ショートストーリー

ネオン街を気ままに謳歌する女帝たち

都会の夜を彩るネオンは、かつてのような自由を照らしてはいない。それは、完成された階級社会を誇示する「光の檻」だ。

夜の一等地の一角、会員制クラブの重厚な扉を開ければ、そこには完成されたディストピアが広がっている。最高級のシャンパンが運ばれるテーブルを囲むのは、この国の経済と政治を司るエリート女性たち。彼女たちの足元では、厳選された容姿を持つ男たちが、一点の曇りもない所作で跪き、グラスを掲げている。

ここでは、男が言葉を発することは許されない。許されているのは、主人の喉を潤すための奉仕と、彼女たちの美しさを引き立てる「置物」としての沈黙だけだ。男たちの価値は、知性でも財力でもない。いかに完璧に、自らの意志を殺して隷従できるか。その一点にのみ集約されている。

「最近の特区開発の推移についてだけど……」

若き女性議員が、隣り合うCEOに鋭い視線を向ける。その傍らで、男子ホステスは、彼女たちの会話に一瞬だけ意識を向けた。かつて大学で経済を学んでいた彼には、彼女たちの議論に自分なりの考えが思い浮かんだ。しかし、それを口にすることはない。

かつて、ある新人が自分の知識を誇示しようと、顧客のビジネス談義にうっかり口を挟んだことがあった。その瞬間に凍り付いた空気、そして彼に向けられた「お前ごときがどうしたの」という冷徹な一言。彼はその夜のうちに「不良品」として処理され、二度と表舞台で見かけることはなかった。

男子ホステスは、ただ美しい人形のように微笑み、絶妙なタイミングでワインを注げばいい。彼が磨き上げるべきは、経済学の知識ではなく、女性の視線の動きだけで次の一手を読み取る、動物的なまでの従順さだ。

一方、フロアの片隅。震える手でテーブルを拭いているのは、一人の年配男性ホステスだ。かつてはナンバーワンを誇った彼も、今や「賞味期限切れ」の烙印を押されている。何十年かけて磨き上げた礼儀作法も、洗練された会話術も、今の女王たちには無価値なガラクタでしかない。

「――チェンジ。もっと若くて、清潔な子を連れてきて」

そんな、たった一言の冷ややかな声が、男の存在を全否定する。彼は深々と頭を下げ、崩れ落ちそうな膝を叱咤してバックヤードへと消えていく。その背中に、救いの手は差し伸べられない。努力が報われる時代は、とうの昔に終わったのだ。選べる道は、もっと卑屈に媚びを売るか、あるいは社会の最底辺へと廃棄されるか。その二つに一つしかない。

閉店後の深夜、VIPルームの廊下に、乾いた音が響き渡る。

カツ、カツ、カツ――。

女性オーナーの履く、黒革ブーツのハイヒールの音だ。それは男子従業員たちにとって、死神の足音よりも恐ろしい「執行」の合図である。

「指導室へ来なさい」

わずかな粗相――ワインをこぼした、視線を長く合わせすぎた、あるいは香水の匂いが鼻についた。そんな些細な理由で、男たちはバックヤードへと連行される。

重い扉の向こう側で待っているのは、「指導」という名の処罰だ。冷酷な笑みを浮かべるマネージャーたちに囲まれ、男たちは冷たい床に額を擦り付ける。女性オーナーの黒革のブーツ、その尖った爪先が、彼らの身体を踏みにじっていく。男たちは肉体的な痛みもさることながら、完全支配されているという圧倒的な事実に、精神をじわじわと削り取られていく。

泣いて詫びる男の涙を、彼女たちは慈しむことさえしない。ただ、機能不全を起こした道具を眺めるような、冷徹な観察眼でそれを見下ろすだけだ。

さらにはオーナーの「あなたたちも」のひとことに誘われ、女性マネージャーたちは表情を絶望に染めた男たちへ、嬉々とした笑みを見せつつ思い思いの「指導」を施していく。

夜が明ける頃、衣服の下に無数の傷や痣を作った彼らはようやく解放される。しかし、帰って安らげる場所などありはしない。この支配構造こそが彼らの世界のすべてであり、彼女たちに跪くことなしには、自らの存在意義さえ見出せなくなっているのだ。

「女性様への奉仕こそが、我々の唯一の救いだ」

誰かが呟いたその言葉は、もはや皮肉ですらない。焦燥も、危機感も、いつしか絶対的な隷従のなかで「支配される悦び」へと書き換えられていくのだった。