分の二ほどに。教職員も数を減らされることになり……」
関根忠も須藤真紀子もはっきり口には出さないけれど、要はリストラである。春までに解雇されることがほぼ確定的だったので、年明け早々、転職活動を始め、親戚の紹介で運良く面接へとこぎつけた。
「ちょうど、数学の先生を補充しようっていってたところだったから」
「あ、ありがとうございます」
「まずは、非常勤からだけど、問題ないかしら?」
待遇に不安はあったが、独り身だし、なんとかなるだろうと忠は考えた。それよりも、このまま雇ってもらえそうなことがありがたかった。
「は、はい……」
「もちろん、状況に応じて、常勤への道も考えますから……」
「はい……頑張らせていただきます……」
同い年の女性に少々恥ずかしいセリフだったが、忠はやる気を見せておくことが大切だと思った。
「女子高赴任は初めて?」
「あ、はい……ですね」
「良くも悪くも女の学校だけど、その辺は少しずつ合わせていってね」
「はい、承知しました……」
「じゃあ、どうぞよろしく」
そういって、真紀子は忠に手をさしのべた。
「ありがとうございます」
その握手に両手で応えながら、まさしく幸福の女神からさしのべられた手だと、忠は思った。

その年の春から予定通り、関根忠は数学担当の新任教師として女子高に勤務し始めた。
その直前に彼は理事長室に呼ばれ校長を紹介されていた。木戸洋子と名乗った、理事長の須藤真紀子にうり二つの女性校長は、彼女の姉であるらしかった。婿養子をもらった真紀子が須藤家の名を継いでいるため、彼女に理事長の椅子を譲っているとのことだった。また、校長の木戸洋子には娘がいて、忠は彼女の下で働くことになりそうだった。

「四組担任の木戸です。どうぞよろしく」
忠が就任早々、職員室で隣の席の木戸朝香が彼に声を掛けてきた。母親似で、須藤家の血筋を引いた長身美形である。若干二七歳だが学年主任で四組の担任だ。四組副担任に任命された関根忠の直属上司に当たる。忠にとっては一回り以上年下の上司になるが、校長の木戸洋子の娘ということであれば、納得せざるを得ない人事であった。まさしくこの女子高は、須藤家の女性のために作られているような学校だった。

半年間は何事もなく過ぎていった。いや、むしろ忠にとっては、大勢の美女に囲まれた、バラ色のような職場生活といってもよかった。最初の夏が終わるまでは……。

☆ 二

「先生、ちょっといいですか?」
四時限目が終わった直後、関根忠が立つ教壇へ、中央後方の席の川北真希がノートを持ってくる。
「うん、どうぞ」
「ここのところなんですけど」と真希は忠の横にくっついてきて丁寧に書かれた数式を指さす。艶やかな髪から漂ってくる香りが、彼の心持ちをやや乱す。大きな胸の膨らみがセーラー服の上からでもわかる。
「はい……」
「これって、等差数列じゃないですか……」
「うん、だね」
「じゃあ、これもそうじゃないんですか?」といって真希はページをめくり、別の式を示す。
「ああ、えっと……これは似てるけど、違うよ……授業のなかでもちょっといったけど……どうしてかっていうとね……」
忠は少し緊張しながら、横顔も美しい教え子に説明を始める。振り返って黒板の方を向き、余白のところにチョークで書いていく。彼は黒板や掲示板に校内美女の順位付けが落書きされているのを何度か見かけたことがあるが、いつもその中に彼女の、川北真希の名前を見つけた。

「ああなるほど、そっか、そういうことですね。よくわかりました。ありがとうございます」
忠が時間を掛けて丁寧に説明したお礼として、真希は彼に癒やしの笑みを与え、席へ戻っていった。忠は腕の時計を見る。昼休みが十分ほど過ぎていた。クラスのうち、半数くらいは食堂や売店に行き、残りは弁当を広げている。忠が副担任を務めるこの二年四組は、スポーツ推薦で大学進学を目指す女生徒二十名の精鋭クラスだ。皆運動能力に優れ、身長も高い。さきほどの川北真希を含め、忠が見上げなければならない女子生徒がほとんどだ。
「先生、私にも教えてよ」
黒板を消して、教卓に広げた教科書やプリントを揃える忠に、売店から昼食を携えて戻ってきた須藤美咲が声を掛ける。クラスで一番背が高い彼女は、教壇に立った忠よりもまだ高い。
「あ、ああ……また今度」
またいつものちょっかいだ。美咲は忠が困るのを承知で、質問などする気もないのにわざとそんなことをいう。かといって彼女を叱ったりはできない。なぜなら須藤美咲はこの女子高の理事長である須藤真紀子の娘だからだ。そもそもこの四組自体が、彼女のために新設されたクラスらしい。
「今度ね。絶対だよ、忠君
そういいながら、美咲は笑って教壇の前を通過する。昼食中の女生徒たちからもクスクスと笑い声が漏れる。美咲は教壇右前の自席に座ると昼食を開けながら気弱な男性教師を切れ長の涼しい目で、面白げに観察している。忠は彼女のからかいに対して何の言葉を返すこともできず、顔を赤らめ、そそくさと教室を出て行く。

