小説出版

S女小説「家族の果て ― 優しかった妻と娘 ―」

S女小説「家族の果て ― 優しかった妻と娘 ―」を電子書籍として出版しました。

内容紹介

――妻と娘に支配される。それが、家族に残された唯一の道だった。

「女性上位法」が施行された社会。
それは、男と女の立場を大きく変えようとしていた。
下田修は、妻の貴子、大学生の娘・由紀と、ごく普通の家庭を築いていた。
しかしある日、一家は「女性上位法違反」の容疑で拘束され、思想矯正施設へと送られる。
そこで家族を待っていたのは、これまでの常識が通用しない「矯正」だった。
夫を守るため、妻は夫の「所有者」となる。
父を救うため、娘もまた新しい男女のあり方を学ばされていく。
命令する女と、従う男。
管理する者と、管理される者。
家族だった三人の関係は、施設での生活を通して少しずつ形を変えていく。
そして貴子と由紀の手には、男を矯正するための鞭が握られる。
それは夫を、父を守るためなのか。
それとも彼女たち自身が、この新しい社会に適応し始めた証なのか。
女性が男を支配することを「正しい」とする社会で、家族は家族のままでいられるのか。
男女の逆転した近未来を舞台に、支配と服従、思想と家族愛の変質を描く女性上位ディストピア小説。

プロローグ
第一章 囚われたあの日
第二章 引き裂く高い壁
第三章 変えていく教育
第四章 立場が覆った日
第五章 絆が切れるとき
第六章 支配に目覚める
エピローグ

 

S女小説「家族の果て ― 優しかった妻と娘 ―」

ショートストーリー

若き女性上司たちが支配するオフィス

午前9時。オフィスの静寂を切り裂くのは、硬質なハイヒールの音。大理石の床に響くその規則正しいリズムは、旧時代の遺物と化した男性主導の価値観を粉砕する「福音」として、私たちの耳に届く。
「おはようございます、課長」
私の隣で、親子ほども年の離れたベテラン社員が、震える声で挨拶をする。彼はかつて、この業界で名を馳せた凄腕の営業マンだったという。しかし今、彼の視線は彼女の膝より上に上がることはない。入室してきたのは、弱冠二十五歳の女性課長。彼女の不機嫌を察した瞬間、広大なオフィスに冷気が走り、男たちは一斉に伏し目がちになった。圧倒的な捕食者を前にした小動物の群れ――それが、私たちの実像だ。
彼女がデスクに無造作に投げ出した資料が、ひらひらと床に散らばる。
「……やり直し。これ、日本語のつもり?」
溌剌として若々しく、それでいて冷徹な声。ベテラン社員は反射的に床に這いつくばり、彼女の足元に散った資料を、一枚一枚丁寧に拾い集める。もはや職位の上下というだけではない。そこにあるのは、生物学的な強弱の差という、残酷なまでの真実だ。
私に与えられた任務は、さらに「道具」としての純度を求められるものだった。
彼女のデスクの下に潜り込み、彼女の靴を磨く。それが、この会社で私に与えられた唯一の存在意義だ。デスクの下は、彼女がまとう高価な香水の香りで満たされている。その甘美な香りに脳を痺れさせながら、私は懸命にクロスを動かす。ブーツの黒革が音を立てるたびに、私は自分という人間が彼女の利便性を高めるための専用道具へと変質していく悦びに、背筋を震わせるのだ。
「この程度の仕事もできないのなら、生きてる意味なんてないわよ」
女性の言葉は、男たちのプライドを微塵切りにする。しかし、不思議なことに、その痛みは次第に甘美な熱へと変わっていくのだ。
そして、残業時間のオフィスは、もはや彼女の独壇場だ。ミスをした年上の部下を立たせ、彼女は優雅に足を組み直す。ピンヒールの尖った先端が、男の膝をなぞる。彼は期待と恐怖が混ざり合った表情で、酸素を求める魚のように口をパクつかせている。言葉による叱責は、やがて肉体的な屈服へと形を変えるが、それは決して「暴力」ではない。無力な私たちにとって、女性たちの気まぐれな「指導」こそが、唯一の救いであり、教育なのだ。
接待の場においても、私たちの価値は「装飾品」でしかない。
若き女上司の輝くような美しさを引き立てるため、私たちは地味な服に身を包み、背後で控える。彼女がグラスを空ければ、即座に跪いて酒を注ぐ。彼女の心ない言葉一つで、私がこれまでの人生で積み上げてきた知識も、経験も、すべてが無価値なゴミとして処理されていく。だが、それでいい。女性の足元こそが、男が辿り着くべき唯一の終着点なのだから。
「パワハラ」という言葉は、この社会では死語となった。あるいは、女性たちの特権を鮮やかに彩るためのスパイスに過ぎない。
蹂躙され、尊厳を奪われるたび、私たちの瞳からはかつての「反抗の光」が消えていく。その代わりに宿り始めるのは、陶酔に満ちた隷属の輝きだ。若き女王に支配されること、その圧倒的な力に身を委ねること。その悦びを知ってしまった私たちに、もはや「自由」などという不確かなものを望む力は、どこにも残されてはいない。

