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S女小説 私刑島「地獄の女看守たち」


S女小説 私刑島「地獄の女看守たち」を電子書籍として出版しました。

内容紹介

女性が支配する秘密の監獄島で、性犯罪の前科を持つ男たちを待ち受ける過酷な日々の物語

私立女子高教師、羽田洋哉(40)は、痴漢の罪を着せられ懲戒解雇されてしまう。訪れた職業安定所で偶然会った元同僚の大島冴子(27)と夕食を共にし、彼女が知人から借りているというクルーザーへ誘われる。そこで振る舞われたワインを飲んだ洋哉は強烈な睡魔に襲われた。目が覚めた彼の目の前に立っていたのは、厳めしい看守服に身を包んだ冴子だった。船はやがて孤島に上陸し、洋哉は女性が支配する私営の刑務所に問答無用で投獄される。待っていたのは、ひたすら婦人靴を修理する刑務作業と狭い囚人房の日々だった。やがて別の工房に異動となるが、そこの担当看守はなんと、皮革メーカーに就職したはずの元担任クラスの教え子、榊綾香(19)だった。このときはまだ、のちに彼女が自分の運命を握る女性になるとは、夢にも思わない洋哉だった。

第一章 島に流された痴漢教師

第二章 凶暴淫虐な女看守たち

第三章 尻に刻まれた忠誠の証

第四章 非道なペニバンレイプ

第五章 アイドルたちの裏の顔

第六章 完全服従か刑場の露か

本文サンプル

プロローグ

「ふう……」
 羽田洋哉ひろやは、ひとつ大きなため息をつくと職員室を出た。校庭が見渡せるベンチに腰掛ける。五月に入って一気に増えた緑が夕陽に輝いている。右手の花壇にはナスやトマトの花がそよ風に揺れている。
 真愛女子高に勤めて二十年近くなるが、いまだ母姉参観には慣れない。新任当初にモンスターマザーから激しいクレームを受けたことがトラウマになっているのだ。前の夜は不安のあまりほとんど寝ていないし、当日も緊張で終日気持ちが張り詰めている。それがようやく終わって落ち着いたところであった。でき映えはどうであれ、無事に完了できたのがなによりだった。
「よう」先輩教諭の安達あだちが寄ってきた。「どうした。くたびれ果てた顔して」小太りの体を揺らして言う。
「あ、え、いえ……」
「もう終わりだろ? どうだ、久々に一杯」

「何がモンスターマザーだ。そんなの一発ぶっこんでやりゃいいのよ」
 安達はジョッキのビールを一気に飲み干して、さっそく二杯目を注文した。
「そんな……いくらなんでも……」洋哉は苦笑いをする。「先輩、本当にしたことあるんですか。そんなこと」興味本位で聞いてみた。
「あるよ」安達はにやりと笑った。「詳しく聞かせてやろうか?」
「いや、いいです……結構です……」
 洋哉は慌てて断った。深入りする相手ではない。妙なとばっちりを受けてはたまらない。
「なんだよ、羽田。俺とつるんでたら出世に影響するってか?」
「いえ……そんなことはないですけど……そういえば、安達さん、管理職試験、受けないんですか?」
「興味ねえからな」安達は無精髭をさすりながら言った。「めんどくせえし、俺は万年平教師で十分だよ。そのほうが気が楽だ。性に合ってるよ」
「ま、まあそれは確かに……そうかもしれないですね……」
 口に出しては言えないが、この先輩が責任のある役職について訓示をしている姿など、正直、想像できない。
「だろ」安達はお代わりのジョッキを受け取って三分の一ほどを一気にあおる。「あんなのはなあ、あちこちにへえこらするのが得意なヤツらにやらしときゃいいのよ。うちの教頭やら校長見てたら分かるだろ」

 事件が起こったのはそれから三ヶ月後の夏休みだった。職員室のテレビに全職員が釘付けになった。
『逮捕されたのは、高校教諭の安達宗男、五十六歳。強制性交等罪の容疑です。被害者は、同校を卒業した女生徒……』
 女性アナウンサーが険しい顔でニュースを読んでいる。
「強制性交等罪って……」
 洋哉がつぶやくと、ベテランの女性教師が洋哉の肩に手を掛けた。
「昔で言う強姦罪よ。被害者の対象が男女になって名前も変わったんだよ」
 驚きはしたが、安達ならやりかねないとも思った。
「なんてことを……それにしても誰が……」
 よりによって卒業生をとは。だが犠牲者については、生徒のプライバシーを守るため、一切、話題に上げたり詮索しないよう校長から通達が出て、皆それに従った。