☆ 三

日曜日の朝、目が覚め、枕元の時計が十時を指しているのを見て、忠はゆっくりとベッドから起き上がる。隣のダイニングキッチンへ移動し、コーヒーを沸かす。今年で四十歳になる忠だが、結婚はもちろん恋人もおらず、繁華街から四キロほど南下した街の2DKにひとりで住んでいる。非常勤勤務になって、学校から近く家賃の安いこの部屋に引っ越した。
湯気の立つマグカップを持ってテレビの部屋へ行き、ローソファに腰掛け、リモコンを握って電源を入れる。ニュースキャスターが現れ、高校教師がネットで知り合った女子中学生に淫行を働いた事件を伝える。忠はこの手の報道を耳にする度、複雑な思いに駆られる。
もし男性にロリータ趣味などの性癖があるならば、絶対に教師になるものではないと思う。それは我慢し続ける人生か、犯罪者かのどちらかになる可能性が高いからだ。そして、教師の道を選んだ忠は教えることへの情熱は純粋に持っているつもりだったが、果たして教職が本当に自分に適した選択だったのか今ひとつ確信がなかった。
コーヒーを飲み干し、立ち上がって窓のカーテンを開ける。澄み切った青空がまぶしい。ベランダに出てみるとグラウンドを併設した下の公園にバットやグローブを持った子供たちが自転車で乗り付けてきている。穏やかな日差しとひんやりとした風が心地よい。忠も買ったばかりのマウンテンバイクで街に出かけることにした。繁華街まで走り、本屋にでもいってみようと思った。

「先生」
書店から出てきた忠は、背中からの声に足を止められ振り向く。
「あっ」
立っていたのは須藤美咲だった。
「やっぱ忠君だ。本屋の中で見かけてさ、そうじゃないかと思ったんだよ」
白いセーターの上にミリタリージャケットを羽織った彼女は、セーラー服よりずいぶん大人びて見えた。うっすらと化粧をしていて、唇も学校で見るよりほんのり赤い。
「ああ、須藤君、偶然だね」
「うん……ね、これからどうすんの?」
「いや、別に……」
喫茶店に入って、買った本でも読もうかと思っていた忠は突然美咲にそのように言われて返答に困った。
「お茶しようよ、私も暇だし」
「須藤君、それはまずいかも……」
誰に見られているかわからない、と思った。
「大丈夫だって。私がいこうっていってんだから」
美咲のその言葉には、「ばれても大丈夫」と「あなたに断る権利はない」という二つの意味が含まれているように忠には聞こえた。いずれも彼女が理事長の娘だからだった。会社でいうならば、社長の娘だ。
「こっち」
美咲は勝手に歩き出す。ついていくより他はなさそうだった。
「あ、須藤君、僕、自転車……」
そういって忠は駐輪場の方へ行く。
フレアスカートに編み上げのハーフブーツを履いた美咲は、忠が鍵を外すのを待っている。
「かわいいの乗ってんじゃん。自転車手当で買ったの?」
どうして彼女が知っているのか分からなかったが、この学校では、通勤自転車の購入に手当が付いていた。なんだか、忠は彼女にお礼でも言わなければならないような気持ちにさせられた。私立高校の雇われ教師にとって理事長の娘というのはそれほど大きな存在だった。
「あ、はい、まあ……」
忠は照れくさそうに自転車を押す。その横を長身の美咲がブーツのヒール音をカツカツと歩道に響かせながら歩く。学校の誰かに目撃されるのではないかと気が気でなかった。妙な噂はやはり立てられたくない。