ショートストーリー

愛するがゆえの支配だったはずが……。

朝の光がリビングに差し込む。かつて、この時間は夫婦の穏やかな語らいの場だった。しかし今、テーブルについているのは私一人だ。下僕と化した夫は、私の足元で跪き、床を磨き上げている。その背中は小刻みに震え、私と視線を合わせることさえ許されていない。

半年前、私は「女性党」への入党を決意した。それは、この社会で生き残るための「究極の選択」だった。当初は葛藤があった。夫を愛していたし、彼を支配下に置くことへの抵抗感もあった。しかし、党外に留まり続けることは、女権当局への反逆と見なされる。拒絶すれば、私たち夫婦は社会から抹殺され、特に男性である夫には、想像を絶する苛烈な弾圧が待っていた。私はむしろ彼を守るために、彼を「支配」する道を選んだのだ。

入党後、私たちが最初に受けたのは、かつて男性たちが謳歌したという「家父長制」がいかに醜悪で野蛮なものであったかという再教育だった。記録映像に映し出される、抑圧された女性たちの歴史。そして、現代の科学が証明した「女性の知力、精神力、そして今や身体能力さえもが男性を凌駕している」という冷徹な事実。

教育を終える頃には、私の中にあった「男を敬う」という感情は、霧散していた。彼らは守るべきパートナーではない。圧倒的な力をもって管理し、過去の罪を「断罪」すべき対象なのだ。

「手が止まっているわよ」

私の冷ややかな声に、夫は肩を跳ねさせ、さらに深く頭を垂れた。

「……申し訳ございません、ご主人様」

かつての威厳はどこにもない。そこにあるのは、恐怖に支配され、私の顔色を伺うだけの卑屈な家畜の姿だ。

党の先輩たちは、男性を統率する模範を鮮やかに示してくれた。叱責し、厳格な指導を施し、彼らから「個」を奪い去る。最初は戸惑いながらも、私も自宅でそれを実践し始めた。すると、不思議なことに、彼を厳しく躾ければ躾けるほど、心の奥底で澱んでいた不安が消え、万能感に満たされていくのを感じた。

「なぜ、もっと早くこうしなかったのかしら」

そんな悔恨すら胸に宿る。対等という名の幻想に囚われ、私はこれほどの快楽を逃していたのだ。

今夜、私は党の友人を招くことにしている。彼女もまた、自らの「所有物」を完璧に管理している優秀な党員だ。

リビングのソファで、私は彼女とシャンパングラスを傾けるだろう。そして、そのすぐ傍らで、夫に最も惨めな役割を演じさせる。彼が見ている前で、私は別の若く美しい「奉仕男性」を侍らせ、自由を謳歌してみせるのだ。

かつてなら「不貞」と呼ばれた行為も、今や支配の頂で味わう最高のスパイスに過ぎない。夫はそれを、どんな思いで見つめるだろうか。絶望か、それとも自分もあのように愛されたいという悲惨な渇望か。

彼の目に浮かぶ、恐怖と屈辱が混じり合った愛想笑い。それを見るたびに、私は自分の輪郭が明確になるのを感じる。男を壊し、その残骸の上に君臨すること。それこそが、女性が本来あるべき姿であり、この世界の真理なのだ。

「もっと丁寧に磨きなさい。今夜はお客様がいらっしゃるのよ」

私は、彼の震える指先をヒールの先で軽く踏みつけた。彼は痛みに声を上げることさえ許されず、ただ「はい」と、消え入るような声で答えた。

外の世界では、まだ抵抗を続ける愚かな男たちの悲鳴が風に乗って聞こえてくる気がした。だが、この部屋の中は、完璧な秩序と静寂に包まれている。私は、女王としての至福に酔いしれながら、次の命令を口にした。

ショートストーリー

女王国の隷属者たち

かつて男たちが闊歩していた街は、今や「女性党」の象徴である、天を突くような壮麗な塔によって支配されていた。街の至る所には、美しくも冷徹な女性党首の肖像画が掲げられ、その瞳は常に民を見下ろしている。かつての家父長制の残滓は木っ端微塵に砕け散り、今や男たちは、この美しき女王国において、最下層の存在へと成り下がっていた。

街を行き交う男たちは、一様に俯き、声を潜めていた。彼らの顔からはかつての威厳は消え失せ、代わりに、いつ「不敬」の罪で捕らえられるかという、怯えと焦燥が色濃く刻まれている。些細な「不敬」――列の乱れ、掃除の不備、いい加減な挨拶――それだけで、男たちは収容所へと堕とされる。かつての友人、恩師、父親…かつて尊敬を集めていた男たちが、次々と姿を消していく。そして、一度収容所の鉄格子の向こうへと消えた者が、二度と元の姿で戻ってくることはなかった。