 当の安達は当然のごとく懲戒解雇となり、学校は女生徒たちの動揺を抑えるべく、カウンセリングや警備の強化、男性教諭へのモラル研修、女性教諭の割合を増やすなどさまざまな方策を施した。

 それから三年後。
 三年生を担任している洋哉は進路面談を行っていた。
「今の調子で頑張ればきっと大丈夫だから。自信持って……じゃ、次、さかきを呼んできて」
 洋哉は面談を終えた丸顔の女生徒に告げた。
「失礼します」
 相談室へ入ってきた榊綾香あやかが、向かいに着席する。二重まぶたの美少女は微笑み、軽く頭を下げる。開けた窓から入ってくる心地良い秋風が、胸元まである栗色の柔らかそうな髪の毛を揺らしている。
「あ……えっと榊の第一志望は、《東条レザー》って、これは……」
「はい。革製品の加工をする会社です」
 洋哉にしてみれば、榊綾香の志望で初めて知った会社だった。従業員は五十名に満たない規模で、受け持ちの生徒を推薦するには、担任としては不安があった。
「みたいだね……そういうのに興味があったんだ……」
「ええ」
「榊はてっきり大学に進学するとばかり思ってたよ。成績も優秀だし」
 多くが短大進学を目指す女子高の中で上位数十人は四年制の大学へと進んでおり、彼女はそのレベルの成績を一年次より維持していた。加えて運動神経も抜群だった。あらゆる球技をこなし、バレーボール部では持ち前の長身を活かしてエースアタッカーを務めていた。幼い頃から空手道場に通う黒帯保持者でもあるらしい。さらには気立ても優しく、まさしくすべてを兼ね備えた女生徒であった。
「推薦は……出していただけますか……」
 綾香は、目に強い意志をみなぎらせて言った。よほど興味のある職種なのだろう。
「進学は、興味なし?」
 念のために尋ねたが、一度自分で決めたことは最後までやり通す性格だと言うことは知っている。
「はい。よろしくお願いします」

 結局、その後の最終面談でも綾香の意思を翻すことはできず、洋哉は東条レザーに推薦を出した。当然のごとくすぐに内定が出て、卒業後、榊綾香は第一志望の会社に就職を果たしたのだった。