商店街に入る手前で、美咲が「この中だから、自転車そこに止めな」という。忠は言われたとおりに道脇の駐輪スペースにブルーの愛車をワイヤーロックする。
商店街を十メートルほどいって、階段を上がった二階にその喫茶店はあった。一番奥の窓際の席から、二人客が立ち上がったので、入れ違いに美咲が座る。忠も向かいに腰掛ける。若い女性のウェイトレスが、手早くテーブルを片付けて、水を持ってくる。
「私、ホット。忠君は?」
「あ、僕はミルクティ、ホットでお願いします」
「まったかわいいの飲むじゃん……あ、でも、もうお昼だね」
忠が腕時計を見ると十二時前を差していた。
「ですね」
「サンドウィッチかなんか頼もうか」
美咲はまるで自分がおごるとでもいうような口ぶりだった。
「ああ、うん、おまかせします……」
飲み物を運んできたウェイトレスに美咲は追加注文をする。

「朝一で美容院いってきたの。悪くないでしょ」
美咲は忠の視線に気づいてそういった。
「うん、似合ってます」と副担任は思ったままにいう。肩にややあたるほど伸ばしたブラウン系の髪には、ランダムに跳ねるようなパーマがあてられていた。それまでパーマも髪染めも禁止だった女子高だが彼女が入学すると同時に軽めのものであれば解禁になった。こうしてみると須藤美咲も川北真希に劣らぬほどの美形だった。川北真希がいかにも女性らしい柔和な美女だとしたら須藤美咲は鼻筋がすっと通った凜々しい美女だった。そういえば、彼女の名前も校内の美女番付でよく見かけた。
「ねえ、本屋さんで何の本買ったの?」
忠は少し狼狽うろたえながら、「数学の研究書と雑誌とか科学系の……」。
「それと?」
美咲の意味ありげな微笑みを見て、忠はハッとした。
「忠君ってもうエッチなんだから。ヤらしい本買ったでしょ」
「須藤君、何を……」
「見たんだよ、アタシ。忠君がオトナ系の本のところにいたの」
そこまで言われると何か反応せざるを得なかったが、「いや……」としか言葉が出なかった。
「見せてよ」
「いや、困るよ……」
「いいの? ちゃんと証拠写真も撮ってんだよ」
美咲は携帯電話を取りだして写真を表示させると忠の方に向けた。そこには成人本コーナーで物色する彼の姿が映っていた。
「あっ」
「クラスのみんなに見せちゃおうかな。忠君は変態教師だからみんなも気をつけるようにって」
「わ、わかった……でも、ここじゃまずいよ」
「じゃあ、外に出よ」
美咲はどうしてもそれを見ないと気が済まないようだった。二人はウェイトレスが持ってきたサンドウィッチをつまみ終えると喫茶店をあとにした。

「さあ、見せてごらん」
公園のベンチに座った美咲がハーフブーツの脚を組んでいう。忠は仕方なくその隣に腰掛け、カバンから本の包みを取り出し、なかの参考書と小説をカバンにしまう。成人本だけが入った包みを美咲に渡す。見られてとても恥ずかしい中身だが、なぜだか、むしろこんなものを彼女に見られたいという気持ちも起こった。
「どれどれ……エロい女子校生大特集? ……」
女子高生をテーマにした成人本のタイトルを読み上げる。
「エロい女子校生って……エロいのはアンタでしょ」
鼻で笑ってビニールを外し中を開く。制服をはだけたり、胸を見せたり、全裸になった女子高生の写真が次々と現れ、男子生徒や男性教師とセックスに励んでいる。
「ふうん、アナタ、アタシたちをこんな目で見てたわけね、いつも」
「……」
忠は言い訳のしようがなかった。美咲は、同じく女子高生をテーマとした写真本とコミックを取り出して眺める。
「全部女子高生? 三冊も買っちゃって……性癖確定だね。女子高生とこんなことしたくて、教師になったんだ、アンタ」
「いや……、その、須藤君、……お願いだから、このことは誰にも……」
忠は狼狽えてそういった。
「その須藤君てのヤだな。美咲さんって呼んでよ」
反応を確かめるような笑みを投げる。
「み……美咲さん……、もう返してください」
「これも証拠写真とっとこうかな……この本持ってさ、こっち向きな」
「えっ」
「私のいうことが聞けないの?」
美咲は冗談っぽくいったが、忠は彼女の意のままに従いたい気持ちにもなった。三冊の成人本を胸の前にかざしたところを、美咲が携帯写真にパシャリと収める。
「重ねすぎたらよくわかんないでしょ。もうちょっと広げて」
「はい」
こんな写真をクラスの生徒に拡散されたら完全にアウトだ。忠はそう思いながらも、美咲がシャッターを切る度にしびれるような快感がこみ上げてくるのを感じた。
「それとひとつ聞くけどさ、アンタ真希のこと好きでしょ。川北真希」
「いや、別に……」
「何、あの質問されてるときの、だらしない顔は……顔に、私は真希さんのことが大好きですって書いてあるわよ」
「そんなことないです」
「真希のパンティが欲しいって思ってんじゃないの? その本の漫画みたいに」
「そんなの見つかったら、とんでもないことに……」
「何それ、見つかんなかったら、やりたいってこと?」
「いや、そういう意味じゃ……」
「やれば? 協力してあげようか? 真希、剣道の朝練でいつも脱いでるよ下着」
忠のクラスの生徒は全員が運動部のエリートである。美咲はバレーボール部、真希は剣道部に所属していた。