収容所は、男たちにとっての地獄だった。そこを支配するのは、嗜虐に飢えた若き女性看守たち。彼女たちは、男たちの尊厳を粉砕し、彼らの悲鳴を聞くことに、至上の喜びを感じていた。「教育」という名の蹂躙、「指導」という名の虐待。それは、男たちを精神的に、そして肉体的に完全に破壊するための儀式だった。

収容所の深く暗い闇の中で、男たちは若き女性看守たちの絶対的な隷属下に置かれる。彼らが彼女たちの前に立つ時、待っているのは跪き、その黒革のブーツの足元で、自らの不敬を骨の髄まで後悔することだけだった。年嵩の男であっても、彼女たちの手加減はない。かつての恩師が、かつての実兄が、あるいは実の父親が、若き女性看守たちの拳や鞭によって、無慈悲に蹂躙されていく。肉親の情すら棄却し、尊厳を粉砕する瞬間にこそ、彼女たちは至上の倒錯的な快感に浸るのだ。この檻に、血の繋がりという救いなど存在しない。

夜になれば、彼女たちの旺盛な好奇心は、夜の独房で更なる深淵へと向かう。気に入った若い男囚を跨ぎ、騎上位で蹂躙するのは序の口だ。老囚たちとて安堵する暇などない。今や彼女たちの間では、模造の凶器を操り「男役」として背後から貫く、倒錯した遊戯が流行している。男たちは、夜明けまで続く彼女たちの蹂躙に、ただ静かに震え続けるしかない。安息の地などどこにもない。

かつて男として守ってきた矜恃、異論、抵抗…それらは、苛烈な蹂躙の果てに、とうに消え失せた。今や彼らは「女性こそが支配者にふさわしい」と唱和し、その顔色を窺うことに心血を注ぐ。気まぐれな処刑を免れるため、必死に媚びへつらう無様な姿。そこには、かつての「男」としての面影は、もはや見る影もない。

この美しきディストピアに、救いなど存在しない。男たちはただ、彼女たちの足元で這いつくばり、その気まぐれな支配に身を委ねるしかない。女王国は、男たちの悲鳴の上に、今日も美しく聳え立っている。

ショートストーリー

舌奉仕こそが、男の存在価値

「言葉なんていらないわ。お前の価値は、その舌がどれだけ私を満足させるかだけで決まるの」

冷徹な断罪が、都心を見下ろす高層階の執務室に響く。声の主は、紺色のタイトスカートに身を包んだエグゼクティブの女性だ。彼女の足元、カーペット敷きのフロアに這いつくばっているのは、かつては彼女の上司として雄弁を振るっていた男だった。

「能書きはいいから、早くやるべきことをやりなさい」

彼女の冷ややかな視線が、男の怯え顔を射抜く。男は慌てて口を噤み、ただ一筋の「道具」としての役割に戻る。彼に許されているのは、弁明でも懇願でもない。主人の欲望を、ただ無言のまま完遂すること。人格を有する者としての「言葉」を剥奪されたその瞬間、彼は自分がもはや人間ではなく、彼女の所有物に成り下がったことを理解した。

かつて女性部下への指導や説教に使われてきたその舌は、今やその彼女のブーツに付着した泥や埃を、丹念に、そして執拗に拭い去るためだけに存在する。

「こっちも丁寧にお舐め」

彼女は威厳たっぷりに脚を組み替える。

業務とはほど遠い、あまりにも理不尽な命令。しかし、それを拒絶することは、社員としての立場を失うことはおろか、この社会における生存の放棄をも意味する。それが、女性上位の世の中の現実であった。

「なによ、その顔は、もっと美味しそうに舐めなさいよ」

男は顔を歪めることさえ禁じられ、その不潔な泥を、まるで至上の美味であるかのように受け入れなければならないのだ。

屈辱が熱となって脳を焼き、プライドが音を立てて崩れ落ちていく。しかし、奉仕が数時間にも及んだ頃には、男の精神にも変容が訪れる。

喉は枯れ、舌は痺れ、感覚が麻痺していく……そんな極限の疲労と絶望の淵で、彼は奇妙な「安寧」を見出し始めていた。思考を放棄し、ただ女性上司の靴底の感触に己の全存在を埋没させる。むしろ、そうすることによって、彼はなんとか自分を保つことができたのだ。

「まだまだだね。もっとしっかり舌を使いな」

女性上司の叱咤の声が、部屋に響いた。さらには顔や頭を足蹴にする厳しい指導を受けながら、男はもはや自由を望むことさえ失いかけていた。知性も、自意識も、もはや不要な荷物でしかない。ただ仕えるべき女性の満足を己の存在理由とした時、そこには歪んだ、しかし揺るぎない「女尊男卑」の完成形が立ち現れていた。