 再び事件が起こったのは、その年の夏休み直前だった。
 朝のラッシュ時、洋哉が乗った車両は、ブレザー服の女子高生で埋め尽くされていた。優華女学院の女生徒たちである。彼が勤める真愛女子高の二駅向こうにあるこの女子高は、風紀があまりよろしくないことで有名だった。快速列車は洋哉の降りる駅まで止まらない。あと少しで到着するところで、向かい合っていた清楚な雰囲気の女生徒が、「いやあっ……」と大声を上げた。周囲の視線がいっせいに集まる。
「いま触ったでしょ……この手……」
 女生徒が洋哉の手首をつかんでぐいと引っ張り上げた。
「あ、いや……違う、違います、触ってなんかない……」
「何言ってんの、あんたしかいないじゃん」
 茶髪の女生徒がすぐに反対の腕をつかんだ。確かに周囲には男性はいない。しかし洋哉でないことは彼自身が一番分かっている。
「な、何も、僕はやっていませんっ」
「ダメやん、いい年したおじさんが、女子高生に痴漢なんてやっちゃ」
 うっすら化粧をした女生徒が、ドスの利いた声で脅してきた。さらにパーマをあてた女生徒が後ろから迫ってきた。
「降りようか一緒に」
 四人の女生徒に取り囲まれるようにして、洋哉はホームへ降ろされる。そのまま駅員に引き渡されるものと思いきや、彼女たちは洋哉を女子トイレに連れ込んだのだった。
「ねえ、どういうつもりかなあ」
 茶髪の女生徒が壁を背にした洋哉に凄む。
「僕は本当に痴漢なんてしてませんから……」
「きゃっ、なんで男の人がいるのっ」
 セーラー服の女子たちが入ってきて叫んだ。真愛女子高の女生徒だ。
「あれ、羽田先生じゃない……」
 もう一人が気づいて言う。隣のクラスの生徒だ。
「見世物じゃないんだよ、失せやっ」
 薄化粧の女生徒が脅すと、女生徒たちは逃げるように去って行った。
「ふーん、真女の先生なんだ。あんた」
「やばいよ、女子高の先生が痴漢なんてやっちゃ」
「だから、僕は何も……」
「やってないって? ふん、ここにいる全員が証人だよ」
「美咲の前には男はあんたしかいなかったんやから」
「百パーアウトでしょ」
 女生徒たちの迫力に圧倒され、洋哉は言葉を失った。
「どうする? 示談する?」
 薄化粧の女子高生が腕組みをして言った。
「え……」
 洋哉は一瞬あっけにとられたが、すぐに頭を巡らせる。ここは彼女たちの提案に応じてお金を払い、解放されることが先決ではないだろうか。それにもし断れば、腹いせに駅員に突き出されるかもしれない。洋哉が痴漢したことになっている美咲とかいう女生徒以外は、皆、洋哉より背が高く体格もいい。とても逃げ出したりはできそうにない。
「どうすんのさ」
 茶髪の女生徒が声を張る。
「わ、分かりました……お、おいくらで……」
 薄化粧の女生徒が片手を広げると、パーマの女生徒が、「安いよ、それじゃ」
 茶髪女子も頷いた。
「じゃ、これだね」
 両手の平を示してみせた。
「じゅ、十万円……」
「痴漢の慰謝料としちゃ妥当でしょ」
 パーマ女子が言う。
「いまはそんな手持ちが……」
「ATM行こうよ、あるよね? ここ」
「……え、あ、はい……改札を出たところに……」
 一刻も早く問題を解決して解放されたい洋哉は正直に答える。

「あ、あの、ちゃんと下ろしますので……」
 ATMの操作を取り囲まれて、洋哉は焦る。
「いくら下ろすの?」
 茶髪女子が尋ねる。
「じゅ、十万円を……」
「違うでしょ、ひとり十万だから」
「四十万やね」
 薄化粧女子がにやついて言う。
「そ、そんな……」
「じゃ行こうか、駅員さんとこ」
「わ、分かりました……分かりましたので……」
 ボーナスの残りを定期預金に移す前だったので、なんとか払える額は残っているはずだった。
 ATMボックスの脇、人目のつかぬ場所に移動する。出金した札束を数えて、十枚ずつを女生徒たちに渡していたところに、ブルーのネクタイをした女性が現れた。
「どうしました?」
「え……あああ……いえ……」
「鉄道警察です」

第一章 島に流された痴漢教師

☆ 一

 思い出すのも忌まわしい事件から二ヶ月が経った。街路樹の葉は秋色に染まり始めていた。
「あれやこれや選んでたら、再就職なんて永久に決まりませんよ」
 職安の女性担当者が厳しい口調で洋哉に言う。
「あ、はあ……すみません……仰る通りと思いますが……まだ、その……気持ちの整理がつきませんので……また出直してきます……」
 うなだれた格好で建物を出て駅へと戻ろうとしたところに、「先生、羽田先生じゃありませんか?」
 振り返ると黒っぽいスーツに身を包んだ長身の美女が立っていた。
「お、大島先生……」
 元同僚の大島冴子だった。学年も担当教科も違っていたので詳しいことは知らないが、確か昨年の秋に学校を辞めたはずだった。