ようやく美咲に解放してもらい、自宅に戻った忠は、掃除や洗濯を済ませ、作り置きのカレーを食して、風呂を沸かし、湯船の中で今日一日の出来事を振り返る。
(あんな写真を撮らせてしまったのは、やはりまずかったかな。最初の写真は仕方ないとしても、エロ雑誌を手に持ったショットは誰かに見られたら大変なことになるぞ。見られるだけじゃなくて、それがよその手に渡ってネットにでも公開されたら……)
忠は恐ろしくなってそれ以上、そのことについて考えるのを止めた。何にしろ、もう美咲には逆らえない。もともといわれるままだったが、今日で立場は決定的になった。それでも、風呂を出た忠は、冷蔵庫から缶ビールを出して、ソファの部屋へ行き、今日買ってきたばかりの成人本を楽しむ。そして興奮状態に至った彼は、校内スナップから拝借し川北真希の顔や全身写真を集め拡大した手作りのアルバムから、お気に入りのページを開き、いつものように禁断の行為にふける。

シャワーを浴び、洗い物をして、部屋に戻ってくると携帯電話にメッセージが入っていた。今日連絡先を交換したばかりの須藤美咲からだった。
(明朝七時半 バレー部室にきて)

☆ 四

翌日、忠が美咲の指示通り、バレー部室前に来るとすでにバレーボールのユニフォームを着た美咲が待っていた。
「本当に来たわね……いこっか」
美咲はそういうと近くの柔剣道場の方へ歩いて行く。忠も後を追う。剣道部員たちの激しい気合い声が聞こえてくる。美咲はそうっと剣道部室を開け、誰もいないのを確認すると「向こうから二番目が真希のだよ」といってロッカーを指さす。
「美咲さん……」
忠は困惑の目で須藤美咲を見上げる。
「何やってんの、早くしないとみんな戻ってきちゃうよ」
美咲が忠の背中を押した。
「あっ」
忠は剣道部室によろよろと足を踏み入れると、そのまま歩を進めて川北真希のネームプレートがついたロッカーの前に立つ。ロッカーといっても、大きなむき出しの棚が並ぶ簡単なつくりだ。男子生徒がいないので警戒が薄いのかもしれない。籠の中に白いブラジャーとパンティがセーラー服と一緒に無造作に置かれている。忠は戸口に立つ美咲の方をもう一度見る。
「早くやんないと、誰かくるよっ」
美咲の声に意を決したようにして、忠はブラジャーとパンティをつかみ背広のポケットに入れる。急いで部室を出るとすでに美咲は姿を消していた。忠は部室の扉を閉めると、そのまま早足で職員室の方へ戻っていった。
「おはようございます」
周囲の職員に挨拶し、何食わぬ顔で自席に戻る。大型の書類封筒を一枚携えてトイレに行き、扉を閉め、ポケットから真希のブラジャーを取り出し嗅いでみる。まだほのかに温かさが残っているような気がする。かすかに甘酸っぱい汗の臭いを感じる。それをなるべく平になるようにして封筒にしまうと今度は右のポケットからパンティを取り出す。女性の秘部が触れるところを顔を近づけてよく見る。ほんのりと色が違う部分は、確かに真希の痕跡だ。忠は罪悪感を感じながらもそこに鼻を当てて息をする。ブラジャーよりも遥かに濃厚な香りが脳髄をついてくる。ビニール袋も持ってくるべきだったと忠は後悔した。この匂いは永久に封印しなくてはならない。彼は名残惜しそうにパンティもなるべく平になるようにして封筒にしまうと、足でレバーを踏んで、水の音を立ててトイレを出る。職員室に戻りその大切な封筒をカバンの中にしまうと、ようやく平静を取り戻して、一時間目の準備を始めた。

