ショートストーリー

舌奉仕こそが、男の存在価値

「言葉なんていらないわ。お前の価値は、その舌がどれだけ私を満足させるかだけで決まるの」

冷徹な断罪が、都心を見下ろす高層階の執務室に響く。声の主は、紺色のタイトスカートに身を包んだエグゼクティブの女性だ。彼女の足元、カーペット敷きのフロアに這いつくばっているのは、かつては彼女の上司として雄弁を振るっていた男だった。

「能書きはいいから、早くやるべきことをやりなさい」

彼女の冷ややかな視線が、男の怯え顔を射抜く。男は慌てて口を噤み、ただ一筋の「道具」としての役割に戻る。彼に許されているのは、弁明でも懇願でもない。主人の欲望を、ただ無言のまま完遂すること。人格を有する者としての「言葉」を剥奪されたその瞬間、彼は自分がもはや人間ではなく、彼女の所有物に成り下がったことを理解した。

かつて女性部下への指導や説教に使われてきたその舌は、今やその彼女のブーツに付着した泥や埃を、丹念に、そして執拗に拭い去るためだけに存在する。

「こっちも丁寧にお舐め」

彼女は威厳たっぷりに脚を組み替える。

業務とはほど遠い、あまりにも理不尽な命令。しかし、それを拒絶することは、社員としての立場を失うことはおろか、この社会における生存の放棄をも意味する。それが、女性上位の世の中の現実であった。

「なによ、その顔は、もっと美味しそうに舐めなさいよ」

男は顔を歪めることさえ禁じられ、その不潔な泥を、まるで至上の美味であるかのように受け入れなければならないのだ。

屈辱が熱となって脳を焼き、プライドが音を立てて崩れ落ちていく。しかし、奉仕が数時間にも及んだ頃には、男の精神にも変容が訪れる。

喉は枯れ、舌は痺れ、感覚が麻痺していく……そんな極限の疲労と絶望の淵で、彼は奇妙な「安寧」を見出し始めていた。思考を放棄し、ただ女性上司の靴底の感触に己の全存在を埋没させる。むしろ、そうすることによって、彼はなんとか自分を保つことができたのだ。

「まだまだだね。もっとしっかり舌を使いな」

女性上司の叱咤の声が、部屋に響いた。さらには顔や頭を足蹴にする厳しい指導を受けながら、男はもはや自由を望むことさえ失いかけていた。知性も、自意識も、もはや不要な荷物でしかない。ただ仕えるべき女性の満足を己の存在理由とした時、そこには歪んだ、しかし揺るぎない「女尊男卑」の完成形が立ち現れていた。

「ようし、じゃあ、もっといいところを舐めてもらおうかしら」

女性上司は、口内をゆすいできれいにしてくるよう命じる。

男は暗澹たる気持ちでそれに従い、洗面所から戻ってくる。

彼女が大きく開いた脚の間に、小男の体がすっぽりと収まった。女性は男の残り少ない髪を鷲掴みにするとぐいと股間に引き寄せる。

「しっかり舌を使うのよ」

夜が更けても、女性の許しが出ることはない。海外とのリモートミーティングや事業の企画検討を行うデスクの下で、男はひたすら奉仕を続けなければならなかった。

そのような倒錯的な執務の場は、ひとつの部屋に留まらない。上階フロアのいくつものエグゼクティブルームに、絶大な権力を持って男たちを蹂躙し続ける女性たちの姿があった。