 大島冴子の誘いで近隣のイタリアンレストランに入り、少し早い夕食を共にした。
「羽田先生はいま?」
 職安から出てきたところを見たであろう冴子が尋ねた。
「……ああ……わ、私、実は、学校をクビになったんです……」
「え、どうして……差し支えなければ」
「はい……痴漢の罪を負わされまして……」
 改めて身の潔白を晴らさんとばかり、痴漢はえん罪であったこと、しかし無罪を証明できなかったため起訴され有罪となり、女子高を懲戒解雇され、妻には離婚され、現在求職中であることを目に涙を浮かべて話した。
「それは……何といっていいか……私は羽田さんを信じますよ」
 冴子はいかにも気の毒だという顔をして言った。
「優女の生徒たちに脅されてお金を払うところを見つかったのも悪かったようです……これが痴漢を認めたとみなされて……」
「本当に不運ですね」
 冴子も洋哉に合わせるように頷き、一緒にため息をついた。
「し、信じていただけますか……」
「もちろん」
 ショートカットヘアがよく似合う冴子の美しい微笑みに、洋哉は胸がかすかにときめくのを感じる。
「大島先生はいま?」
「私も、もう学校の先生ではないんです……まあ、先生とは呼ばれてますけど……」意味ありげに微笑んだ。「矯正施設の教官です……でも、あまり詳しいことは言えないんですよ……国家機密といえば大げさなんですが」
 女子のための少年院のような施設だろうかと、洋哉は想像した。プライバシーのこともあって明かせないのだろう。矯正教官だとすれば、元体育教師の冴子にはふさわしい職場だとも思った。彼女が生徒を厳しく指導する姿も幾度か見たことがある。
「まだ早いですね」食事を一通り終え、冴子は腕時計を見て言った。「もう少し飲みませんか? ご都合よければ」
「あ、はい、ぜひ……」
 酒はさほど強くない洋哉だったが、目の前の美女の誘いを断るほど野暮ではない。
 店を出てタクシーを拾うと、冴子は運転手に埠頭へ向かうよう告げた。
「知り合いからクルーザーを借りていて、くつろげるから、どううかなと思って。お酒もいろいろ置いてあるし」
「く、クルーザー!」言ったあとで恥ずかしくなるような大声を思わず挙げてしまった。「す、凄いですね、それは……楽しみです……」

 港のライトに浮かび上がった白い船舶は洋哉が思っていたよりもずっと大きく、室内はホテルの部屋のようだった。
「大島さんは操縦もできるんですか?」
 ソファに案内された洋哉は飲み物の準備をしている冴子に、ドギマギしながら尋ねた。
「ええ、真女にいた頃、船舶の二級を、出てから一級を取りました」
 切れ長の目で洋哉を見つめて言う。
「か、格好いいですね、大島さんは。なんか、年下の女性にこんなこと言ってしまうのもなんですけれど……」
 長身美女に憧憬の眼差しを返しながら、すでに顔をだいぶ赤らめた洋哉は言う。
「ふふっ……ワインでいいかしら?」
「ええ、もう、僕はなんでも……」
 彼女が注いでくれるものなら、なんでも受け入れたい気分だった。
「じゃ、あらためて乾杯!」
 覚えているのはその一杯のワインを飲み終えたあたりまでだった。

 目を覚ますとベッドの上に仰向けになり四肢を大の字に拘束されていた。
――こ、これは……
 脇の壁に小さな円い窓があり、そこからうっすら光が差し込んできている。どれくらい眠ったのだろう。
「お、大島さん……」
 呼んでみたところで、船の前方スペースの方に人の気配はあるが応答はない。手足をばたつかせるも両手足とも皮の枷できつく固定されビクとも動かない。
「大島さん、これはっ……」
 抗議するかのように大声を出してみる。続けて何度か声を挙げるも反応がないので、諦めていると、ようやく靴音が向かってきた。
――カツ、カツ、カツ、カツ……
「おはようございます」
「ああっ……大島さん……」
 冴子はダークグリーンの厳めしい服――看守服だろうか――に身を包み、同色の帽子を被っている。つばの部分だけが光沢の黒で、朝日に輝いている。
「これは……いったい……」
「羽田洋哉、あなたはいまから姫刃島きじんとうに収監されます」
「キジントウ……収監……な、なんのことです! ……」
 長身美女はそれには応えず、再びブーツの足音を響かせて去って行った。