剣道部室には、困惑の川北真希がいた。
(え、どうして? ……ない……)

とりあえず、下着を着けず、セーラー服を着る。八時のチャイムが聞こえる中、最後にひとり部室を出ようとしたところを同じクラスの美咲に呼び止められる。
「ねえ、何にもなかった?」
「えっ?」
「さっき男の人が出ていくの見かけたんだけど」
「ええっ?」
「どした? 何か盗まれた?」
「それが……」

☆ 五

昼休み、美咲は真希を連れだって、職員室の木戸朝香を訪ねた。クラス担任で国語を担当。美咲が所属しているバレーボール部の顧問でもある。母親同士が姉妹なので二人はいとこになる。しかし、美咲は学校内、特に第三者がいる場面では、他の教師と同じように朝香に接していた。
「先生、ちょっとお話しが……」
「うん、どうした?」
「あの……ちょっと……外でいいですか?」
「あ、そう……わかった。少し待ってて」
美咲たちが職員室外の廊下で待っていると、ほどなく木戸朝香が出てきた。白いシャツに濃紺のスーツというオーソドックスなコーディネートながら、メリハリの利いたプロポーションと美貌が彼女の魅力を際立たせた。二十七歳の女性教師は、二人の教え子の目にも眩く映った。朝香は、彼女たちを職員室隣の応接室に案内した。
「何、いったい?」
木戸朝香は、テーブルを挟んだソファに二人を座らせると自分も向かいに腰掛けた。
「あの、実は今朝……」

「そう……」
二人からすべてを聞いた木戸朝香は腕組みをしてしばらく目を閉じた。そして目を開くと、「このことを知ってるのはあなたたちだけ?」と二人の目を交互にしっかりと見据えていった。
「え、ええ……」
美咲が返事をし、真希もこっくりとうなずく。
「この件はともかく、私が責任を持って預かるわ。だから……他には誰にもいわないでおいてくれる? とりあえず」
「は、はい……」
「安心して、悪いようにはしないから……」

☆ 六

「じゃあ、お先に失礼します」
帰り支度を済ませた忠が挨拶をして、去ろうとした瞬間、隣の席の木戸朝香は、自分の書類に目をやったまま、「関根先生、ちょっと」とキッパリとした口調でいった。もう、午後九時を回っており、職員室に残っているのは二人きりだった。
「あ、はい……」
「お聞きしたいことがあるんですけど」
忠の方を向き、驚いた彼の顔をしっかりと見据えていう。
「え、ええ……」
「座ってください」
木戸朝香の有無を言わせぬ口調に彼は従った。
「川北真希、剣道部の。彼女の下着が、朝練の最中に盗まれたらしいんです」
「えっ……ほ、本当ですか?」
忠は泳いだ目で芝居をする。
「知らないですか?」
「はい……」
「本当に?」
「ええ……」
「じゃあ、いいますけど……朝、事件があった時間帯に、剣道部の部室からあなたが出ていくのを見たという生徒がいるんです」
「……」
心臓が早鐘を打つ。まさか、誰かに見られているとは思わなかった。
「心当たり、ありますよね?」
忠は首をうなだれ、床を見つめ、言葉を失う。
「返してもらえますか、彼女の、川北真希の下着、ブラジャーとショーツ」
「いえ……あの……」
忠はパニックに陥った。何をどうしていいのかまったく分からなくなった。
「失礼しますよ」
そういって、朝香は忠の脇に置いたあったカバンを手に取り、自分の膝の上に載せる。
「ああっ、木戸先生……」
忠の声を無視して、朝香はカバンのファスナーを開ける。たとえとっくみあいになったとしても、朝香は目の前の貧弱な男性教師に負ける気はしなかった。そしてそれは忠にしても同じだった。若く大柄な彼女に刃向かったとしてもきっと惨めに取り押さえられるだろう。そう思った。それらしき封筒を中から朝香が取りだした瞬間、忠は、椅子から降りて、彼女の足元にひれ伏した。頭で考えたのではなく、体が突発的にそう動いた。
「ごめんなさい、申し訳ありません」
その声を聞きながらも、朝香は封筒を開いて中を見る。確かに女性物の下着が入っている。
「どうして?」
朝香にそう言われ、忠はよほど美咲のことを話そうかと思ったが、それはかえって問題を複雑にすると思ってためらった。しかしそうなるといいわけが一切できなくなる状況に陥った。
「魔が差しました……」
そういうしかなかった。
「教え子の、しかも受け持ちのクラスの女子生徒の下着を盗むなんて最低じゃない?」
「は、はい……すみません、木戸先生どうか……」
忠は一回り年下の女性教師に頭を下げた。床に手をついて。もはやメンツにこだわっている場合ではない。彼の首はいまや目の前の長身美女にかかっていた。