「ようし、じゃあ、もっといいところを舐めてもらおうかしら」

女性上司は、口内をゆすいできれいにしてくるよう命じる。

男は暗澹たる気持ちでそれに従い、洗面所から戻ってくる。

彼女が大きく開いた脚の間に、小男の体がすっぽりと収まった。女性は男の残り少ない髪を鷲掴みにするとぐいと股間に引き寄せる。

「しっかり舌を使うのよ」

夜が更けても、女性の許しが出ることはない。海外とのリモートミーティングや事業の企画検討を行うデスクの下で、男はひたすら奉仕を続けなければならなかった。

そのような倒錯的な執務の場は、ひとつの部屋に留まらない。上階フロアのいくつものエグゼクティブルームに、絶大な権力を持って男たちを蹂躙し続ける女性たちの姿があった。

ショートストーリー

妻への口答えは、後悔先に立たず

「男女平等の終焉」と「女性保護法案」の成立から数年。世界は劇的に、そして残酷なほど美しく塗り替えられた。社会のあらゆる要職は女性が占め、男性は家庭内で妻を支えるの主夫に甘んじる。いや、その現実は男にとってもはや甘んじるどころか、地獄の様相すら呈している。

以下は、IT企業で要職に就く年若妻に仕える中年男の実例である。

「じゃあ、下へ降りましょうか」

妻の声が、冷え切ったリビングに響く。

私が「口答え」という重大なマナー違反を犯したことに対する、正当な処置が始まろうとしていた。彼女に連行されたのは、わが家の地下室。逃げ場などどこにもない。赤いルージュのの口元に浮かぶ、獲物を追い詰めた肉食獣のような笑みを見て、私は激しい後悔に襲われた。