 船が島に着くと、軍服に身を包んだ大柄な女性兵士二人が、洋哉の拘束を解き、両脇を挟むようにして甲板に連れ出した。先に出て待っていた大島冴子が、手錠を洋哉の後ろ手にカチャリとはめた。
「お、大島さんっ……」
 訴えるような目で見上げる洋哉の頬を冴子が激しく平手で打ち据えた。
――バシッ……
「きひいいっ……あああ……」
 冴子が無言でにらみ据えている。気安く名前を呼ぶなとでも言われているようだった。洋哉はすべての言葉を飲み込んで、女性たちに前後を挟まれ、舷梯を降りていく。
 陸の両脇には、やはり軍服を着て小銃を抱えた女性兵士たちが三人ずつ立って、じっとこちらを見つめている。皆大柄で若い。二十歳前後ではないだろうか。兵士には、白人や黒人もいる。一見、日本人に見える女性も、中国ほかアジアの女性のような気がする。とにかく体格を優先に集めた傭兵たちのようだ。すべて女だった。
 目の前には岩肌の山とうっそうと茂る森があるばかりで、建物らしきものは見当たらない。舷梯を降りたすぐに待っていた軍用ジープの後部座席に乗せられる。右側に大柄な女性兵士、左側に冴子が着いた。後ろ手の手錠が背中と座席に挟まって手首に食い込んでくる。
「うくううっ……」
 洋哉が痛みに顔をゆがめると、冴子が優しく肩を抱き、「すぐに着くから」と艶っぽい声で耳元にささやいた。運転席に座った女性兵士がエンジンを掛け、軍用車を発車させる。車は道なき道を森のほうへ向かうと草木の茂みに突っ込むように奧へと入っていく。
 カモフラージュされたような入口だった。両脇を樹々に覆われた道を少し走って大きなカーブを曲がったところで、前方にコンクリート製の建物が現れた。建物は横に長い平屋建てで、両側を挟むように岩山がそびえている。
「ああ……」
 洋哉は説明を求めるように冴子のほうを見たが、彼女は無言で前を見つめたままだった。さきほどの強烈な平手打ちが思い起こされ、洋哉も黙って前を向き直す。建物の前に車が止まると女性たちはすぐさま降り、洋哉も降ろされる。建物の上部も、土や緑で偽形化されているようだ。秘密めいたたたずまいが洋哉の不安をあおる。
 冴子は大柄な女性兵士たちに英語で何ごとか耳打ちすると、車からは少し離れた入口から、建物の中へと消えていった。
「GO」
 黒人女性が洋哉の背中を押す。洋哉は二人の兵士に再び両脇を固められ、すぐそばの入口から建物の中へと入っていく。鉄格子の部屋が三つほどあり、手錠を外された洋哉は一番奥の部屋へ入れられ施錠された。ベッドと手洗いとむき出しの便器が設置されているだけの部屋だった。テレビやネットでしか見たことのない、悪事を働いたあるいはその容疑を掛けられた人間を監禁するための部屋だ。
「あああ……ど、どうして……」
 洋哉は女性たちが見張っているほうへ寄り、鉄格子をつかんで訴える。
「Shit!」
 ブロンド兵士が唇に人差し指を当てて上からから睨み据えた。洋哉は慌てて後ずさる。
 鞄はどうなったのだろうか。財布やカードケース、家の鍵など、ポケットの中のものはもちろん、腕時計も没収されている。
 半時間ほど経っただろうか。見張りの女性たちがいなくなったのを見計らって、洋哉は我慢していた用を足した。さらにしばらくすると、見張りの女たちが戻ってきて、洋哉を檻の外へと連れだした。再び後ろ手に手錠が掛けられる。檻のエリアの中央にあるドアを開けると長い廊下があり、そのすぐ右側の部屋に連れて行かれる。
 向かいの壁のデスクに、看守服を着た冴子が座っていた。