☆ 七

翌日、土曜日の朝九時、忠は朝香の言いつけ通りに登校した。
「お、おはようございます」
昨日以来、朝香のことが一回り大きな存在に見える。
「反省文、書いてきてくれました?」
二人の他、周囲に誰もいないせいか、朝香は職員室で遠慮なく、怖い上司のたたずまいをみせている。
「は、はい……」
どうにか穏便な処理をと願い出た忠に朝香は反省文を書いてくることを命じた。確実な証拠を取っておきたかったのだ。忠としてももはや駆け引きをする余裕などなく、素直に応じた。朝香は反省文を受け取って内容と手書きの署名、捺印を確かめると例の下着が入った封筒と併せ持ち、席を立つ。
「じゃあ、行きましょうか」
朝香は忠を連れて隣の応接室に入った。
「あっ」
思わず忠は声を上げる。応接室のソファには須藤美咲と川北真希が座っていた。美咲は平然としていたが真希はやや緊張した様子だ。忠は訴えかけるような目で美咲を見たが、彼女は揺らぐことのない強い目力で跳ね返した。男性教師は唾を飲み込んでうつむく。
「須藤さんが犯人を目撃したの。だから彼女も一緒に来てもらいました」
「川北さん、こっちきて」
朝香は忠が立っている前に真希を呼ぶ。そして忠に例の封筒を渡す。
「関根先生から直接返してあげてください」
「は、はい……」
「川北さん、ごめんなさい、本当に申し訳ない……」
そういって忠は真希に下着が入った封筒を渡した。
「はい……」
彼女は悲しげな目で忠を見てそれを受け取ると中身を確かめた。
「間違いない?」
朝香が訊く。
「はい……確かに私のです」
真希はほっとしつつも困惑するような表情を見せた。
「そう……で、ここからが、本題なんだけど、これが公になったら、もう彼は教師続けられなくなると思うのね……だから彼が本当に反省の色を見せるんだったら、今回に限り執行猶予を与えてあげてもいいんじゃないかって思ってるんだけど、どうかしら川北さん……」
「………………はい、私は……」
少し考えて真希は肯定の返事をした。尊敬する朝香の言葉だったし、忠が下着を盗んだのは自分に気があっての行為かもしれないとも考えた。
「川北さんは、いいっていってるけど、どうする? もうちょっとしっかり謝った方がいいんじゃない?」
朝香はそういうと美咲の向かいのソファに腰掛けた。
忠は朝香がいった「しっかり」という言葉をくみ取り、スリッパを脇に脱いで、教え子の足元に跪く。
「あ、先生……」
真希は膝を折りかけて、ソファの方を見たが、二人が冷静な顔で見ていたので、元通りに立って副担任の大仰な謝罪を受けることにした。
「川北さん、こ……この度は本当に申し訳ございませんでした。もう二度とこのようなことはしないと誓いますので、どうか今回だけはお見逃しくださいませ……」
川北真希の上靴を目の前にしながらそういうと、忠の胸に熱いものが込み上げてきた。教え子にしかも彼女に土下座をする……それは羞恥と興奮が入り交じった不思議な心持ちだった。真希はソファの二人を再び見た。何かいった方が良さそうだったので思うがままに口を開いた。
「先生、分かりました。今回だけは許します……だけど、もうあんな変なこと二度としないでくださいね」

S女小説「ハイスクールドミナ」(Kindle本)