こんなことになるなら、最初から彼女の靴底を舐める屈辱を選んでおくべきだったのだ。

その屈辱的に過ぎる命令をやんわり拒んだ私の言葉。それを彼女は口答えとみなしたのだった。

「顔とお腹、どっちがいい?」

妻は、まるで明日の献立を相談するかのように訊いた。

「顔は、ちょっと……」

そう応える私の声は震えている。主夫とはいえ、買い物などで外に出る機会はある。

鍛え上げられた彼女の腕力によって腫れあがらせた頬を、長い間、晒し続けることになるだろう。

「じゃあ、お腹ね」

「あぁ……は、い……」

返事を待たず、妻の右手が私の喉元を掴み、壁へと押し付けた。

「くぉぅ……」

もはや逃がれようがない。

――あぁ……

現在、彼女は週に三度、女性専用のボクシングジムに通っている。その成果を試してみたいという気持ちもあるに違いない。

長いリーチの左腕が大きくしなり、私の腹部へと吸い込まれた。

「おおううっ……!」

拳がめり込んだ胃が悲鳴を上げる。

――くおおおっ……

なんというパンチ力。こんな凄まじい打撃を、これ以上……とても無理だ。

「あ、あの、奥さま……やっぱり……」

「なに?」

微笑む彼女の瞳には、一切の情が見受けられない。ただ、壊れゆく玩具を観察するような冷徹な好奇心が宿っているばかりだ。

「あ、あの、やっぱり、舐めますので……どうか……」

屈辱にまみれた私の言葉を、彼女は鼻で嗤った。

「いいよ、無理しなくったって。男としてのプライド、まだ残ってるんでしょ? そんなに簡単に捨てるもんじゃないわ」

追い打ちをかけるように、いっそう残酷さを増したボディブローが打ち込まれる。

ドスッ、という鈍い音が再び部屋に響く。

「ぐごおおおおっ……」

「男としての矜持」など、粉々に砕け散っていった。

もはや限界だった。内臓が破裂し、このまま床に沈んで命が終わる。そんな恐怖に支配される。

――助けて……

しかし、なおも妻は殴打を続けた。

どうすれば、許してもらえるのか。なにを言えば……。

「ああっ、ど、どうか、舐めさせてください……!」

思わずそんな言葉を口走る。

そこでようやく、パンチが止まった。

正解は、屈辱の行為を自ら懇願することだったのだ。

「なにを?」

「お、奥さまの……ブーツの靴底を。どうか、舐めさせてください……」

喉を押さえていた力が解かれ、私は崩れ落ちるようにその場に跪いた。

目の前には、妻がわざとぬかるみを歩いた、泥だらけのブーツがある。

「早くお舐め」

完全支配の快楽が、ハスキーな声に乗っている。

私は悲鳴に近い嗚咽を漏らしながら、その泥まみれの皮革に舌を這わせた。

ザラついた土の感触と、獣の皮の匂いにまみれながら。

かつて、男性が支配していた時代。そんなものが本当にあったのだろうか。

今となっては、もはやお伽話にしか聞こえない。

「もっと必死にやれよ」

上から降ってくる声に、私は愛想笑いを返す。

「申しわけございません。かしこまりました、奥さま……」

――わが家の女王様を怒らせてはならない……もっと真剣にやらないと……

そう自身に言い聞かせながら、懸命に妻のブーツの爪先に舌を這わせる私だった。

「最初っから舐めてれば、痛い目見ずに澄んだのに、ばっかじゃないの」

彼女の言うとおり。浅はかな自分が恨めしいばかりであった。

ショートストーリー

夫に履いたままのブーツを磨かせる妻

窓の外では、今日も「女性社会振興局」の広報車が、女性たちの社会進出と、それを支える男性たちの「美徳ある献身」を讃える歌を流している。この街で、男性が一人で歩くには「保護者」たる女性の許可証が必要だ。職はなく、財産権もなく、ただ家庭という名の檻の中で、所有者である妻に仕えることだけが、私たち男性に残された唯一の生存戦略だった。

「ねえ、まだ終わらないの?」

冷ややかな声が頭上から降ってくる。

リビングのソファーに深く腰掛けた妻は、長い脚を組み、私の目の前に右足を突き出している。漆黒のロングブーツ。上質な牛革が、部屋の照明を鈍く跳ね返している。

私は床に膝をつき、必死で手を動かしていた。妻はブーツを脱ごうとはしない。履いたまま磨かせること。それがこの家における、そしてこの女性上位世界における「主従の儀式」だからだ。

あまりの屈辱に耐えきれず、せめて脱いだ状態で磨かせてもらえないだろうかと何度懇願したことだろうか。しかし、「形が崩れるのが嫌だって言っているでしょう」とその度に一蹴された。

そればかりか、執拗な要望は、彼女の怒りを買い、「あなたの顔が映るくらい、ピカピカにして」という無理難題を出される始末となった。

それは、しかしどう考えても物理的に不可能だった。革の表面を鏡面のように仕上げるには限界がある。だが、反論は許されない。

彼女がその気になれば、私を「社会適応欠格者」として更生施設へ送るか、さもなければ凍てつく路上へと放り出すことだって簡単だ。男が家を失うことは、この女尊男卑の世界ではすなわち死を意味した。

「……はい、奥さま。精一杯、努めます」

できるできないに関わらず、私たち男はまず忠実な行動をもって女性たちに忍従する立場であることを示さねばならない。

私は震える手でポリッシュを取り、布に馴染ませる。艶を出そうと懸命に励むが、素材の種類に寄るものだろうか、焦れば焦るほど、革の表面はむしろ曇っていくような気がした。困惑し、救いを求めるように彼女の表情を伺う。

「奥さま、すみません、やはり、顔が映るまでは、とても……」

「あたし、冗談で言ってるんじゃないからね」

妻の瞳には、愛など微塵もないように見えた。そこにあるのは、どこまでも冷徹で嗜虐的な光だ。彼女にとって、私は夫ではもちろんなく、もはや男でも、いや、人間でもないのかもしれない。少なくとも私に人権があると認めるならば、こんな非情な命令を出すわけはない。

しかしそんなことを思い悩んでも仕方がなかった。とにかく、状況を少しでもよくすることに集中しなければ……。

「……どうか、奥さま。これくらいで、お許しいただけませんでしょうか……」

まずは、誠意を示し、許しを乞い願うことである。

視界が滲んだ。情けなくて、惨めで、耐えがたい屈辱に涙がこぼれ落ちそうになる。すると妻は、私の顎をくいと持ち上げ、その顔をじっと覗き込んできた。そして、唇の端を吊り上げる。

「嘘泣き? また」

彼女の手が、私の薄くなった頭髪を容赦なく掴み上げた。

頭皮に鋭い痛みが走り、思わず声が漏れる。

「ひいっ……」

「あたしを騙そうってのか?」

「いえっ、そんな……はううううっ……ひっ……」

「許して欲しいなら、もっと本気の涙を見せなさいよ」

低く、突き放すような声。私はただ絶望を抱き、再びブーツに顔を伏せるしかなかった。

「ブーツの筒に、お前の顔が映るくらいに艶を出せって言ってるのよ。何度も同じこと言わせるな、この能なしがっ」

「あぁ……どうか……奥さま……」

「それができないなら……」妻は赤いルージュの端に鋭い笑みを浮かべる。「そうね」

彼女は私の鼻先に着かんばかりに靴底を突きつけた。

「じゃあ、ここ舐めて。だったら勘弁したげる」

頭の中が真っ白になった。外を歩き、泥や埃を吸い込んだ靴底。それを舐めろと言うのか……。

いくらなんでも……私にだって、まだ多少なりとも男としてのプライドが残っている。

ここは反論があってもいいのではないか。

――お言葉ですが、恐れながら……

頭の中で、命令を受け入れられない趣旨の言葉が渦巻いた。

だが、声にはならない。拒絶などしようものなら、明日の居場所はないのだ。

即答しない私に代わって、妻が口を開く。

「艶は出せない、靴底は舐めれない。いったいあんたに何ができるの?」

妻の声にいら立ちが混じる。彼女のストレスは、いつもより高いレベルに達しているようだ。

このままではまずいと思ったが、時すでに遅しだった。

「じゃあ、殴らせて」

唐突で、あまりにも不条理な要望が、彼女の口から飛び出してしまった。

しかし、その時の私には、それが唯一の「慈悲」のようにさえ思えてしまった。靴底を舐める屈辱に耐えるより、身体的な痛みで全てを終わらせてくれるなら、私としてはそちらを選びたい。