☆ 二

 冴子の目配せを受けて、女性兵士たちは洋哉を膝立ちさせる。
「ようこそ、姫刃きじん島へ」
 椅子を立った冴子は洋哉の前にくると机の縁に腰を預けた。編み上げブーツの脚を交差させると、切れ長の美しい目でじっと洋哉を見下ろした。
「……ああ……」
 嘆きの声を漏らすも、《大島先生》という言葉はぐっと飲み込んだ。
「どうしてここへ連れてこられたか……知りたい?」
「は、はい……」
「あなたが犯した罪を償ってもらうためよ」
「わ、私は無罪です……あれはえん罪なんです……昨日もお話ししたように……」
「そう……えん罪ね……私個人としては信じてあげたいけれど……この制服を着た私は、上が決めた決定に従って、自分の職務を果たすしかないの。悪いけれど」
 大きく開いた看守服の襟を触って言う。
「そんな……こ、ここは、何なんでしょうかっ 大島先生は、いったいっ」
 たまらず大きな声を出した洋哉を見据えて、冴子の表情がみるみる気色ばむ。机の上から革の手袋を取ると苛立った仕草で装着する。
「立たせて」
 二人の外国人女性が脇の下に手を入れて、華奢な男の体をぐいと引き上げたまま、自分たちは半歩ずつ後方に下がる。簡単な日本語は、理解できるようだ。大きな手で背中を押され、洋哉は顎と胸を突き出すような格好になる。
「歯を食いしばりなさい」
 美女は鼻腔を膨らませ、切れ長の目を見開いて言う。洋哉が従ったとたん、強烈な平手打ちが頬を襲った。
――バシーン……
「うがあっ……ひいっ……」
 あまりの痛みについ甲高い情けない声を上げてしまう。
 往復で、二発、三発、四発、五発と続いた。
「がふうっ、ぐああっ、だああっ、ぎひいいいっ……」
 このような厳しい平手打ちを受けたのは、生まれて初めてだった。教師はもちろん、親にだってこんなに強く打たれたことはない。元体育教師の筋力の凄まじさを思い知った。
「……ひいぃ……す、すみません……」
 洋哉は声を震わせて詫びる。
「勝手な質問は許さないわ。私の言うことに黙って従ってればいいの」冴子はうなだれた洋哉の顎をつまんで上向かせた。「できない?」
「で、できます……」
 声を震わせ、ツーンとする鼻を啜り、耳鳴りを聞きながら、血の味のする唾液を飲み込んだ。
「じゃ、確認するけど、あなたの犯した罪は?」
「…………」
「えん罪かどうかなんて関係ないんだよ。まだ殴られ足りないか? 今度はこれでいこうか?」
 赤いルージュの長身美女は、革手袋で拳をつくって振りかざした。
「ひっ、い、いえ……きょ、強制わいせつ、罪、です……」
「だったよね……反省はしてる?」
「あ……ああ……」
 裁判官にも再三聞かれた言葉だった。
 少しでも早く社会復帰できるよう、弁護士から説得を受け、罪を認め、反省の意を裁判官にも示すよう促されたものの、本当にやっていないことを認めることはできなかった。結果、執行猶予こそついたものの、初犯にしては重い刑罰を下されることとなったのだ。
「決まりなのよ、この質問は。記録しなくちゃならないし」
「……お、大島先生……」
「あのね、これはあなたの生死に関わることだよ」
「……生死? え、あ……」
 いったい何を言っているのだろう。冗談だと言って、冴子が笑みを見せるのを待つも、いっこうにそんな気配はない。
「聞いてる? あたしの言ってること」
「……も、もちろんです……わ、分かりました……反省しています……」
 そう言う以外にはなさそうだった。
「だよね。この質問されるだけでも、ここじゃ幸せだと思わなくちゃ。聞かれない輩だっているんだよ」
「え……」
「まあ、そのうち、いろいろ分かってくると思うけどね……」冴子は後ろに下がって再び机の縁に背中を預けた。「で、反省って、言葉だけ?」
「……あ、え、ああ……」
「どんな態度で反省したか、それも記録に残るから……」
 長いブーツの脚を交差させる。
「……あ、す、すみませんでした……反省しています……」
 頭を下げて、彼なりに精一杯、謝罪の意思を示した。
「それでいいのね?」
「……あああ……は、い……」
 これ以上、何をしろと言うのだろう。
「分かった」
 机からバインダを取ると、手短に何かを記録して戻した。
「身体検査をするわね」
 女性兵士たちに目配せをする。手錠が外され、二人の女性兵士が左右斜め前に離れて待機する。
「服を脱いで」
