S女小説「彼女たちの判決」を電子書籍として出版しました。
内容紹介
女性があらゆる権力の座を占めつつある時代。伝統ある私立女子高校は、未来の支配者となる少女たちを育てる揺籃の地となっていた。
小野寺泰典、四十六歳。数学教師として教壇に立ちながら、理系進学クラスを外され、文系クラスの担任へと回された中年男である。身長百五十八センチの彼は、長身の女生徒たちに見下ろされるたび、自分が実社会から切り離された矮小な存在であるかのような錯覚に陥る。職員室では能力主義という名の篩にかけられ、年配の男性教師が一人また一人と静かに姿を消していく。家庭でも、商社でキャリアを積み上げる妻・由紀の前で、泰典は料理一つ任せてもらえない。
クラス委員長の桐生美咲は、理事長の血縁を背景に担任への敬意を一切払わない。会計の黒川真帆は教室の空気を操り、書記の水城彩香は冷静な洞察で泰典の内心を見透かす。そんな中、副委員長の九条玲奈だけが、泰典を「先生」と呼び、丁寧に頭を下げてくれた。擦り切れた自尊心を抱えた泰典にとって、彼女の存在は唯一の救いだった——その感情が、教師として踏み越えてはならない線の上にあることを、彼自身うすうす気づきながら。
やがて泰典は、この学園で、そしてこの社会で、何が「適正な指導」として法的に認められているのかを知ることになる。副担任の高槻沙織が淡々と語る新しい秩序。学年主任・神崎真奈美が体現する冷徹な管理。そして、玲奈が提案した「模擬裁判」が、教室で思いもよらぬ形で開廷したとき、泰典の立場は決定的に変質しはじめる。
教師として、夫として、男として。削り取られていく尊厳の果てに、彼は何を差し出し、何を守ろうとするのか。そして、かつての教え子たちが社会の中枢へと歩を進めたとき、二人の間に残された関係の意味とは——。
第一章 教室の序列
第二章 教師の末路
第三章 転落の日々
第四章 かつての教え子
第五章 罪を着せる女
第六章 判決の日