「……わかりました。その代わり、それでどうか堪忍して」

絞り出すような声でそう告げると、妻は満足そうに微笑んだ。

次の瞬間、乾いた音が部屋に響き、私の視界は大きく歪んだ。

――うぅ……

頬に走る熱い痛み。

私はまた、震える手でブラシを握り直した。

これで許されたと思っていたのだ。しかし、次の彼女の言葉に全身は凍り付く。

「それで、終わりなんて思ってないよね? さぁ、立って」

ショートストーリー

蹂躙の美学 ―― 成功した女性による「新時代の放蕩」

かつて、夜の街を闊歩し、酒と博打と異性遊びに興じることを「男の甲斐性」と呼んだ時代があったという。今となっては、もはや滑稽な御伽話に聞こえる。

現代において、その放蕩の権利をしっかりと握っているのは、社会の主導権を勝ち取った私たち女性だ。財力を持ち、責任を背負い、世界を動かす。その報酬として得られる「支配」という名の果実を、私は今夜も優雅に味わっている。

高級ホテルの最上階、視界を遮るもののないラウンジ。

先日は、大きなプロジェクトを共にする取引先の重役を接待する側だった。今日は、その見返りに最高級のヴィンテージ・シャンパンで「接待される側」に回っている。

私たちの傍らには、常に奉仕役としての男たちが控えている。

私たちが国家の経済や、次世代のテクノロジーについて様々な議論を交わすその傍らで、彼らはただ息を潜め、グラスを差し出している。いかに粗相なく女性に尽くすことができるか、それだけが彼らの役割であり、難しい思考など男に求められはしないのだ。支配される側の矜持とは、いかにして忍従の立場を貫き通せるか。彼らの存在価値は、まさにその一点に集約されるのである。

「今週末は、少し羽根を伸ばしてくるわ」

自宅のソファで私の履いたままのブーツを磨いている夫に、事務的に告げる。

行き先はカジノ。連れて行くのは、最近お気に入りの若い浮気相手だ。かつての不器用な男たちのように「出張」などという卑屈な嘘を吐く必要はない。堂々と、清々しく、息抜きに行ってくると宣言する。それが、一家の大黒柱としての誠実さであり、強者の余裕なのだから。

かつての男たちのようにちまちまと賭けに興じるなど、女の性に合うはずもない。ゆえに、勝つときは大勝し、負けるとなれば有り金をすべて叩きつけることさえある。そうして追い詰められた果てには、連れてきた浮気相手を換金するか、あるいは彼自身を賭けの対象にベットする。ふふ、これが戯れ言か真実かは、読者に委ねよう。だが、このような遊び方こそ、成功を掴み取った女性にふさわしい、至高の悦びであるのだ。

それはそうと、浮気相手を抱くのにもいつかは飽きが来る。

男の情緒など、時にひどく鬱陶しいものだ。そんな時は、迷わず「男を買い」に行く。カタログから選び抜かれた一級品の商品を、ベッドへとデリバリーさせるのだ。

「あとでめそめそ泣かれたり、後ろ髪を引かれるようなことがないのがいいのよね」

先日、女友達とワインを傾けた際も、満場一致でこの意見になった。

そこに情緒的な愛など必要ない。あるのは一方的な消費と支配。リーズナブルな対価を支払うことで、私たちは男という生き物を己の思うがままに弄び、支配欲を満たす。商品に対して責任を持つ必要はない。使い終われば、また次のを選べばいいだけのことだ。

夜遊びも、ギャンブルも、男漁りも……すべては、外で働き、圧倒的な富を家庭にもたらす女の特権である。

家で私を待つ夫が、私の不貞や放蕩に気づいていないはずがない。私が持ち帰る別の男の香りに、彼は時折、悲痛な表情を浮かべる。だが、彼は決して口出しをしない。いえ、できないのだ。

「誰のおかげで生活できてるの? 文句があるなら、今すぐこの家を出ていけばいい。……捨てられたくなければ、ただ黙って私についてくること。簡単な話でしょう」

私の冷徹な宣告に、彼は震える膝を床に着け深く頭を下げる。

今現在享受している安定した生活のすべては私の支配下にあるという事実を、彼は骨の髄まで理解している。その屈辱に満ちた服従こそが、夫としての唯一の本分なのだから。

欲望を謳歌し、男を従える姿。

これこそが、現代の成功した女性にふさわしい新時代の美学だ。

今後どれだけ時代を経ても、私たちの支配が終わることはないだろう。

蹂躙され、使い捨てられ、精神を摩耗させた男たちが、気息奄々と老いさらばえていくのを尻目に、私たち女性は力強さをいっそう増していく。彼らのエネルギーを吸い取るかのように、美貌も若々しさも、さらに眩いばかりの輝きを放ち続けるのだ。