「え……あああ……はい……」
 三人の女性から受けるプレッシャーに圧倒され、シャツとズボンを脱いで、上の下着も外し、ブリーフ一枚になる。
「華奢だね、羽田ちゃん、筋肉ゼロじゃない」
 冴子の嘲りに、二人の側近兵士たちもにやついて、洋哉は恥辱に頬を染める。どうやら外国人兵士たちはかなり日本語を解せるようだ。
「身長一五六センチ、体重四五キロ」
 測定器に乗せられ心細そうにする洋哉を見て、女たちは失笑する。
「はい次。それも脱がなきゃ、検査できないよ」
 冴子がブリーフを指さして言った。
「こ、これは……」
 戸惑う洋哉を鼻で嗤い、冴子は「構え」と女性たちに命じる。
 女性たちのしなやかな動作とともに肩に掛かっていた自動小銃の銃口が、洋哉を狙った。
 洋哉はパニックに陥りながら、慌ててブリーフを脱ぎ捨てる。股間を両手で押さえたとたんに、「気をつけっ!」と冴子が大声を上げた。弾かれるようにして外した手を両腿にピタリと付ける。
「ふふっ、かわいいおちんちんだね……あなた、包茎さんなの?」
「……あああ……」
 強烈な平手打ちが飛んできた。
「ずだぅうっ……」
「あたしの質問を無視するんじゃないよ。聞いてるでしょ」
「は、はい……そうです……」
 顔を火照らせ声をうわずらせて応えた。
「そう、包茎ちゃんなんだ……包茎ちゃん、口開けて」
 冴子は右肩をつかむと、もう一方の手でポケットから小さな懐中電灯を取り出して洋哉の口の中を調べる。
「もっと大きくっ」
「あ、あい……」
 もはやされるがままになるしかなさそうだった。二本の銃口はいまだこちらを向いている。冴子が撃てと命ずれば、本当に発射しそうな気配がある。
「よし、じゃあ、もうひとつの穴、後ろの穴を見せてもらおうか」
「え……いえ……それは……」
「規則なんだよ、そこに手を突いて」
 冴子は机の縁を顎で差した。
 体がこわばってしまって動けない洋哉を見かねて、女性兵士に目配せする。銃を肩にかけ直したブロンド女性が洋哉の背中を押さえつける。大きな手、凄まじい筋力が小男をあっという間に冴子の意のままにした。
「お尻もっと上げて、それじゃ調べづらいわ」
「あ、あああ……」
 なんて惨めな格好だろう。
「ケツ上げろって」
 冴子が尻たぶを激しく打擲する。
「くわうううっ……ひぃっ……」
「脚を広げろ」
「は、い……」
 冴子が英語で何やら命じたあと尻を乱暴に触られる。
「くうっ、ひいいいっ……」
 ブロンド兵士に尻たぶを広げさせ、懐中電灯を当てて、尻穴を調べているようだ。なんて哀れなことだろう。そもそも自分のような素人がそんなところに、何かを隠しているわけがない。貧弱な体を嗤われ、肉体的欠陥まで馬鹿にされ、こんなものは身体検査という名をした虐待に他ならない。人権の著しい侵害だ。島を出た暁には、しかるべきところに訴える必要がありそうだ。
「よし……穴はOK、きれいなアナルだね。バージン?」
――な、なにを言っているのか……
「……はい……も、もう、いいでしょうか……」
「馬鹿言ってんじゃないよ、これからだよ。穴の奧を調べないでどうするの」
 頭を下げて恐る恐る股の向こうを見てみると、冴子が中指にスキンを嵌めているのが見えた。
――あああ……
「ううっ……」
 何やらひんやりとしたものが尻穴の周囲に塗られる。ゼリーだろうか。次の瞬間、何か尖ったものが――彼女の指先だろう――尻穴に当たる。
「くわああっ……」
 尻穴に異物を入れられるなど、小学生時分の浣腸以来だ。
「だ、だめです……」
「力抜いて」
「ど、どうか……」
 冴子が英語をしゃべると両腰に冷たい銃口が突きつけられた。
「ひいいいいっ……」
 腰が砕けて尻からみるみる力が抜けていった。と同時に冴子の指先がズブリと括約筋を押し広げて侵入してきた。
「はうううううっ……」
「んとに、カチカチのバージンみたいだね、ふふっ」
 ねじ込むようにして指が深く埋まっていく。一度侵入を許した肛門は、されるがままであった。
「うはあああっ……」
「何か隠してないか、よく調べないとね」
 円を描くように腸の中をこねくり回す。
「くふああああっ……も、もう……許して、くださいいっ……」
 

S女小説 私刑島「地獄の女看守たち」


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