「奴隷!」
乗馬から戻ってきた妻は、夫をそう呼びつける。
「外で私のブーツがさんざん、砂埃を被ってきたから、それを全部舐め上げなさい」
妻は夫に命令する。
夫は屈辱に耐えながら、命令に従う。
すべては、裏切りの罰である。
夫は仕事先で知り合ったとある女性に、メールで告白された。
それを断らずに、「食事だけなら」とつきあおうとした返事を、妻に見られてしまった。
妻はすかさず、離婚を宣告した。
美貌と代々受け継いだ莫大な財産を持つ彼女には、次の夫など容易に見つかる。
そもそも、彼女自身夫以外にセックスフレンドを現在進行形で三人も抱えているのだ。
自身の浮気は自由だが、夫の移り気は許せない。
そもそも身分からして違うのだ。
夫は三日間ずっと詫び続けた。
彼女が出した答えは、「私の奴隷として一生過ごすならば、この家においてやってもよい」だった。
彼はさんざん迷ったあげく、その条件を飲むことにした。
それほどに妻の美貌と財産は魅力的だった。
さっそく、彼女は夫を丸裸にし、首輪を嵌めた。
「私と二人きりでいる間はずっとそうしていなさい」
「はい」
「私のことはマダムと呼びなさい。それから私には最上級の敬語を使うこと」
「は、はい……かしこまりましたマダム」
ところで、妻は、いまこれから、夫のブーツ舐めの出来不出来にかかわらず、彼を三十発の鞭打ち刑に処すつもりでいる。
そのための一本鞭は、ソファの裏側に隠してあるし、一番奥の倉庫部屋には専用の磔を先週工事業者に設置させたばかりである。
夫の白く柔らかい皮膚が血だらけになることを想像し、妻は下半身を熱く湿らせている。