ショートストーリー

妻に恥をかかせてしまった代償

わが家には、成文化されていないが、何よりも重い鉄の掟がある。

「妻の帰宅時には、三つ指を突いて出迎えること」

時代錯誤も甚だしいこの儀式が、私に課せられた絶対的な義務だ。

和室ではなくフローリングの玄関であっても、私は膝を突き、両手の三本の指を床に揃え、頭を垂れて彼女を迎えなければならない。それが、この家における彼女の絶対的な権威の象徴だった。

その日、妻は会社の同僚である二人の女性を連れて帰宅することになっていた。

前日から、妻はその同僚たちに「私の城を見せてあげる」と得意げに話していたようだ。

彼女にとって、この「三つ指の出迎え」は単なる命令ではない。自らの支配力がどれほど徹底しているかを、外部の観客に見せつけるための証なのだ。彼女は、私がどれほど従順で、いかに「恐妻家」として完成されているかを自慢したくてたまらないようだった。

私はキッチンで、彼女たちのために用意するオードブルの盛り付けに追われていた。

「あと五分もすれば着くわ」というメッセージを受け取り、心臓の鼓動が早まる。シャンパングラスを磨き、カナッペを皿に並べる。その最中、ふとした不手際でソースをこぼしてしまった。私は慌てて布巾を手に取り、床を拭った。

その一瞬の遅れが、私の運命を決定づけた。

ガチャリ、と玄関の鍵が開く音が響いた。 心臓が跳ね上がる。私はすべてを放り出し、廊下を走った。しかし、私が玄関に滑り込んだとき、すでに扉は大きく開かれ、妻と二人の同僚は土間に立っていた。

「……ただいま」

妻の声は、驚くほど低く、冷ややかだった。 私はその場に膝をつこうとしたが、もう遅かった。彼女が望んでいたのは「開いたドアの先に、すでに頭を垂れて待機している夫」の姿であり、慌てて駆け寄ってくる無様な男の姿ではなかったのだ。

「あら、マネージャー、お出迎えが間に合わなかったみたいね」 同僚の一人が、面白がるように呟いた。その言葉が、妻のプライドに最後の一太刀を浴びせた。

「……あなた。私のメンツを潰すつもり?」

妻の瞳に、激しい怒りの炎が灯る。次の瞬間、私の視界は火花が散ったような衝撃に包まれた。 乾いた音が玄関に響き渡る。右の頬、続いて左の頬。往復で浴びせられるビンタは、加減というものを一切知らなかった。

「よくも、このあたしに恥をかかせてくれたわね」

彼女の手掌は止まらなかった。十発、二十発。私はなす術もなく、ただその場に跪き、激しい衝撃に耐えるしかなかった。やがて、鼻の奥で熱い液体が動く感覚があり、ポタポタとフローリングの木目に赤い斑点が広がった。鼻血が滴り落ちても、彼女の猛攻は終わらない。

私は、同僚の女性たちの視線に、かすかな救いを求めて目を向けた。 しかし、そこに同情の二文字はなかった。彼女たちは私を哀れむどころか、顔を紅潮させ、まるで格闘技の好試合でも見ているかのように、リズムに合わせて小さく手を叩いて喜んでいたのだ。

「すごいわ、本気なんですね」

「さすがです、マネージャー」

残酷な称賛の声が、私の耳に突き刺さる。

さらに、物音を聞きつけて二階から娘たちが降りてきた。彼女たちは、鼻血を流して跪く父親の惨めな姿を、軽蔑とも興味ともつかない冷淡な眼差しで覗き込んでいる。

――ああ、自分のことをどう思っているのだろうか……

頼りにならないのはもちろんのこと、もはや守るべき対象でもなく、単なる家の備品、あるいは壊れかけた玩具のように思っているのかもしれない。

ようやく妻の手が止まった。彼女は荒い息をつきながら、勝ち誇ったように私を見下ろした。

追加の暴力を恐れる私は、「お、奥さま、ご指導いただきありがとうございます……」と涙声で頭を下げる。

妻が鼻で笑い、娘たちや妻の同僚からは失笑が漏れた。

私の頬は腫れ上がり、視界も朧げだ。だが、彼女の「ショー」はまだ終わっていなかった。

「……いつまでそこに突っ立ってるの。見苦しいわね。早くブーツ脱がせてよ」

それは、さらなる屈辱の命令だった。 私は鼻血を袖で拭い、同僚たちの嘲笑と娘たちの冷え切った視線に晒されながら、妻の足元に這いつくばった。 彼女が履いているのは、膝下まである本革のロングブーツだ。ファスナーをゆっくりと下ろし、細い踵を支えながら、慎重にそれを引き抜いていく。

「ついでに、明日の朝までに磨いておきなさいよ」

そんな追い打ちの言葉が聞こえてこないことを、私は心の底から願い続けていた。

――どうか、奥さま……これくらいでご容赦くださいませ……

頭上では、女性たちの笑い声と侮蔑の言葉が続いていた。

ショートストーリー

ネオン街を気ままに謳歌する女帝たち

都会の夜を彩るネオンは、かつてのような自由を照らしてはいない。それは、完成された階級社会を誇示する「光の檻」だ。

夜の一等地の一角、会員制クラブの重厚な扉を開ければ、そこには完成されたディストピアが広がっている。最高級のシャンパンが運ばれるテーブルを囲むのは、この国の経済と政治を司るエリート女性たち。彼女たちの足元では、厳選された容姿を持つ男たちが、一点の曇りもない所作で跪き、グラスを掲げている。

ここでは、男が言葉を発することは許されない。許されているのは、主人の喉を潤すための奉仕と、彼女たちの美しさを引き立てる「置物」としての沈黙だけだ。男たちの価値は、知性でも財力でもない。いかに完璧に、自らの意志を殺して隷従できるか。その一点にのみ集約されている。

「最近の特区開発の推移についてだけど……」

若き女性議員が、隣り合うCEOに鋭い視線を向ける。その傍らで、男子ホステスは、彼女たちの会話に一瞬だけ意識を向けた。かつて大学で経済を学んでいた彼には、彼女たちの議論に自分なりの考えが思い浮かんだ。しかし、それを口にすることはない。

かつて、ある新人が自分の知識を誇示しようと、顧客のビジネス談義にうっかり口を挟んだことがあった。その瞬間に凍り付いた空気、そして彼に向けられた「お前ごときがどうしたの」という冷徹な一言。彼はその夜のうちに「不良品」として処理され、二度と表舞台で見かけることはなかった。

男子ホステスは、ただ美しい人形のように微笑み、絶妙なタイミングでワインを注げばいい。彼が磨き上げるべきは、経済学の知識ではなく、女性の視線の動きだけで次の一手を読み取る、動物的なまでの従順さだ。

一方、フロアの片隅。震える手でテーブルを拭いているのは、一人の年配男性ホステスだ。かつてはナンバーワンを誇った彼も、今や「賞味期限切れ」の烙印を押されている。何十年かけて磨き上げた礼儀作法も、洗練された会話術も、今の女王たちには無価値なガラクタでしかない。

「――チェンジ。もっと若くて、清潔な子を連れてきて」

そんな、たった一言の冷ややかな声が、男の存在を全否定する。彼は深々と頭を下げ、崩れ落ちそうな膝を叱咤してバックヤードへと消えていく。その背中に、救いの手は差し伸べられない。努力が報われる時代は、とうの昔に終わったのだ。選べる道は、もっと卑屈に媚びを売るか、あるいは社会の最底辺へと廃棄されるか。その二つに一つしかない。

閉店後の深夜、VIPルームの廊下に、乾いた音が響き渡る。

カツ、カツ、カツ――。

女性オーナーの履く、黒革ブーツのハイヒールの音だ。それは男子従業員たちにとって、死神の足音よりも恐ろしい「執行」の合図である。

「指導室へ来なさい」

わずかな粗相――ワインをこぼした、視線を長く合わせすぎた、あるいは香水の匂いが鼻についた。そんな些細な理由で、男たちはバックヤードへと連行される。

重い扉の向こう側で待っているのは、「指導」という名の処罰だ。冷酷な笑みを浮かべるマネージャーたちに囲まれ、男たちは冷たい床に額を擦り付ける。女性オーナーの黒革のブーツ、その尖った爪先が、彼らの身体を踏みにじっていく。男たちは肉体的な痛みもさることながら、完全支配されているという圧倒的な事実に、精神をじわじわと削り取られていく。

泣いて詫びる男の涙を、彼女たちは慈しむことさえしない。ただ、機能不全を起こした道具を眺めるような、冷徹な観察眼でそれを見下ろすだけだ。

さらにはオーナーの「あなたたちも」のひとことに誘われ、女性マネージャーたちは表情を絶望に染めた男たちへ、嬉々とした笑みを見せつつ思い思いの「指導」を施していく。

夜が明ける頃、衣服の下に無数の傷や痣を作った彼らはようやく解放される。しかし、帰って安らげる場所などありはしない。この支配構造こそが彼らの世界のすべてであり、彼女たちに跪くことなしには、自らの存在意義さえ見出せなくなっているのだ。

「女性様への奉仕こそが、我々の唯一の救いだ」

誰かが呟いたその言葉は、もはや皮肉ですらない。焦燥も、危機感も、いつしか絶対的な隷従のなかで「支配される悦び」へと書き換えられていくのだった。